
決算という言葉はよく使われる割に、具体的に何なのか?というと案外はっきりしない所があります。
決算=税金の申告のことを指すと思われている方は多いかもしれませんが、申告・納付は、決算の最終段階ではあるものの、全てではありません。
経済ニュースを眺めていると、大企業の決算は一大イベントのように取り上げられますが、中小企業でも大きな区切りですし、やる事も多く、専門的な知識が求められるのが決算です。
この記事では、「決算とは?」という疑問を「決算とは誰のためにやるのか?」という切り口で解き明かしていきます。さらに、決算の具体的な流れも簡単にお伝えします。
決算に対する疑問を解消する手助けになれば幸いです。
目次
1.決算とは?
1-1 決算とは、会社の業績を明らかにすること
決算とは、会社の一定期間の業績を明らかにすることです。
決算の内容を見れば、会社の財務状況や経営状態がすぐにわかります。
その作業は、日ごろの帳簿付けに始まり、決算書と呼ばれる一連の書類を作成し、それを元に税の申告・納付を行うという流れがあります。この流れのすべてが決算なのです。
そして、決算の締めくくりが税の申告・納付ですが、その申告・納付期限は、事業年度の最終日である決算日の2ヶ月後と決められているので、スピードと正確さが重要ということになります。
1-2 決算の区切りとなる決算期・事業年度は任意で決められる
決算の区切りとなる一定の期間を事業年度といい、その最後の月を決算期といいます。
決算期・事業年度は、法人の場合は任意で決められます。
決算期は一般的に3月が多いといわれますが、これは大企業の割合が高いだけで、全体的には適度に分散しています。
自分の会社や業種に都合が良い時期に設定して、最大限のメリットを受けましょう。
詳細は、こちらの記事を参考にしてください。
決算期は何月にする?会社を始めた時に知りたい事業年度の決め方
1-3 決算は税理士に依頼するのが望ましい
現在は利便性が向上した会計ソフトがあるので、日ごろの帳簿付けを自前で行うのは難しくないかもしれません。
ですが、決算をすべて自社で行うとなると、3章で後述するように法人の決算で行う事はたいへん多いですし、決算書の作成や税の申告には専門的な知識が求められるため、たとえ専任の担当者がいても難しい所があります。
本来の業務への負担をやわらげる意味でも、正確さを高めるためにも第三者の専門家の力を借りるのが望ましいでしょう。つまり、税理士に依頼するわけです。
税理士に依頼すれば申告書の作成でも、お客様と適宜コミュニケーションをとって疑問点を解消しつつ進めるので、正確さを高める事が出来ます。さらに、決算に先立って打ち合わせを行い、事前予測に基づいて節税など適切な方法を検討することも可能です。
税理士に依頼すると相応の費用がかかりますが、単に書類を作成するだけに止まらない、専門的な助言などのメリットもあるのです。
2.決算とは誰のためにやるのか?
決算とは、会社の業績を明らかにすることですが、そもそも誰のために会社の業績を明らかにする必要があるのでしょう?
2-1 国、地方自治体のため
決算の締めくくりは、税金の申告と納付です。
決算を元に申告書を作成し、税額を確定させて納付するわけですから、決算には正確さが求められます。
まさに国、地方自治体のために決算を行うという面があるのです。
税金の申告・納付については、後ほど3-6で改めて解説します。
2-2 株主、投資家、出資者のため
株主・投資家・出資者への報告も、決算の大きな目的です。
その会社の株を持っている株主はもちろん、新たに株を買う投資家の判断材料が、決算書なのです。
上場していない小さい会社であれば投資家は関係なさそうですが、もし株式会社という形ならば株主総会は必須ですし、別の形での出資者がいることもあります。たとえ少数でも、株主・投資家・出資者のために決算は欠かせません。
※株式会社の決算の内容を、投資家を中心に広くオープンにする手段が「決算公告」です。 ・大会社は貸借対照表及び損益計算書を公告 官報、新聞への掲載には費用がかかるため、決算公告に消極的な中小企業が多いのが実情ですが、株式会社の場合はある程度決算の内容をオープンにするのが前提ですし、決算公告を行っているという事が信用につながるのもまた事実です。 |
2-3 金融機関のため
金融機関からの融資は、会社の存続に欠かせません。その金融機関が融資審査で重視するのが、決算書です。
決算書の中身はもちろん、決算書の作りが雑だったり、経営者自身が中身を把握していないと、金融機関側の不安が高まる傾向があります。
また、融資を受けた後でも金融機関と関係を築くことを考えれば、決算の内容を積極的にオープンにするくらいの方が望ましいです。
その辺りのことは、弊社の経験が詰まった記事がありますので、ぜひ参考にしてください。
銀行融資の成功確率をグッと高める銀行交渉術と付き合い方のコツ
元銀行員に聞いた!融資審査に通るために把握しておきたい決算書のポイント3つ
2-4 取引先のため
その会社と取引をしてよいものか?続けてよいものか?取引先にとっても、決算の内容は気になるものです。
もしも倒産リスクの高い会社と取引して、代金を回収する前に倒産されては、大きな損失になります。
そこで有効なのが、決算書のチェックです。相手の言葉だけでは知り得ない真実が、決算書には書かれているのです。
もちろん、取引先にどこまで決算の内容を明らかにするのかは信頼関係によりますが、そこはお互い様という面もあるでしょう。
2-5 従業員のため
従業員は決算で実際の作業に携わるわけですから、ひとつの大きな区切りとして意識するでしょう。
一方で、決算の細かい数字まで従業員に明らかにするのか?という疑問もあるかもしれませんが、具体的な目標、経営課題などを共有できるメリットがあります。
なお、弊社がお奨めしている経営計画書では、数値目標の作成に当たり決算書の数字も利用します。
つまり、決算の内容をある程度は従業員とも共有するわけです。
この経営計画の作り方については、こちらの記事を参考にしてください。
中期経営計画の作り方を徹底解説!テンプレートを利用して簡単作成
2-6 経営者自身のため
経営者自身にとっても決算は大きな区切りですが、締めくくりである税の申告・納付を済ませて終わり、あるいは税理士に全てを任せて終わり、というのはもったいない話です。
決算で明らかになる数字は、会社の経営を進める上での指針となります。会社の過去を総括して、次に生かす考えを巡らせることができます。
今でこそ新しい経営分析手法など多くの情報があふれていますが、基本は決算の内容にあります。
決算はまさに自分を知る、自分のためにもなるのです。
3.決算の流れ
決算の大まかな流れは、次の通りです。
3-1 帳簿を付ける
決算の大元は、正確な帳簿付けです。つまり、決算は日常から始まっているのです。
現在は利便性が高まった会計ソフトのおかげで、手間がかなり軽くなりました。また、税理士に記帳代行を依頼することもできます。
3-2 試算表を作成する
試算表を作る過程で、残高確認ができます。また試算表は、決算の前だけでなく随時作成することで、経営の参考にもなります。
試算表の作成方法については、こちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
試算表とは?基礎知識から見るべきポイント・作り方・注意点まで解説
3-3 決算整理をする
そもそも会社の活動は継続的なものですが、会社の業績を明らかにする決算のために、決算期・事業年度という区切りをあえて設けるわけです。
そのため、本来は継続的な会社の活動を区切ってしまうと、どうしても不自然な部分が出てきてしまうため、行う作業が「決算整理」です。この決算整理で行う事は非常に多岐にわたります。
3-4 決算書を作成する
決算書といいますが、これは1つの書類ではなく、複数の書類の総称です。
法人で作成しなければいけないものが会社法で定められていますが、中でも重要なものが、「財務三表」といわれる損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書です。
(このうち、キャッシュフロー計算書の作成義務は大企業のみですが、中小企業でも経営に活かす上で必要です)。
決算書の作成には専門的な知識が必要ですが、このあたりについて税理士法人の立場からお伝えできる詳しい記事がありますので、参考にしてください。キャッシュフロー計算書の必要性も併せてお伝えします。
財務三表を理解できるようになる!PL・BS・CSの読み方を解説
キャッシュフロー計算書とは?会社のキャッシュの流れを読み解く方法
【決算書の読み方】経営に活かす損益計算書と貸借対照表の読み方
【カンタン図解】貸借対照表と損益計算書の基本とつながりを解説
財務諸表とは?基本の読み方と経営に活かすための方法を徹底図解
3-5 株主総会で承認を得る(株式会社の場合)
決算書作成が、いわば決算の山場ですが、これで決算が確定とはいきません。
株式会社の場合、株主総会を開いて決算の承認を得るという手順が必要になります。
3-6 税金の申告書を作成し、納付する
決算の締めくくりは、税の申告書作成と納付になります。
法人の税は国、都道府県、市町村それぞれの申告書を作成し、それぞれに納付する必要があります。
法人税の申告期限・納付期限は決算日の2ヶ月後ですが、その詳細はこちらの記事を参考にしてください。
さらに2023(令和5)年10月にインボイス制度が始まりますと、これまで免税事業者だった場合でも、法人ならば課税事業者に登録するケースが増えることでしょう。その場合、消費税の申告書作成と納付の必要も生じます。
さいごに
以上、決算について誰のため?という視点で見てきました。
税の申告・納付、株主や出資者等への報告に加えて、金融機関や取引先に明らかにするため、そして従業員や経営者自身のために決算は行われるのです。
まさに、会社に関わる全ての人のために決算を行うと言っても過言ではないでしょう。
法人の決算についてイメージできたと思いますが、たとえ小さな会社といえども、利便性が高くなった会計ソフトを利用できるとしても、やることが多いのが決算なのです。
そこで本来の業務への負担をやわらげる意味でも、税理士への依頼をぜひご検討ください。
さらに、経営にも通じた税理士であれば、決算で明らかになった数字の活用、その後の経営改善などのサポートも承ります。
決算で明らかになった課題を乗り越えて、よりよい会社づくりを進めましょう。
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