役員社宅とは|その要件、家賃設定、メリット・デメリットなどを解説

「会社で役員社宅を設けたいが、どうすればいい?」
「役員社宅が節税になると聞いたけれど、どういうこと?」

この記事を開いたあなたは、そんな疑問を持っているのではないでしょうか。

「役員社宅」は、社宅の中でも特に役員が利用する社宅制度です。
会社名義で借りている賃貸物件に役員が住むと、会社側の家賃負担分は経費として計上できる=全額損金として算入できるため、節税効果が大きいのが特徴です。

ただし、税法上で役員社宅として認められるには、
・賃貸契約は法人名義で結ぶ
・家賃の一部を役員本人が自己負担する
・大家への家賃の支払いは、名義人である法人が直接行う
という3要件を満たさなければなりません。

また、役員社宅は床面積によって、
・小規模な住宅
・小規模でない住宅
・豪華住宅
3タイプに分けられ、それぞれに役員が負担すべき家賃額が異なります

これらを正しく守ることで、はじめて役員社宅で節税ができるのです。

そこでこの記事では、役員社宅について知っておくべきことをわかりやすく解説しました。

まず最初に基本的な知識として、

役員社宅とは何か
役員社宅が節税になるしくみ
役員社宅の3つの種類

について説明します。
それを踏まえた上で、

役員社宅で節税するための家賃の決め方
役員社宅のメリット・デメリット
役員社宅を設ける際の注意点
役員社宅の仕訳

をわかりやすく解説します。
最後まで読めば、役員社宅について知っておくべきことがひと通りわかるでしょう。

この記事で、あなたの会社が役員社宅制度を適正に運用できる手助けになれば幸いです。

 


1. 役員社宅とは

そもそも「役員社宅」とはどんなものでしょうか?
一般の社員向けの社宅とは何が異なるのでしょうか。
その定義や、知っておくべき特徴から見ていきましょう。

1-1. 役員社宅は節税になる

「役員社宅」は、社宅の中でも特に役員が利用する社宅制度です。
その最大の特徴、メリットは「節税効果が大きい」ということです。

というのも、会社名義で借りている賃貸物件に役員が住む場合、会社側の家賃負担分は経費として計上できる=全額損金として算入できるのです。
たとえば、賃料30万円のマンションを借り上げ社宅として会社が契約し、半額の15万円を会社負担とした場合は、15万円✖12カ月=180万円/年がまるまる損金計上となります。
つまり、会社の利益が180万円減ることになり、その分法人税が減るので節税できるというわけです。

また、役員社宅には節税以外にも、

・社会保険料の負担を減らせる
・役員の可処分所得額が増える

といったメリットもあります。
そのため経営者の中には、あえて自分の住む住宅を購入せず、会社名義の賃貸に住んでいるという人もいるほどです。

ただ、どんな住宅でも役員社宅として認められるわけではありません。
また、どんなに豪華な住宅の高額な家賃でも際限なく経費扱いできるわけでもありません。
そこには一定の基準が定められていますので、次項意向で説明していきましょう。

1-2. 役員社宅として認められる要件

ではまず、賃貸物件が「役員社宅」と認められるにはどんな要件を満たしていればいいのでしょうか?
それは以下の3点です。

【賃貸住宅が役員社宅として認められる要件】

賃貸契約は法人名義で結ぶ
 →個人事業主の場合は、事業者名義で社宅を契約することはできますが、社宅として住めるのは従業員だけで、事業主本人は住めません。

家賃の一部を役員本人が自己負担する
 国税庁が定める「賃貸料相当額」を役員が自己負担すると、その分は給与として課税されません。

大家への家賃の支払いは、名義人である法人が直接行う
 自己負担分があるからといって役員が支払うのではなく、かならず会社が支払う必要があります。
  役員の自己負担分は、役員報酬から天引きにします。

1-2-1. 賃貸契約は法人名義で結ぶ

特に重要なポイントとなるのは、「かならず法人名義で契約する」ということです。
もし役員個人の名義で契約していると、会社側の家賃負担分は「住宅手当」になるため、課税されてしまいます
役員社宅制度を設けるのは節税のためという意味合いが大きいのに、それでは意味がなくなってしまうでしょう。
そのため、契約の名義人は法人にしなければならないのです。

【役員が賃貸住宅に住む際の契約名義人の違い】

賃貸契約の名義

家賃の会社負担分の扱い

家賃の役員負担分の扱い

法人名義

経費=損金

社宅使用料 非課税

役員個人の名義

住宅手当 所得税として課税

個人の支出

 

1-2-2. 家賃の一部を役員本人が自己負担する

ただ、役員社宅の家賃が経費扱いできるからといって、全額を会社側負担にすることはできません。
かならず家賃の一部は役員本人が自己負担する必要があります。
その負担額の割合も、国税庁によって一定基準が定められています

 参照:国税庁「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」

もしその基準以上、あるいは家賃全額を会社負担にした場合、「実質的には役員報酬として支払っているのと同じ(=現物給与)」とみなされます。
となると、家賃の会社負担分は「経費」ではなく「給与」扱いになり、税務調査で課税されてしまう恐れがあるのです。

この役員の家賃負担額については、1-2. 役員社宅は床面積で3タイプに分けられる」「2. 役員社宅の家賃の決め方」でくわしく説明しますので、そちらもぜひ読んでください。

1-2-3. 大家への家賃の支払いは、名義人である法人が直接行う

また、家賃の一部を会社の経費扱いにするのであれば、家賃の支払いは当然ながら会社側から行わなければなりません
役員個人が支払ってしまうと、税務調査で否認されて経費計上できない恐れがあります。
そうならないよう、
・家賃の支払いは会社から行なう
・役員の自己負担分は、会社が役員報酬から天引きする
という形にしましょう。

1-3. 役員社宅は床面積で3タイプに分けられる

さて、前項で触れましたが、役員社宅で節税するには、役員本人が国税庁の定めた一定額の家賃を負担する必要があります
この「一定額」は「賃貸料相当額」と呼ばれ、住宅の床面積によって以下の3タイプにわかれています。

小規模な住宅
小規模でない住宅
豪華住宅

そしてそれぞれに、該当する住宅の規定と、賃貸料相当額の計算式が以下のように決められています。

【役員社宅の賃貸料相当額】

住宅のタイプ

床面積

賃貸料相当額

小規模な住宅

・法定耐用年数30年以下の場合:
132㎡以下
・法定耐用年数30年超の場合:
99㎡以下

※区分所有の建物は、共用部分の床面積をあん分して専用部分の床面積に加える

次のの合計額
①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)✖ 0.2
②12円(その建物の総床面積(㎡)/(3.3㎡))
③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)✖ 0.22

小規模でない住宅

上記以外

・自社所有の社宅の場合
次の①②の合計額の12分の1
①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)✖ 12
 法定耐用年数が30年超の建物の場合は  ✖ 10
②(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)✖ 6

・他から借り受けた住宅の場合
→会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額

豪華住宅

240㎡超の場合:物件価格、賃貸料、内装・外装の状況などを勘案して、該当するか判定
240㎡以下の場合:プールなどの設備がある、役員個人の好みが大きく反映されている、などの場合は該当する場合あり

家賃全額
→法人名義であっても、法人が家賃を負担して経費計上することはできず、節税効果はない

これについては、次章2. 役員社宅の家賃の決め方」 でさらにくわしく説明しますので、そちらも参照してください。

 


2. 役員社宅の家賃の決め方

では、前章で簡単に触れた「賃貸料相当額」、つまり役員社宅における役員個人の家賃負担分をどう決めればいいのか、くわしく説明していきましょう。
前述の通り、それは住宅の床面積によって3タイプに分けられます。

2-1. 小規模な住宅の場合

まず、「小規模な住宅」の場合です。
その定義と、賃貸相当額は以下の通りです。

床面積

賃貸料相当額

・法定耐用年数30年以下の場合:
132㎡以下
・法定耐用年数30年超の場合:
99㎡以下

※区分所有の建物は、共用部分の床面積をあん分して専用部分の床面積に加える

次の①~③の合計額

(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)✖ 0.2%
②12円✖(その建物の総床面積(㎡)/(3.3㎡))
(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)✖ 0.22%

役員社宅にしたい住宅の
・法定耐用年数
・広さ(㎡)
・固定資産税の課税標準額
を調べて計算しましょう。

たとえば、

・法定耐用年数30年超
・床面積:90
・建物の固定資産税の課税標準額:1,000万円
・敷地の固定資産税の課税標準額:1,000万円

というケースを仮定して計算してみましょう。

①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)✖ 0.2
  1,000万円✖ 0.2%=2万円
②12円(その建物の総床面積(㎡)/(3.3㎡))
  1290㎡/3.3㎡)=327
③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)✖ 0.22
  1,000万円✖ 0.22%=22,000

→ 42,327

つまりこのケースでは、役員は家賃のうち42,327円以上を負担し、それ以外の部分を会社負担とすれば、会社負担分は全額が経費として認められ、損金扱いにできるというわけです。

ちなみに住居用建物の法定耐用年数は、その構造によって以下のように定められています。

【建物の法定耐用年数】

30年以下

30年超

・土蔵造:20
・木骨モルタル造:20
・木造:22
・軽量鉄骨造:27

・鉄骨コンクリート:34
・鉄骨造:34
・無菌コンクリート:38
・コンクリートブロック:38
・れんが造:38
・石造:38
・鉄骨鉄筋コンクリート造:47
・鉄筋コンクリート造:47
・プレストレスコンクリート:47
・プレキャストコンクリート:47

毎年の固定資産税の課税標準額は、46月に送付される固定資産税の納税通知書で確認しましょう。

2-2. 小規模でない住宅の場合

一般的な賃貸住宅で、前項の「小規模住宅」に該当しない場合は、「小規模住宅以外」として扱われます。
役員の家賃負担は、物件が自社所有かそうでないかによって、以下のように異なってきます。

床面積

賃貸料相当額

小規模住宅以上

・法定耐用年数30年以下の場合:
132㎡超
・法定耐用年数30年超の場合:
99㎡超

※区分所有の建物は、共用部分の床面積をあん分して専用部分の床面積に加える

・自社所有の社宅の場合
次の①②の合計額の12分の1
(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)✖ 12%
 ※法定耐用年数が30年超の建物の場合は✖ 10%
(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)✖ 6%

・他から借り受けた住宅の場合
会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額

たとえば、

・法定耐用年数30年超
・床面積:100
・建物の固定資産税の課税標準額:1,000万円
・敷地の固定資産税の課税標準額:1,000万円

というケースを仮定して計算してみましょう。

<自社所有の場合>

①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)✖ 12
 法定耐用年数が30年超の建物の場合は✖ 10
  1,000万円✖ 10%=100万円
②(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)✖ 6
  1,000万円✖ 6%=60万円

→ (÷ 12133,333円 を役員が負担する

<他者所有の場合>

会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記の賃貸料相当額=133,333円とのいずれか多い金額

→ つまり、
  ・家賃が上記の賃貸料相当額の2倍より高い場合:家賃の50
  ・家賃が上記の賃貸料相当額の2倍より安い場合:上記の賃貸料相当額=133,333
  を役員が負担する

以上のようにすれば、会社負担分は全額が経費として認められ、損金扱いにできます。

2-3. 豪華住宅の場合

さて、前述の「小規模な住宅」に該当せず、かといって「小規模でない住宅」としても扱われないケースもあります。
それは、「豪華住宅」とみなされる住宅の場合です。
その定義は明確ではなく、個別のケースごとに判断されることになりますが、たとえば、

・床面積が240㎡超で、物件価格または賃貸料が高額である、あるいは内装や外装が豪華である
・床面積が240㎡以下でも、プールなど一般の住宅に無い設備がある、住んでいる役員個人の好みが反映された設備がある

といった物件は、豪華住宅と判断される可能性があります。

豪華住宅は、国税庁の判断では「社会通念上一般に貸与されている社宅と認められない」ため、「役員社宅」の制度が適用されません
「通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額」、つまり家賃全額を役員本人が負担しなければならず、「会社側が一部を負担することで損金扱いにする」という節税効果がなくなってしまいますので注意してください。

床面積

賃貸料相当額

240㎡超の場合:物件価格、賃貸料、内装・外装の状況などを勘案して、該当するか判定
240㎡以下の場合:プールなどの設備がある、役員個人の好みが大きく反映されている、などの場合は該当する場合あり

家賃全額
→法人名義であっても、法人が家賃を負担して経費計上することはできず、節税効果はない

参照
No.2600 役員に社宅などを貸したとき|国税庁

 


3. 役員社宅のメリット

さて、役員社宅制度には節税効果をはじめさまざまなメリットがあることは前述しました。
そこであらためて、どんなメリットがあるのかをくわしく説明しておきましょう。

3-1. 会社持ちの家賃分が全額損金扱いにできる

まず第一のメリットは、再三挙げている節税です。

役員社宅の家賃は会社側が支払い、その一部を社宅使用料として役員が負担しますが、会社側の負担分についてはその全額が「地代家賃」として経費=損金扱いにできます。
つまり、その分の利益が減じたことになるので、法人税も下がり、節税になるのです。

さらに、社宅扱いにすると家賃以外にも、全額または一部を経費計上できる費用があります。
たとえば、以下のようなものです。

<全額経費にできる>
◎賃貸契約の仲介手数料
◎引っ越し費用
◎敷金

<一部を経費にできる>
〇礼金:家賃の会社負担分と同じ割合を負担すれば経費計上できる
〇管理費・共益費
〇火災保険料

<経費にできない>
〇水道光熱費
〇駐車場代     など

役員社宅を制度化するなら、なるべくさまざまな費用を経費計上して節税しましょう。

3-2. 役員の可処分所得額が増える

さらに、役員としては可処分所得が増えるというメリットもあります。

たとえば毎月60万円の役員報酬を得ている役員が、家賃20万円のマンションに住んでいるとしましょう。
もし役員本人名義でマンションを借りていれば、通常は家賃20万円全額が個人の負担になるだけです。
が、家賃のうち10万円を会社が負担してくれるとなれば、役員の家賃負担は10万円ですみ、結果として役員報酬が10万円増えたのと同じことになります。

さらに、役員報酬から家賃負担分が天引きされるため、社会保険料や住民税、所得税も軽減され、可処分所得が増えるというわけです。

※社会保険料の負担を減らすために、役員報酬を引き下げることは要注意

社会保険料の負担を減らすという意味では、役員報酬を引き下げることでも可能です。
役員社宅制度を導入すると、会社が役員の住む住宅の家賃を一部負担しますから、その分の役員報酬を引き下げ、それによって社会保険料額も下がるという考え方です。

ただし、役員報酬の変更は、会社の利益操作を防ぐ目的から、そう簡単にできません。
役員報酬の変更ができるのは、事業年度の開始日から3ヶ月以内と決められています。
変更の手続も、株式会社であれば株主総会を開いた上で、きちんと議事録を作成して保管するという手順を踏む必要があります。
さらに、社会保険料が変わるほど役員報酬を変えるとなると、年金事務所への届出も必要になる場合もあるのです。

役員報酬の変更に関する詳細は、こちらの記事をご覧ください。

役員報酬を変更する時に知っておくべき手順・条件・注意点を徹底解説

 


4. 役員社宅のデメリット

このように大きなメリットがある役員社宅制度ですが、デメリットがないわけではありません。
たとえば以下のようなことが挙げられます。

4-1. 敷金など初期費用が大きい

賃貸物件を契約する際には、敷金礼金などの初期費用も発生するため、これらが会社の業務や資金繰りを圧迫する恐れがあります。

たとえば、

・敷金礼金
・仲介手数料
・書類の作成費用

などはかならず必要になるでしょう。

また、役員社宅制度を明文化したり、物件選びをしたりするために、人的リソースも割かねばなりません。
もし自社で社宅用の物件を購入する場合は、さらに桁違いの費用が発生します。

節税効果が大きい役員社宅とはいえ、導入の際には、これらの初期費用が無理なく支払えるかを十分に検討する必要があるでしょう。

 


5. 役員社宅で節税する際のポイント

このように、メリット・デメリットのある役員社宅ですが、「やはり節税効果が魅力的なので、導入しよう」と考えている経営者の方は多いでしょう。
そんな方には、「節税したいなら、ここが重要!」というポイントを2つほどお教えしておきましょう。

5-1. 役員の家賃負担分を50%にすると節税効果が薄くなる可能性が高い

役員社宅制度を取り入れている企業では、家賃のうち役員の負担分=賃貸料相当額を「50%」と設定しているところも多いようです。
これは、2. 役員社宅の家賃の決め方」 で紹介した計算方法が難しかったり面倒である場合は、「50%」と設定すれば税務署に経費として認めてもらえるためです。

ただし、実際に前出の方法で計算すれば、役員の負担分は50%よりも少なくできる場合が多く、1020%に抑えられる場合もあるのです。

役員の負担分を少なく抑える=会社の負担分を増やせば、それだけ損金計上が増えるわけで、節税効果は高くなります。
家賃20万円の物件を借りる場合、
・役員負担が50会社の損金は10万円/月
・役員負担が20会社の損金は16万円/月
となり、これは大きな違いですよね。

賃貸料相当額を家賃の50%と設定するのは簡単ですが、節税効果としては小さくなってしまう恐れが大きいので、面倒でもぜひきちんと計算してください。

5-2. 役員の家賃負担を無償や少額にすると給与扱い=課税対象になる

役員の家賃負担が少ないほど節税効果が大きいことはわかりましたが、かといって、あまりに負担を少なくしすぎたり、無償=全額会社負担にしてしまうのは逆効果です。

税務署が会社の家賃負担を損金として認めてくれるのは、あくまで「賃貸料相当額」の計算にのっとった場合に限られます。
それを超えると、家賃の一部負担ではなく、「実質的には役員報酬として支払っているのと同じ(=現物給与)」とみなされ、課税されてしまうのです。

これでは節税効果は得られないということも知っておいてください。

 


6. 役員社宅を設ける際の注意点

また、実際に役員住宅を設ける際には、注意してほしいこともいくつかあります。
それらもあわせて説明しておきましょう。

6-1. 社内規定を定める必要がある

役員社宅制度を始める際には、まず事前に社内規定をきっちりと定めてください
もし、「従業員用の社宅制度はすでにあり、明文化されている」という場合でも、役員社宅に関しては別途で規定を設けなければなりません

というのも、役員と一般の従業員では、税務上の取り扱いが異なる(※)からです。

役員と会社の家賃負担割合はそれぞれどうするのか、諸費用はどう支払うのか、その他利用に関する決まりなど、事前にきちんと定めておきましょう。
引っ越し代なども経費にしたいという場合には、そのことも規定に盛り込んでおけば、税務調査で否認されたり問題にされたりするリスクは避けられるでしょう。

※役員は、従業員と異なり制約が大きい

3-2でも少し触れましたが、そもそも役員報酬は変更できる時期が限られているなどの制約が大きく、従業員の給与とは扱いが大きく異なります。
つまり役員社宅についても、従業員のための社宅と同じ感覚で扱ってはいけないのです。
なお、役員報酬については弊社の記事がありますので、参考にしてください。

役員報酬を変更する時に知っておくべき手順・条件・注意点を徹底解説

役員報酬とは?従業員給与との違いと役員報酬の決め方・注意点を解説

役員報酬の決め方が分かる!手順・金額の決め方・節税のコツを解説

6-2. すでに居住している住宅を役員社宅にするのは難しい

「役員がいま現在住んでいる住宅を役員社宅にしたい」と考える経営者の方もいるでしょう。
これは可能でしょうか?

結論からいえば、可能ではありますが、簡単ではありません

手続き上は、賃貸契約の名義を個人から法人に切り替えて、家賃支払いは会社から、役員の家賃負担分は役員報酬から天引きする、というように変更すればいいでしょう。

ただ、社宅とは従業員の住環境を保つために会社が補助するもの、または福利厚生の一環です。
すでに問題なく住んでいて、家賃も支払えている住宅に、「社宅」として会社から家賃補助を出すのは本来の主旨から外れてしまいます。

そのため、税務署からは「社宅」ではなく「住宅手当」と判断されて課税されてしまう恐れがあるのです。

6-3. 家賃以外の負担金には課税されるものがある

前述しましたが、役員社宅に関する費用では、経費扱いできずに課税されてしまうものがあります。
たとえば、

・水道光熱費
・駐車場代

などです。

もしこれらを会社が負担することにして、役員社宅規定に盛り込んだとしても、非課税にはなりません。
役員報酬の一部として課税されますので、注意してください。

6-4. 役員社宅に住宅ローン控除は適用されない

役員社宅として、会社で物件を購入するケースもあるでしょう。

個人で住宅を購入する際には、住宅ローン控除として最大400万円という大きな減税が受けられます。
が、法人が住宅を購入した場合は、残念ながら住宅ローン控除は適用されません

これをあてにして購入すると、あとでがっかり、ということになってしまいます。
購入を検討する際には、「住宅ローン控除はない」ということを踏まえて資金計画を立てましょう。

 


7. 役員社宅の仕訳

ここまで、役員社宅についてそのメリット・デメリットや注意点などをいろいろな面から検討してきました。
が、役員社宅については、多くの人が知りたがっていることがもうひとつあります。
それは「仕訳」です。

そこで最後に、役員社宅の仕訳のしかたについて、簡単に説明しておきましょう。

7-1. 家賃の仕訳

役員社宅の場合、
・役員から家賃の一部(賃貸料相当額)を会社が徴収
・家賃の全部を会社から大家さんに支払い
をします。

そのため、以下のように仕訳します。

<役員から受け取る賃貸料相当額>

勘定科目は「雑収入」です。

借方

金額

貸方

金額

現金・預金

〇〇〇円

雑収入

〇〇〇円

<大家さんへの家賃支払い>

勘定科目は「地代家賃」です。

借方

金額

貸方

金額

地代家賃

〇〇〇円

現金・預金

〇〇〇円

 

7-2. 家賃以外の仕訳

また、家賃以外で役員社宅にかかる初期費用については、以下のように仕訳します。

敷金:「敷金」または「敷金保証金」として資産勘定に計上
礼金:「支払手数料」または「雑費」などとして費用計上

 


まとめ

いかがでしたか?
役員社宅について、知りたいことがひと通りわかったかと思います。

ではあらためて、記事の内容をまとめてみましょう。

「役員社宅」は、社宅の中でも特に役員が利用する社宅制度で、会社側の家賃負担分は全額損金算入できるため節税効果が大きい
役員社宅として認められるためには、以下の3要件を満たさなければならない
 ・賃貸契約は法人名義で結ぶ
 ・家賃の一部を役員本人が自己負担する
 ・大家への家賃の支払いは、名義人である法人が直接行う
役員社宅は床面積によって以下の3タイプに分けられる
 ・小規模な住宅
 ・小規模でない住宅
 ・豪華住宅
役員社宅で節税する際のポイントは、
 ・役員の家賃負担分を50%にすると節税効果が薄くなる可能性が高い
 ・役員の家賃負担を無償や少額にすると給与扱い=課税対象になる

この記事を踏まえて、あなたの会社が役員社宅を適正に運営できるようになれば幸いです。

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