売上目標の立て方|利益が残る適切な目標設定の4つの手順【計算シート付き】

売上目標を決めるとき、前回より少し高い目標に設定するなど「なんとなく」で決めてしまっていませんか?「なんとなく」で決めた売上目標は、高すぎたり低すぎたり、そもそも達成できない目標になってしまうことがあるので避けるべきでしょう。

結論からお伝えすると、適切な売上目標は「利益から逆算すること」で設定できます。売上から考えてしまうと、利益が残らない目標設定になってしまうからです。あくまでも、売上目標は利益を生み出すための通過点でしかありません。売上目標は、利益を起点に算出すべきです。

本記事では、会社経営をする社長及び個人事業主が今期や来期の売上目標を適切に設定するための方法を、4つのステップに分けてお伝えします。また、できる限り簡単に目標を立てていただけるよう「売上目標が自動で計算されるテンプレート」をご用意いたしました。ここでご案内する通りに数字を入力していくと、誰でも簡単に自分の会社に合った売上目標を決めることができます。

実際に私たちが実務上で様々な経営者にご提案している計算方法です。例えば、年商5億を上げる社長に提案した際には「こうやって考えればいいのか!」と驚き、納得していただけました。

今までなんとなく高い目標設定をして、達成できなくても仕方がないと思っていた方も、この方法で売上目標を決めれば、目指すべきゴールがはっきりとわかるでしょう。なんとなくの数字ではなく、根拠のある数字で、しっかりと会社の将来を考えていきましょう。


1.売上目標の決め方

売上目標を決める方法は次の通りです。
 1.利益目標を決める
 2.営業外損益を入力する
 3.固定費を入力する
 4.粗利益率を設定する

売上目標を決めるときには、必ず利益から考えてください。利益目標を決めてから、経費を計算し、売上目標を逆算します。

先に売上目標を決定してから、経費を引いて利益を出す、という流れが広く浸透しているかもしれませんが、それはオススメできません。その方法で計算してしまうと、利益が足りずに会社のお金が減り、いずれ会社がつぶれてしまうかもしれません。

ここでは、会社に必要な利益の考え方から、その利益を出すための売上目標の計算まで、簡単に進めることができます。難しい計算は必要ありません。数字を入力していくだけで、あなたの会社に合った売上目標が自動で計算されます。

売上目標が自動的に計算されるExcelを用意しましたので、最初にダウンロードしてください。

【売上目標Excelデータダウンロード】
【販売計画Excelデータダウンロード】

1-1.利益目標を決める

まずは、利益目標を入力します。

 

 

 

利益と呼ばれるものはいくつかありますが、目標設定のために考えるべき利益は当期純利益です。法人税も支払った後の、会社の最終的な利益なので、ここがプラスになって初めて会社にお金を残していくことができます

当期純利益は、以下のいずれかに設定してください。
 ①借入金の年間返済額
 ②借入をせずに設備投資できる額
 ③売上なしで会社(社員)を1年間維持できる額
 ④社員1人あたり100~200万円
 ⑤1000万円

借入金がある場合は必ず①を利益目標にしましょう。これを満たさない場合、たとえ黒字であったとしても、会社のお金は減っていってしまいます。例えば、毎月10万円の返済をしている場合、120万円の利益が必要です。

借入金がない場合、②~⑤のいずれかを利益目標にしましょう。設備投資の予定があれば②、設備投資の予定がなければ、③を考えましょう。③を考えることが難しい場合は④か⑤にします。利益が1000万円というのは、一般的に税理士の間で“大きい会社”と判断される額になります。社員数が多く⑤では少ない、という場合は④で計算してみましょう。

利益目標を入力すると、経常利益が計算されます。
注意 1-3-3で減価償却費を入力した後にも、経常利益は変動するようになっています。

節税について
「税金はできるだけ払いたくない。」「税金をできるだけ少なくしたい。」そう考える社長は多いでしょう。


しかし、利益と税金が連動している以上、節税とは基本的に利益を上げない方向を目指すものです。税金はコストであるとドラッカー教授は言います。税金という成長のコストを払わない企業に成長はありません。(参考「実践するドラッカー 利益とは何か」佐藤等 著、ダイヤモンド社 発行)

利益とは、「社員と家族を守るためのコスト」であり、「会社存続のための事業存続費」です。会社存続のために絶対に必要なものは、売上ではなく利益です。税金を過剰に納める必要はありませんが、必ず払わなければいけない経費と捉え、正しく納めることが、会社を成長させる近道になるのです。

1-2.営業外損益を入力する

次に営業外損益を入力します。

 

 

 

営業外損益は、本業以外の活動によって経常的に発生する収益・費用です。次に挙げるもので、ある程度決まった額の収支があらかじめわかる場合には入力してください。
 ・受取利息、支払利息
 ・受取配当金
 ・売買目的の有価証券の売却
 ・社宅の家賃収入
 ・自販機収入
※上記の他にも、貸倒引当金繰入や繰延資産の償却費などもあります。あらかじめわかるものがあれば合計して入力してください。

営業外損益を入力すると、営業利益の目標が計算されます。

特別損益
経常的に発生する営業外損益とは違い、その時だけ臨時に発生するような利益・損失を特別損益と言います。以下の取引があり、利益が発生するのか、損失が発生するのかが事前にわかっている場合には、入力しておきたい項目です。(事前にわかることはあまりないので、表には入れておりません。)

もし入力する場合には、営業外損益の欄に足し合わせてください。売上目標は正しく計算されます。
・固定資産の売却
・株式や証券の売却(売買目的でないもの)
・保険金の受取

・前期の損益の修正

※火災や自然災害などによる損失も特別損失になりますが、目標設定時に事前に予測することは難しいと思います。もし、「次に台風が来たら、あれは壊れるだろう」などと考えているものがあれば入力してください。

1-3.固定費を入力する

次に固定費を入力します。固定費は本業で発生する費用のうち、売上に関係なく発生するものです。ここでは固定費を人件費・一般経費・減価償却費の3つに分けて考えます。

固定費を入力すると、粗利益の目標が計算されます。

1-3-1.人件費を入力する

固定費の1つ目は人件費です。
 

 

 

 

・給与
 ・賞与
 ・役員報酬
 ・法定福利費
 ・福利厚生費
 ・退職金
の合計を入力してください。来期の目標を立てる場合、来期に給与を上げる予定などがあれば、それも踏まえて入力します。

1-3-2.一般経費を入力する

固定費の2つ目は一般経費です。一般経費は人件費以外の経費です。

 

 

 

 

・家賃
 ・水道光熱費
 ・通信費
 ・宣伝広告費
 ・消耗品費
 ・旅費交通費
 ・交際費
 ・会議費
 ・租税公課(※)
などです。物価上昇などを考慮して「過去の総額+数%」とするか、ひとつひとつの項目ごとに計画して合算してください。

※租税公課とは、固定資産税や自動車税などの税金や、収入印紙代や町内会費など公的な課金のことです。

1-3-3.減価償却費を入力する

固定費の3つ目は、減価償却費を入力してください。

 

 

 

減価償却費がご自身でわからない場合は、あなたの会社の会計事務所の先生や税理士さんに聞いて数字を確認してください。

1-4.粗利益率を入力します

最後に、粗利益率を入力します。

 

 

 

粗利益率とは、売上に対する粗利益の割合のことです。粗利益とは、(売上高-変動費)です。変動費は、本業で発生する費用のうち、売上に比例して増減する費用で、仕入高、材料費、外注費です。

事業内容が今までと同じでしたら、前期と同じ粗利益率を入れてください。新事業を始めたり、仕入先や外注先を変更したりする場合には、それぞれの状況を加味した粗利益率を入力してください。

粗利益率を入力すると、最終的な売上目標が計算されます。

会社によっては、今までの売上とギャップが大きく、現実的でない数字になるかもしれません。しかし、ここで出てきた数字は間違いなく目指すべき理想の数字です。ギャップが大きい場合には、何年かかかってしまってもここに近づける様、まずはこの1年間の現実的な売上目標を試算してみてください。1つのシートで試算1から試算3まで入力できます。

究極の売上目標 ~佰食屋さん~
この売上目標の決め方の究極の答えを導いたのが、佰食屋さんです。京都にあるステーキ屋さんなのですが、1日100食限定なのです。どんなに人気が出ても、行列ができても、すぐに完売してしまっても100食限定。

お店のオーナーが最初に決めたことは、夫婦で稼ぐ生活費です。家族が幸せに暮らしてくために必要な金額を先に決め、それを稼ぐための売上目標を決め、それを達成するには、100食が答えだったのです。最初は苦労したようですが、今では有名な人気店になりました。100食限定にすることで、残業ゼロ、食品ロスもゼロというすばらしい飲食店経営に成功し、日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」大賞に、このお店の女性オーナーが選ばれました。ご存じの方も多いと思います。

売上が重要視されやすい世の中ですが、大切なのは、利益なのです。成長することはとても大切です。でも、十分に足りる利益があれば、敢えて売上を伸ばす必要はない、というのも、現代社会に合った新しい考え方かもしれません。


2.売上目標を達成するためにすべき3つのこと

正しい売上目標が決められたら、その目標を達成しましょう。目標は延々と追いかけ続けるものではありません。達成するためのものです。達成できたという喜びを実感することで、次ももっと頑張ることができます。

2-1.販売計画を立てる


売上目標を達成するための販売計画を立てましょう。先ほどダウンロードした表の、販売計画のシートを開いてください。売上目標のシートで試算した数字が上に表示されます。

①「決定した売上目標」「決定した粗利目標」のところに、今回決めた売上目標と粗利益目標を入力します。

②商品ごとに単価と粗利を入れていきます。
※全商品を入れる必要はありません。飲食店なら、商品名“ランチ”として、ランチの客単価の平均額を「単価」に入れて、平均の粗利額を「粗利」に入れます。同様に“ディナー”、“デザート”など、売上の種類を分けるように商品名を入力してください。

③目標となる販売数量をそれぞれ入れていきます。

⇒入力した商品の売上高、粗利益高が自動で計算され、右下に合計額が出されます。

④右下の合計額が、上の目標額になるように、数量を調整してください。

気を付けていただきたいことは、売上目標よりも、粗利益目標の達成をマストとしてください。売上目標が達しても達しなくても、粗利益目標を達成できれば、最終的な「当期純利益」の目標が達成できるからです。

逆に売上目標だけを重視してしまうと、販売しやすい商品の販売に偏り、粗利益目標を達成できないかもしれません。粗利益目標を達成できないと「当期純利益」の目標を達成することはできず、会社に必要なお金を残すことができなくなってしまします。あくまでも大切なことは、売上高を高くすることではなく、会社を存続するための利益を残すことです。

表では試算1~試算4まで試すことができます。より現実的な販売数量で目標達成できるよう、販売計画を立ててください。

年間の計画が決まったら、月の計画、日々の計画、と、計画を細分化していきましょう。

2-2.毎日目標と決算を確認する

販売計画まで決めることができたら、あとは毎日、計画を実行に移します。そして毎日、結果を確認します。

月末に帳簿を締めて、その結果が赤字だったとしても、その月はもうどうすることもできません。毎日「昨日までの確認」と「明日以降どうするか」を考えなければいけないのです。

ただ、毎日帳簿を締めて、売上高、粗利益を計算し、経費を計算して利益を求める、というのは大変ですので、毎日、粗利益だけを確認し、その月の合計をグラフに書いていくだけで大丈夫です。


縦軸に粗利益、横軸に日付を入れたグラフを作ります。そのグラフに、固定費のラインを入れておきます。

粗利益が固定費のラインを超えると、その月はその日以降黒字になっていく、というグラフになります。それだけで、一目で現状を把握することができ、明日以降の行動計画を考えることができるのです。

粗利益を出すことが難しい場合には、縦軸を売上高にして、損益分岐点売上高(※)のラインを入れたグラフにし、毎日売上高の合計を記入します。どうしても毎日数字を確認することが難しい場合は、1週間の計画を決め、毎週結果を記入するようにします。

※損益分岐点売上高…売上高が費用(固定費+変動費)と等しくなるときの売上高。

2-3.軌道修正をする

グラフを毎日確認することで、現状を常に把握することができます。計画とズレが発生した場合には、すぐに対応しましょう。粗利益がどのくらい足りないのか、それを埋めるために、どの商品をどのくらい売らなければいけないのか、できるだけ具体的に策を考えます。

まずは、その月の目標を達成するためにできることを考えてください。
 ・新規の顧客を増やす
 ・客単価を上げる

次に、来月以降の目標達成のためにできることを考えます。
 ・リピーターを増やす
 ・販路の拡大
 ・新商品の開発

行動に移すのも、まずはその月の目標達成のための行動から始め、来月以降の目標達成のための行動を並行してできるのか、できない場合、いつ始めるのか、社長は常に考え続けなければなりません。


3.未来の売上目標を考える

ここまでで1年間の流れがわかったと思います。これを毎期繰り返す、ということはもちろん大切なことですが、それだけでは会社を成長させるのは難しいです。

経営をする目的は、「〇〇円の売上を達成すること」ではないはずです。社長の考える未来を実現したくて経営しているのではないでしょうか。それをかなえるためには、1年間の目標だけではなく、もっと先の未来の目標も具体的に考える必要があります。

3-1.中期計画、長期計画を立てる

未来の目標を考えるときには、5年後の目標(中期計画)、10年後の目標(長期計画)を考えましょう

利益や売上の数字だけでなく、従業員の人数、組織図、方針、設備、新商品など、できるだけ細かく丁寧に決めてください。経営する目的を深く深く考え、社長の思いを明確に文章や数字で表現します。すでに頭の中にあったことかもしれませんが、見えるように形に残しておくことが大切です。

毎期毎期、ひたすらにゴールの見えない売上目標達成を目指すのは社長も社員もとてもつらいです。ゴールを設定して、そのゴールに向かうための、1年間の売上目標、とする方が、1年間の目標も達成しやすくなります。

3-2.経営計画書を作成する

短期計画、中期計画、長期計画、すべての計画作りは、経営計画書を作ることが望ましいです。経営計画書は、社員が安心して働ける、良い会社創りを実現するための、会社の設計図であると共に、会社組織をマネジメントできる道具です。

経営計画書を作るときにはこちらをご覧ください。
高収益な良い会社を作るための経営計画書の作り方【テンプレート付き】

3-3.全社員と目標を共有する

目標や計画は全従業員と共有しましょう。その月の売上目標だけを知っているのと、会社の未来像まで知っている状態で、そのための今期の目標、それを達成するための今月の売上目標だとわかっているのとでは、仕事への取り組み方が全く違ってきます。

共有する方法はたくさんありますが、目で見える、紙に書いてあるものが1番良いです。そのためにも、社長の思いが詰まった経営計画書は最適な道具です。経営計画書を全従業員に配布し、誰でもいつでも確認できる、という状態が理想です。

3-4.従業員にも未来像を考えてもらう

社長の思いを従業員に伝えることができたら、従業員にも個々の目標を考えてもらうと良いでしょう。社長の目標を達成するための個人の目標である必要はありません。従業員それぞれが考える、自身の未来像、夢、目標を、明文化することが大切です。5年後10年後の自身の年齢、家族の年齢も書き出し、どんな風になりたいのか、仕事を通じてどうなりたいのか、できるだけ詳しく考えてもらいましょう。

イチローを育てた監督の言葉に「やらされている百発より、やる気の一発」というものがあります。人から言われる目標と、自分で考える目標とでは、結果は大きく変わります。

そして共有できる内容は共有しましょう。社長が考える未来の会社の組織図にも影響するかもしれません。人間はゴールを決めるとゴールに向かって進む生き物です。全従業員がそれぞれのゴールに向かってがんばるというのは、想像以上に大きな力を生み出します。


まとめ

売上目標を決めることは、会社の未来を決める第一歩です。創業時、思い描いていた会社の未来像をもう一度思い出してみてください。そこへ近づくため、まずは今期来期の売上目標を達成しましょう。高すぎず、低すぎない、ちょうどいい売上目標を決めることは簡単です。納得のいく数字が見つかるまで、何度でも試算してみましょう。

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