中小企業だからといって経営計画を作らなくてよいのか?

経営計画とは、会社の理念や目標に基づき、経営戦略や具体的な行動計画を定めたものです。
この先、会社をどのようにしていきたいのか(展望)、そのためには何をしていくべきなのか(具体的に)定めるのです。

経済ニュースを眺めていると、大企業の経営計画が次々に発表されるのを見かけますが、これは株主・投資家への情報提供という意味合いが大きいため、広く公開されているのです。

だからといって経営計画は大企業に限ったもの=中小企業には無関係ということはありません。
むしろ、中小企業こそ経営計画は有効と聞くと、意外に思われる方も多いのではないでしょうか?

この記事では、中小企業だからこそ経営計画というお話をいたします。
ぜひ、この記事を参考に経営計画についての認識を深めていただければ幸いです。

なお、弊社では他にも次のような経営計画関連の記事があります。
もうダイレクトに経営計画の作成に進みたいという方は、こちらを参考にしてください。

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1.「中小企業だから経営計画を作らなくてよい」という事はない

「中小企業だから経営計画を作らなくてよい」という事はありません

中小企業の場合、公的支援や金融機関の融資が重要ですが、そのためには具体的な計画が必要です。
さらに、従業員は言うまでも無く、経営者自身、そして将来会社を引き継ぐ後継者のためにも、経営計画が欠かせません。

1-1 小さい会社ほど経営計画を作らない傾向がある

そもそも、他の中小企業ではどのくらい経営計画を作っているものなのか気になりませんか?
中小企業庁が調査したものが公表されているので、見てみましょう。

 

◎中小企業庁:2020年版「小規模企業白書」 第3部第2章第1節 中小企業における現状把握及び経営計画策定の実態 より転載

この結果を見てみると、ひと口に中小企業と言っても「小規模」と「中規模」で差がありますが、小規模でも半分弱、中規模でも7割近くが経営計画を作っていることがわかります。

つまり、中小企業全体で見れば経営計画を作る方が多いものの、会社の規模が小さいほど経営計画を作らない傾向は、確かにあるのです。

この後は「無計画でよいのか?」という、ちょっと極端な例に沿って見ていきます。会社が小さい=経営計画の必要性が薄れるというものではない事が理解していただけると思います。

1-2 無計画では、中小企業向けの公的支援を利用しにくくなる

事業を始める・継続するに際して、国や地方自治体からの支援や、金融機関からの融資は重要です。中小企業は特にその傾向が強いですが、手続の際に明文化された計画が欠かせません。はっきりと計画書の提出を求められるケースも多いのです。

中小企業を対象にした公的な支援策はいくつもありますが、例えば近年始まった制度に「経営革新計画」というものがあります。
経営革新計画とは、中小企業が新しい事業活動に取り組む経営計画を作り、国や都道府県の窓口で審査します。そして、その経営計画が承認されると、中小企業のために有利に設定された融資を受けたり、優遇措置を受ける事が出来ます。その具体例をいくつかご紹介します。

・日本政策金融公庫による、経営革新計画の承認を受けた事業者向けの低利融資制度では、通常よりも限度額が大きく、利率は低く、貸付期間も長く設定されています。
・中小企業信用保険法に基づく保証限度額が、経営革新計画の承認を受けた場合は、通常の保証限度額とは別に、同額の別枠が設けられます。
・神奈川県の場合、「地方独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所」に支援を依頼した場合、手数料及び使用料が半額になります(限度あり)。

「経営革新計画」そのものの詳細については、自治体ごとに異なる部分も多いので、中小企業庁および各都道府県のホームページをご確認ください。こちらでは参考までに中小企業庁、東京都、神奈川県のリンクを掲載いたします。

中小企業庁:経営サポート「経営革新支援」

経営革新計画|中小企業支援|東京都産業労働局

経営革新計画の承認手続と支援策のご案内 – 神奈川県ホームページ

1-3 無計画では、従業員との意思疎通が難しくなる

会社という形をとっているからには、従業員との関係が重要です。そして、経営者の考えを従業員に伝えて共有するためにも、経営計画は有効です。

京セラの創業者で、経営に関する数々の教えを遺してきた稲盛和夫も「具体的な目標を立て、立てた目標は常に社員と共有する」「経営目標という経営者の意志を、全従業員の意志に変えることが必要」と説いています。

そのあたりの詳細については、こちらの記事の冒頭でくわしくお伝えしています。

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1-4 無計画では、経営者が目先の仕事をこなすだけになり、会社の成長が難しくなる

中小企業の経営者さんの中には、ご自身で従業員と共に汗を流される(それどころか経営者さんが一番、仕事ができる)という方も多いでしょう。実際、そのようなお客様にも多く接してきました。これはこれで素晴らしい事のように思えますが、ここに会社の成長につながる計画が無いと、経営者が目先の仕事をこなすだけになりがちです。

会社の経営は、経営者にしかできません。
長い目で目標や戦略を考える必要があるのですが、無計画ではそれもままならず、会社の成長が難しくなってしまいます。

無計画は会社のため、経営者のためにもならないのです。

1-5 無計画では、会社を後に引き継いでいく事が難しくなる

ただでさえ人数が少なく組織力という点で劣る中小企業の場合、会社を後継者に引き継いでいくのは大変です。

特に、経営者の病気や事故など不測の事態への対応を考えると、無計画では後継者が困ってしまいます。実際、社長が急に倒れてしまい、帳簿と通帳の場所しか引き継げなかった後継者が途方に暮れてしまった、というお客様もいらっしゃいました。

もちろん、あらかじめ後継を見据えている場合は、事業承継計画をあらかじめ準備することになります。

事業承継とは?やり方・メリットデメリット・注意点まで詳しく解説


2.中小企業が経営計画を作って良くなった事例

経営計画を作って実際どのように良くなったのか、具体的な事例が気になると思います。

そこで、弊社が関わったお客様の中で、経営計画を作って良くなったという声を頂いている事例を元にご紹介します。
この章の内容は、実際弊社が関わったお客様からの反響、および弊社自身の経験を元に作成いたしました。動画などもありますので、ぜひご覧ください。

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2-1 経営計画を作って、採用が円滑になった

ちょっと意外に思われるかもしれませんが、経営計画を作って良くなったことで弊社が実感し、お客様からの反響があったのが、採用です。

本来、採用が企業の生命線であることは大企業も中小企業も共通のはずですが、中小企業はどうしても採用が疎かになりがちな傾向があります。リソース・予算の問題もあるにせよ、それ以前に会社が求める人材像がはっきりせず、妥協してしまうことが多いのです。

そこで有効なのが、経営計画です。
経営計画を作って、会社の将来像を描けば、会社が求める人材像もはっきりしてきます。それに則り妥協せず採用を募り選考すれば、求める人材との縁が生まれます。
そうして会社が求める人材が集まれば、やがて会社の成長にもつながるというわけです。

例えば弊社の場合、求める人材像を経営計画ではっきりさせたことで、新卒採用に踏み切るようになりました。近年では2022年に5名、2023年に2名の新卒正社員が入社していますが、それは経営計画で人材に関する方針を立てた成果であると考えています。

2-2 経営計画を作って、会社の進むべき道筋が明らかになった

1-3で見た例につながりますが、中小企業ならではの話として、経営者ご自身が従業員と共に汗を流すことで業績を上げていくという事があります。

実際そういうお客様が多いのは事実ですし、ひたすら頑張って進んでいくことも悪くありませんが、会社の成長のため具体的にどのように頑張るのか?という道筋が今ひとつ見えていないというのも、ありがちな事です。
そこに、確固たる経営計画を作って、その道筋を通ることで業績を上げられるようになれば、会社の成長につながります。

2-3 経営計画を作って、経営者が経営に力を入れる好循環を作り出せた

2-1では経営計画で求める人材像を明らかにして、それに合う人材を採用する
2-2では経営計画を作って、会社の進むべき道筋を明らかにする

よくよく考えてみると、この2つは関連しています。

経営者が先頭に立って仕事をひたすら頑張るのではなく、経営計画で求められた人材が、経営計画で明らかになった会社の進むべき道筋を進むことで業績を上げられるようになることが、会社の成長につながります。
もちろん、これで経営者が楽になるという話ではありません。経営者は会社の経営に力を入れるべきだからです。

このように、中小企業が成長する好循環を作るために、経営計画が有効いうことが御理解いただけたと思います。


3.中小企業が実際に経営計画を作り、実行していくポイント

2章では、実際に経営計画を作って良かった事例を元にお伝えしました。
それを受けてこの章では、実際に経営計画を作り実行していくポイントを4点お伝えします。

話によっては、あまり中小企業とは関係無さそうな一般論に見える所もあるかもしれません。しかしながら、中小企業でも大企業でも変わらない部分も多いのです。

3-1 経営計画は、まず真似でもかまわない

中小企業が経営計画を最初から作るというのは、結構大変なものです。
これが大企業ならば、トップの考えを受けて「経営企画室」のような部署が計画づくりを進めたりするわけですが、中小企業にそこまでのリソースは望むべくもありません。

そこで、まずは真似から始めてみましょう最初からオリジナルにこだわる必要はないのです。
いろんな会社が公開している経営計画の中から、気に入ったものを参考にしてもよいですし、弊社が用意しているテンプレートを利用していただいてもかまいません。

3-2 経営計画は、具体的な内容にすべきである

経営計画ということで、経営者の熱い思いをぶつける事も結構ですが、内容は具体的なものにすべきです。抽象的・観念的な内容では、何をどうするのかわかりにくくなるので、受け手として行動に困ってしまいます。

ただし、具体的なら何でもいいというものではありません。
中小企業経営者の方に多い傾向として、具体的でわかりやすいという事から、売上高を最優先で目標に掲げることがあるのですが、あまりおすすめできません。
会社の存続に必要なのは、売上ではなく利益だからです。

3-3 経営計画は、計画達成にこだわり過ぎなくてもよい

経営計画のハードルの高さは、難しい問題です。

上場企業ともなると、経営計画を達成できなかった場合、株主総会での追及は避けられないでしょう。
これが内部向けの色が強い中小企業の経営計画ならば、高い目標を立てて達成できなかったとしても、計画通りにならない→改善するという流れで進んでいけばよいのです。

とはいえ、計画を達成することでモチベーションを高める(裏を返せば、達成できないとモチベーションが下がりかねない)という面もあるので難しいものです。

3-4 経営計画は、永久不変のものではない

経営計画への疑問でよく目にするのが「先のことがわからないのに経営計画なんて…」というものです。
確かに、世界的な伝染病、戦争に端を発する物価高、海外の大銀行の破綻…など、想定外の事が多いご時世です。

しかしながら経営計画は、作ったら絶対に変えてはいけないというものではありません。経営計画は、柔軟に見直してかまわないものですし、その見直し作業自体も大事なのです。

※経済ニュースを見ていると、有名な大企業が経営計画を廃止したというものを見かけます。
これだけ見ると「やはり経営計画は無意味では?」と思ってしまいますが、よく読んで見ると、会社独自の指標を作り、それに基づく目標に切り替えたとあります。
つまり、広い意味での計画を立てることでは変わっていないのです。


4.中小企業が経営計画の実行に向かう環境をつくる方法

経営計画は作って終わりではありません。むしろ、その計画を実行する事の方が大切なのは言うまでもありません。そこで、実行のための環境づくりも意識してみましょう。

4-1 経営計画書としてまとめる

せっかく作った経営計画も、社長の頭の中で止まっていては意味がありません。
内部(従業員)外部(取引先や金融機関)との共有を図ることができるという意味では、経営計画を「経営計画書」という形にまとめるのが一番です。

弊社では、経営計画書のテンプレートも用意しています。ぜひ参考にしてください。

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4-2 経営計画発表会を開く

経営計画を広く確実に共有し、実行に向かう環境をつくるために有効なのが、経営計画発表会を開くことです。

もちろん、経営計画書を従業員に読んでもらうことも大事ですが、特に伝えたい・共有したいということをダイレクトに伝えるには、経営計画発表会という場を整えるのがよいのです。

また、発表会に取引先や金融機関の方々を招くこともできます。現実問題として「発表会なんて大げさな…」という考えもあると思いますが、だからこそ経営計画発表会を開くだけでも目立つことができるというものです。
このような催事を開くことで、会社の事を取引先や金融機関にもさらに知ってもらえば、今まで以上に応援してもらいやすくなる可能性も期待できます。
終了後の懇親会なども一緒にセッティングして、まずは声だけでもかけてみてはいかがでしょう?

そして何より経営者ご自身にとっても、経営計画を公言することで、その目標に向かって進む腹を決めることにつながります。


おわりに

ここまで、中小企業にとっての経営計画について見てきました。

経営計画は大企業のもの、中小企業には無関係ということはありません

むしろ、中小企業だからこそ経営計画を作り、進めていくことが大事であると、ご理解いただけたと思います。

現在のパナソニック(当初はナショナル)の創業者で「経営の神様」とも称される松下幸之助は、「まず思うことの重要性」を説いたといいます。まさに、まず計画を立てる事に通じていると言えるでしょう。

弊社では中小企業の皆さんにも経営計画の利点を説明し続けていますが、最近次のような事例がありました。
・社員が数人の会社で、手始めとして簡単な経営計画を作り、業績アップにつながった
・まだ立ち上げたばかりで社長1人だけの会社でも、将来を見据えて経営計画を作成した

このように、経営計画の利点を知っていただける方が増えていますが、完全に自力で経営計画を作り、進めていくのは大変です。そこで、経営計画を進めて会社の成長を助ける伴走者として、経営にも通じた税理士に依頼されることも御検討ください。

なお、弊社の経営計画関連記事は、他にも次のようなものがあります。ぜひ参考にしてください。

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