ランチェスター戦略を大解剖!基本理論や事例、向き不向きや実践方法まで

「ランチェスター戦略って、具体的にどんな戦略なんだろう」
「ランチェスター戦略を活用すれば中小企業でも大企業に勝てると聞いたが、本当だろうか」

戦時中に提唱された軍事モデルを前身とする「ランチェスター戦略」。
ベンチャー企業時代のエイチ・アイ・エスが取り入れていた戦略としても知られており、中小企業のバイブルとしても広く認知されています。

 とはいえ、ランチェスター戦略について具体的に説明できる人はごく一部。
ほとんどの人が、
「ランチェスター戦略という名称だけは聞いたことがある」
「ざっくりとした概念だけはなんとなく理解できている」
という状態ではないでしょうか。 

「小が大に打ち勝つための戦略」とも言われるランチェスター戦略は、中小企業の強力な武器となる経営戦略です。

実際に、5,000社以上の名だたる企業がランチェスター戦略を取り入れ、強大な資本を持つ「強者」に打ち勝ってきました。
トリンプやセブンイレブンのように、今や自らが「強者」となった大企業も数多く存在します。 

この記事では、そんなランチェスター戦略について、

  • ランチェスター戦略とは
    • ランチェスター戦略の基本理論とビジネスにおける展開例

によって、まずランチェスター戦略についての基礎を学んでいただきます。

次に、

  • ランチェスター戦略を成功に導くためのポイント
  • ランチェスター戦略のメリット・デメリット
  • ランチェスター戦略を取り入れた成功事例
  • ランチェスター戦略が向いている会社・向いていない会社

でランチェスター戦略のより深い部分を学び、自社でも取り入れるかどうかの判断材料としていただきます。

実際に自社でも取り入れたいとなった方のために、

  • ランチェスター戦略の実践方法
  • ランチェスター戦略をより深く学ぶためのおすすめ書籍
  • ランチェスター戦略を取り込むために便利な「経営計画書」について

もおまとめしました。

この記事を最後までご覧いただければ、ランチェスター戦略の内容についてはもちろん、自社ビジネスでの活用イメージもどんどん湧いてくるはずです。

「競合の多い市場でどう戦っていけばいいのか分からない」
「優れた経営戦略を武器に、今よりさらに一段階上の土俵で戦ってみたい」
そうお考えの方は、ぜひこの記事をお役立てください。

 


目次

1.ランチェスター戦略とは

ランチェスター戦略とは、戦時中に提唱された「ランチェスターの法則」を経営学に応用した、日本発祥の経営戦略のこと。
主に「弱者の戦略(第1法則)」「強者の戦略(第2法則)」から構成されており、戦闘力に劣る「弱者」と戦闘力に勝る「強者」がそれぞれどう戦えば戦局を有利に運べるかが述べられています。

経営戦略として改良されるにあたって「マーケットシェア理論」が追加され、

  • 弱者の戦略:「弱者」が取るべき戦い方
  • 強者の戦略:「強者」が取るべき戦い方
  • マーケットシェア理論:市場で「強者」になるために必要なマーケットシェア率

3つがランチェスター戦略の基礎を支える柱となりました。

「武器効率が同じであれば、兵力数に勝る方が勝利する」という前提で構成された理論だが、「弱者の戦略」をうまく活用すれば、「弱者」でも「強者」に打ち勝つことができるとされています。

そのため、中小企業(ほとんどが「弱者」である)の経営バイブルとして多く用いられています。

ランチェスター戦略の成り立ち

ランチェスター戦略の元となった戦争理論「ランチェスターの法則」は、第一次世界大戦中、イギリスの航空工学研究者フレデリック・ランチェスターによって提唱されました。
空中戦によって生じる航空機の損害状況の研究内容から生まれたと言われています。 

第二次世界大戦中に、今度はアメリカの数学教授バーナード・クープマンらによって、軍事戦略モデルとして改良されたランチェスターの法則。

戦後にはランチェスターの法則を経営学に応用する企業が現れはじめ、日本の経営コンサルタント田岡信夫氏による著書『ランチェスター販売戦略』により、経営戦略として広く普及するようになりました。

 

 


2.ランチェスター戦略の基本理論

ランチェスター戦略の礎となった「ランチェスターの法則」は、以下の2つの法則から成り立っています。

 ランチェスターは、「弱者」は「弱者の戦略」で、「強者」は「強者の戦略」で戦うことによって、それぞれが有利に戦局を運ぶことができるとしています。

この段落では、戦時中の軍事モデル「ランチェスターの法則」における「弱者の戦略/強者の戦略」を説明するとともに、それを現代ビジネスの場でどう具体的に活用するかを解説します。

2-1.弱者の戦略(第1法則)

最初にご紹介するのは、一般的に「弱者の戦略」として知られる第1法則です。
「弱者」が「強者」に打ち勝つためには、この「弱者の戦略」を駆使することが欠かせません

それでは、まずはランチェスターの法則における「弱者の戦略」を見ていきましょう。

2-1-1.ランチェスターの法則における「弱者の戦略」

いわゆる「弱者の戦略」と呼ばれる第1法則は、古典的な戦闘に関する法則です。

剣や斧、弓矢といった原始的な武器で戦う場合、その戦い方は、

  • 一人対一人が(一騎打ち)
  • 狭い範囲で(局地戦)
  • 至近距離で戦う(接近戦)

という様相を見せます。
その場合、戦闘の法則は以下の計算式で算出されます。

武器効率が同じであれば、兵力数が多い方が勝ち。
兵力数が同じであれば、武器効率が優れた方が勝ち。
武器効率か兵力数、あるいはその両方が敵より優れている方が勝つという、実にシンプルな法則です。

武器効率はともかく、兵力数という資本の豊かさが勝敗に大きく影響するのに、なぜ「弱者の戦略」と呼ばれるのか。
それは、「弱者の戦略」においては武器効率と兵力数が同等の重みを持つためです。

「弱者の戦略(第1法則)」では、たとえ兵力数で劣っていても、その差を埋めることができる優れた武器さえ有していれば、「弱者」でも「強者」に立ち向かうことができます
しかし、「強者の戦略(第2法則)」では兵力数の2乗が戦闘力に反映されるため、生半なことでは兵力数の差を覆すことができなくなってしまうのです。

そのため、兵力数という資本の豊かさが勝敗を大きく握る第2法則が「強者の戦略」。
兵力数で劣っていても、武器や戦い方によっては勝機を見出せるという第1法則が「弱者の戦略」と呼ばれるのです。

詳しくは、本記事内の2-2-1.ランチェスターの法則における「強者の戦略」 でも解説しています。

 

2-1-2.現代ビジネスの場における「弱者の戦略」の活用方法

ビジネスの場においては、

  • 武器 = 商品やブランド など
  • 兵力 = 社員数や売り場面積 など

と捉えることができます。
また、

  • 一人対一人が(一騎打ち)
  • 狭い範囲で(局地戦)
  • 至近距離で戦う(接近戦)

という戦い方は、以下のように言い換えることができます。

 一人対一人が(一騎打ち):

競合の多い市場・顧客を狙うのではなく、競合が1社あるいは少数しかいない市場・顧客を狙うこと。

狭い範囲で(局地戦):

ビジネス領域や地域、市場を限定し、資本を一点に集中させること。 

 至近距離で戦う(接近戦):

接近戦は、対競合ではなく対顧客の戦い方として考える。
実際に顧客と近い距離で対面して接客し、顧客との距離・接触頻度・商談時間を多く設けることによって、顧客の心を掴むこと。

これらを総合すると、現代ビジネスの場における「弱者の戦略」は以下のようになります。

 ①「戦闘力」を高めるために

 純粋な社員数や売り場面積(兵力)では「強者」に敵わないため、
 商品やブランド(武器)の価値向上に努める。

 ②「戦闘力」を高めても「強者」に敵わない場合

 ・競合が1社あるいは少ない市場を見つけ出し(一騎打ち)、
 ・自社が強みを持つビジネス領域・地域・市場に資本を一点集中させ(局地戦)、
 ・至近距離の接客によって顧客ロイヤリティを高め(接近戦)、
 限定した領域で、一箇所ずつ「強者」を倒していく局所有利・各個撃破の戦略を取る。

 

2-2.強者の戦略(第2法則)

続いてご紹介するのは「強者の戦略」として知られる第2法則です。

「強者」が持つ圧倒的な兵力数を活かした戦略となります。

その性質上、もし「弱者」が「強者の戦略」を用いたとしても、ただいたずらに資本を無駄にしてしまうのみです。
「強者」の戦い方を知るために「強者の戦略」を学ぶことは大事ですが、間違っても「弱者」が「強者の戦略」を取り入れないよう注意しましょう。

2-2-1.ランチェスターの法則における「強者の戦略」

「強者の戦略」と呼ばれる第2法則は、近代的な戦闘に関する法則です。

扱う武器は小銃やマシンガンといった近代兵器になり、その戦い方も、

  • 確率兵器を持った集団対集団が(確率戦)
  • 広い範囲で(広域戦)
  • 遠距離攻撃で戦う(遠隔戦)

と大きく変化を遂げることとなります。
※確率兵器とは:小銃やマシンガンなど、複数の敵に同時攻撃することができる兵器のこと

その場合、戦闘の法則を算出する計算式は以下のようになります。

 

1法則とよく似た計算式に思えますが、大きな相乗効果を生み出す確率戦においては兵力数が2乗に作用します。
つまり、「強者の戦略」においては兵力数(=資本)に勝る方が圧倒的有利になるということです。

 兵力数の2乗が戦闘力に反映される「強者の戦略」において、兵力数が乏しい「弱者」にはまず勝ち目がありません。
しかし、兵力数と武器効率が同等の重みを持つ「弱者の戦略」であれば、武器効率を磨き上げさえすれば、兵力数に勝る敵にも立ち向かうことができます。
また、武器効率だけでは優位に立てなかったとしても、局地戦に持ち込んで兵力を一箇所に集中すれば、局所優勢の状況を作り出すこともできます。
広域戦かつ遠隔戦が主流の「強者の戦略」では、なかなかこうはいきません。

 そのため、第1法則を「弱者の戦略」と呼ぶのです。

 

2-2-2.現代ビジネスの場における「強者の戦略」の活用方法

  • 確率兵器を持った集団対集団が(確率戦)
  • 広い範囲で(広域戦)
  • 遠距離攻撃で戦う(遠隔戦)

 上記の「強者の戦略」における三原則は、現代ビジネスの場においては以下のように言い換えられます。

 確率兵器を持った集団対集団が(確率戦):

●     競合が多い市場を狙う

●     併売率の高い顧客を狙う

●     自社内競合を増やし、市場の競争率を上げる

などの対策によって「弱者」を締め出し、付け入る隙を与えないこと。

広い範囲で(広域戦):

あえて広い領域でビジネスを展開し、圧倒的な物量・品揃え・資本などをもって、自社に有利な「局地戦」に持ち込もうとする「弱者」の企みを挫くこと。 

 遠距離攻撃で戦う(遠隔戦):

広告による宣伝活動により、顧客とまだ距離がある時点で自社商品の認知を高め、いざ購入となった段階で「指名買い」してもらえる状態を作り出すこと。

 

これらの三原則をまとめた「ミート戦略」が、現代ビジネスにおける「強者の戦略」の基本となります。

 圧倒的な資本力を用いた「ミート戦略」が基本

 資本(兵力)に勝る「強者の戦略」は、
「弱者」による一騎打ち・局地戦・接近戦を用いた差別化を打ち消し、
 同質化競争に持ち込む「ミート戦略」を基本とする

 

 


3.ランチェスター戦略から生まれた「マーケットシェア理論」

それでは、どんな企業が「弱者」で、どんな企業が「強者」に当てはまるのでしょうか。

一部の大企業こそが「強者」でしょうか。
中小企業は漏れなく「弱者」なのでしょうか。

実は、必ずしもそうとは限りません。

ランチェスター戦略において「弱者」と「強者」を決定づけるのは「マーケットのシェア率」です。
マーケットシェア率1位の企業のみが「強者」となり、2位以下はすべて「弱者」となります。
たとえシェア率が1位に僅差の企業であっても、2位以下である以上は「弱者」です。

いくら大企業であってもシェア率によっては「弱者」になりますし、逆に、中小企業であっても特定の市場では「強者」になり得るというわけです。

そのシェア率について、より詳しく説明しているのが「マーケットシェア理論」です。

このマーケットシェア理論に基づき、「弱者」は、トップに立つために必要なシェア率の下限目標値「26.1%」を目指していくこととなります。

 

3-1.市場でトップに立つために必要なシェア率

マーケットシェア率トップに立ち、「強者」となるために必要なシェア率は、下記の3段階で区切られています。

それぞれの特徴を見てみましょう。

3-1-1.上限目標値:73.9%

シェア率が「上限目標値:73.9%」あれば、残りのシェア率はわずか26.1%となり、2位以下に圧倒的な差をつけてマーケットシェア率トップに立つことができます。
市場における優良な顧客をほぼほぼ確保しつくしている状態と言えます。 

ここまでのシェア率を誇る企業はごくわずかで、日本のハンバーガー市場におけるマクドナルド(シェア率:74.7%2007年)などが挙げられます。

3-1-2.安定目標値:41.7%

目標値のなかでもっともよく知られているのは「安定目標値:41.7%です。
シェア率が過半数を超えてはいませんが、ほとんどの市場は5社以上が競合しているため、41.7%のシェア率を確保できればほぼほぼ独走状態になり、成長性・収益性・安定性が高まります

巨大ECサイト「阿里巴巴集団」の中国国内のマーケットシェア率は43.5%2016年)ですが、2位の「京東商城(JD.com)」のシェア率:20.2%に大きく差をつけていることからも、シェア率40%がひとつの大きな目標になることが分かります。

3-1-3.下限目標値:26.1%

トップに立つために最低限必要とされているのが「下限目標値:26.1%」です。
シェア率が26.1%未満ながらトップに立つ企業も存在しますが、多くの場合は2位と僅差のトップとなり、安定性に欠いた状態となります。

 ECサイトのシェア率で言うと、2016年のイギリスにおいては、

  • 1位:Amazon(26.5%)
  • 2位:イーベイ(10.1%)
  • 3位:テスコ(6.6%)

と、トップのAmazonがある程度の安定性を見せているのに対し、
同年2016年の日本においては、

  • 1位:Amazon(20.2%)
  • 2位:楽天(20.1%)
  • 3位:Yahoo!ショッピング(8.9%)

と、同じくAmazonがトップには立っているものの、2位の楽天との差はわずか0.1%という危うい状態にあることが分かります。

安定してトップに立つためにも、まずは下限目標値:26.1%を目指すようにしましょう。

3-2.市場に影響を与えるために必要なシェア率

続いてご紹介する2つの目標値は、現時点でトップに立つことは難しくとも、マーケットシェア争いに本格参入できる段階を示したシェア率です。

 「弱者の中の強者」的ポジションと言え、市場に対しても一定の影響力を発揮します。

3-2-1.上位目標値:19.3%

「上位目標値:19.3%」を満たせば、多くの場合、シェア率の上位3位以内には入れることでしょう。
そのため、「上位目標値:19.3%」は弱者がまず目指すべき目標値として知られています。 

3-2-2.影響目標値:10.9%

俗に「10%足がかり」と言われ、市場参入時の目安とされるのが「影響目標値:10.9%」です。
シェア率10%未満の企業は「強者」にとっては相手にもならない規模感ですが、10%を超えると本格的な市場争いに入り、市場への影響力も強くなります。

3-3.自社の存在意義の向上が求められるシェア率

最後にご紹介する2つの目標値の段階では、まだシェア争いへの本格参入は時期尚早といえます。

 それでは、これらのシェア率の企業は何を目標に動けばいいのでしょうか。

3-3-1.存在目標値:6.8%

ランチェスター戦略において、市場に存在を認められるためには「存在目標値:6.8%」のシェア率が必要とされています。
とはいえ、市場に与える影響力はほとんどありませんので、本格的なシェア争いに巻き込まれることはないでしょう。

市場からの撤退を検討する基準ともされている「存在目標値:6.8%」。
この段階の企業が行うべき対策は「自社セールスへの注力」です。
まだ競合他社の動向を気にする段階ではありません。

3-3-2.拠点目標値:2.8%

「拠点目標値:2.8%」は、市場参入時に正しく一歩を踏み出せたかどうかを判断するための数値です。
市場参入後は「2.8%→6.8%→10.9%」のマイルストーンで、市場に影響を与えられるポジション確保を目指していきます。

参入から時間が経過してもこの段階で留まっているようであれば、残念ながら勝ち目はありません。

 

 


4.ランチェスター戦略を成功に導くための3つのポイント

ランチェスター戦略の基本はお分かりいただけたでしょうか。

特に重要な要素は、

  • ランチェスター戦略は「弱者の法則(第1法則)」と「強者の法則(第2法則)」からなる
  • 市場のマーケットシェア率トップの企業のみが「強者」で、それ以外はすべて「弱者」
  • 「弱者」が「強者」に打ち勝つためには「弱者の法則」で戦うことが必要不可欠

ということです。

そんなランチェスター戦略で成功を収めるためには、どんな点に注意すればいいのでしょうか。
この段落では、以下の3つのポイントについて解説します。 

  1. 特定の市場において「ナンバーワン」になるべし
  2. 強みがある分野に「1点集中」すべし
  3. 売上シェアは「足下の敵」から奪うべし

4-1.特定の市場において「ナンバーワン」になるべし

前述したとおり、ランチェスター戦略においてはシェア率トップの企業のみが「強者」で、それ以外はすべて「弱者」となります。
これは、1位と2位の間に埋めがたい差があるためです。

2位以下を大きく引き離した「ナンバーワン」であれば、さらにその差は決定的なものになります。

 世界でもっとも高い山がエベレストだということは多くの人が知っていますが、2位のK2のことはあまり知られていません。
世界でもっとも広い湖であるカスピ海は多くの人が知っていますが、2位のスペリオル湖のことは一部の人にしか知られていません。

同様に、1位の企業は多くの人から認知されますが、2位の企業はそこまで認知されないのです。

認知度の高さは、シェア率の向上に繋がります。
シェア率が上がり続けて圧倒的な「ナンバーワン」になれば、2位以下はナンバーワンとの全面対決を諦め、住み分けによる生き残りを目指すようになるでしょう。
ナンバーワンの地位は不動のものになり、安定して優良な顧客を確保し続けることが可能になります。 

先程のマーケットシェア理論でいうと、「安定目標値:41.7%」が、ナンバーワンに求められる目標シェア率となります。

4-2.強みがある分野に「1点集中」すべし

市場全体を見ると「ナンバーワン」になることなんて遠い夢のように思えます。
しかし、細分化した市場においてはどうでしょうか

細分化の対象はさまざまです。
販売地域、客層、商品カテゴリなんだっていいのです。
自分が強みを持つ得意分野を見つけ出し、そこに「1点集中」するのです。 

「弱者の法則」でも、「弱者」にとっては局地戦が非常に重要であることに触れました。
兵力を「1点集中」して局所優勢の状況を作り出し、各個撃破を続けていけば、たとえ総兵力数で劣っていたとしても勝ち筋が見えてきます。

細分化を進めてみれば、もしかすると、すでに特定の分野ではトップに立っていることが分かるかもしれません。
現時点ではトップでなくとも、トップの背中が見える分野があるかもしれません。
そうした得意分野を見つけ出し、「1点集中」することで、特定分野でのナンバーワンを目指しましょう。

4-3.売上シェアは「足下の敵」から奪うべし

「足下の敵」とは、自分よりも1ランク下の相手のことです。
1位であれば2位の、2位であれば3位の企業が「足下の敵」にあたります。 

マーケットシェア率を高めるためには、競合他社から売上シェアを奪う必要があります。
このとき、「どこからでもいいから奪えるものは奪え」という精神で臨んでいては、効率が悪くなって体力も大きく疲弊してしまいます。
かといって、強大すぎるトップ企業に全面対決を挑んでしまっては、埋めがたい戦力差によって叩き潰されてしまうのがオチです。 

戦うならば、勝ちやすい敵と戦うこと。
つまり、自社よりも下のランクの企業と戦うべきなのです。

さらに、足下の敵から売上シェアを奪えば、奪ったシェア率以上に大きな差が両者の間に生まれます
自社のシェア率が10%で、足下の敵が7%だった場合で考えてみましょう。

 

自社の

シェア率

足下の敵のシェア率

シェア率の差

現状のシェア率

10%

7%

3%

足下の敵から3%

売上シェアを奪った場合

13%

4%

9%

足下の敵以外から3%

売上シェアを奪った場合

13%

7%

6%

 売上シェアを足下の敵から奪った場合/足下の敵以外から奪った場合ともに自社のシェア率は13%ですが、両者のシェア率の差に開きが出ていることが分かります。

 足下の敵よりもさらに下のランクの敵からのほうが、簡単に売上シェアを奪えるかもしれません。
しかし、足下の敵とのシェア率の差を広げて今の地位を安定させるためにも、まず狙うならば足下の敵、というのがランチェスター戦略のポイントです。

 

 


5.ランチェスター戦略のメリット・デメリット

中小企業をはじめとする「弱者」にとって、非常に心強いランチェスター戦略。
そんなランチェスター戦略にも、もちろん、メリットがあればデメリットもあります。

 それぞれについて見ていきましょう。

5-1.ランチェスター戦略のメリット3

ここでは「弱者」の立場から見たランチェスター戦略のメリットを解説します。
考えられるメリットは以下の3つです。

5-1-1.「弱者」の多い中小企業でも「強者」に打ち勝つことができる

ランチェスター戦略最大のメリットは、やはり、「弱者」が「強者」に打ち勝つための術が分かるという点でしょう。
戦時中に生まれた法則を元にした経営戦略ですが、すでに多くの企業がランチェスター戦略によって成功を収めているため、自社にも取り入れやすいのではないでしょうか。

5-2-2.「弱者」が取るべき戦略が明確に分かる

ランチェスター戦略では「弱者」が取るべき戦略が明確に説明されているので、今後どう「強者」と戦っていくべきかに悩むことがありません。
大切なことは、先程の段落でもご紹介した3つのポイントを押さえることです。

  1. 特定の市場において「ナンバーワン」になるべし
  2. 強みがある分野に「1点集中」すべし
  3. 売上シェアは「足下の敵」から奪うべし

5-2-3.「弱者」だけでなく「強者」の考えも把握できる

ランチェスター戦略には「強者」が取るべき戦略も記されています。
すなわち、

  • 確率戦:圧倒的な品揃えで競合の多い市場に参入し、
  • 広域戦:地域や領域を限定せず、
  • 遠隔戦:資金力を武器に広告や販売会社の力をフル活用

した戦いを仕掛けてくるということです。

 また、「弱者」の武器である差別化を封じ込め、資本や規模の大きさが物を言う同質化競争に持ち込むという「ミート戦略」も積極的に行ってくることが考えられます。

 「強者」から全面対決を仕掛けられると「弱者」に勝ち目はありませんが、「強者」が取るであろう戦略を予測し、全面対決を避けること自体は可能です。
ランチェスター戦略から「弱者の法則」「強者の法則」を学び、「強者」の視点も持つことで、いずれ来たるべき「強者」との対決に備えるようにしましょう。

5-2.ランチェスター戦略のデメリット2

大きなメリットを得られる一方で、ランチェスター戦略にはデメリットもあります。
導入にあたっては、以下の2つのデメリットに注意しましょう。

5-2-1.「弱者」と「強者」の立場を間違えると大きな失敗を招きかねない

ランチェスター戦略を取り入れるには、まず自社が「弱者」と「強者」のどちらであるかを明確に把握しなければなりません。

万が一「弱者」と「強者」の立場を間違えてしまったら大変です。
「弱者」が「強者の法則」で戦ったところで勝てるはずがなく、無駄に資本を失ってしまうことになりかねないためです。

ランチェスター戦略における「強者」は、あくまで「マーケットシェア率が1位の企業」のみ
それ以外はすべて「弱者」となるので、その点を間違えないようにしましょう。

5-2-2.ランチェスター戦略1本のみで必ずしも勝てるとは限らない

ランチェスター戦略はたしかに有用な経営戦略ですが、決して「ランチェスター戦略さえ押さえておけばいい」というわけではありません
経営に関する基礎知識をつけておくことはもちろん、ランチェスター戦略を具体的に実践するための知恵と工夫を手にしていることが大事です。

 「ランチェスター戦略さえ学べば大丈夫」
ではなく、
「今の経営戦略をより強化するためにランチェスター戦略を取り入れる」
というスタンスで臨むようにしましょう。

 

 


6.ランチェスター戦略を駆使して成功した事例4

それでは、実際にランチェスター戦略を駆使して成功をおさめた事例を見ていきましょう。

ご紹介するのは、今では押しも押されもせぬ「強者」である大企業の事例ばかりですが、彼らも時代や地域によっては「弱者」でした。
そんな「弱者」たちがどのようにランチェスター戦略を活かし、「強者」に打ち勝ってきたのかをご紹介します。

 ぜひ、ランチェスター戦略導入のご参考にしてください。

6-1.弱者の法則|トリンプ

ドイツでは「強者」であったトリンプですが、日本法人設立当初は、婦人下着市場においてワコールに遅れを取る「弱者」でした。
そんなトリンプが取った「弱者の法則」が以下です。 

  • 高級路線で知られる「強者」と差別化すべく、若者向けブランドを設立
  • 専門知識を磨いたアドバイザーを全国の店舗に派遣し、接近戦を展開

トリンプ・インターナショナル・ジャパンの元代表取締役社長 吉越浩一郎氏も「トリンプの増収増益はランチェスター戦略に沿っていた」と発言しており、ランチェスター戦略に則った戦い方で「強者」に立ち向かったことが示されています。

6-2.弱者の法則|セブンイレブン

今や、コンビニ業界のマーケットシェア率:70.8%20192020年)という圧倒的「強者」であるセブンイレブン。
しかし、1990年代の関西圏においては、ローソンに一歩劣る「弱者」でした。 

そこで、セブンイレブンでは1点集中」という「弱者の法則」を実践しました。
販売地域を細分化し、大阪という限定された地域に資本を集中させ、驚異的なスピードで新規店舗を出店し続けたのです。 

街中に急速に増えていく新しいコンビニチェーンに、周辺住民の興味関心が集中。
大阪への出店数が300店舗を超えたころから、集客力が右肩上がりに増えたと言います。
その結果、興味関心の高まりが宣伝費用対効果の向上にも繋がり、関西圏でもマーケットシェア率トップの座を奪うことに成功しました。 

6-3.弱者の法則|エイチ・アイ・エス

一代でエイチ・アイ・エスを築き上げた取締役会長 澤田秀雄氏は、ランチェスター戦略や孫氏の兵法を学び、自社の経営戦略に取り入れたことで知られています。

そんな澤田氏は、エイチ・アイ・エスがまだ「弱者」であったベンチャー時代、ナンバーワン戦略・差別化・1点集中など、さまざまな「弱者の法則」を実践しました。
具体的には、

  • 当時の主流商品であったパッケージツアーではなく、海外格安航空券でナンバーワンを目指す
  • 大手旅行会社が力を入れる地域を避け、当時はマイナーであったセブ島やバリ島などに注力
  • 注力地域に対して順次資本を1点集中させ、ナンバーワンの地位を得たら次の地域に注力する

などが、エイチ・アイ・エスが行った戦略でした。

 ナンバーワンになるまでは目立つ行動を控えたというのもエイチ・アイ・エスの特徴です。
いくら差別化をしても、1点集中をはかっても、「強者」が同じ戦略をもって同じ地域に参入してきては負けてしまいます。
そこでエイチ・アイ・エスではマスコミの取材などを避け、ナンバーワンになるまでは水面下で活動することを徹底しました。

 

海外格安航空券でついにナンバーワンの座を勝ち取ったとき、エイチ・アイ・エスは一気に表舞台へと躍り出ます。
マスコミからの取材を積極的に受け、広告費にも資金を注ぎ込みました。
「弱者」が「強者」として華々しくスポットライトを浴びた瞬間でした。

6-4.強者の法則|第一三共

最後にご紹介するのは、「弱者」の差別化をミート戦略で打ち砕いた事例です。
ミート戦略を用いた第一三共は風邪薬市場シェア率2位なので、実際には「強者」ではありませんが、足下の敵をうまく封じ込めた例となります。

 まず動いたのは、シェア率3位の武田薬品でした。
ベンザブロックに「あなたの風邪に狙いを決めて」のキャッチコピーをつけ、熱・のど・鼻の症状別に分けた3種類の風邪薬を市場に投入したのです。
風邪薬はすべての症状への対処を網羅したものがほとんどでしたので、武田薬品が取った「弱者の法則」は大きな差別化として話題を呼びました。

 これに対し、シェア率2位の第一三共は、自社で長年使い続けてきた風邪薬のキャッチコピーを「熱・のど・鼻にルルが効く」に変更。
「症状別に特化した風邪薬」という武田薬品の差別化を、「ひとつの風邪薬ですべての症状に効く」というコピーによって打ち消した、見事なミート戦略でした。

 結果、翌年のシェア率は第一三共が14.4%(前年比108%)に上昇したのに対し、武田薬品は9.5%(前年比102%)の微増に留まることに。

我関せずで動かなかったシェア率トップの大正製薬は、33.0%から29.5%(前年比89%)と大幅ダウンすることとなりました。

 


7.ランチェスター戦略が向いている企業と向いていない企業

厳しい市場争いの中で中小企業が戦い抜くための「武器」ともいうべきランチェスター戦略。

 「弱者」向け、「強者」向けどちらもの戦略を網羅しているため、規模感やマーケットシェア率に関わらず、すべての企業で取り入れるべき戦略と思われるかもしれません。
しかし、ごく一部ですが、ランチェスター戦略が向いていない企業もあります。

 この段落では、ランチェスター戦略に向いている企業と向いていない企業について解説しています。
ランチェスター戦略を取り入れるかどうかお悩みの方は、ぜひご検討材料としてご活用ください。 

7-1.ランチェスター戦略が向いている企業

以下の特徴に当てはまる企業は、ランチェスター戦略に向いていると言えます。

ランチェスター戦略が向いている企業

自社の売上シェアをもっと伸ばしていきたい

自社の顧客満足度をもっと高めていきたい

市場におけるナンバーワンになりたい

中小企業なりの戦い方を知りたい

今の経営戦略に物足りなさを感じている

 おそらく、「自社の売上シェアをもっと伸ばしていきたい」の時点で、ほとんどの企業が当てはまると感じたことでしょう。
実際、ほとんどの企業がランチェスター戦略に向いていて、それを取り入れるべきなのです。

 ちなみに、ランチェスター戦略は中小企業のための経営戦略であると思われがちですが、決してそうとは限りません。

  • 中小企業(多くの場合は「弱者」である)でも使える経営戦略の代表例であること
  • 「小が大に打ち勝つ」ための戦略が充実していること
  • 中小企業向けを謳うランチェスター戦略コンサルタントが多数存在すること

などが影響し、大企業には向いていないと思っている方もいらっしゃいますが、そういうわけではありませんのでご注意ください。

しかし一方で、ランチェスター戦略に向いていない企業もごく一部ですが存在します。
続けて見ていきましょう。 

7-2.ランチェスター戦略が向いていない企業

ランチェスター戦略が向いていない企業は、以下の2つです。

ランチェスター戦略が向いていない企業

経営戦略の基礎を学んでいる段階である

市場参入から時間が経過しているのに「存在目標値:6.8%」に到達していない

 デメリット部分でも述べましたが、ランチェスター戦略を活かすためには、経営戦略の基礎を身に着けていることが必要不可欠です。
もしまだ経営のいろはを学んでいる途中であれば、しっかりと学び終えてからランチェスター戦略の習得に取り掛かりましょう。

 「存在目標値:6.8%」に到達していない場合も、ランチェスター戦略には向いていないと言えます。
ただし、注意しておきたいのが、

  • 市場参入から時間が経過している
  • 自社が強みを持つ得意分野である

にも関わらず「存在目標値:6.8%」に到達していない場合は、ということです。

 市場に参入したばかりだと、シェア率が低いのも当然です。
また、製薬業界やコスメ業界、アパレル業界といった「大きすぎる市場」でのシェア率を見てしまうと「6.8%のシェア率」の重みが断然変わってしまいますので、あくまで「自社が強みを持つ得意分野=シェア率トップを狙える分野」におけるシェア率で判断するようにしましょう。

 もし、これらの条件に当てはまっているのだとしたら、今はまだランチェスター戦略を用いて競合他社と争う時期ではないということ。
まずは自社セールスに注力し、「存在目標値:6.8%」の到達を目指しましょう。

 

 


8.中小企業が行うべきランチェスター戦略の実践方法

ここまでくれば、ランチェスター戦略の基礎やメリット・デメリットの把握はもちろん、自社で取り入れるべきかどうかの判断もつけられたはずです。

 この段落では、実際に中小企業がランチェスター戦略を取り入れた場合、どう経営に活かしていけばいいかを詳しく解説しています。
実践的な内容となりますので、ぜひ、自社の状況と照らし合わせながらご覧ください。

8-1.自社を取り巻くマーケティング環境を分析する

まずは、マーケティング環境分析を行い、自社の立ち位置や目標を明確にしましょう。
マーケティング環境分析の対象は「内部環境」「外部環境」2つに分類されます。

 内部環境を分析すると、自社の強みや弱みが明らかになります。
内部環境の代表的な手法としてはSWOT分析」が挙げられます。

SWOT分析とは

●     S:Strengths(強み)

●     W:Weaknesses(弱み)

●     O:Opportunities(機会)

●     T:Threat(脅威)

の頭文字を取った分析のフレームワークのこと。

 内部環境(強みと弱み)と外部環境(機会と脅威)をプラス面とマイナス面に分けて分析し、市場機会や事業課題の発見に繋げる。

外部環境の代表的な手法としてはPEST分析」が挙げられます。

PEST分析とは

●     P:Politics(政治)

●     E:Economics(経済)

●     S:Society(社会)

●     T:Technology(技術)

の頭文字を取った分析のフレームワークのこと。

これら4つの外部環境が自社のいる市場に与える影響を分析し、今後の動きを読み取るために用いる。

 3C分析やファイブフォース分析など、他にもマーケティング環境分析に役立つフレームワークは数多く存在します。
状況に適したフレームワークを用い、自社の立ち位置や目標などを明確にしましょう。

8-2.自社に優位性がある市場を洗い出す

マーケティング環境分析によって内部環境と外部環境が明らかになったら、自社に優位性がある市場を洗い出しましょう
自社の強みが最大限発揮できる地域・販路・ターゲットなどを洗い出し、「ここでならナンバーワンを目指せる」という分野を見つけ出すのです。

大きすぎる市場には圧倒的な「強者」が君臨していますし、小さすぎる市場では売上拡大幅に限度があります。
大きすぎず小さすぎず、かつ、いずれ自社がナンバーワンを狙えるような市場を見つけ出すこと。
これこそが、ランチェスター戦略の肝とも言うべき部分です。

8-3.自社の優位性を最大限活かしたブランディングを行う

自社が活躍できる市場を見つけたら、そこで自社をより輝かせるためのブランディングを行いましょう。
ブランディングの段階でも、最初に行ったマーケティング環境分析の結果が活きることとなります。

自社の強みをどんな場所でどんな人に届ければいいのか。
自社の強みを最大限活かすためには、どんなアイデンティティを掲げればいいのか。
そのアイデンティティを表現するには、どんなコピーやデザインが必要なのか。

などを考え、ブランディングの実行戦略を策定していきましょう。

 

 


9.ランチェスター戦略をより深く学ぶためのおすすめ書籍

ランチェスター戦略の基本や考え方、事例や実践方法などをお伝えしてきました。
ここからさらに深くランチェスター戦略について学んでいくには、関連書籍を読むことが一番です。

この段落では、ランチェスター戦略を学ぶのに適したおすすめ書籍をご紹介します。

いずれもAmazonレビューで高い評価を得ている良書ばかりです。
それぞれに特徴がありますので、ぜひ、あなたにぴったりな一冊を見つけてくださいね。

9-1.福永雅文『【新版】ランチェスター戦略 「弱者逆転」の法則』

出展:『【新版】ランチェスター戦略 「弱者逆転」の法則

ランチェスター戦略コンサルティングの第一人者として知られる、福永雅文氏による著書
2005年発行のロングセラーを全面改訂し、今の時代に即したものへと進化させた新版で、Amazonレビューでは星4.2/レビュー件数109件という高い評価を得ています。
※2021年5月時点 

53もの豊富な事例をもとに、現代ビジネスの場におけるランチェスター戦略の活用方法を教えてくれる本書。
中小企業の経営者がまず読んでおきたい、ランチェスター戦略導入の手引書です。 

 著者:福永雅文
タイトル:【新版】ランチェスター戦略 「弱者逆転」の法則
販売価格:単行本(ソフトカバー)1,650円/Kindle版(電子書籍)1,485
Amazonレビュー:星4.2/レビュー件数109

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9-2.田岡佳子『決定版 ランチェスター戦略がマンガで3時間でマスターできる本』

出展:『決定版 ランチェスター戦略がマンガで3時間でマスターできる本 

ランチェスターの法則を体系化し、経営戦略として日本ビジネス界に広めた故・田岡信夫氏を夫に持つ、田岡佳子氏
夫の遺志を継ぎ、現ランチェスター協会名誉会長として活躍する彼女がまとめた一冊が本著『決定版 ランチェスター戦略がマンガで3時間でマスターできる本』です。

 難しい理論や情報を分かりやすい漫画でまとめているのが特徴で、誰にでも読みやすく、理解しやすい内容となっている本著。
経営戦略書やビジネス書をあれこれ買ってみたはいいものの、読破できないまま「積ん読」になっているとう方におすすめの一冊です。 

 著者:田岡佳子
タイトル:決定版 ランチェスター戦略がマンガで3時間でマスターできる本
販売価格:単行本(ソフトカバー)1,760円/Kindle版(電子書籍)1,672
Amazonレビュー:星3.9/レビュー件数47 

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9-3.竹田陽一/栢野克己『【新版】小さな会社儲けのルール』

出展:『【新版】小さな会社★儲けのルール

 竹田陽一・栢野克己両氏による共著である本著は、2002年の書版発売以降、累計販売部数12万部を突破したロングセラーを新版として刊行したものです。

 新版とするにあたって、

  • 30ページ以上の増補
  • 成功事例を最新版に刷新

の改良が加えられた本著。
中小企業の盛衰に長く携わってきた両氏だからこそ知る、生きたノウハウが詰まった一冊です。 

内容はピリリと辛い毒舌説法で、最後まで飽きることなく読破することができるでしょう。

 著者:竹田陽一/栢野克己
タイトル:【新版】小さな会社儲けのルール
販売価格:単行本(ソフトカバー)1,488円/Kindle版(電子書籍)1,463
Amazonレビュー:星4.2/レビュー件数47 

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10.ランチェスター戦略を取り入れるには「経営計画書」の作成がおすすめ

ここまでお読みいただいた方であれば、きっと、ランチェスター戦略の理解が大きく進んだことでしょう。

 しかし、本当に大切なのはこの先です。
実際に自社にランチェスター戦略を取り入れ、「強者」としてマーケットシェア率1位に君臨するための戦いはここから始まります。 

自社にランチェスター戦略を取り入れるための手段としては、「経営計画書」の作成がおすすめです。

経営計画書とは、端的に言うと「経営の設計図」です。

  • 経営理念、使命感
  • 未来像
  • 戦略
  • 戦術
  • 目標数字など

を具体的に明記した、「社長の考え方や価値観を全社員に浸透させるための道具」です。
つまり、経営計画書は、あなたが学んだランチェスター戦略の考え方を自社に取り入れ、浸透させるために最適なツールなのです。

経営計画書の全体像や、利益計画・販売計画の立て方については「『経営計画書』を導入したら利益が10倍になった」で、
経営計画書の必要性や作成のポイント、活用方法などについては「高収益な良い会社を作るための経営計画書の作り方【テンプレート付き】」で詳しく解説しています。
後者の記事からはテンプレートやサンプルもダウンロードいただけますので、ぜひ経営計画書の作成時にご活用ください。

 当社では、経営計画書の作成サポートなどをはじめとする運用支援コンサルティングで、中小企業の皆様を応援しています。
ランチェスター戦略を取り入れ、厳しい市場争いに勝っていきたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 メールでのお問い合わせは、問い合わせフォームより受け付けております。

\お電話からもお問い合わせお待ちしております/

 

 


11.まとめ

今回の記事では、中小企業のバイブルとして広く知られる「ランチェスター戦略」について詳しく解説してきました。
改めて内容をおさらいしておきましょう。 

■ランチェスター戦略の根幹をなす3つの基本理念

  • 弱者の戦略(第1法則)
  • 強者の戦略(第2法則)
  • マーケットシェア理論

 

■「弱者の戦略」の三原則

  • 一人対一人が(一騎打ち)
  • 狭い範囲で(局地戦)
  • 至近距離で戦う(接近戦)
    自社が強みを持つ市場で、「強者」と差別化しながら戦うことが重要

 

■「強者の戦略」の三原則

  • 確率兵器を持った集団対集団が(確率戦)
  • 広い範囲で(広域戦)
  • 遠距離攻撃で戦う(遠隔戦)
    圧倒的な資本力で「弱者」の差別化戦略を挫く「ミート戦略」を行う

 

■マーケットシェア理論における指標となる7つのシェア率

  • 市場でトップに立つために必要なシェア率
    • 上限目標値:73.9%
    • 安定目標値:41.7%
    • 下限目標値:26.1%
  • 市場に影響を与えるために必要なシェア率
    • 上位目標値:19.3%
    • 影響目標値:10.9%
  • 自社の存在意義の向上が求められるシェア率
    • 存在目標値:6.8%
    • 拠点目標値:2.8%

 

■ランチェスター戦略を成功に導く3つのポイント

  • 特定の市場において「ナンバーワン」になるべし
  • 強みがある分野に「1点集中」すべし
  • 売上シェアは「足下の敵」から奪うべし

 

■ランチェスター戦略のメリット・デメリット

  • メリット
    • 「弱者」の多い中小企業でも「強者」に打ち勝つことができる
    • 「弱者」が取るべき戦略が明確に分かる
    • 「弱者」だけでなく「強者」の考えも把握できる
  • デメリット
    • 「弱者」と「強者」の立場を間違えると大きな失敗を招きかねない
    • ランチェスター戦略1本のみで必ずしも勝てるとは限らない

 

■ランチェスター戦略が向いている企業・向いていない企業

  • ランチェスター戦略が向いている企業
    • 自社の売上シェアをもっと伸ばしていきたい
    • 自社の顧客満足度をもっと高めていきたい
    • 市場におけるナンバーワンになりたい
    • 中小企業なりの戦い方を知りたい
    • 今の経営戦略に物足りなさを感じている
  • ランチェスター戦略が向いていない企業
    • 経営戦略の基礎を学んでいる段階である
    • 市場参入から時間が経過しているのに「存在目標値:6.8%」に到達していない

 

■ランチェスター戦略の実践方法

  • 自社を取り巻くマーケティング環境を分析する
  • 自社に優位性がある市場を洗い出す
  • 自社の優位性を最大限活かしたブランディングを行う

 

この記事がランチェスター戦略の理解を助け、あなたの会社が「強者」として華々しくスポットライトを浴びるために役立ちましたら幸いです。

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