
現金出納帳の書き方がわからず立ち止まっていませんか?
現金の管理とはいっても、どこに何をどのように記入すれば良いかわからないですよね。
でも安心してください。
現金出納帳はどんな初心者であっても流れを理解すればそこまで難しくありません。
現金出納帳の書き方は大きく分けると以下の7つのステップです。
1.前月繰越を記入
2.出入金があった年月日を記入
3.科目を記入
4.摘要を記入
5.出入金した金額と残高を記入
6.月のさいごに次月繰越を記入
7.月が変わったら、新たに前月繰越を記入
それぞれの記入内容はとてもシンプルなものです。
本記事ではこの7つのステップを中心に、初心者が現金出納帳を書くために必要な情報を網羅的に紹介していきます。
ぜひ本記事を通じて現金出納帳の書き方を学んでいただけますと幸いです。
目次
1.現金出納帳の書き方
税理士法人が推奨する、現金出納帳を記入するうえで押さえておきたいポイントは、この3つ。
・現金を扱ったその日に記入
・現金による入金・出金を1件ごとに記入
・順番は日付順
忙しいから、面倒だからと後回しにせず、現金を扱ったその日に記入する習慣・意識づけが最も大事です。
イメージ図
年 |
月 |
日 |
科目 |
摘要 |
入金額 |
出金額 |
残高 |
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前月繰越 |
100,000 |
|
100,000 |
令和4 |
4 |
5 |
売上 |
A社より |
30,000 |
|
130,000 |
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15 |
消耗品費 |
B店で中古PC購入 |
|
44,000 |
86,000 |
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|
19 |
普通預金 |
C銀行預金より補充 |
20,000 |
|
106,000 |
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次月繰越 |
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106,000 |
106,000 |
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合計 |
150,000 |
150,000 |
|
では、このイメージ図を参考に、書き方の流れを整理していきましょう。
1-1 前月までの残高を記入
まずは、前月までの現金の残高を「前月繰越」として「入金額」と「残高」に記入します。
※前月繰越として前月までの残高100,000円を記しています。
年 |
月 |
日 |
科目 |
摘要 |
入金額 |
出金額 |
残高 |
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前月繰越 |
100,000 |
|
100,000 |
令和4 |
4 |
5 |
売上 |
A社より |
30,000 |
|
130,000 |
|
|
15 |
消耗品費 |
B店で中古PC購入 |
|
44,000 |
86,000 |
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|
19 |
普通預金 |
C銀行預金より補充 |
20,000 |
|
106,000 |
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次月繰越 |
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106,000 |
106,000 |
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合計 |
150,000 |
150,000 |
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1-2 出入金があった年月日を記入
現金出納帳は日付順の帳簿なので、入金があったとき、出金したときは、その年月日を記入します。
領収書の日付は別でも、実際に現金を出入りした日を優先します。
※売上が入った4月5日、買い物をした15日、銀行から引き出した19日を記しています。
年 |
月 |
日 |
科目 |
摘要 |
入金額 |
出金額 |
残高 |
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前月繰越 |
100,000 |
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100,000 |
令和4 |
4 |
5 |
売上 |
A社より |
30,000 |
|
130,000 |
|
|
15 |
消耗品費 |
B店で中古PC購入 |
|
44,000 |
86,000 |
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|
19 |
普通預金 |
C銀行預金より補充 |
20,000 |
|
106,000 |
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次月繰越 |
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106,000 |
106,000 |
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合計 |
150,000 |
150,000 |
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1-3 科目を記入
現金の内容を分ける項目、それが科目です。勘定科目ともいわれます。
主なものは次の通りです。
・売上(売上高)…本業によって得た代金
・雑収入…本業以外によって得たお金。給付金や補助金も含まれます。
・仕入(仕入高)…販売目的で購入した商品や原材料の代金
・給料…従業員に支払う給料
・福利厚生費…慶弔費など、給料以外に従業員に支払うお金
・消耗品費…仕事に必要な物品のうち、耐用年数1年未満または、10万円未満で購入したものの費用
・雑費…少額の支出、単独で科目を立てるほどのものでもない支出
・普通預金…銀行の普通預金から出入金したときに使う科目
科目は種類が多いですが、他にも水道光熱費や通信費など家計簿感覚に近いものもありますし、全てを覚えて使いこなす必要もありません。
ご自身や業種に必要なものに絞ってお使いください。
※それぞれの科目である売上、消耗品費、普通預金を記しています。
年 |
月 |
日 |
科目 |
摘要 |
入金額 |
出金額 |
残高 |
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|
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|
前月繰越 |
100,000 |
|
100,000 |
令和4 |
4 |
5 |
売上 |
A社より |
30,000 |
|
130,000 |
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15 |
消耗品費 |
B店で中古PC購入 |
|
44,000 |
86,000 |
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|
19 |
普通預金 |
C銀行預金より補充 |
20,000 |
|
106,000 |
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次月繰越 |
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106,000 |
106,000 |
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合計 |
150,000 |
150,000 |
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1-4 摘要を記入
取引先の会社名、銀行名、売れた物、買った物、など具体的な内容を記入するのが、摘要(てきよう)です。
細かすぎる必要はありませんが、この摘要が具体的にしっかり書かれていれば、会社にとって過去を整理する備忘録になりますし、客観的な確認にもなります。
1-3で書いた科目があるから、摘要はいらないという事はありません。
科目で大まかな分類をして、摘要で具体的な内容を補完するのが大事です。
面倒だからと何も書かない、日付と金額しか情報が無いと、
・はっきりしない買物が原因となり、社内でもめる
・もしも税務調査が入った時、税務調査官の疑いを招く
・申告を税理士に任せても、確認のために請求書や領収書などをさかのぼって見直すなど、結局余計な手間が増える
等々、トラブルの元になりかねません。
摘要は当日の事がわかるメモとして、ちゃんと書きましょう。
※売上があった取引先のA社、買い物をした店名・B店と、買った物・中古PC、C銀行の預金から引き出して現金を補充したことを記しています。
年 |
月 |
日 |
科目 |
摘要 |
入金額 |
出金額 |
残高 |
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|
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|
前月繰越 |
100,000 |
|
100,000 |
令和4 |
4 |
5 |
売上 |
A社より |
30,000 |
|
130,000 |
|
|
15 |
消耗品費 |
B店で中古PC購入 |
|
44,000 |
86,000 |
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|
19 |
普通預金 |
C銀行預金より補充 |
20,000 |
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106,000 |
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次月繰越 |
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106,000 |
106,000 |
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合計 |
150,000 |
150,000 |
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1-5 出入金した金額と残高を記入
・入金があれば、その金額を「入金額」に記入し、「残高」に足します。
※売上の30,000円を「入金額」に、前の残高と足した130,000円を「残高」に記し、
※銀行預金から補充した20,000円を「入金額」に、前の残高と足した106,000円を「残高」に記しています。
年 |
月 |
日 |
科目 |
摘要 |
入金額 |
出金額 |
残高 |
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前月繰越 |
100,000 |
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100,000 |
令和4 |
4 |
5 |
売上 |
A社より |
30,000 |
|
130,000 |
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15 |
消耗品費 |
B店で中古PC購入 |
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44,000 |
86,000 |
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19 |
普通預金 |
C銀行預金より補充 |
20,000 |
|
106,000 |
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次月繰越 |
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106,000 |
106,000 |
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|
合計 |
150,000 |
150,000 |
|
・出金があれば、その金額を「出金額」に記入し、「残高」から引きます。
※買い物をした44,000円を「出金額」に、前の残高から引いた86,000円を「残高」に記しています。
年 |
月 |
日 |
科目 |
摘要 |
入金額 |
出金額 |
残高 |
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前月繰越 |
100,000 |
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100,000 |
令和4 |
4 |
5 |
売上 |
A社より |
30,000 |
|
130,000 |
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15 |
消耗品費 |
B店で中古PC購入 |
|
44,000 |
86,000 |
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19 |
普通預金 |
C銀行預金より補充 |
20,000 |
|
106,000 |
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次月繰越 |
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106,000 |
106,000 |
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合計 |
150,000 |
150,000 |
|
このように、現金の出入があった日ごとに、1件ずつ記入していきます。
1-6 月のさいごに
・月末になって現金の出入りが無ければ、さいごの「残高」を「次月繰越」として「出金額」に記入します。
※次月繰越として残高の106,000円を記しています。
年 |
月 |
日 |
科目 |
摘要 |
入金額 |
出金額 |
残高 |
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前月繰越 |
100,000 |
|
100,000 |
令和4 |
4 |
5 |
売上 |
A社より |
30,000 |
|
130,000 |
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15 |
消耗品費 |
B店で中古PC購入 |
|
44,000 |
86,000 |
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19 |
普通預金 |
C銀行預金より補充 |
20,000 |
|
106,000 |
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次月繰越 |
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106,000 |
106,000 |
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合計 |
150,000 |
150,000 |
|
・そして、「入金額」と「出金額」タテの合計が一致し、その月の現金出納帳の締めくくりとなります。
※「入金額」と「出金額」共に合計が150,000円で一致しています。
年 |
月 |
日 |
科目 |
摘要 |
入金額 |
出金額 |
残高 |
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前月繰越 |
100,000 |
|
100,000 |
令和4 |
4 |
5 |
売上 |
A社より |
30,000 |
|
130,000 |
|
|
15 |
消耗品費 |
B店で中古PC購入 |
|
44,000 |
86,000 |
|
|
19 |
普通預金 |
C銀行預金より補充 |
20,000 |
|
106,000 |
|
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次月繰越 |
|
106,000 |
106,000 |
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合計 |
150,000 |
150,000 |
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1-7 月が変わったら
先ほど「次月繰越」として記入した金額を、新たな月の「前月繰越」として1-1の手順からスタートし、この流れを繰り返していきます。
※106,000円が5月の「前月繰越」として新たなページが始まるわけです。
年 |
月 |
日 |
科目 |
摘要 |
入金額 |
出金額 |
残高 |
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前月繰越 |
106,000 |
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106,000 |
令和4 |
5 |
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2.現金出納帳の4つの注意点
2-1 「入金額」と「出金額」がずれた心当たりがあれば直す
「入金額」と「出金額」の合計は一致しなければいけませんが、ずれが生じることもあります。
実際、領収書やレシートが出ない出費も有るものです。
例えば、自販機で飲み物を購入して従業員に配った、香典など慶弔費を出した、などといった心当たりがあればそのことを摘要に記入します。
2-2 心当たりがなかったら「現金過不足」で調整する
どうしても心当たりが無ければ「現金過不足」という科目で、実際にある現金の額に調整しましょう。
この時、自分のお金で過不足分を足し引きしてはいけません。
また、現金過不足での調整は少額のズレに用いるものです。
10万円単位の大きい金額であれば、現金過不足で帳尻を合わせるのではなく、根本的な計算間違いや、不正を疑いましょう。
結局のところ、後回しにすればするほど記憶はあいまいになりますから、現金を扱ったその日ごとに記入する習慣が大切です。
2-3 帳簿と現金は別の人が管理する
現金出納帳の書き方というテーマからは少し外れますが、会社に無関係の領収書を混ぜる、現金を私的に使い込む、といった不正を防ぐ意味でも、帳簿を付ける人と、現金を管理する人は別々にするのが理想的です。
そして、現金を扱ったその日ごとに帳簿上の残高と、実際の現金を突き合せれば、さらに良いです。
2-4 銀行預金の出入りは記入しない
現金出納帳は、現金の出入りを管理する帳簿ですから、銀行預金の出入りを管理するものではありません。
1章の記入例で普通預金について触れたのは、預金から現金を引き出して補充したから、現金出納帳に記入したわけです。まぎらわしい話ですが、注意しましょう。
3.現金出納帳は何で書く?
現金出納帳は1年ごとに1冊、1月ごとに区切るものですが、何で書くかも大事な選択です。
ご自身が使いやすいのであれば、ノートに手書きで始めてみるのも悪くありませんが、この際ですからエクセルを使った帳簿に挑戦してみましょう。
3-1 エクセル
パソコンをお持ちならば、表計算ソフト・エクセルもしくは、それに相当するソフトが入っていることでしょう。
ネット上には、エクセルを利用した現金出納帳のテンプレートが数多く公開されています。
次のリンクに簡単なものをご用意しましたが、ご自身で使いやすいものをお選びください。
こちらを利用すれば、合計金額の計算も楽ですし、後日領収書が見つかっても日付順での書き足しが可能です。
ただ、行の挿入でずれたり、計算式を消したりして書式が崩れてしまうこともあります。操作には気をつけて、自己責任でお使いください。
3-2 会計ソフト・アプリ
パソコン・スマホから使える会計ソフト・アプリが数多くあります。
様式通りに数字を入れるだけの手軽さ、書式が崩れたりする心配も無いのが利点です。
銀行口座やクレジットカード、電子マネーと連携して自動で記録する、便利な機能もありますが、ここで注意しなければいけないのが、現金では使えないという事です。
現金の出入りは、絶対に自動で記録できませんし、摘要もご自身で入力する必要があります。
現金を扱ったその日に記入する習慣・意識づけが大事という点は、何を使っても一緒です。
また、当初は無料となっていても、一定期間が経過した場合、機能を増やした場合に、有料に切り替わることもあります。
帳簿のデジタル化は最近の調査でもまだ途上ですが、大きい事業者ほど進んでいるのは事実です。
将来的に会社を大きくする、専任の経理担当者を置く、といった事を見据えているならば、このような会計ソフトの導入を進めていきましょう。
4.キャッシュレス化で現金出納帳の手間を減らす
一般的に、祝儀や香典に電子マネーを使うことが浸透しないように、現金を使うケースがゼロになるのは難しいかもしれませんが、いま話題のキャッシュレス化で減らしていくことは可能です。
銀行振込はもちろん、支払いに法人向けのクレジットカードや電子マネー、カードでの支払いと同時に銀行口座から引き落とされるデビットカードを使えば、現金での支払いを減らせますので、結果として現金出納帳を記入する機会そのものが減るわけです。
銀行の通帳やカードの明細を見れば、現金よりも出入りの把握が簡単ですし、将来的には3-2のような会計ソフト・アプリに連携させて自動記録を導入してもよいでしょう。
現金から離れられない業種や事情はあると思いますが、現金出納帳以外にもメリットが大きいキャッシュレス化も検討してみましょう。
さいごに
以上、現金出納帳について見てきました。
毎日のように帳簿に向き合うのは面倒でしょう。
しかし、現金の正確な使い道と残高がわかるメリットは大きいです。
さらに、帳簿を付ける人と、現金を管理する人を別々にすれば、安心感が高まります。
多種多様な科目、加減が難しい摘要など、ちょっと混乱する所もあるかもしれませんが、日付順に現金の出入りを記していく簡単な帳簿なので、そう難しく考えずに始めてみましょう。
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