
予実管理とは、会社の予算と実績を管理することです。
予実管理を行なって、予算と実績の差異を毎週もしくは毎月チェックすることで、会社の課題や問題点をすぐに洗い出し、対策を反映させていくことができます。
もし、予実管理を行なわなければ、課題や問題点に気がつかずに時間が経ち、気がついたら取り返しのつかない大きな問題に発展してしまうかもしれません。
そのため、予実管理を行うことは、会社経営にとって非常に重要な意味を持つのです。
とはいえ、「予実管理って絶対にやらなくちゃいけないの?」「予実管理をどうやって進めていけばいいの?」といった疑問を持つ人もいるでしょう。
そこで、本記事では、
・予実管理とは何か
・予実管理を実行する4つのメリット
・予実管理を実行する5ステップ
・予実管理を実行するために押さえておくべき4つのポイント
・予実管理をExcelで実行する具体的な方法
・予実管理を効率的に行うためのツール紹介
について、詳しく解説していきます。予実管理について本記事だけで網羅的に知ることができるようになっているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.予実管理とは会社の予算と実績を管理すること
上述した通り、予実管理とは、会社の予算と実績を管理することです。経営目標を達成するために作成するものと言われており、会社が現在どのような状況にあるのかを数字を通して具体的にチェックすることができます。
例えば、予実管理は下記のように作成されます。
上記の通り、項目ごとに予算と実績を入力し、予算と実績を比べ、差が出てしまった原因を探っていきます。
例えば、予算と実績を比べて大幅な赤字となってしまった場合に、「経費が膨大になってしまった」「売上が予測に到達しなかった」など、原因を特定していきます。
そして、「経費が高くなったので仕入れ業者を変える」「経費を抑えるために仕入れの数を調整する」「売上をあげるためにイベントを行う」など、対策を考えて実行するのです。
このように、会社の予算を設定し、実績と比べて分析することで、会社経営における改善点を明確化し、すぐに対策を反映していくことができるというのが予実管理の特徴です。
予実管理を実行していれば、数字を根拠に経営戦略を立てることができるため、感覚的な経営判断と比べても非常に効率的と言えます。
2.予実管理を実行する4つのメリット
「予実管理はしなければならないの?」「予実管理を行うことでどんなメリットがあるの?」という人に向けて、予実管理を行う下記4つのメリットについて詳しく解説していきます。
・効率的に経営判断を行える
・経営の問題点をすぐに改善
・従業員の士気を高める
・会社の強みと弱みを認識できる
2-1.効率的に経営判断を行える
予実管理を実行するメリットとして、効率的に経営判断を行える点があげられます。
「感覚的に経営を行なっていてもうまくいっているから問題ないだろう」と考える人もいるかもしれませんが、感覚的な判断のみでの経営は非効率と言わざるを得ないでしょう。
例えば、予実管理を行なっていれば「経費を使いすぎている」ことがすぐに明らかになり、原因追求、対策検討に移ることができますが、予実管理を行なっていなければ気がつかないかもしれません。
また、「なんとなく経費を使いすぎている」と感覚的に思うだけでは、具体的な対策につながりにくく、後々、大きな問題に発展してしまうことでしょう。
予実管理を実行すれば、「なんとなく利益が少ない気がする」「なんとなく売上が少ない気がする」という理由から経営判断を行うのではなく、数字という明確な根拠を持って効率的に経営判断を行うことができるのです。
これらのことから、これまで数字を重視せずに経営判断を行なってきたという人は、予実管理を取り入れてみることをおすすめします。
2-2.経営の問題点をすぐに改善
予実管理のメリットとして、経営の問題点をすぐに改善できる点があげられます。
予実管理は毎月行うことが一般的なので、目標からズレていればすぐに気がつくことができ、リアルタイムで改善点を反映させられます。
「1年に1回収支の確認をしているから問題ない」と考える人もいるかもしれませんが、1年に1回だけでは、気がつかないうちに目標から大きくズレているということもあり得るでしょう。
例えば、予実管理を毎月行なっていれば「売上目標にわずかに届いていない」ということが明確になり、毎月あらゆる対策を立てて実行し、目標に届くよう努力することができます。
しかし、予実管理を行なっていなければ、「売上目標にわずかに届いていない」という状況がどんどんと蓄積され、1年経過で見た際には、「売上目標から大きく下回ってしまった」という結果になることでしょう。
このように、毎月予実管理を実行することで、経営状態を常に監視でき、目標からズレそうであればすぐに軌道修正を行えるので、経営を安定した状態に保つことができるのです。
2-3.従業員の士気を高める
予実管理を実行するメリットとして、従業員の士気を高めることがあげられます。
例えば、予実管理によって部署ごとの予算と実績を可視化することで競争心が生まれたり、目標を明確に数字で示すことでモチベーションがアップしたりなど、予実管理は従業員にも良い影響を与えるでしょう。
ただ「頑張れ」と言うより、「売上目標〜円」と明確化した方が、目指すべきところが明らかになるため、従業員も行動に移しやすいというのは想像に難しくないはずです。
そのため、予実管理は、従業員に必ずシェアし、高すぎることも低すぎることもない、適切な予算を設定することを心がけましょう。
2-4.会社の強みと弱みを認識できる
予実管理を実行するメリットとして、会社の強みと弱みの認識につながることがあげられます。
予実管理はただ単に予算と実績の数字を比べるだけではなく、「目標を達成できなかった理由」や「経費が想像よりかかってしまった理由」などについて毎月分析する必要があります。
例えば、経費が多くかかってしまうという表面上の問題から、従業員の経費への意識が低い、という本質的な問題が明らかになることもあるでしょう。
一方で、毎月問題のない箇所というのも明らかになり、例えば「接待交際費が低く抑えられている」のであれば、すでに取引先と信頼関係が築けていることなどが強みであることが分かるでしょう。
予実管理で課題や問題点を考えていく中で、会社の本質的な問題や強みについて明らかになっていきます。そして、本質的な問題を解決したり、強みを伸ばすことで、さらなる会社の発展につなげることができるのです。
3.予実管理を実行するための5ステップについて紹介
予実管理を作成する下記5ステップについて解説していきます。
下記ステップに従えば、誰でも予実管理を作成できるようになるので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
STEP1:予算を決める
予実管理の最初のスッテプとして、予算を決めることから始めます。
予算については、下記のようなポイントを押さえながら考えていきましょう。
・前年の実績があれば前年実績を参考に決める |
いきなり予算を立てるのは難しいと感じる人も多いでしょうが、基本的には前年の実績や前月の実績から予算を積み上げていけば大丈夫です。
「夏のセールで売上が増える」「冬は設備費が高くかかる」など、季節によって経費や売上が変わるのであれば、それらを数字に反映していきましょう。
また、会社は利益を追求していかなければならないので、「営業利益」を重視し、できれば「営業利益」から決めていくと、他の部分も決めやすくなってきます。
予算は非常に大切なので、「これから会社をどうしたいのか」や「従業員のモチベーションをアップさせるにはどうしたらいいか」などを慎重に考え、適切な予算を設定するようにしましょう。
STEP2:実績を入力する
次のステップとして、実績を入力していきます。
まずは、あまり難しく考えずに、シンプルに予算と実績を入力した表を作成してみましょう。
実績を入力する際の注意点としては、基本的に費用については取引時に発生したものと考えて入力することと、1年分をまとめて計算するものについては12で割るなどして月ごとに計算することです。
次のステップで、予算と実績の差異について考えていきましょう。
STEP3:予算と実績を比較して課題を洗い出す
予算と実績が出揃ったところで、予算と実績を比較して課題を洗い出していきましょう。
売上、売上原価、販売費、営業外損益といった項目ごとに比較し、差異がある部分についての原因を探っていきます。
ここでは、細かい数字にこだわるというよりは、差異が大きい箇所から「そもそも予算に問題があったのか?」や「予算を達成できなかった理由は何か?」について深掘りして問題点を洗い出していき、会社にとって重要な課題は何かについて優先順位をつけてみましょう。
STEP4:課題への対策を考える
課題をいくつか洗い出したら、課題への対策を考えていきましょう。
多くの課題が出てしまった場合には、全ての課題に対して対策を立てるのは難しいかもしれません。そこで、会社にとって重要な課題から順に手をつけていきましょう。
対策については、まずはあらゆる視点から多く出していきつつ、1番効果が高いと判断したものに絞って実行することをおすすめします。
STEP5:課題への対策を実行する
最後に、課題への対策を実行していきます。
せっかく予実管理で課題を洗い出し、対策を考えても実行しなければ意味がありません。
全ての対策を実行するのは難しいかもしれませんが、優先順位を決めて対策を実行し、対策を行なった結果を次の月に検証するというサイクルを繰り返すことが大切です。
課題を放置したままにすると、時間の経過とともに問題が拡大し、取り返しのつかないことになってしまうこともあるかもしれません。
毎月、予実管理を行い、問題点や改善点についてすぐに気がつき、対策を実行することで、すぐに問題を取り除いていくことが大切です。
4.予実管理を実行するために押さえておくべき4つのポイント
予実管理を実行する際に押さえておくべき下記4つのポイントについて解説していきます。
・予算設定を適切に行う
・課題の洗い出しを必ず行う
・なるべくリアルタイムで管理を行う
・細かい数字にこだわらない
上記ポイントを押さえて、予実管理を効率的に実行するようにしましょう。
4-1.予算設定を適切に行う
予算設定を適切に行うことが、予実管理をうまく機能させるためには大切になります。
例えば、達成するのに困難な高すぎる予算を設定されると、従業員のモチベーションが下がる原因になることがあったり、また低すぎる目標では簡単に達成できてしまい改善点を出すことが難しくなったりしてしまいます。
そこで、高すぎることもなく低すぎることもない適切な予算を設定することが、予実管理を実行するために大切なことなのです。
一般的には、会社の成長のためには、少しだけ達成困難な目標を設定するのがおすすめと言われています。
とはいえ、最初から適切な予算を設定することは難しいので、毎月予算と実績をチェックして、「そもそも予算設定は正しかったのか?」について考えることを心がけてみてください。
4-2.課題の洗い出しを必ず行う
予実管理を実行する際に、課題の洗い出しを必ず行うようにしましょう。
ただ予算と実績を比べて終わりにしてしまっては、本来の予実管理の良い点を活かしきれていないことになってしまいます。
予算と実績が乖離している場合には、何かしらの課題や改善点があるはずなので、経営に反映していくことが大切です。
例えば、居酒屋で売上が予測より低かった場合、「近くに競合のお店ができた」「店員が足りなく回転率が下がった」「予算不足で食材が足りなかった」など色々な理由が考えられるので、本質的な理由を洗い出すことが大切です。
最初から原因をはっきり特定することは難しいので、課題や改善点を検証したあとは、仮説によって対策を立てて、実行して検証するという工程をくり返し行うようにしましょう。
4-3.なるべくリアルタイムで管理を行う
予実管理はなるべくリアルタイムで実行していくようにしましょう。
予実管理は毎月の予算と実績を比較できるという点が大きなメリットであるため、まとめて分析するのではなく、なるべくリアルタイムで分析・検証を行うことが大切です。
数ヶ月前の予算と実績のズレの原因を追求するのは難しいというだけでなく、時間が経つにつれて問題が拡大してしまったり、別の問題と複合的に絡み合ってしまったりということもあるでしょう。
変化が激しいビジネスの流れに乗り遅れないためにも、すぐに予実管理のステップを実行し、改善を繰り返していくことが大切です。
4-4.細かい数字にこだわらない
予実管理を実行するポイントとして、細かい数字にこだわらないということも大切です。
予実管理で大切なのは、1円や10円単位の表面的な差異について考えることではなく、予算と実績の差異から会社の本質的な課題を見つけることです。
あまり細かい数字にこだわってしまうと、無駄に時間を浪費してしまうことになるでしょう。
そもそも、最初からは適切な予算を設定できないことも多いので、細かい数字にこだわるのではなく、大きくズレている部分から手をつけるなど優先順位を明確化しておくことをおすすめします。
5.予実管理をExcelで行う具体的な方法
予実管理をExcelで実行する方法について紹介していきます。予実管理は、誰でも簡単にExcelで作成することができるので、ぜひ試してみてくださいね。
一般的には、下記のように項目を記載していきます。
※売上総利益=売上高–売上原価、営業利益=売上総利益–販売費計、経常利益=営業利益+営業外収益–営業外費用
会社の予算と実績における必要項目を記載した上で、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」の箇所には上記※で示した数式を記載しています。
また、差額と予算比の項目の部分で、当月発生と当月予算を一目で比べられるよう表示しています。
上記は基本的な予実管理表なので、会社によって販売費の内容を追加したり削除したりなど、カスタマイズする必要があるでしょう。
また、前年同月と比べる表を追加すれば、さらに精度の高い分析を行うことができます。
上記のExcelシートについては、下記からダウンロードすることができるので、カスタマイズしてぜひご活用ください。
6.予実管理を効率的に行うためのツールを紹介
予実管理はExcelで簡易的に作成することは可能ですが、会社の規模が大きいなどの理由で予実管理が複雑になる場合には、Excel管理では難しくなることもあるでしょう。
そこで、予実管理を行えるツールを積極的に活用してみましょう。
使用実績が多くあり、操作性が優れている下記の3つの予実管理ツールについて紹介していきます。
・BizForecast
・Sactona
・Oracle EPM Cloud-Planning
6-1.BizForecast・プライマル株式会社
BizForecastは、予算実績管理ソフトウェアの市場シェアNo.1の実績を持つ、公認会計士・米国公認会計士が製品設計・導入メソッドを監修した製品です。
「柔軟性の高さ」と「使い勝手の良さ」を実現し、経営管理の効率化・高度化・課題解決を強力にサポートしてくれます。
「活Excel」をコンセプトにしており、Excelベースのインターフェイスを持つために、誰でも操作しやすいというのも特徴のひとつです。
コンサルタントが現在のExcelの中身や運用方法を分析しながら、相談に乗ってくれるために、安心して導入することができます。
予実管理のツールを導入するのがはじめてでサポートをお願いしたいという人におすすめの製品です。
詳しくはこちらをご参照ください。
6-2.Sactona ・アウトルックコンサルティング株式会社
Sactonaは、大手企業でも導入されているツールで信頼性が高く、Excel画面に近い形で予実管理ができるので、操作性に迷うことのない利用しやすいツールと言えます。
日本の先進企業に磨かれたノウハウが標準装備されており、あらゆる処理を自動実行してくれるので、「ムダな手作業」が少なく、手間と時間がかからないのが特徴です。
また、最初はシンプルな機能のみからスタートして、段階的に拡張していくことができます。
企業規模が大きい場合や予算管理が複雑になる場合、今後、色々な拡張機能を試していきたいと考える人におすすめの製品です。
詳しくはこちらをご参照ください。
6-3.Oracle EPM Cloud-Planning・日本オラクル株式会社
Oracle EPM Cloud-Planningは、世界で使われているクラウド版の予実管理ツールです。
低コストでありながら、管理会計、予算管理で必要となるデータ入力・データ連係から各種計算処理、レポート・分析をトータルに実現します。
なるべく低コストで予実管理システムを試してみたいという人におすすめの製品です。
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7.まとめ
本記事では、
・予実管理とは何か
・予実管理を実行する4つのメリット
・予実管理を実行する5ステップ
・予実管理を実行するために押さえておくべき4つのポイント
・予実管理をExcelで実行する具体的な方法
・予実管理を効率的に行うためのツール紹介
について、詳しく解説しました。
予実管理とは、会社の予算と実績を管理することです。
予算と実績の差異を毎週もしくは毎月チェックすることで、会社の課題や問題点をすぐに洗い出し、対策を反映させていくことができます。
予実管理を実行する4つのメリットは下記の通りです。
・効率的に経営判断を行える
・経営の問題点をすぐに改善
・従業員の士気を高める
・会社の強みと弱みを認識できる
予実管理を実行する5ステップは下記の通りです。
自分で作成するのが難しい場合には、本記事で提示しているExcel管理方法を参考にしていただいたり、予実管理ツールを利用したりすることをおすすめします。
本記事を読むことで、予実管理の重要性とメリットを理解し、予実管理を作成することをご検討いただけたなら幸いです。
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