事業再構築補助金とは?その詳細と、申請に必要な事業計画のつくり方

「事業再構築補助金というのがあるらしいけれど、どんな補助金?」
「申請はいつ、どうやってすればいいの?」

中小企業の経営者や個人事業主の中には、そんな疑問を持っている方も多いことでしょう。

「事業再構築補助金」とは、経済産業省が所管する国の補助金で、新型コロナウイルスの影響で事業運営が厳しくなった中小企業や個人事業主が、事業の内容を転換したり、新たな分野に事業展開することで立て直しをはかる際に、補助金を支給しようという制度です。

補助金額は100万円から最大で1億円までと高額のため、コロナ禍で苦しんでいる経営者から注目を集めています。

そこでこの記事では、事業再構築補助金についてくわしく解説していきます。

まず最初に、

◎事業再構築補助金とはどんな制度か
◎事業再構築補助金の対象
◎補助金額
◎申請から給付までの流れ

をわかりやすく説明します。
さらに、申請に際して「認定支援機関とともに事業計画を策定すること」が必須条件となっているため、

◎事業計画とは何か
◎事業計画に含めるポイント
◎事業計画のつくり方
◎事業計画作成の注意点
◎認定支援機関とは
◎認定支援機関の探し方
◎認定支援機関選びのポイント
◎認定支援機関の費用

についても詳細に解説していきます。

最後まで読めば、事業再構築補助金についてよく理解できるでしょう。

3月26日(金)より、公募要領(第一回)が公表されました。
申請は、4月15日(木)より開始予定です。(※申請開始日は変更になる場合があります。)

この記事で、あなたが無事に補助金申請できるよう願っています。

※この記事は、2021年4月8日現在の内容です。
    最新情報は、以下の公式サイトで随時ご確認ください。
    ◎経済産業省「事業再構築補助金」ホームページ

    ◎中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」中小企業庁 事業再構築補助金ページ 

 


1. 事業再構築補助金とは

 

中小企業の経営者を中心に、最近注目を集めているのが「事業再構築補助金」です。
2021年4月15日に申請が開始される予定のこの補助金について、まずはどのようなものかをわかりやすく説明していきましょう。

1-1. 事業再構築補助金とは何か

「事業再構築補助金」は、経済産業省が所管する国の補助金で、別名「中小企業等事業再構築促進事業」とも呼ばれます。

その目的は、以下のように定められています。

ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします。
コロナの影響で厳しい状況にある中小企業、中堅企業、個人事業主、企業組合等を対象とします。申請後、審査委員が審査の上、予算の範囲内で採択します。

                                                                                                       出典:中小企業庁「事業再構築補助金の概要」

つまり、新型コロナウイルスの影響で事業運営が厳しくなった中小企業や個人事業主が、事業の内容を転換したり、新たな分野に事業展開することで立て直しをはかる際に、補助金を支給しようという制度です。

この事業には、1兆1,485億円もの莫大な予算がつけられており、2021年度・2022年度の2年間で5万5,000件に補助金を支給する予定です。
補助金額は、100万円から最大で1億円と高額なため、コロナで打撃を受けている中小以下の企業にとっては大きな助けになると期待されています。

2021年4月15日に申請が開始される予定ですが、公募は一回限りではなく、2021年度だけでもさらに4回実施される予定になっていますので、今回に間に合わなくても次回以降に申し込むことができます。

事業再構築補助金についての最新情報は、以下の公式サイトで随時更新されますので、まめに確認してみてください。

◎経済産業省「事業再構築補助金」ホームページ

◎中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」中小企業庁 事業再構築補助金ページ 

1-2  事業再構築補助金の対象

では、事業再構築補助金を受けることができるのは、どのような企業でしょうか?
また、どんな費用に対して補助されるのでしょう?

それは以下の通りです。

1-2-1. 申請要件

まず申請要件、つまり申し込みできる企業の条件は3つあり、これらすべてを満たす必要があります

①売上が減っている
→申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年、または2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している。
   ※「任意の3か月」は連続していなくてもよい

②事業再構築に取り組むv
事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換などを行う。

③認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
→事業再構築に関しての事業計画を、「認定経営革新等支援機関」とともに策定する。
    補助金額が3,000万円を超える案件は、金融機関(銀行、信金、ファンドなど)も参加して策定する。
    ※金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみで構わない
補助事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(同上5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画を策定する。

ちなみに③の「認定経営革新等支援機関」については、「5-1. 「認定支援機関とは」」でくわしく説明していますので、知りたい人はそちらを参照してください。

1-2-2. 対象となる具体例

前項の②に「事業再構築に取り組む」とありますが、これだけでは漠然としていますよね。
そこで、どんなケースが「事業再構築」に含まれるか、中小企業庁が以下の文書でくわしく定義してくれています。

事業再構築指針(PDF形式:165KB)
事業再構築指針の手引き(PDF形式:804KB)

これらによると、大きくは以下の5つのいずれかに該当すれば「事業再構築」と認められます。

事業再構築

新分野展開

新たな製品などで新たな市場に進出する

事業転換

主な「事業」を転換する

業種転換

主な「業種」を転換する

業態転換

製造方法などを転換する

事業再編

事業再編を通じて新分野展開、事業転換、業種転換または業態転換のいずれかを行う

ただ、上記の文書はページ数も多く、読み解くのが難しいと感じるかもしれません。
そこで、「事業再構築」と認められる具体例を挙げた文書もつくられていますので、引用しておきましょう。

出典:経済産業省「事業再構築補助金」ホームページ

これを参考に、「自社の新事業が対象になるか」を判断してください。

1-2-3. 補助される経費

ただ、もし「事業再構築」と認められた案件でも、支給された補助金を自由に使っていいわけではありません

この補助金は、基本的には設備投資を支援する目的で支給されるため、主に建物や設備を整えるための費用に使うべきものです。
また、それに関連して、新規事業を始めるにあたって必要になる研修費や広告宣伝費、販売促進費、技術導入費なども補助対象として認められます。

補助対象になる経費とならない経費の具体例は、以下の通りです。

補助対象になる経費の例

【主要経費】
●建物費(建物の建築・改修に要する経費)、建物撤去費設備費システム購入費リース費
【関連経費】
外注費(製品開発に要する加工、設計等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)
研修費(教育訓練費等)、広告宣伝費販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
●クラウドサービス費専門家経費

補助対象にならない経費の例

●補助対象企業の従業員の人件費従業員の旅費
●不動産株式公道を走る車両汎用品(パソコン、スマートフォン、家具等)の購入費
●販売する商品の原材料費消耗品費光熱水費通信費

たとえば、新規事業のために事務所や工場を新たに立てたり回収したりする費用は補助されますが、不動産を新たに取得する費用は補助されません。
また、従業員の人件費は補助対象外ですが、従業員に新規事業に関する研修を行う費用は補助金で賄うことができます。

自社の場合はどんな経費が必要になるのか、慎重に資金計画を立ててから申請するようにしてください。

1-3. 他の補助金・助成金との併願も可能

この事業再構築補助金は、他の補助金や助成金とあわせて申請・受給することも可能です。

ただし、それぞれの補助金・助成金について、別々の事業内容で申し込む場合に限ります
ひとつの事業に対して、国の補助金を複数受けることはできません

たとえば、A社が事業①と事業②を行う場合に、事業①に対して「ものづくり補助金」を受け、事業②に対して「事業再構築補助金」を受けることはできます。
反対に、事業①に対して「ものづくり補助金」と「事業再構築補助金」の両方を受けることはできないというわけです。

ちなみに、1回の申請で、提出する事業計画書の中に複数の事業計画を記載することも可能です。
が、同じ事業者が事業再構築補助金を複数回受けることはできないので要注意です。

 


2. 事業再構築補助金の補助金額

事業再構築補助金は、補助金額が大きいことでも話題です。
その金額は、以下の表を見てください。

補助額

補助率

中小企業

通常枠

100万円~6,000万円

2/3

卒業枠

6,000万円超~1億円

2/3

中堅企業

通常枠

100万円~8,000万円

1/2
(4,000万円超は1/3)

グローバルV字回復枠

8,000万円超~1億円

1/2

緊急事態宣言特別枠

従業員数5人以下:100万円~500万円
従業員数6~20人:100万円~1,000万円
従業員21人以上:100万円~1,500万円

中小企業:3/4

中堅企業:2/3

最大で1億円と、補助金としては非常に多額ですよね。

ちなみに「補助率」とは、補助の対象となる経費のうち、補助金が支給される金額の割合です。

また、「卒業枠」「グローバルV字回復枠」「緊急事態宣言特別枠」については、以下のように定められています。

◎卒業枠:
400社限定。
事業計画期間内に、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金または従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けの特別枠。

◎グローバルV字回復枠: 
100社限定。
以下の要件をすべて満たす中堅企業向けの特別枠。
① 直前6か月間のうち任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して15%以上減少している中堅企業。
② 補助事業終了後3~5年で付加価値額または従業員一人当たり付加価値額の年率5.0%以上増加を達成を見込む事業計画を策定すること。
③ グローバル展開を果たす事業であること。

◎緊急事態宣言特別枠:
「1-2-1. 申請要件」3つの条件をすべて満たし、かつ緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛などにより影響を受けたことにより、2021年1~3月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少している事業者。

卒業枠かグローバルV字回復枠なら通常枠よりも補助金の上限額が上がりますので、自社が該当するかどうか確認してみてください。

 


3. 申請から給付までの流れ

では、実際に事業再構築補助金を申請する際には、どのような流れで何をすればいいのでしょうか?
おおむね以下のフロー図のようになると思われます。

注意したいのは、補助金の交付は後精算だという点です。
先に事業を始めて経費を使ってから、使った金額に応じて補助金額が決定して支払われます。
その間は、多額の経費の立替が必要になりますので、事前に十分な資金を準備しておいてください。

3-1. 公募開始日

さて、肝心の申請開始日ですが、2021年4月15日を予定していると発表されています。

最新情報は、以下のサイトで発表されるはずですので、随時チェックしてみてください。

◎経済産業省「事業再構築補助金」ホームページ

◎中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」中小企業庁 事業再構築補助金ページ

3-2. 給付までの期間

また、前掲のフロー図を見てわかるように、申請から補助金受け取りまでは非常に長い期間がかかると予想されます。
2021年4月8日現在で、わかっている第1回目のスケジュールは以下の通りです。

2021年4月15日 申請開始(予定) 
  ▽
2021年4月30日 応募締め切り
  ▽
2021年6月上旬~中旬 採択発表(予定)
 

その後、補助事業を行う期間だけでも1年程度見込む必要があるので、前後の手続き期間を加算すると、少なくとも申し込みから1年半以上かかりそうです。

その間に、補助対象となる経費を立て替えたことで資金がショートしてしまうことのないよう、余裕を持った資金繰り計画をたてておく必要があるでしょう。

 


4. 事業計画の策定

事業再構築補助金の申請要件に、「認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する」という1項がありますよね。
補助金を受けられるかどうかの審査では、この事業計画の内容が非常に重視されるはずです。

そこで、事業計画とはどんなものか、優れた事業計画を作成のポイントとは何かを知っておきましょう。

4-1. 「事業計画」とは

そもそも「事業計画」とは何でしょうか?
ひとことで言えば、「事業における目標を達成するため、どう行動するかを具体的に計画したもの」です。

特にフォーマットなどは定まっていませんが、一例としては以下のような要素が盛り込まれます。

◎事業プラン名、または事業のテーマ
◎事業内容
◎会社概要(沿革など)
◎自社の強み
◎PL(損益計算書)、BS(貸借対照表)
◎市場調査、競合分析
◎資金繰り計画
◎アクションプラン

開業時や新規事業を始めるときなどに作成し、融資や出資を受ける際や新規取引を行う際などに提出することもあります。

4-2. 事業計画に含めるポイント

事業再構築補助金を申請するためには、認定支援機関とともに事業計画を策定しなければなりません。
ではその際に、何を盛り込んだどんな事業計画にすれば、審査に通りやすくなるのでしょうか。

実はその方向性は、中小企業庁による「事業再構築補助金の概要」の中で示されています。
実際の記載内容を見てみましょう。

出典:中小企業庁「事業再構築補助金の概要」

これを見ると、まず重要なのは「採択されるためには、合理的で説得力のある事業計画を策定することが必要」という一文です。
事業計画の内容が、補助金の審査を左右すると明言しています。

では、そのためにはどんな内容にすればいいのかというと、盛り込むべきポイントとして以下の例が挙げられています。

◎現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性
◎事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事など)
◎事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法
◎実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)

さらに、3月26日に公開された公募要領には以下のように詳細に説明されています。(一部抜粋)

○ 申請する事業再構築の類型について、事業再構築指針との関連性を説明してください。


1:補助事業の具体的取組内容
① 現在の事業の状況、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性、事業再構
築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)、今回の補助事業で実
施する新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組につい
て具体的に記載してください。
事業実施期間内に投資する建物の建設・改修等の予定、機械装置等の型番、取得時期や技
術の導入や専門家の助言、研修等の時期についても、可能な限り詳細なスケジュールを記載
してください。
※必要に応じて、図表や写真等を用いて、具体的に記載してください。
② 応募申請する枠(通常枠、卒業枠、グローバルV字回復枠、緊急事態宣言特別枠)と事業
再構築の種類(「事業再編型」、「業態転換型」、「新分野展開型」、「事業転換型」、
「業種転換型」)に応じて、「事業再構築指針」に沿った事業計画を作成してください。ど
の種類の事業再構築の類型に応募するか、どの種類の再構築なのかについて、事業再構築指
針とその手引きを確認して記載してください。
③ 補助事業を行うことによって、どのように他者、既存事業と差別化し競争力強化が実現す
るかについて、その方法や仕組み、実施体制など、具体的に記載してください。
④ 既存事業の縮小又は廃止、省人化により、従業員の解雇を伴う場合には、再就職支援の計
画等の従業員への適切な配慮の取組について具体的に記載してください。


2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
① 本事業の成果が寄与すると想定している具体的なユーザー、マーケット及び市場規模等に
ついて、その成果の価格的・性能的な優位性・収益性や課題やリスクとその解決方法などを
記載してください。
(参考)経済産業省において、市場動向等を簡易に把握できる「統計分析ツール」を新たに開
発、公開しています。鉱工業品約1,600品目を対象として、簡易な操作で生産動向等を
グラフ化することができます。必要に応じて、自社の事業計画作成にご活用ください。
具体的な活用方法を分かりやすく解説する動画もあわせてご覧ください。
・統計分析ツール「グラレスタ」のURL:https://mirasapo-plus.go.jp/hint/14583/
・解説動画のURL:https://www.youtube.com/watch?v=eOJtZc2jTcE
② 本事業の成果の事業化見込みについて、目標となる時期・売上規模・量産化時の製品等の
価格等について簡潔に記載してください。
③ 必要に応じて図表や写真等を用い、具体的に記載してください。


3:本事業で取得する主な資産
① 本事業により取得する主な資産(単価50万円以上の建物、機械装置・システム等)の名称、
分類、取得予定価格等を記載してください。(補助事業実施期間中に、別途、取得財産管理
台帳を整備していただきます。)


4:収益計画
① 本事業の実施体制、スケジュール、資金調達計画等について具体的に記載してください。
② 収益計画(表)における「付加価値額」の算出については、算出根拠を記載してください。
③ 収益計画(表)で示された数値は、補助事業終了後も、毎年度の事業化状況等報告等にお
いて伸び率の達成状況の確認を行います。  

上記の項目について熟考し、「具体的」かつ「詳細」なものになるように、データや資料の裏付けを用意しておきましょう。

4-3. 事業計画のつくり方

採択されるような事業計画を完成できるように、そのつくり方を知っておきましょう。
ここでは一般的な事業計画について解説します。
これをもとに、公募要領に合わせて必要な事項を盛り込んでください。

4-3-1. 事前構想、リサーチ

まず最初に、事業について以下のことを明確にすることから始めましょう。

◎事業立ち上げの動機:なぜこの事業を始めるのか、その意義や目的
◎事業内容:どんな商品・サービスを提供するか
◎市場環境:その事業の市場規模や競合はどうなっているか
◎ターゲット:ターゲット層はどこか、そのニーズは何か
◎強み:競合他社と比較した強みや優位性は何か
◎売上計画:どの程度の売り上げが見込めそうか
◎販売・マーケティング戦略:どのように顧客を獲得して、どのように売り上げるか
◎将来目標:将来的にその事業で何を目指すのか

その際、根拠なく「たぶんこんなニーズがあるはず」と予想したり、「これくらい売り上げられるだろう」と希望的観測を立てたりするのは厳禁です。
かならず客観的なデータやマーケティングリサーチをもとに考えてください。

統計データは、
◎官公庁の白書や統計
◎各種業界団体の統計
などから探すことができます。

ターゲット層に独自にリサーチして資料にまとめたり、競合他社の店舗などに出向いて顧客層を実地調査するなども大切でしょう。
それらのデータをもとに、事業計画のたたき台を考えてください。

4-3-2. 必要な資金の算出、返済シミュレーション

上記の事項がかたまったら、事業に必要な資金を具体的に算出しましょう。
たとえば、新規事業には主に以下のような費用が必要になります。

◎物件取得費用、賃貸料
 事務所や店舗、工場が新たに必要であれば、その費用
◎設備投資費用
 オフィスの什器や飲食店の調理設備、工場の機械などの費用
◎備品費
 パソコンなどのOA機器、電話、看板など細かい備品の費用
◎仕入代金
 商品や材料の仕入にかかる費用
◎人件費
 従業員の給与など
◎販売促進費
 チラシやホームページなど、販売促進にかかる費用
◎運転資金
 事業を開始してから軌道に乗るまでに、各種支払いに回すための資金

その他、業種によってさらに必要な費用がさまざまあるでしょう。
それらを正確に計算して、必要な資金はいくらかを算出してください。

必要な資金額に対して自己資金が不足している場合は、融資を受ける必要があります。
その場合は、返済のシミュレーションもしておきましょう、
売上見込みに対して、どの程度なら無理なく返済できるのかを考えて、融資申し込みに備えてください。

4-3-3. 具体的な計画作成

準備ができたら、いよいよ事業計画の作成に入ります。
必要な項目について、なるべく具体的に、客観的なデータや資料をもとに計画してください。

盛り込む項目は事業の内容によってもさまざまですが、ここではよくある内容の一例を挙げておきます。

項目

内容

企業概要

会社の所在地、電話番号、問い合わせ先、ホームページなどの基本的な情報に加えて、経営陣のプロフィールも記載します。
また、過去の実績なども付け加えるといいでしょう。

ビジョン・理念

その事業を始める動機、理念、目指す目標を訴えます。
「この事業で社会や顧客に〇〇を提供したい」「現状の✖✖をよりよい◎◎に変えたい」といった思い、情熱を、相手に伝わるように書きましょう。

事業名
プロジェクト名

事業やプロジェクトの名称です。
短くわかりやすいものにしましょう。

事業概要

事業の内容をおおまかに説明します。
どのターゲット、マーケットに向けて/どんな商品・サービスを/どのように提供するか/この事業の特徴は何か
を数行にまとめて、事業の全体像を伝えましょう。

事業内容、
ビジネスモデル

事業概要をさらにくわしく説明します。
・商品やサービスの詳細
・それはどのターゲット層のどんなニーズにこたえるものか
・競合との違い、魅力、アドバンテージ
・価格設定
などについて書いてください。

市場環境、
競合分析

この事業に関する市場の状況と、競合他社のデータ分析です。
市場については、
・現在の状況
・将来の見通し
・社会情勢や経済情勢
・政府の施策や法制度
などを、客観データや資料の裏付けを添えて記しましょう。
競合他社については、
・特徴
・売り上げなどのデータ
・抱えている課題
などをもとに、現状を分析します。
いずれも表やグラフを用いると、相手に伝わりやすいでしょう。

自社の強み、特徴

前項で分析した市場や競合他社の状況を踏まえて、自社の商品やサービスの強み、特徴を差別化します。
・他社より優れている点
・他社が解決できていない課題をどのように解決できるものか
などを具体的に打ち出しましょう。

販売・マーケティング戦略

商品やサービスをどのように世間に周知し、顧客獲得につなげるか、その戦略を立てます。
・販促計画
・広告宣伝
・販売ルート
などを具体的に記載しましょう。
そのために必要な予算や人員の計画も書いてください。

経営プラン

実際に事業を運営していく際の計画です。
・仕入先と仕入代金
・生産体制や生産計画
・人員計画
・スケジュール
などを具体的に記載します。

売上計画、
利益計画

実際にどのように売上をあげるか、その結果利益はどの程度あがるかを算出して記載します。
・キャッシュフロー
・損益計算書
などを予想される金額でつくりましょう。
その際は、希望的観測で大きな数字を書かずに、事前のリサーチデータにもとづいて現実的な数字を出してください。

資金計画

資金の流れ、特に資金調達の計画についても書きましょう。
特に、事業開始から軌道に乗るまでは、運転資金がいくら必要か、それはどこから調達するか、融資を受けるなら返済計画はどうするのかなどを記載します。

課題と対策

その事業が抱える課題とそれをどのように解決するか、対策を挙げておきましょう。
特に事業再構築補助金の場合は、新型コロナウイルスの危機をどう回避するのか、説得力ある対策を考える必要があるでしょう。

以上の項目をもとに、より説得力ある事業計画をつくってください。

4-4. 事業計画作成の注意点

また、事業計画をつくるにあたっては、特に注意したい点がいくつかあります。
以下に挙げますので、参考にしてください。

4-4-1. わかりやすく簡潔に書く

熱意を伝えようと、無駄に長い文章を書く人がいますが、それは逆効果です。
必要なことを簡潔に伝える文章を心掛けてください。

公募要領にも下記の通り指示があります。(公募要領 23ページ)

A4サイズで計15ページ以内での作成にご協力ください。記載の分量で採否を判断するものではありません。

また、専門用語や抽象的な言葉を多用するのもNGです。
補助金の審査をする担当者が、その事業分野にくわしいとは限りませんから、門外漢でもわかりやすい言葉を使いましょう。

4-4-2. 表やグラフを組み入れる

事業計画に説得力を持たせるには、客観的な統計データが不可欠です。
それをよりわかりやすく伝えるために、表やグラフを適宜組み入れるといいでしょう。
数値だけのデータだと実感しにくいものも、グラフにするとひと目で伝わります。

4-4-3. ですます調で書く

客観的な計画書だと考えると、文章を「だ・である」調で書いてしまうかもしれません。
が、事業計画は第三者に見せて、理解や賛同を得るという目的があります。
そのためには、「です・ます」調で書くようにしてください。

4-4-4. 事業計画のフォーマットを参考にする

インターネット上で検索すると、事業計画書のフォーマットやテンプレートが多数ヒットします。
それを参考にするのもひとつの手です。

自分のつくりたいものに近いフォーマットを探して、項目を変更して利用するといいでしょう。

 


5. 申請は認定支援機関を通じて行おう

前述の「事業再構築補助金の概要」には、「事業計画は、認定経営革新等支援機関と相談しつつ策定してください」と指示されています。

この「認定経営革新等支援機関」は「認定支援機関」とも呼ばれ、補助金申請の相談にのってくれるだけでなく、申請の代行までしてくれるところも多くあるものです。
そこでこの章では、認定支援機関と申請代行についてくわしく説明していきましょう。

5-1. 「認定支援機関」とは

まず、「認定支援機関」とは何なのでしょうか?

正式名称は「認定経営革新等支援機関」といい、中小企業や小規模事業者が安心して経営相談などができるように、一定レベル以上の専門知識や実務経験をもつ者に対して、国が認定するものです。
具体的には、
・商工会や商工会議所
・地域金融機関
・税理士
・公認会計士
・弁護士
・中小企業診断士
などがこの認定を受けています。

補助金申請や事業計画策定の相談だけでなく、
・創業支援
・事業承継
・M&A
・生産管理、品質管理
・情報化戦略
・知財戦略
・販路開拓、マーケティング
・人材育成
・人事、労務
・海外展開
・BCP作成支援
・物流戦略
・金融、財務
といった、経営全般についてもサポートをしてくれる心強い存在です。

5-2. 認定支援機関の探し方

現在、全国には約25,000の認定支援機関が認定されています。
その中から、自社の近くで信頼できるところを探して依頼しましょう。

近隣にどんな認定支援機関があるのか知りたい場合は、中小企業庁のホームページに一覧と検索システムがありますので、ぜひチェックしてみてください。

◎中小企業庁ホームページ「全国の認定経営革新等支援機関」(一覧)
◎中小企業庁ホームページ「認定経営革新等支援機関検索システム」

また、自治体の中小企業支援に関する窓口や、商工会議所などに相談するのもよいでしょう。
補助金申請に強い専門家を紹介してもらえる可能性があります。

5-3. 認定支援機関選びのポイント

認定支援機関は数多くあります。
また、金融機関から税理士や中小企業診断士などの士業まで、さまざまな業種が含まれるので、どこを選べばいいのか迷ってしまいますよね。

そこで、認定支援機関を選ぶ際のポイントをいくつか挙げておきましょう。

5-3-1. 補助を受ける事業にくわしい

まず、補助金を受けたい事業に関してくわしいところを探しましょう。

前述したように、事業再構築補助金の申請では、認定支援機関と事業者が一緒に事業計画を策定しなければなりません。
となると、その事業や業界のことを知っている専門家のほうが、より説得力のある事業計画をつくることができますよね。

特にこの補助金事業では、事業計画に以下のことを盛り込むよう求められています。

◎現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性
◎事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事など)
◎事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法
◎実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)

これらの内容を充実させるには、その事業分野や業界に関する知識と経験は、あればあるほどいいでしょう。

5-3-2. 事業計画策定支援の経験が豊富

また、過去に多くの企業の事業計画策定に関わったことがあるかどうかも重要です。

経験豊富な認定機関であれば、どんな内容を盛り込めばいいのか、市場やライバル企業の状況などはどうやってリサーチするのか、どのような書き方をすれば説得力が増すのかなど、事業計画づくりに関してさまざまなノウハウを持っているはずです。

5-3-3. 新規事業立ち上げ支援の経験が豊富

事業再構築補助金は、新しい事業を立ち上げたり、イノベーションを目指す事業者に対して給付されるものです。
そのため認定支援機関には、過去に新規事業立ち上げや経営改善をサポートした経験も必要になるでしょう。

特に、赤字経営の企業を黒字転換させたことがあれば理想的です。
というのもこの補助金を受ける企業は、新型コロナウイルスの影響で経営が悪化している状態で、そこから脱却して事業を建て直したり、新事業を展開して軌道に乗せたいと思っているからです。

それと同様のケースでの成功例を持つ認定支援機関であれば、適切なサポートをしてくれるでしょう。

5-3-4. 金融機関からの融資に強い

もうひとつ重要なのは、補助金の申請と同時に金融機関からの融資を受けられることです。

というのも、多くの補助金と同様に事業再構築補助金も、補助金は“後払い”だからです。
採択(=補助金の給付決定)後に事業を始めて、その結果を報告することではじめて補助金がおります。

そのため、新事業に必要な資金は自社で立て替えなければなりません
もし5,000万円の給付を希望しているなら、先にそれ以上の支出が発生してしまうわけです。

また、採択されたからといって、希望額全額が給付されるとは限りません
実際にかかった費用を報告して、その支出のうち、補助事業の費用として認められた費用だけが給付されます。

ですからまずは、新事業を始めるに際して自前で資金を用意する必要があるのです。

となると、多くの場合は銀行などから融資を受けることになりますよね。
その際に、認定支援機関の担当者が融資に強ければ助かります。

そもそもこの補助金を申請する事業者は資金繰りが苦しいので、融資がおりない恐れもあります。
そんなときにどうすれば融資がおりやすくなるか、どの金融機関にどうアプローチすればいいか、アドバイスやサポートをもらえるでしょう。

5-3-5. 費用が高すぎない

認定支援機関の支援を受けるには、もちろん手数料や申請代行費用などが必要です。
できればそれらの費用は低く抑えたいですよね。
あまりに高額の報酬を要求するところは避けたいところです。

これについては、5-4. 認定支援機関の費用で別に解説しますので、そちらを参照してください。

5-3-6. 親身になって依頼企業のことを考えてくれる

そして最後に、なんといっても依頼者に対して、親身になって相談にのってくれることが重要でしょう。
事業計画策定や補助金申請の経験が豊富だからといって、ノウハウだけ提供して「補助金がとれればいいだろう」という姿勢の相手には、信頼して任せることはできません。

というのも、事業計画はそもそもこの補助金を得るためだけにつくるものではなく、依頼者の事業の目標を明確にし、そのために何をすべきか、どうすれば目標を達成できるかの指針を示すためにつくるものです。
これを一緒につくる認定支援機関にも、目標やそれに臨む事業者側の事情などを共有してもらう必要があるのです。

依頼する前に話をしてみて、こちらの事情や計画にじっくり耳を傾けてくれるか、その実現に向けて親身なサポートをしてくれるかを見極めてください

5-4. 認定支援機関の費用

さて、認定支援機関に依頼する際に、気になるのは費用ですよね。
相場はいくらくらいなのか、どの程度なら妥当なのでしょうか?

いくつかの認定支援機関が費用について公表していますので、調べてみました。

 

認定支援機関

資格者

費用

コンサルティング会社

A社

中小企業診断士

など

・相談料:無料
<依頼者が事業計画書をつくるプラン>
・着手金:15万円~
・成功報酬:補助金額の3%
<一緒に事業計画書をつくるプラン>
・着手金:30万円~
・成功報酬:補助金額の10%

コンサルティング会社

B社

中小企業診断士

など

・事前相談:無料
・着手金:10万円
・成功報酬:
 補助金額の10%(採択補助金額1000万円~3000万円に対して)
 補助金額の5%(採択補助金額3000万円~6000万円に対して)

C労務事務所

中小企業診断士

・相談料:無料
<申請代行まで行うプラン>
・着手金:9万円
・成功報酬:
 申請時の補助金額の10%(補助金額3,000万円までに対して)
 申請時の補助金額の5%(補助金額3,000万円~6,000万円に対して)
<アドバイスと確認のみのプラン>
・着手金:5万円
・成功報酬:申請時の補助金額の2%

税理士法人D

税理士ほか

・着手金:10万円
・事業計画作成:各5万円
・成功報酬:
 補助金額の10%(補助金額1,000万円以下に対して)
 補助金額の5%(補助金額1,000万円超に対して)
・外部専門家相談費用:各5万円
・金融機関折衝:5万円

税理士事務所E

税理士ほか

・申請時支援:15万円
・採択後支援:補助金額の8%(最低50万円~)

これを見ると、事業計画策定と補助金申請代行まで依頼した場合、おおよそ、

◎相談料:無料
◎着手金:10~15万円
◎成功報酬:補助金額の10%、一定額を超える補助金額については5%

となっています。
また、中には着手金なし、成功報酬のみというところもあるようです。

できれば事前にいくつかの認定支援機関をピックアップして、無料相談と見積もりを比較して、納得いくところを選ぶといいでしょう。

 


6. まとめ

いかがでしょうか?
事業再構築補助金とその申請方法について、知りたいことがわかったかと思います。

では最後に、記事の要点をまとめておきましょう。

◎「事業再構築補助金」とは、新型コロナウイルスの影響で事業運営が厳しくなった中小企業や個人事業主が、事業の内容を転換したり新たな分野に事業展開することで立て直しをはかるための補助金
◎申請開始は2021年4月15予定
◎補助金額は100万円~1億円で、事業を始めたあとで給付される(後払い)
◎申請には認定支援機関への相談と事業計画の策定が必要

しっかり事業計画を作りこみ、スムーズに申請できることを願っています。

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