財務とは、会社の未来のお金を管理することです。
具体的には、会社を経営していくためのお金を集め、どのように使うか計画を立て、管理していく業務のことを意味しており、財務戦略の立案、予算管理、資金調達、資産運用などが財務の代表的な仕事です。
このような財務の仕事は、会社全体のお金の流れに気を配らなければならず、会社経営の根幹にかかわる重要な仕事と言えます。
ただ、財務は、経理や会計といったお金に関連している業務と混乱しやすく、「経理、会計、財務は同じ意味?違うの?」と疑問に思う人もいるでしょう。
実は、財務、経理、会計の業務は明確に異なっています。
そのため、会社経営を行う場合などには、違いをしっかり押さえておく必要があります。
そこで、本記事では、
・財務には何か?
・財務の具体的な仕事内容
・経理、会計との違い
について詳しく解説していきます。
また、財務の重要性や会社内に独立させて財務部を置くべきかといった点についても明らかにしていきます。
本記事を読むことで、財務の仕事について深く理解し、経理や会計との違いが明らかになり、自分の会社における財務部のあり方について判断できるようになるでしょう。
目次
1.財務とは会社の未来のお金を管理すること
上述した通り、財務とは、会社の未来のお金を管理することを指します。
もう少し具体的にいうと、会社を経営していくためのお金を集め、どのように使うか計画を立て、管理していくことを意味していて、財務戦略の立案、予算管理、資金調達、資産運用などが財務の代表的な仕事です。
例えば、食品の製造や販売をしている中小企業において、昨年の売上が思わしくなかったために、新商品を作ることを決断した場合を考えてみましょう。
この時、「どうやって新商品を作るための資金を集めるのか?銀行からいくら調達するのか?どうすれば融資が受けられるか?」について計画を立てて実行する(資金調達)ことや、
「予算をどのように振り分けるのか?パッケージのデザインにいくらかかるか?マーケティングにいくらかかるのか?」について戦略を立てて実行する(財務戦略の立案、予算管理)のが財務の仕事です。
このように、財務は、会社経営における未来のお金について計画を立て、実行していく仕事と言えます。
2.財務の具体的な仕事内容
会社によって切り分けは異なりますが、代表的な財務の下記仕事内容について詳しく解説していきます。
財務戦略の立案 |
会社で活用するお金の調達や運用の方針を立てる |
予算編成、管理 |
どのように予算を分配するかを考え、予算が適切に使用されているかを管理する |
資金調達 |
新しい商品やサービスを作ったり、新しい設備を導入したりするためのお金を調達する |
資産運用 |
会社が保有する資産を適切に運用し、増やしていく |
2-1.財務戦略の立案
財務戦略の立案とは、会社で活用するお金の調達や運用の方針を立てることを指します。
経理が作成した決算書から売上や利益を確認して分析し、資金調達や資産運用、予算編成といったお金のプランを立てる重要な仕事です。
例えば、会社の運転資金が少ないようであれば、この後紹介する資金調達の計画を立てたり、また、在庫や仕入れのバランスが悪いようであれば改善案を考えたりなど、会社全体のお金の流れを客観的に見なければなりません。
財務戦略の立案がうまくいかないと「経費が大きくなりすぎてしまった」「予算が足りない」「運転資金が足りない」といった財務状況の問題を抱えることにつながってしまいます。
財務状況の問題を抱えている会社は、対外的に見て信頼性が低下してしまいますし、最悪、業績悪化や倒産の危機に扮してしまうこともあります。
そのため、財務の仕事のひとつである財務戦略の立案は、会社の命運を握る大切な仕事と言えるでしょう。
2-2.予算編成、管理
各部署にどのように予算を分配するかを考え、予算が適切に使用されているかを管理するのも財務の仕事です。
各部署に予算を多く分配できれば言うことはないですが、一般的に全ての部署に希望の予算を振り分けるのは難しいため、全体のバランスを見て、交渉・調整しなけばなりません。
また、予算計画と実績における差異を常に認識し、うまくいっていない場合にどこに問題があるのかを特定する仕事も大切です。
なぜなら、途中で予算がなくなり、取引先への支払いが滞るといった問題が起こった場合には、部署のみの問題ではなく会社全体の信頼性に影響が出てしまうからです。
2-3.資金調達
新しい商品やサービスを作ったり、新しい設備を導入したりするにはお金が必要ですが、そのお金を調達するのも財務の仕事です。
資金調達方法としては、金融機関から資金を調達したり、株式や社債を発行したりといった方法があります。
資金調達はやろうと思ってすぐにできるものではなく、常に金融機関や投資家と良好な関係を築いておき、必要な時に資金を調達できるように準備しておかなくてはなりません。
また、利益が出ていたとしても現金であるキャッシュが不足すると、支払いなどが滞り、最悪倒産してしまうということにもなりかねないので、会社の現金の状況にも常に目を配っている必要があります。
資金調達の仕事は、常に中長期的な視点で、会社のお金の流れを把握しておかなければならない重要な仕事と言えます。
2-4.資産運用
会社が保有する資産を適切に運用し、増やしていくのも財務の仕事のひとつです。
会社のお金の中にはすぐに必要となる運転資金の他に、すぐに必要ではない余剰資金と呼ばれる部分があります。
そのうちの余剰資金をうまく活用し、投資商品を購入したり、M&A(企業の合併・買収)を行なったりして、余剰資金を増やすのも大切な仕事のひとつです。
会社が使えるお金を増やす大切な仕事です。
資産運用においては、長期的な計画性を持ち、金融機関の担当者などと良好な関係性を築いておくことが重要になります。
他にも下記のような仕事を財務が担当していることも多いです。
IR |
株主などに対して、経営や財務状況、今後の見通しについて広報活動を行う仕事のこと。 |
監査対応 |
会社における決算書の内容に偽りがないか、第三者機関がチェックすることを監査と言いますが、その対応を財務の業務として行うこともあります。 |
以上、財務の代表的な仕事内容について紹介しました。
会社によってどのような仕事が財務に振り分けられるかは様々ですが、上述のような仕事内容を担うことが多いです。
3.経理・会計との違い
「財務」と混同されやすい仕事として、経理・会計があげられます。
会社によっては、経理・会計・財務全てを同じ部署で担当していることがあるために、違いが分かりにくいと考える人も多いでしょう。
しかし、財務・経理・会計は明確に違います。
本章では、経理と会計について具体的に解説し、財務との違いを明らかにしていきます。
3-1.経理とは会社の日々のお金の流れを管理すること
経理とは、会社の日々のお金の流れを管理することを指します。具体的には、仕入れの管理や給与計算、請求書処理や税金の計算などがあげられます。
会社経営においてお金が発生する場面は言うまでもなく多く、例えば、「従業員が出張に行った際の費用」「商品を仕入れた費用」を記録しないで、行き当たりばったりの経営をしていたら、赤字が出た際にどの費用が原因なのか突き止められなくなってしまいます。
また、経理にとって大切な仕事として、日々のお金の出入りをまとめた決算書を作成することがあげられます。
決算書とは、簡単に言うと、「会社経営においてどれくらいの売上が出て、どれくらいの損失があったのか」が記載されている会社の財政状況をまとめたものです。
決算書があるからこそ、株主や投資家に向けて会社の財政状況を伝えることができ、さらに対内的にも経営状況を把握し改善することにつなげられるのです。
この決算書を作るためには、経理が日々コツコツと行なっている仕入れの管理や請求書処理が不可欠であるため、経理は会社にとって大切な役割を担っていると言えます。
財務との大きな違いは、財務は予算管理や資金調達のような「会社の未来のためのお金を管理する」のに対して、経理は、請求書処理や伝票作成といった「会社で過去に発生したお金の流れを管理する」点と言えるでしょう。
【経理の具体的な仕事まとめ】
経費計算 |
受け取ったお金と支払ったお金を帳簿に記録し、チェックする仕事 |
伝票作成 |
発生した金銭のやり取りを伝票に記録する仕事 |
決算書作成 |
経理における最も重要な仕事と言われている。損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)といった決算書を作成し、会社の財政状況を明らかにする仕事 |
給与計算 |
従業員の勤務時間や残業時間を確認しながら各種控除額を引くなど、給与計算を行う仕事 |
税務申告 |
法人税など会社が支払う税金の計算を行う仕事 |
3-2.会計とはお金や物のやり取りを管理すること
会計とは、「お金や物のやり取りを管理する」という意味を持ちます。
また、会計には、下記のように大きく分けて「財務会計」と「管理会計」の2つの種類があります。
管理会計 |
経営者や取締役など会社内部の人に向けて情報提供するために行われる会計のこと。 |
財務会計 |
株主や取引先、銀行など外部へ情報提供するために行われる会計のこと。 |
会計の概念としては、上述した通りではありますが、経理の「会社の日々のお金の流れを管理する」と会計の「お金や物のやり取りを管理する」は意味が近く、混同しやすいかもしれません。
確かに、経理と会計の業務は重なっている部分が多いですが、違いとしては、経理は「お金の流れ」に特化した仕事を指すのに対し、会計は、金銭だけでなく建物や設備、物品といった会社の全資産を管理することを意味しています。
つまり、会計業務の概念の中に経理業務が含まれているのす。
そのため、会社内に会計部署は独立して作られることは少なく、経理が役割を担うか、各部署がそれぞれ担当するという形になることが多いです。
3-3.財務と経理・会計の違い一覧
財務、経理、会計の違いをまとめました。
|
財務 |
経理 |
会計 |
意味 |
会社の未来のお金を管理すること |
会社の日々のお金の流れを管理すること |
会社のお金や物のやり取りを管理する |
具体的な仕事内容 |
・財務戦略の立案 |
・経費記録、管理 |
特段独立した部署がないことが多い。 |
それぞれの違い |
・財務は予算管理や資金調達のような「会社の未来のためのお金を管理する」仕事 |
4.財務は会社にとって重要な役割を果たしている
財務、経理、会計がどのような業務であるかについて解説してきましたが、財務が会社にとって重要な仕事であることは理解してもらえたでしょう。
財務は、経理が作った決算書を分析し、会社の財務計画を立案するといった、会社経営の根幹に関わる、経営や企画に近い仕事を行なっています。
これら全体的な会社のお金の流れを見渡す業務が機能していなければ、運転資金の不足や予算の不足などで、最悪、倒産の危機に扮してしまうかもしれません。
また、財務計画に従って資金調達や資産運用を行う仕事も担当しているために、高い交渉力や専門性を必要とする業務でもあります。
もちろん、日々のお金の流れを記録する経理も会社にとって不可欠な仕事ではありますが、請求書処理や給与計算などルーティンワークと言えるものがほとんどです。
そのため、経理と財務では大きく仕事内容や必要なスキルが異なるために、大企業ではそれぞれ部門を分けて、仕事を明確に区別していることが多いです。
5.中小企業では財務部を置かないところもある
前章で解説した通り、財務は、経理や会計とは明確に違う仕事でおり、必要なスキルも異なるために、大企業ではそれぞれ部署を分けて設置していることが多いです。
しかし、実は、中小企業や小規模企業おいては、財務部を置かないところもあります。
財務部は、経営や企画に近い専門性の高い仕事であるゆえに、最適な人材を探すことが難しかったり、人件費の負担が多かったりするためです。
そのため、下記のような形で財務の仕事をこなすところが多いです。
・社長が財務を担当する
・経理担当者が財務を担当する
5-1.社長が財務を担当するケース
財務の仕事は、会社全体のお金の流れを見渡す経営に近い仕事であることから、中小企業では社長が財務を担当するケースが多いです。
ただ、財務は経営に近い仕事とはいえ、経営とは明確に違い、どちらかと言うと、経営者のアイデアを財政面から冷静に捉えるといった視点が必要になります。
また、売上を増やすことに注力するのが経営者であれば、売上ではなく常に流動性の高い現金が会社にあることに注力し、資金調達のことを考えなければならないのが財務です。
これらのことから、社長が財務を兼任するのは、小規模企業でシンプルなお金の流れのみが発生する会社であればなんとかなるかもしれませんが、本来は仕事の性質が大きく違うことから、望ましいこととは言えません。
会社の規模が大きくなりお金の流れが複雑化してきた場合、社長が財務を兼任するのは、大きな負担になってしまうでしょう。
5-2.経理担当者が財務を兼任するケース
お金のスペシャリストとして共通している経理と財務を同じ担当者で回している会社も多いです。
経理が作成した決算書を分析して、財務が財務戦略を立てるなど、経理と財務の仕事は密接に関連しているためでしょう。
ただ、こちらも小規模企業でシンプルなお金の流れのみであれば問題はないかもしれませんが、資金調達をする機会や部門が増えたりなどすると、財務にかかる業務の負担が大きくなってしまいます。
経理は「過去会計」の意味を持ち、財務は「未来会計」の意味を持つために、扱うお金の種類は大きく異なります。そのため、兼任することが、間違いにつながってしまう可能性も否定できません。
また、本来、経理はルーティンワークであり、お金の細かい計算が多いために、几帳面な性格の人や慎重な性格の人が向いています。
一方で、財務は、財務戦略の立案や資金調達といった仕事の内容から、情報分析力や決断力、交渉力がある人が向いていて、さらには、元銀行員や元経営者が担当することが多いような専門性の高い仕事になります。
このように向いている人も違うために、経理と財務を部署として兼任することは、最適な選択とは言えないでしょう。
6.財務の担当者を置くのが難しければ専門家への相談をおすすめ
財務が会社にとって重要な役割を果たしていること、また、本来は、経営者や経理とは別の人材が担当することが好ましいことが理解してもらえたでしょう。
ただ、中小企業や小規模企業おいては、財務担当を単独で置くことや、財務の専門知識のある人材を探すことは難しいかもしれません。
そこで、財務担当を確保するのが難しい場合には、会計士や税理士といった専門家に業務を委託するという方法があります。
会社経営において重要な役割を果たしている財務の仕事を専門家に依頼することで、トラブルが起きた時でも安心して任せることができます。
我々ビジョン税理士法人においても、財務にかかわる下記のような業務の依頼を受け付けております。ぜひお気軽にご相談くださいね。
【ビジョン税理士法人でサポートできること】 |
7.まとめ
本記事では、
・財務とは何か?
・財務の具体的な仕事内容
・経理、会計との違い
について詳しく解説しました。
財務とは、会社の未来のお金を管理することを指します。
もう少し具体的にいうと、会社を経営していくためのお金を集め、どのように使うか計画を立て、管理していくことを意味していて、財務戦略の立案、予算管理、資金調達、資産運用などが財務の代表的な仕事です。
財務と混同しやすい業務として、会計、経理がありますが、それぞれの違いは下記の通りです。
|
財務 |
経理 |
会計 |
意味 |
会社の未来のお金を管理すること |
会社の日々のお金の流れを管理すること |
お金や物のやり取りを管理する |
具体的な仕事内容 |
・財務戦略の立案 |
・経費記録、管理 |
特段独立した部署がないことが多い。 |
それぞれの違い |
・財務は予算管理や資金調達のような「会社の未来のためのお金を管理する」仕事 |
また、財務は会社経営において非常に大切な仕事で、機能しなくなれば会社倒産の危機に陥ります。
そして、専門性の高い仕事であるために、経理や会計とは別に担当者を設置する方がいいでしょう。
ただ、担当者を置くのが難しければ、財務の仕事を会計士や税理士といった専門家にお願いするのもひとつの方法です。
本記事を読むことで、財務の仕事について深く理解し、経理や会計との違いが明らかになり、自分の会社における財務部のあり方について判断してもらえたら幸いです。
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