「法人化をしたいけど何から始めたらいいの?」
「会社設立の手続きをスムーズにするには?」
「はじめてでも自分で会社設立の手続きってできるの?」
「そもそも株式会社と合同会社では何が違うの?」
こんな疑問をお持ちではないですか?
現在は、株式会社でも代表取締役1人、資本金1円から設立できるように、会社設立自体のハードルは下がっています。
それでも、会社設立の準備や手続きでやることは多いので、その流れを知ることが大切です。
会社設立の流れを大きく分けると、次の5つのステップになります。
スムーズに会社設立をするには、事前に必要となる準備や手続きを把握しておくことが重要です。
この記事は、はじめて会社設立するという方や、設立するにしても株式会社と合同会社どちらにするか迷われている方などのために、法人登記が完了して会社設立に至る流れの全体像を見ていきます。
大まかな流れを知っていただく事を優先しているため、内容に至らない点もあるかと思いますが、他に弊社の記事もありますので、併せて参考にしていただければ幸いです。
目次
1.STEP①会社の基本事項を決定する
会社設立のための最初のステップは、基本事項の決定です。
基本事項とは次の8項目になります。
・商号の決定
・会社の事業目的
・本店所在地の決定
・資本金額の決定
・事業年度と決算月の決定
(以下、株式会社のみ)
・発起人(出資者)の決定
・発行可能株式総数
・取締役の任期の決定
なお、定款に記すことになる基本事項を、のちに変更するとなると手間も別途費用もかかりますし、取引先との兼ね合いなどで不都合が生ずる可能性も否定できないので、できるだけ会社設立時にしっかり検討した方がよいでしょう。
1-1 商号の決定
「商号」とは、会社名のことです。
会社名には、やりたいことや理念を持たせる、経営者のこだわりを前面に出す、ドメインが取得できる名前にするなど、さまざまな考えがあることでしょう。
基本的には、同一住所に同一の商号がある場合を除けば、法務局での登記は可能です。とはいえ、
・「株式会社」「合同会社」のように、会社の種類を表す文字を入れる
・公序良俗に反する言葉は入れられない
・大企業や有名企業そのままは論外で、類似しているとトラブルに発展する可能性もある
など制約が多いのもまた確かです。
後日の変更も可能ではありますが費用がかかりますし、頻繁に社名が変わるようでは事業にも悪影響を及ぼすことでしょう。ネット検索なども活用しつつ、慎重に検討しましょう。
1-2 会社の事業目的
事業目的とは、会社を設立するにあたり、何を事業とするのかを目的として設定するものです。のちに定款に記載するので、どんな業務を行うのか明確かつ簡素にまとめておきましょう。
原則、定款に記載していない事業を展開することはできません。記載されていない事業を行う場合は、定款変更の手続きが必要となります。
事業の記載数に上限はありませんので、将来的にやる可能性のある事業を多めに書いておいても問題ありません。
ただし、事業目的の方向性があまりにも多すぎると何をやる会社なのか不明確になり、社会的信用度が低くなる可能性がある点は注意しましょう。
1-3 本店所在地の決定
会社の本店をどこに置くか、場所を決定します。
あくまでも法律上の住所であるため、実際に事業活動する場所と異なっていても問題ありません。
(とはいえ、登記上の本店所在地宛に文書が届くこともあるので、あまりにも無関係な場所にするようなことは避けた方がよいでしょう)。
自宅はもちろん、マンションの一室やレンタルオフィス、バーチャルオフィスを本店所在地として定めることも可能です。
ただし本店所在地を移転する場合、登記の変更が必要となるため、長期的に業務を行える場所に決定することをおすすめします。
もちろん、本店所在地が変わるということは、会社が大きくなる事と前向きに割り切るのも結構です。
1-4 資本金額の決定
「資本金」は自分自身のお金とは全く別物であり、あくまでも会社のお金です。
会社を設立するにあたり、会社にどれくらいお金を入れるかを決定します。
資本金の額は1円以上であれば会社設立が可能です。しかし、少額すぎると信用能力に疑問を持たれてしまいます。
資本金は、いわば設立当初の運転資金でもあるので、多いに越したことはありませんが、最低でも事業が軌道に乗るまでの半年間ぐらいを持ちこたえられる金額にすると良いでしょう。
なお、資本金額が1000万円未満かつ売上が1000万円未満の会社は消費税が最長で2期免除されます。
(とはいえ、2023年10月よりインボイス制度が始まりますので、そちらとの兼ね合いになります)。
1-5 事業年度と決算月の決定
会社は、一定期間の収入や支出を整理して経営状況や財務状況を明確にするために決算書を作成し、(株式会社ならば)株主総会で承認を得る作業を行います。
この一連の作業を決算といい、対象となる一定の期間が事業年度です。
事業年度は任意で決める事が出来るので、業態など都合が良い所に合わせることも可能です。
詳細は、こちらの記事を参考にしてください。
決算期は何月にする?会社を始めた時に知りたい事業年度の決め方
※会社設立時に忘れてはいけない印鑑作成 こちらは会社設立に際して決める基本事項とは少し異なりますが、用意する必要がある物です。 会社設立時に一般的に用意するのは以下の3種類です。 ・法人実印(代表者印・丸印) ・銀行印 ・認印(社印・角印) 当初は代表者個人の実印を登録してのちに変更という方法も可能ですが、のちに変更する手間もかかりますので会社設立に際して用意するのが合理的でしょう。 |
この後の3つの基本事項は、株式会社のみの話になります。
1-6 発起人(出資者)の決定【※株式会社のみ】
株式会社の設立には、1人以上の「発起人」が必要です。
発起人とは、会社設立の際に定款の作成や資本金の出資など、会社設立の手続きを行う人のことを言います。
1人でも複数人でも問題ありませんが、発起人は必ず株式を取得する必要があります。
会社の決定方針は、株式数をベースにした多数決で決められるので、発起人を募る場合は信頼できる人を選ぶことが大切です。
発起人に資格制限は無く、親族や配偶者、法人でもなることができます。
1-7 発行可能株式総数【※株式会社のみ】
発行可能株式総数とは、株式会社が発行することができる株式の総数の上限です。
会社はこの発行可能株式総数を超える株式の発行はできません。
会社法では、設立登記までに発行可能株式総数を定款で定めなければならないとしています。
また、一度決めた発行可能株式総数を超えた株式を新たに発行する場合は、事前に株主総会の特別決議により、定款を変更する必要が出てきます。
今後、事業を拡大して多くの株式を新たに発行する意思のある場合は、発行可能株式総数を多めに設定しておくことで、新たに株式を発行する必要が出た場合、登記変更の手間と費用を節約できます。
1-8 取締役の任期の決定【※株式会社のみ】
株式会社の取締役には任期があります。
任期は原則2年で、任期満了したら再選し、役員変更の登記申請が必要になります。
任期満了後も継続して役員を務める場合は、一度退任した上で再任の手続きをすることで継続できます。何も手続きをしなかった場合、自動で継続とはなりません。
そこで、取締役の任期を10年に伸長することも認められています。
何度も再選しなおすのが面倒であれば長めの任期を設定することもできますが、10年の任期の場合、取締役に任命した人物と方針が合わなくなり対立したり、途中解任した際の違約金のリスクも考えられます。
家族経営ならそんなリスクは無い、とも言いきれない所もあります。
一人経営ならともかく、長期の任期を導入する場合は慎重に検討するようにしましょう。
2.STEP②定款の作成・認証
定款とは会社の基本情報や規則などが記された「会社の憲法」のようなもので、会社設立にあたって最も重要な書類です。
その内容は、STEP①で決定した基本事項を元にして作成します。
定款はA4サイズ縦で横書きで作成し、末尾には発起人全員の氏名を書いたうえで捺印するなど、いろいろな決まりごともあります。
また、定款は、保存用・公証役場提出用・法務局提出用の3部が必要です。
この章では、定款の作成に当たって記載する3つの事項、定款の構成、そして株式会社の場合は欠かせない定款の認証について見ていきます。
2-1 定款に記載する事項
2-1-1 絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、定款の中に必ず記載しなければいけない事項です。
“絶対的”というだけあって、その記載が無いと定款が無効になってしまいますので注意しましょう。
【株式会社の場合】
・事業目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
・発起人の氏名又は名称と住所
・発行可能株式総数
【合同会社の場合】
・事業目的
・商号
・本店の所在地
・社員の氏名又は名称および住所
・社員全員が有限責任社員である旨
・社員の出資の目的及びその価値または評価の基準
2-1-2 相対的記載事項
相対的記載事項とは、決めたならば定款に記載しないと有効にならない事項です。
記載が無いと定款が無効になったりはしませんが、会社それぞれの事情を反映させたルールを有効にするためには、よく検討して記載することが大切です。その一部をご紹介します。
【株式会社の場合】
・株式の譲渡制限に関する規定
・株主総会などの招集通知を出す期間の短縮
・役員の任期の伸長
・株券発行の定め
・現物出資
・財産引渡
…など
【合同会社の場合】
・業務を執行する社員の定め
・代表社員の定め
・持分の相続に関する定め
…など
2-1-3 任意的記載事項
任意的記載事項とは、決めたとしても定款に記載してもしなくていい事項です。その一部をご紹介します。
・事業年度
・取締役などの役員の数
・基準日
…など
2-2 定款の構成
実のところ、定款の構成に決まりは無く、前記の“絶対的記載事項”が記されていれば問題ないわけです。
とはいえ、特に株式会社の定款はどうしても記載事項が多くなりますから、次のような総則、株式、株主総会、取締役、計算、附則の全6章に分けて構成するのが一般的です。
章 |
表題 |
記載事項 |
内容 |
第1章 |
総則 |
・商号 |
会社の基本情報 |
第2章 |
株式 |
・発行可能株式総数 |
株式に関する取り決め |
第3章 |
株主総会 |
・開催時期 |
会社の意思決定機関についての取り決め |
第4章 |
取締役 |
・役員の人数 |
役員について |
第5章 |
計算 |
・事業年度 |
会社の決算など |
第6章 |
附則 |
・設立時の資本金の額 |
第5章までの記載事項以外 |
…と述べてきましたが、記載事項と構成については難しく感じられることでしょう。
そこで、公的にテンプレートが用意されていますので、そちらを活用されることをおすすめします。
(申請書様式の記載例の中に、定款の書式もあります)。
2-3 定款の認証【※株式会社のみ】
定款を作成したら、株式会社の場合は定款の認証が必要です。この節の内容は、合同会社は関係ありません。
定款の認証とは、その定款の記載が正しいものであるか第三者に証明してもらうことです。
認証は公証役場という所で行いますが、本店所在地のある都府県の公証役場にて可能です(北海道のみ、本店所在地を管轄する地域の法務局管内にある公証役場となります)。
そして、定款の認証には以下のものが必要です。
・定款3通(保存用・公証役場提出用・法務局提出用)
・発起人の印鑑証明書(全員分)
・収入印紙(紙の場合):4万円
・認証手数料:5万円
・定款の謄本交付手数料:1ページにつき250円
2-3-1 紙の定款で認証してもらう場合
定款の認証の大まかな流れは、以下のようになります。
・管轄の公証役場には事前に電話をかけ、訪問を希望する日時を指定する
・作成した定款をファックスすることで事前にチェックしてもらう
・発起人全員で公証役場に行く(欠席者は委任状が必要)
・公証役場で認証を受ける
2-3-2 電子定款で認証してもらう場合
電子定款、つまりデータで作成したものをもって定款として認証を受けるわけです。
・紙の場合必要な4万円の収入印紙が不要
というメリットが一応ありますが
・マイナンバーカードとカードリーダー、電子署名に対応したソフトなどが必要
(よって、既にこの辺の機器類を持っているわけでもない限り、印紙代が不要というメリットが相殺される可能性が高いです)。
・申請はオンラインで行えるが、認証を受けたデータを公証役場に取りに行く必要がある
(オンラインなのに変だと思われるかもしれませんが、認証は対面で行う事が法律上定められているので、このような形になります)。
つまり、ご自身で紙ではなく電子にするメリットは驚くほどに少ないのです。
3.STEP③資本金の払い込み
ステップ③は、資本金の払い込みです。
ステップ①で決定した資本金の金額を所定の銀行口座に払い込む手続きを行います。資本金の払い込みは、下記のような流れで進めます。
▼資本金の払込の流れ
1. 発起人個人の銀行口座を用意する
2. 1.の銀行口座に資本金を振り込む
3. 資本金の払い込み内容の明細コピーを作成する
4. 払込証明書を作成し、3.のコピーと一緒に綴じる
5. 4.の書類の継ぎ目に会社代表印を押印する
6. 法人設立完了後、法人名義の口座を開設する
7. 資本金諸金額を個人名義から法人名義へと移行する
資本金払い込みを行うステップは、会社設立登記に必要な書類の1つ「払込証明書」を作成するための重要な手続きです。
抜け・漏れのないよう、確実に行いましょう。
4.STEP④登記書類の作成
ステップ④では、登記書類の作成を行います。
事前準備が完了したら、法務局で登記するための書類を揃えていきます。
登記申請に必要な書類は、株式会社の場合は以下のようなものがあります。
合同会社の場合は、次のように若干少なくなります。
・合同会社設立登記申請書
・登録免許税の収入印紙を貼付した台紙
・定款
・代表社員、本店所在地及び資本金決定書
・代表社員の就任承諾書
・資本金の払込の証明書
・資本金の額の計上に関する代表社員の証明書
なお、申請書の書式などは法務局のホームページに用意されています。
5.STEP⑤法務局へ申請する
書類の準備が万全に整ったら、法務局へ申請書を提出します。
登記申請は、設立する会社の本店所在地を管轄する法務局へ書類一式を提出すれば完了します。
しかし、法務局へ申請する際に知っておいた方が良い注意ポイントが5つありますので、確認しておきましょう。
▼登記申請時に注意するポイント
1.会社設立の登記申請は、原則として代表取締役が行う
2.申請書に設立手続き完了日として記載した日から2週間以内に提出する
3.登記申請書を法務局へ提出した日が会社設立日となる
(設立日にこだわりを持つ方は、書類の不備がないようにしっかりチェックしてから、希望の日に確実に受付をしてもらいましょう)。
4.登記申請は郵送でも可能
(郵送する際は、書類がきちんと届いたことを確認できるよう書留または配達記録郵便で送りましょう。また、郵送の場合は書類が法務局に到着した日が会社設立日になります。設立日にこだわりを持つ場合は、配達日を指定して送るようにするとよいと思いますが、地理的に出向くのが難しいわけでもない限り、法務局に出向かれるのが確実ではあります)。
5.登記申請には高額な収入印紙が必要
(登記申請書に貼る収入印紙は、株式会社なら15万円、合同会社なら6万円と高額です。一般的に収入印紙はコンビニや郵便局で購入するものですが、法務局内にも印紙売場がありますので、まずは法務局で書類をチェックしてもらい、提出する直前に購入することをおすすめします)。
※法人設立ワンストップサービスは要注意 法人設立に当たっての手続きを進めやすくする目的で、デジタル庁が推進しているのが「法人設立ワンストップサービス」です。 マイナンバーカードと利用環境があれば、登記や定款の認証に止まらず、その後のいろんな役所に提出する書類をオンライン上一括で行えるものです。 今後改善されればまだしも、今のところは役所を回って担当者に聞きながら申請書類を記入する方が確実ですし、手間を減らしたいならば専門家に依頼するのが一番でしょう。 (なお、東京、仙台、福岡など一部の自治体では「開業ワンストップセンター」という窓口を開設している所もあります。登記や定款の認証などを1ヶ所で済ませられる上に、専門家に相談もできるのは便利ですが、全ての自治体が開いているわけではありません)。 |
さいごに
以上、会社設立の流れについて、大まかに5つのステップで見てきました。
もっとも、株式会社の場合は「定款の認証」が大きな事なので、実質6つのステップという感じでしょうか。
一方の合同会社は「定款の認証」が不要、その他細かい点で株式会社と異なります。
しかも株式会社に比べれば、用意する書類も少なく、設立にかかる時間が比較的短く、費用も安いという特徴があります。
会社設立は、やることも決める事も書類の数も多いですし、法務局や公証役場などなじみの薄い場所に行くのも大変だと思いますが、自力で出来ないことはありません。
しかし、事業と併行して行うとなると楽ではありませんし、間違いなく手続きを進めたい、そもそも株式会社と合同会社どちらが自分には向いているのか相談したい…という向きにはやはり、相応の費用がかかるとしても、専門家に依頼されるのが有力な方法と言えるでしょう。
弊社ビジョン税理士法人は社会保険労務士事務所を併設し、司法書士とも提携していますので、会社設立に当たって手続面のサポートも可能です。
さらに創業融資に止まらず、会社を設立した後の経営を含めた長いお付き合いが可能です。
ぜひご検討ください。
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