
事業承継税制は、要件を正しく満たすことで相続税や贈与税の負担を大きく抑えられる制度です。
一方で、「自社が対象になるのか」「要件が複雑で判断できない」と不安を感じる経営者も少なくありません。
この記事では、事業承継税制の基本から、先代経営者・後継者・会社ごとの要件、活用時の注意点について詳しく解説します。
目次
事業承継税制とは?
事業承継税制とは、中小企業の円滑な事業承継を支援するための税制上の措置です。
非上場株式などの事業用資産を後継者に承継する際、相続税や贈与税の納税を一定要件のもとで猶予・免除できます。
2009年の税制改正で創設され、事業承継ニーズの高まりを背景に、要件緩和や適用範囲の拡大が進められてきました。
特に2018年の税制改正では特例制度が導入され、納税猶予割合100%や対象株式数の上限撤廃など、大幅な拡充が行われています。
承継計画の事前提出や承継後の事業継続などの要件を満たすと、税負担を抑えつつ事業を次世代へ引き継ぐことが可能です。
事業承継税制が設けられた背景
事業承継税制が設けられた背景には、中小企業経営者の高齢化と後継者不足の深刻化があります。
中小企業庁の試算では、2025年までに経営者の約6割が70歳以上となり、約127万社が後継者不在とされています。
また、近年は黒字であっても廃業する企業が増え、雇用や地域経済への影響が懸念されてきました。
特に事業承継時の相続税負担は、自社株評価額が高い企業ほど後継者の大きな障壁となります。
こうした課題を受け、2009年度に一般措置、2018年度には特例措置が創設され、事業承継を税制面から支援しています。
事業承継税制の要件
事業承継税制の要件とは、制度を適用するために満たすべき条件のことです。
本制度は相続税・贈与税の負担軽減を目的としていますが、先代経営者、後継者、会社それぞれに要件が定められています。
これらの要件を一つでも満たさない場合、事業承継税制は適用できません。
また、承継時だけでなく、承継後も一定期間にわたり継続要件を守る必要があります。
以下では、事業承継税制の要件を項目ごとに解説します。
先代経営者について確認すべき事業承継税制の条件
先代経営者について確認すべき事業承継税制の条件は、承継前に会社の代表者であったことです。
相続開始時または贈与直前に、先代経営者とその親族で総議決権の過半数を保有し、後継者を除く親族内で筆頭株主である必要があります。
また、生前贈与による承継では、贈与時点で代表取締役を退任していることが条件です。
ただし、代表退任後も有給役員として会社に残ることは認められています。
特例措置を利用する場合は、過去に本税制を用いた贈与がなく、特例承継計画に先代経営者として記載されていることが求められます。
後継者側で満たしておきたい事業承継税制のポイント
後継者側で満たしておきたい事業承継税制のポイントは、議決権や役員要件を満たすことです。
後継者とその親族で総議決権数の過半数を保有し、同族内で一定の株式保有割合を確保する必要があります。
後継者が複数いる場合は、各後継者が総議決権数の10%以上を持ち、他の親族より多く保有することが条件です。
贈与による承継では、後継者は贈与時に18歳以上で、直前まで3年以上役員かつ代表取締役であることが求められます。
相続による承継でも、相続開始直前の役員要件や、開始後5ヶ月以内の代表取締役就任が必要です。
事業承継税制が使える会社・使えない会社の条件
事業承継税制が使える会社・使えない会社の条件は、会社が中小企業者に該当するかどうかです。
大前提として、大企業や上場企業は対象外で、非上場かつ従業員が1名以上いる必要があります。
中小企業者の範囲は業種ごとに異なり、製造業では資本金3億円以下または従業員300人以下が基準です。
一方、風俗営業を行う会社や、資産運用を主目的とする資産管理会社などは対象外となります。
また、事業実態が求められ、直近事業年度に売上があることも条件に含まれます。
事業承継後も注意が必要な継続要件と管理ポイント
事業承継後も注意が必要な継続要件と管理ポイントは、承継後一定期間の要件を守り続けることです。
承継後5年間は、後継者が代表者兼筆頭株主であり、猶予対象株式を全て保有し、雇用を維持する必要があります。
さらに、会社が資産管理会社等に該当しない、事業実態が継続していることも求められます。
5年経過後は、後継者が引き続き株式を保有していることが主な条件です。
猶予期間中は届出義務があり、要件違反が生じた場合は猶予税額と利子税の納付が必要です。
事業承継税制のメリット
事業承継税制のメリットは、事業承継に伴う相続税・贈与税の負担を大幅に軽減できる点です。
事業承継税制を活用することで、主に次のようなメリットがあります。
<事業承継税制のメリット>
- 自社株式にかかる相続税・贈与税が100%猶予・免除され、株式売却や多額の資金準備が不要になる
- 特例措置では後継者を最大3人まで選定でき、親族外承継や共同経営にも対応できる
- 将来の売却・廃業時に株価が下落していれば、税額を再計算し差額分の負担が免除される
これらの仕組みにより、資金繰りの不安を抑えながら、円滑な世代交代を進めることが可能です。
事業承継税制のデメリット
事業承継税制のデメリットは、継続的な手続き負担と要件管理のリスクがある点です。
事業承継税制を利用する際は、次の注意点も理解しておく必要があります。
<事業承継税制のデメリット>
- 免除確定まで長期間を要し、都道府県や税務署への報告が必要で手続きが煩雑
- 代表辞任や株式譲渡などで要件を満たさない場合、猶予税額に利子税を加えて納付が必要
- 取消事由が多く、承継後も条件管理に細心の注意が求められる
- 特例措置は時限制度で、2026年3月末までに特例承継計画の提出が必要
これらを踏まえ、制度の適用可否は事前に慎重に検討することが重要です。
事業承継税制の要件を確認するチェックポイントと注意点
事業承継税制の要件を確認するチェックポイントと注意点は、先代経営者・後継者・会社の要件を漏れなく確認することです。
事業承継税制の適用には、厳格で複雑な要件が複数定められており、要件を正確に把握する必要があります。そのうえで、自社が条件を満たすかどうかを慎重に確認することが重要です。
また、自社だけで判断が難しい場合は、早めに専門家へ相談することも検討しましょう。
次に、確認のポイントと注意点を解説します。
事業承継税制の要件チェックリスト(先代・後継者・会社)
先代経営者は、承継前に会社の代表者であり、親族等で議決権の過半数を保有する筆頭株主である必要があります。
後継者は、親族等と合わせて議決権の過半数を確保し、同族内で筆頭株主となることが条件です。
会社は非上場の中小企業者で、従業員が1名以上おり、風俗営業や資産管理を主たる事業としていないことが求められます。
これらすべての要件を満たしてはじめて、事業承継税制の適用を受けることができます。
自社だけで判断が難しいケースと専門家相談の目安
自社だけで判断が難しいケースと専門家相談の目安は、制度理解や実務対応に迷いが生じた場合です。
事業承継税制は内容が複雑で、要件判断や手続きに専門知識が求められます。
例えば、要件に該当するか判断が微妙な場合や、特例承継計画の策定・提出で対応に迷うケースです。このような場合は、早めに税理士などの専門家へ相談することが重要です。
専門家に相談すれば、要件確認から申請書類の準備まで一貫した支援を受けられます。
ビジョン税理士法人でも事業承継税制の相談に随時対応しており、専門家が自社の状況に合わせた適切なアドバイスを提供します。
まとめ|事業承継税制の要件に関する相談はビジョン税理士法人へ
事業承継税制を活用すれば、相続税・贈与税の負担を抑えつつ円滑な事業承継が可能です。
一方で、適用には厳格な要件があり、事前準備を怠ると制度を活用できない場合があります。
そのため、メリットとデメリットを正しく理解し、早い段階から対策を進めることが重要です。
ビジョン税理士法人では、要件確認から特例承継計画の策定、申告実務まで支援しています。
自社に適した事業承継を進めるためにも、まずはビジョン税理士法人へ相談ください。

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