
「会社設立に興味があるけれど、個人事業主のままのほうがいいのかな?」「実際に設立するとなるとどんなデメリットがあるんだろう」
こんな疑問をお持ちではありませんか?
会社を設立すると、個人事業主としてビジネスをするよりも信用度が増したり、経費計上できる範囲が広がったりといくつかのメリットがありますが、例え赤字でも法人税を毎年納める義務が発生したり、社会保険料などのコストが増えてしまうというデメリットもあります。
そのため、会社設立についてよく知らないまま勢いに任せて設立を進めてしまうと、
後で「自分の場合はまだ会社設立しないほうが良かった」
「こんなに費用負担が増えるなんて想定外だった」と困ってしまうかもしれません。
そこでこの記事では、会社の設立に関心があるという人に向けて、必ず知っておきたい基礎知識として以下の内容を解説していきます。
この記事でわかること |
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会社設立を検討している人が把握しておくべき事柄を一通り解説しますので、この記事を最後までお読みいただくと、メリットとデメリットを正しく理解した上で、自分の場合は会社設立に向いているかどうかを迷いなく判断することができます。
さらに会社設立が向いている場合は、具体的にどのような種類の会社をどのような流れで設立すればいいのか、またその際に費用はどのくらいかかるのか、についてもしっかりと必要な情報を得ることができますよ。
会社設立を進めるべきかどうかを正しく判断し、理想の会社設立を実現するためにこの記事を役立てて頂けますと幸いです。
目次
1.会社の設立とは
まずは「そもそも会社の設立とは何を意味するのか」ということを知っておきましょう。
会社の設立とは、国に対して「こんな内容の会社を作ります」ということを申請し、誰でも見られる状態にすることをいいます。
手続きとしては、「法務局」へ「法人登記」を行う必要があります。
会社の設立とは |
国に対して「こんな内容の会社を作ります」ということを申請し、誰でも見られる状態にすること。法務局へ法人登記申請を行う必要がある。 |
法人として認められると、個人事業主としてビジネスを行う場合よりも信頼を得やすくなり、大企業と取引できるようになったり、大規模な資金調達ができるようになるというメリットがあります。
個人事業主のままビジネスを行う場合と会社を設立する場合の主な違いについては、以下の通りです。
1-1.個人事業主と会社設立との違い
会社設立をすると、スムーズに手広く事業拡大していけるようになりますが、その代わりに様々な費用を支払う義務も発生します。
詳しい比較は以下の表の通りです。
◆会社を設立する場合と個人事業主としてビジネスを行う場合の比較
比較項目 |
会社を設立する場合 |
個人事業主の場合 |
設立費用 |
7~25万円程度かかる |
不要 |
資本金 |
必要(1円~) |
不要 |
開業・設立手続き |
法務局への登記が必要で手続きは煩雑 |
税務署へ開業届を提出するだけ |
節税のしやすさ |
経費の範囲が広く節税しやすい |
節税しにくい |
赤字の場合の課税 |
最低7万円の法人税がかかる |
不要 |
信用度 |
高い |
低い。法人でないと取引してもらえない場合もある |
融資などの資金調達 |
しやすい |
しにくい |
社会保険の加入義務 |
あり |
従業員5人未満ならなし(任意) |
責任の範囲 |
有限(負債などの責任を個人で取る必要がない) |
無限(事業の責任は全て個人が取ることになる) |
上記のように、会社を設立すると信用度は高まるものの、登記の手間や設立費用、維持費用がかかるというデメリットがあります。
個人事業主なら、そういった面倒な手続きや余計な費用負担はありません。しかし、どうしても会社よりも信用度が低くなるため、大手企業とは取引できなかったり資金調達に苦労したりすることで、自分の思うような事業展開ができなくなってしまうこともあるでしょう。
そのため、多額の資金を調達して積極的に事業規模を拡げていきたいという場合は、個人事業主としてビジネスをするのではなく、会社を設立するのがおすすめです。
2.会社設立のメリット6つ
会社を設立すると面倒な手続きや費用負担が増えるため、「設立しないほうがいいのかな」と思った人もいるかもしれません。
しかしそれでも会社を設立している人が世の中にたくさんいるということは、デメリットよりもメリットのほうが大きいと考える人が多いということがいえるでしょう。
正しくメリットを知らないまま「なんとなく損しそう」「面倒そう」と諦めてしまうと、自分の思い描く規模のビジネスを実現できなくなってしまうかもしれません。
そのためこの章では、会社設立のメリットを詳しく解説していきます。具体的には以下の6つです。
会社設立のメリット6つ |
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自分の場合は会社設立が向いているのかどうかを判断する材料を得ることで、後悔のない選択ができるようにしていきましょう。
2-1.信用度が高くなる
会社設立によって得られるメリットとして最も重要な要素が「信用度が高くなる」という点です。
事業を行いたいだけなら個人事業主という形態を選ぶこともできます。
しかし個人事業主はビジネスの上ではどうしても「信頼されにくい」という難点があります。
実際に、大手企業と取引をしようとすると「相手が個人事業主では会社のルール上発注できない」といわれることも珍しくありません。
とても素晴らしいサービスを提供できるのに、会社設立をしていないという理由だけで契約してもらえないということになると、非常にもったいないことですよね。
そんなとき、会社を設立していれば個人事業主だというだけで取引を拒否されることはなくなります。
また、会社設立をしているかどうかは、求人の際の信用度にも影響します。転職を考えている人が就職先を探すときに、個人事業主と法人であれば、信用度の高さから後者を選ぶ確率の方が高いことが容易に想定されるでしょう。
そのため、「大手企業と取引をしたい」「優秀な人材を獲得して事業を拡大していきたい」と考えている場合は、個人事業主ではなく会社設立を選んだほうが良いでしょう。
2-2.資金調達方法の幅が広がる
会社を設立すると、資金調達方法の幅が広がるというメリットもあります。
一般的には、事業のための資金調達方法には以下のような種類があります。
主な資金調達方法 |
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この中で「株式の発行」は、株式会社だけが行える資金調達方法です。
株式を発行すると、多くの投資家から多額の資金を調達できる可能性があるため、資金調達を行う上では優位となります。
将来的な株式の売却益を目的とするベンチャーキャピタルや投資ファンドなどに投資をしてもらえれば、一気に数千万~億単位の資金を得ることも可能です。
一方、融資や補助金、クラウドファンディングなどについては、株式会社以外でも利用できる方法です。
ただし個人事業主の場合は会社組織と比べるとやはり信用度が低いため、融資などの審査に通りにくくなる可能性が残ります。
そうすると「多くの資金を調達して設備投資したいのに、お金がない…」と困ってしまうことも考えられるでしょう。
このように、個人事業主と比較すると多額の資金調達を行いやすいという点も、会社を設立するメリットの一つといえます。
2-3.株式上場できるようになる
会社には「株式会社」と「合同会社」の2種類がありますが、株式会社を設立すれば、上場することで信用度をさらに高めたり、上場後に株式を売却することで多額の利益を得たりすることもできるようになります。
上場とは |
● 株式会社が、自社の発行する株式を証券取引所(市場)で自由に売買できるようにすること |
上場の審査基準は非常に厳しく、実現するためには何年もかけて人材を集め、社内の経営体制や業務フローなどを整えていく必要があります。
多くの時間や手間がかかるため大変なことではありますが、上場企業はこうした厳しい審査をクリアしていることから、その分「信用できる会社だ」と思ってもらえるようになります。
また注目度の高いベンチャー企業の場合、創業者などが上場前から保有していた株式の価値が上場後に大きく値上がりすることで、数億単位の大きな利益を得られる可能性もあります。
実際に、世界最大のSNSであるFacebookを創設したマーク・ザッカーバーグ氏は、上場前から保有していたFacebookの株式が大幅に価値を上げたため、現在では1,170億ドル(13兆3,500億円)もの資産を持っているといわれています。
https://forbesjapan.com/articles/detail/43648
信用度が上がるという面でも、金銭的な利益を得られる可能性があるという点でも、上場できるということは大きなメリットのひとつだといえるでしょう。
2-4.節税メリットがある
会社を設立すると、個人事業主の場合よりも節税しやすくなるというメリットがあります。
具体的なポイントは以下の通りです。
個人事業主の場合と比較して節税しやすいポイント |
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個人事業主の場合、その事業所得には超過累進課税が適用されるため、所得が高い場合の最大税率は45%にもなり、高額の税金を納めなければならないという状況になります。
しかし法人の場合の税率はほぼ一定のため、所得額によっては支払う税金の額を減らすことができるようになります。
また、自分への役員報酬や法人として契約した生命保険料なども経費として処理することができるため、その部分でも節税することができます。
さらに、会社を設立すると会社の売上の中から社長である自分に対して役員報酬を支払うという形式になります。
そうすると、受け取った給与に対して「給与所得控除」が認められるようになり、その分自分の課税対象額を減らすことができます。
給与所得控除の額は、以下のように収入によって異なります。例えば収入が年間600万円の場合は164万円が控除されるので、その分個人の納税額を減らすことができるということになります。
<収入金額別給与所得控除額>
給与等の収入金額 |
給与所得控除額の計算式 |
目安金額 |
1,625,000円まで |
550,000円 |
55万円 |
1,625,001円から1,800,000円まで |
収入金額×40%-100,000円 |
55~62万円 |
1,800,001円から3,600,000円まで |
収入金額×30%+80,000円 |
62~116万円 |
3,600,001円から6,600,000円まで |
収入金額×20%+440,000円 |
116~176万円 |
6,600,001円から8,500,000円まで |
収入金額×10%+1,100,000円 |
176~195万円 |
8,500,001円以上 |
1,950,000円(上限) |
195万円 |
参考:国税庁「給与所得控除」
しかし個人事業主の収入は会社から支払われる「給与」という扱いにはならないため、「給与所得控除」を受けることはできません。
このように節税できる手段が複数利用できるという点も、会社設立のメリットの一つです。
2-5.事業に失敗した時の責任の範囲を最小限にとどめられる
事業を始めるというときに一番気にかかるのは「失敗したらどうなるんだろう」ということではないでしょうか。
もし個人事業主としてビジネスを行うと、事業に失敗してしまったら債務の支払い責任を全て自分が負うことになります。
そのためきちんと返済ができなければ、個人の資産が差し押さえられたり自己破産するしかなくなってしまったりするケースもあります。
しかし、会社を設立しているとそれが免除されます。
このことを「有限責任」といい、個人事業主は逆に「無限責任」となります。それぞれの言葉の意味は以下の通りです。
有限責任・無限責任とは |
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例えば、会社を設立する際に自己資金で300万円を出資しており、その後会社が500万円の債務を残して倒産してしまったというケースを考えてみます。
有限責任である会社組織の場合、最初に出資した300万円は、仕入れ代金の支払いや金融機関への返済にあてられるため自分の元には返ってきません。
ただしそれ以上の返済(残りの200万円)は不要となります。
しかし無限責任(個人事業主)の場合、事業がうまくいかなくなり失敗したときに残っている借金は、個人が全額支払わなければなりません。
※ただし、会社を設立していたとしても中小企業の場合は、金融機関からの借り入れの際に代表取締役個人の保証を求められていることが多いため、実質は無限責任を負っているというケースも多いです。
このように、会社と個人では求められる責任範囲が異なるということも知っておきましょう。
2-6.突然死などによる事業継承に対応しやすい
会社を設立していると、突然死などによる事業継承にも対応しやすいという側面もあります。
もし個人事業主としてビジネスをしている人が突然亡くなってしまうと、特段遺言などがなければ、事業に使っていた機械や商品類は全て相続の対象となってしまいます。
そうすると、相続人の同意がないと継続して事業に使用することができなくなってしまう恐れがあります。
また、預金口座が凍結されてしまうことで取引先への支払等が滞るということも考えられます。
しかし会社を設立していれば、代表者が亡くなっても機械や商品は引き続き事業に使用することができます。
もちろん、死亡が原因で支払が滞ることもありません。
このように、万一の時に個人事業主よりもスムーズに事業継承を行えるという点も会社設立のメリットになります。
3.会社設立のデメリット4つ
会社設立によるメリットを6つ解説してきました。
事業拡大を推進していきたい場合は会社設立をしたほうがメリットが大きいということをご理解いただけたのではないかと思います。
しかし、メリットだけを見て会社設立を決意するのは早計です。
何事にも、メリットがあればデメリットもあります。
自分にとってそのデメリットは許容できるものなのかどうか?
を正しく把握することで、後悔のない判断に役立てていきましょう。
会社設立のデメリットは、以下の4つです。
会社設立のデメリット |
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具体的にみていきましょう。
3-1.赤字でも最低7万円の法人住民税がかかる
最初に必ず認識しておくべきなのが、「会社を設立すると赤字でも税金を納める義務が発生する」という点です。
個人事業主の場合は、赤字で他に所得がなければ所得税と住民税は0円となります。
しかし会社を設立すると、赤字の場合でも必ず法人住民税を納めなければなりません。
法人住民税の額は、事業所の規模に応じて変動します。
例えば東京23区に事務所がある会社の場合、従業員数と資本金等の金額に応じて以下のように金額が算出されます。
例えば資本金等が1,000万円以下で従業員が50人以下の場合は7万円、50人を超える場合は14万円という風に、規模に応じて金額は上がっていきます。
このように、会社を設立すると利益が出ていなくても高額な法人住民税を支払う義務が発生します。
そのため安定した収益が見込めないのに会社を設立してしまうと、「まだ赤字なのに税金ばかり払わなければならない…」という事態に陥り事業運営に支障をきたしてしまう恐れがあります。
設立のタイミングはしっかり見極める必要があるでしょう。
3-2.社会保険への加入が義務となりコストが増える
会社を設立すると、たとえ自分一人の会社であっても必ず社会保険に加入しなければならないため、その分コストが増えることになります。
社会保険とは |
● 健康保険や厚生年金保険などのこと。 |
個人事業主が支払う「国民健康保険」や「国民年金」と比べると、「健康保険」や「厚生年金保険」などの社会保険の方が保険料の負担は大きくなることが多いので、個人事業主から法人成りすると、多くの場合費用負担が増えてしまいます。
また、会社は従業員の社会保険料を半分支払うことになります。
そのため、従業員が増えるほど会社側の金銭的な負担や手続等の事務負担は増えていきます。
ただし社会保険に加入すると会社の福利厚生が充実するため、人材を採用する上で優位になるという面もあります。
事業主本人にとっても、個人事業主として国民年金保険だけに加入している場合よりも将来受け取れる年金が増えるので、それを逆にメリットだと感じる人もいるでしょう。
とはいえ、毎月の固定費が高くなることは確実です。
規模や資金状況によっては事業運営の上で大きな負担になってしまうことも考えられますので、会社設立のデメリットの一つとしてあらかじめ認識しておく必要があるでしょう。
3-3.設立に費用がかかる
会社は、設立するだけでも7~25万円程度の費用がかかるため、これもデメリットのうちの一つとなります。
個人事業主として事業を行うなら開始手続きの費用は0円ですが、会社を設立する場合は、その形態によって以下のような費用がかかります。
設立費用の比較 |
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設立したい会社が株式会社の場合は、登録免許税や定款認証の費用が合同会社よりも増えるため、その分上記のように高額になってしまいます。
会社設立の際にかかる費用の詳細については、「会社設立でかかる費用」の章で詳しく解説します。
3-4.税理士費用などがかかる
会社を作ると、日々の経理や決算事務処理等を正しく実施する必要があります。
もちろん個人事業主の場合でもルールにのっとって処理する必要はありますが、法人のほうがルールが多く計算も複雑になるため、どうしても税理士などの専門家に依頼をする必要が生じます。
そうすると、専門知識がない場合はどうしても自分では処理できなくなってしまうため、税理士事務所などとの顧問契約を結ぶことになります。
税理士の顧問料は、会社の売上規模にもよりますが最低でも毎月3~4万円はかかりますので、利益が出ていないステージでは負担となってしまうことも考えられるでしょう。
4.会社設立が向いている人
会社設立のメリットとデメリットについて詳しくお伝えしてきました。次はこれらの情報を元に、自分の場合は会社設立を本当にするべきなのかどうか?をしっかり判断していきましょう。
そこで、その判断に役立てていただけるよう、この章では会社設立が向いている人の特徴を解説していきます。
会社設立が向いている人の条件は以下の通りです。
会社設立が向いている人 |
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下記で詳しく解説していきます。
4-1.ビジネス上の信頼度を高めたい人
個人事業主としてビジネスを行うのではなく、法人格にすることでより信頼度を高めたい!という場合は、迷わず会社を設立をするのがおすすめです。
ビジネスにおいて最も重要と言っても過言ではないのが「信頼」です。
その信頼度が、個人事業主の場合はどうしても弱くなってしまいます。
なぜかというと個人事業主の場合、本人が急に亡くなったり病気で倒れたりしたら、その時点で事業が止まってしまうからです。
そのため、大企業ほど個人事業主との取引を避ける傾向があります。
また、法人でないと契約できなかったり、審査が厳しくなるという賃貸物件やビジネスサービスも多くあります。
そのため、社会的な信頼を得て積極的に事業を拡大したいのであれば、個人事業主のままではなく会社を設立するのがおすすめということになります。
4-2.資金調達をして積極的に事業拡大をしていきたい人
「積極的に事業拡大したい」「今考えているビジネスを実現するためには多額の資金が必要」という人も、会社を設立するのがおすすめです。
特に株式会社の場合は上場することができるため、将来的に多額の資金を調達できる可能性があります。
もし上場できれば知名度や信用度はさらに上がり、投資したいと思う人も増えるため、調達できる金額はより大きくなることが期待できます。
個人事業主のままでも申し込める融資はありますが、審査が厳しく多額の融資はしてもらえないことが多いため、大規模な資金調達は難しくなります。
そのため「せっかく良いビジネスアイディアがあるのに、資金が用意できないため実現できない」という状況に陥り、大きな機会損失となってしまうでしょう。
このように、事業拡大のために多額の資金調達をしたいと考えている場合は、会社(特に株式会社)を設立するのが良いでしょう。
4-3.優秀な人材を獲得してビジネスを成長させたい人
優秀な人材を獲得してビジネスを成長させていきたいという場合にも、会社を設立するのがおすすめです。
自分一人で事業を行うとなると、人的リソースがボトルネックとなり、ある程度の規模までしか事業を拡大することはできません。
そのため、自分のビジネスの規模をどんどん広げていきたいという場合は、優秀な人材を獲得していくことが大切になります。
その際、個人事業主のままでは不安定だというイメージがあるため、なかなか希望する人材を採用することは難しくなると考えられます。
しかし会社組織であれば、以下のような理由で求職者から信頼されやすいので、採用市場での競争力が高まります。
会社組織が人材獲得しやすい理由 |
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個人事業主でも人材を募集することはできますが、同じ条件ならば個人事業主よりも安定していて信頼感のある会社組織の下で働きたいと考える人のほうが多いでしょう。
特に今は採用難ですので、他社よりも優秀な人材を獲得することはビジネスを成功させるうえで非常に重要なファクターとなります。
そのため、ビジネスを成長させるために優秀な人材を積極的に採用していきたいという場合も、会社を設立するのがおすすめです。
4-4.年間の利益が800万円以上になる個人事業主
既に個人事業主としてビジネスを行っていて、年間の課税所得が800万円以上になっているという人も、会社の設立(法人成り)を検討すると良いでしょう。
なぜかというと、そのほうが納める税金が減る可能性があるからです。
前半でもお伝えしましたが、個人事業主の場合の所得税の計算には超過累進課税が適用されるため、所得が高いと、かかる税率は最大で45%にもなってしまいます。
しかし会社を設立すると、個人事業主よりも最大の税率が低い「法人税率」の仕組みが適用されることになります。
利益をたくさん得られる見込みがある場合は個人事業主のままビジネスを続けるのではなく、会社を設立したほうが納税額が減り有利となるのです。
会社設立を検討する時期の目安としては「売上から経費を引いた金額が800万円くらいになったタイミング」です。
実際は、事業の内容によって経費にしやすい項目が異なっていたり、人によって控除の金額にも差があったりするため、全ての人が800万円というラインで会社を設立すべきとは限りませんが、一つの目安として考えるようにすると良いでしょう。
社会保険料など、法人化することによって逆に増える負担もあるため、会社設立を決断するときにはきちんと専門家に依頼してシュミレーションすることが大切です。
自分の場合はどのタイミングで会社の設立をすると得をするのか知りたいという場合は、税理士などの専門家に個別相談すると良いでしょう。
5.会社設立が向いていない人
会社設立に向いている人の条件について詳しく解説してきました。
しかし、「条件には当てはまっているけど本当にこのまま決断して良いのだろうか」「部分的には当てはまるけど、設立後にやっぱり向いていなかった、ということがわかったら嫌だ…」という風に悩んでいる人もいると思います。
そのためこの章では、逆に「会社設立が向いていない人」の条件をお伝えします。向いている人と向いていない人の条件を比較することで、自分の場合はどちらに向いているのか、より正しく判断できるようになります。
会社設立が向いていない人の条件は以下の通りです。
会社設立が向いていない人 |
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詳しくみていきましょう。
5-1.事業拡大を望んでいない人
「自分一人で実行できる範囲でビジネスを行うことができればそれでいい」
「大きな組織にすることは考えておらず、小規模のまま進めていきたい」
という場合は、会社を設立するよりも個人事業主として事業を行うほうが良いでしょう。
会社を設立することによるメリットの一つは「多額の資金調達ができる」という点ですが、事業拡大を望んでいない場合はそうした大規模な資金調達の必要がないため、このメリットをうまく活用することができません。
そんな状態で会社を設立してしまうと、会社の設立や維持するための費用ばかりがかさんでしまい、メリットよりもデメリットのほうが大きくなってしまうことが考えられます。
そのため、事業を手広く拡大させていきたい!と思ったときに会社設立を検討し始めるのが良いでしょう。
5-2.見込み利益が年間800万円未満である個人事業主
年間で得られる利益の見込みが800万円未満である場合は、会社の設立は慎重に検討する必要があるでしょう。
というのは、利益が少ない場合は会社の設立や維持にかかる費用や手間ばかりが大きくなり、「結果的に個人事業主のままのほうが余計な税金を払わずに済んだ」という事態に陥りやすくなってしまうためです。
会社の維持にかかる費用には以下のようなものがあります。
会社の維持にかかる費用 |
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事業の内容等にもよりますが、利益が800万円未満の場合は、これらの費用を支払うと個人事業主時代よりも損してしまう可能性が出てきます。
実際には人によって適用される控除が異なっていたり、ビジネスの内容によって経費にできる範囲が異なったりするため一概に800万円でラインを引くことはできませんが、いずれにせよある程度の安定した利益が見込めない段階では、まだ会社設立は早いといえるでしょう。
6.会社設立の種類
会社設立が向いている人と向いていない人の特徴について解説してきました。「自分には会社の設立が向いている」「早速設立を進めたい」と思った人もいるのではないでしょうか。
ただし一言で会社設立といっても、実は会社には株式会社と合同会社の2種類があります。
この2種類の違いを知らないままでは、自分の展開したいビジネスに合わない会社形態を選んでしまい、後で思うような事業展開ができずに困ってしまう…ということも考えられます。
そこでこの章では、会社設立の種類として、株式会社と合同会社の違いと、それぞれの設立に向いている人の条件を解説します。
どちらが自分に向いているのかを正しく知ることで、失敗のない会社設立を目指していきましょう。
6-1.株式会社と合同会社の違い
まずは、株式会社と合同会社は何が違うのか?ということを理解していきましょう。
この2種類の会社形態の違いは以下の通りです。
株式会社と合同会社の違い |
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株式会社は会社の所有者(=株主)と経営者(=実務を行う人)が別となる(所有と経営の分離)ため、社長だからといって自由に経営方針を決めることはできず、他に株主がいる場合はその意向に配慮する必要があります。
それに対して合同会社の場合は出資者自身が会社の経営者となるため「株主の意向に配慮しなければならず事業が思うように進められない…」という風に困ることはありません。利益配分も、出資額に関係なく自分たちで自由に決めることができます。
図にすると以下のようなイメージです。
また、株式会社は設立の際に必要となる費用が21~25万円程度になりますが、合同会社の場合は7~11万円と1/3程度に抑えることができるという違いもあります。
株式会社と合同会社を設立する際にかかる費用については、この後の「会社設立でかかる費用」で詳しく解説しますので、そちらの章をご覧ください。
6-2.株式会社の設立に向いている人
合同会社よりも株式会社の設立に向いているのは、以下のような人です。
株式会社を設立すべき人 |
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一つずつ見ていきましょう。
①積極的に事業を拡大していきたい人
「積極的に事業を拡大していきたい」という場合は、合同会社よりも株式会社のほうが向いています。
なぜかというと、株式会社は資金調達や取引先開拓、人材獲得の点で有利となるためです。
合同会社は日本では比較的新しい法人格のため、株式会社と比べると知名度が低いのが現状です。
そのため株式会社のほうが世間から信頼されやすく、コンペや融資の審査、採用市場などでは合同会社よりも有利になる可能性が高くなります。
例えば以下のようなシーンが想定できます。
株式会社が有利になるケース |
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そのため、事業拡大を積極的に進めていく中で「合同会社であるがゆえに信頼されにくくチャンスを逃してしまった」という事態を招きたくない場合は、株式会社を選んだほうが良いでしょう。
②将来的に株式上場を目指している人
将来的に株式上場を目指していきたい場合も株式会社を選ぶのがおすすめです。
株式を上場させると以下のようなメリットがあります。
株式上場のメリット |
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このように上場は事業拡大に有利になるというだけでなく、株式の価値が上昇すれば創業者が億単位の利潤を得られる可能性もあるというメリットがあります。
しかし、合同会社の場合はそもそも株式の発行ができないためこれらのメリットを得ることができません。
最初は合同会社を設立しておいて、後から株式会社へ組織変更するという方法も可能ですが、2ヵ月ほど時間がかかってしまったり、債権者が一人でも組織変更に異議申し立てをすると株式会社への変更ができなくなってしまうなどの懸念もあります。
そのため将来的に株式を上場させたいと考えている場合は、最初から株式会社を設立するほうが良いでしょう。
③BtoBビジネスを主軸に行いたい人
BtoB向けのビジネスを主軸に行っていきたい場合も、株式会社の設立がおすすめです。
なぜかというと、法人相手の取引の場合、相手によっては「合同会社は信用できなさそう」「なんで株式会社じゃないんだろう」とマイナスの印象を与えてしまう可能性があるためです。
もちろん合同会社もれっきとした会社ですので、全ての法人がこのような考えを持っているわけではありません。
しかし、ビジネスは人と人との信頼関係によって進むものです。
相手企業の担当者が合同会社のことをよく知らない場合は、合同会社というだけで不信感を持たれてしまう可能性はゼロではありません。
また、同じ条件ならば「合同会社よりも株式会社のほうが何となく安心」といった曖昧な理由で、株式会社のほうが選ばれやすくなるということも充分に考えられます。
そのため、特に信用が重要となるBtoBビジネスを主軸に行う予定であれば、合同会社よりも株式会社を設立しておいたほうが、新規取引先の開拓をスムーズに行っていくことができるでしょう。
逆に飲食店や美容サロンなど、一般消費者向けのビジネスしか行わないという場合は合同会社でも問題ないと考えられます。
顧客がサービスを利用するときに「運営元が株式会社か、合同会社か」ということをあまり気にしないためです。
自分の展開したいビジネスに合った会社形態を選ぶようにしましょう。
6-3.合同会社の設立に向いている人
反対に、以下のような条件に当てはまる人の場合は、株式会社ではなく合同会社の設立が向いています。
合同会社の設立に向いている人 |
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順番に見ていきましょう。
①会社を設立することで信頼を得たいが手間とコストは節約したい人
会社を設立することで信頼を得たいけれども、株式会社ほど設立に手間やコストをかけたくない、という場合は、合同会社を設立するのがおすすめです。
社会的な信用度のことだけを考えると、合同会社よりも株式会社のほうがメリットが大きいと感じますが、株式会社を設立して運営していく上では以下のようなデメリットがあります。
株式会社を設立して運営するデメリット |
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そのため、このような手間やコストは避けたいけれども、会社を設立することで個人事業主よりも信頼度を高めたいという人は、合同会社を設立すると良いでしょう。
②主力ビジネスが飲食店や美容サロンなどのBtoCサービスである人
主力ビジネスが飲食店や美容サロンなどのBtoCサービスである場合も、合同会社の設立に向いています。
なぜかというと、一般の人を対象にビジネスを行うBtoCサービスの場合、合同会社のデメリットである「信用度が低い」ことの影響が少ないと考えられるためです。
カフェなどの飲食店や、美容室・ネイルサロンなどの場合、主に店舗名で事業を行うため、利用者はわざわざ調べようとしなければ、その運営元が合同会社なのか株式会社なのかわかりません。
つまり、合同会社だからといってビジネス上で不利になるということがなくなります。
そのため、自分が行いたいビジネスがBtoCサービスなら、合同会社を選んでも支障はないと考えて良いでしょう。
③小規模な事業をスピーディに行いたい人
「小規模な事業をスピーディに行っていきたい」という場合も、合同会社の設立が向いています。
前述の通り、合同会社の場合は何か経営に関する意思決定をするときに株主にお伺いを立てたり、意向に配慮したりする必要がありません。
そのため「自分のやりたい経営をスピーディに推進していきたい」という場合は、株式会社よりも合同会社のほうが、理想の経営を実現しやすくなるでしょう。
ただし合同会社の場合上場はできないため、大規模にビジネスを展開して事業拡大を進めていきたいという場合には向いていません。
比較的小規模な組織による自由な事業展開を考えているのであれば、合同会社の設立をおすすめします。
7.会社設立の流れ
株式会社と合同会社の違いと、どんな人に向いているのか、について解説してきました。
自分がどちらの会社を設立すべきかイメージがついてきたのではないでしょうか。
ここで多くの人が次に気になるのは「実際に設立を進めるとどのような流れになるんだろう」という点だと思います。
正しい流れを知らないまま設立を行おうとすると、途中で次に何をすればいいのかわからなくなったり、意外と時間がかかってしまい希望の期日に設立が間に合わなかったりしてしまうかもしれません。
そこでこの章では、スムーズに会社設立を実現することができるよう、会社設立の流れをお伝えします。
会社設立の流れはその種類によって異なるため、株式会社と合同会社に分けて順番に解説していきます。
7-1.株式会社を設立する流れ
株式会社の設立方法にはいくつか種類がありますが、ここでは小規模な会社を設立する際に一般的な方法である「現金出資による発起設立」(=株式の全てを発起人が現金で引き受ける設立方法)の場合の流れをお伝えしていきます。
設立までのステップは下記の5つに分かれます。
1ヶ月半ほどの時間がかかりますので、設立したい日が決まっている場合は逆算してスケジュールを組むことが大切です。
それぞれのステップでどのようなことをするのか、概要を確認していきましょう。
①会社設立準備(1ヶ月程度)
まずは会社の設立に向けて、基本事項である会社名(商号)や資本金額、決算期、本店所在地などを検討して決めていきます。
そして、法務局への登記申請や今後の事業運営の中で会社の印鑑(実印や銀行印、角印など)が必要となりますので、それもこのタイミングで準備しておきます。
また、必要な期間については1ヶ月程度を目安としておりますが、手続き自体にそんなに時間がかかるというわけではありません。
例えば1人で会社を設立する場合など、自分だけの考えで全てをスピーディに決められるなら、数日で全ての項目を決められるケースもあるでしょう。
しかし、共同創業者がいる場合は株式の配分や会社名などを決めるためにある程度の時間がかかると思います。
自分1人の場合でも、他社の商号と重複しないかどうか調査をしたり、新しく事務所を借りて本店にしようとしたりすれば、事務所探しや契約などにその分時間がかかります。
このように、検討や調整すべき項目がたくさんあるという場合は、全て決まるまでに1ヵ月程度の時間がかかると想定しておくと良いでしょう。
②定款の作成・認証(1週間程度)
どのような内容の会社を作るか決めて印鑑の発注も済ませたら、次は「定款の作成・認証」に進みます。
定款とは会社の活動の規則を記したもののことで、株式会社を設立する際にはその定款をもって「公証人の認証」という手続きを行います。
この手続きは、本店所在地のある都道府県内の公証役場で行う必要があります。
定款は、ひな形を日本公証人連合会のホームページからダウンロードして必要事項を埋めることで作成できます。作成できたら公証役場で認証をしてもらいます。
全国の公証役場の一覧は日本公証人連合会のホームページで確認することができるので、自分の会社の本店所在地のある都道府県内のリストの中から、最寄りの公証役場を選び電話などで連絡をするようにしましょう。
③資本金の払込(1~2日程度)
定款認証が済んだら、資本金の払込を行います。
この段階では会社の口座はまだ作れないため、発起人の個人口座に振り込むことになります。
④登記書類の作成(2~3日程度)
資本金の払込ができたら、次は法務局への登記手続きに必要な書類を準備していきます。
登記に必要な書類は下記の通りです。
登記に必要な書類 |
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上記書類のひな形や書き方は、定款作成のときにダウンロードしたWordファイルに入っています。
→法務局 商業・法人登記の申請書様式「第3 合同会社」1 設立
「記載例(PDF)」の中に書き方などが記載されていますので、参考にしながら必要事項を埋めると良いでしょう。
⑤会社設立登記申請(2~3日程度)
登記書類の準備ができたら管轄の法務局へ書類を提出し、登記申請を行います。
管轄の法務局へ登記申請書や添付書類を提出(窓口への持ち込み、郵送、オンライン申請などの方法がある)し、内容に問題がなければ設立登記となります。
管轄の法務局の場所は、自身の会社の都道府県の法務局のホームページ等で確認することができます。
例えば東京都の場合は以下のページで調べることが可能です。
→横浜地方法務局 不動産登記/商業・法人登記の管轄区域一覧
株式会社設立の詳しい流れについてより具体的に詳しく知りたいという場合は、以下の記事をご覧ください。
→「株式会社 設立」
7-2.合同会社を設立する流れ
続いて、合同会社設立の流れを解説していきます。
合同会社の設立では、株式会社の時に必須だった「認証」の手続きがないので、その分手間が省けます。
ステップとしては以下のように5つに分かれており、全体でかかる時間は1か月半弱くらいが目安となります。
それでは詳しく見ていきましょう。
①会社設立準備(1ヶ月程度)
株式会社と同じように、基本事項である会社名(商号)や資本金額、決算期、本店所在地などを決めます。
会社の印鑑(実印や銀行印、角印など)は出来上がるまで時間がかかるため、商号が決まった時点ですぐに発注しておくと良いでしょう。
また必要な期間については、これも株式会社の時と同様「手続き自体に1ヵ月もの時間がかかる」というわけではありません。
設立に必要な基本事項を決めるためには、他社の商号と重複しないかどうか調査をしたり、本店所在地として登記するための事務所を借りたりする必要があります。
しかし、既に調査が済んでいたり、事務所が既に決まっていたりする場合にはその分検討が不要になるため、早ければ数日で全ての項目が決まることもあるでしょう。
そのため「1ヵ月程度」というのはあくまで目安であり、状況に応じてもっと早く決まることもあれば、もっと時間がかかる場合もあるということになります。
②定款の作成(2~3日程度)
定款に記載するための基本事項が決まったら、早速書類作成に入ります。
定款とは、法人の目的や活動に関する根本となる規則やその書面のことで、会社を設立する際には一番最初に作成する必要があるものです。
定款のひな形は法務局のホームページからダウンロードできるので、記載例に沿って必要事項を埋めていきます。
③資本金の払込(1~2日程度)
定款の作成が完了したら、資本金の払込を行います。
この段階では会社の口座はまだ作れないため、社員のうちの誰かの個人口座へ資本金の額を振り込むことになります。
④登記書類の作成(2~3日程度)
資本金の払込ができたら、次は法務局への登記手続きに必要な書類を準備していきます。
登記に必要な書類は下記の通りです。
登記に必要な書類 |
● 合同会社設立登記申請書 |
上記書類のひな形や書き方は、定款作成のときにダウンロードしたWordファイルに入っています。
→法務局 商業・法人登記の申請書様式「第3 合同会社」1 設立
「記載例(PDF)」の中に書き方などが記載されていますので、参考にしながら必要事項を埋めると良いでしょう。
⑤会社設立登記申請(2~3日程度)
登記書類の準備ができたら管轄の法務局へ書類を提出し、登記申請を行います。
管轄の法務局は、自身の会社がある都道府県の法務局のホームページで確認できます。
申請方法には「窓口への書類持ち込み、郵送、オンライン申請」などがありますので、都合の良いものを選ぶようにしましょう。
合同会社を設立するときのより具体的な流れについては、以下の記事で解説しているので参考にしていただければ幸いです。
→合同会社設立の基礎知識まとめ!費用や手順、メリットを詳しく解説
8.会社設立でかかる費用
会社設立の流れを詳しく解説してきましたので、実際に設立を進める場合のイメージがついてきたのではないでしょうか。
ただし会社の設立には費用もかかります。
想定以上に初期費用がかさんでしまった…と後で困ってしまわないように、どのくらいのコストがかかるのかあらかじめ知っておくようにしましょう。
会社の設立にかかる費用は7~25万円程度で、設立する会社の種類や定款の作成方法(紙か電子データか)等によって以下のように金額が変動します。
詳細は以下で解説していきます。
8-1.株式会社設立の費用
株式会社の設立にかかる費用は最低でも21~25万円程度で、定款の作成方法(紙か電子データか)によって以下のように金額が変動します。
上記のように、公証人に定款を認証してもらう手続きに5.2万円(紙の定款の場合は+4万円)、その次の法務局への設立登記の手続きの際に登録免許税として最低でも15万円が必要となります(資本金の額によっては15万円を超えることもあります)。
そして、手続きに必要な公的書類の取得や印鑑の作成などにかかる関連費用として、1~2万円程度がかかります。
さらにそれ以外に資本金も準備する必要があります。
資本金は1円でも設立は可能ですが、実際に資本金が300万円未満の企業は6.5%程度しかないため、300~500万円くらいは揃えられると良いでしょう。
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/census/index.html
8-2.合同会社設立の費用
合同会社を設立するときの費用は、7~11万円ほどになります。定款の作成方法として、紙ではなく電子データを選ぶと、以下のように4万円安く設立することができます。
株式会社の場合、法務局への設立登記の手続きのときにかかる登録免許税は最低でも15万円となりますが、合同会社の場合はこれが6万円~と半額以下になります。
また、「定款の認証」という公的手続きも不要なので、それにかかる費用(5万円)も削減することができます。
株式会社や合同会社を設立する費用の詳細や、費用を賢く節約する方法については以下の記事で詳しく解説していますので、関心のある方はこちらもご覧ください。
→会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社それぞれのケースを解説
9.会社設立を簡単に行う方法
会社設立の流れと費用に関する基礎知識を解説してきました。
概要が理解できたことで、早速会社の設立を行おう!と思った人もいるのではないでしょうか。
しかし実際に手続きを進めようとすると、手続きが煩雑だったり専門用語が多くわからないことが出てきたりすることもあると思います。
そこでこの章では、会社の設立を失敗なく簡単に行う方法をお伝えします。
具体的には以下の2つの方法があります。
会社設立を簡単に行う方法 |
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詳しくみていきましょう。
7-1.「法人設立ワンストップサービス」を利用する
従来は、会社を設立したければ役所へ実際に出向いて申請を行う必要がありました。
しかし2020年1月に開始された「法人設立ワンストップサービス」を活用すると、オンラインで手続きをまとめて行うことができるので、それらの手間を大幅に簡略化することができるようになります。
法人設立ワンストップサービスとは |
● 定款認証や法人設立の登記申請などの会社設立のために必要な手続きを、オンラインでまとめて行うことができる |
引用:国税庁 法人設立ワンストップサービスの対象が全ての手続に拡大されました
会社を設立した後には、税務署や年金事務所などへも各種届出を行う必要がありますが、このサービスを利用すると、それらの手続きも一括で実施することができます。
会社の規模等によって必要な手続きの種類は異なりますが、「法人設立ワンストップサービス」のトップページから進むことができる「法人設立関連手続かんたん問診」(以下の画像の赤枠で囲った部分)を利用して簡単な問診に答えていけば、自分に必要な手続きがわかるようになっています。
実際の申請の流れは以下のようになります。
法人設立ワンストップサービス 申請の流れ |
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自分で設立手続きを進めることで、専門家などに代行依頼をする費用を抑えたいと考えている人の場合は、こういったサービスを利用することで効率よく手続きを進めると良いでしょう。
7-2.専門家へ依頼する
便利なサービスが登場しているとはいえ、分からないことがあったときにすぐに詳しい人に聞けるわけではないので、初心者が実際に自分で手続きを行おうとすると挫折してしまう可能性もあります。
そこでおすすめなのが、司法書士や税理士などの専門家へ会社設立の手続きを代行依頼することです。
費用の目安は10万円程度です。
専門家へ会社設立を依頼することによるメリットは以下の通りです。
専門家へ会社設立を依頼することによるメリット |
● 本業と関係のない作業に割く時間を節約できる |
公的な手続きは、どうしても専門用語が多くなりわかりにくくなっています。
そのため「設立作業に手間をとられて本業に集中できなかった」と後悔してしまわないよう、会社設立に詳しくない場合は最初から専門家に依頼したほうが良いでしょう。
「税務面などで有利になるアドバイスが欲しい」「プロに依頼することで失敗のない会社設立を行いたい」という場合は、手数料0円で専門家に依頼することができる「税理士顧問パック」がおすすめです。
これは、会社設立後の税理士顧問契約を前提とすることで、以下のメリットを受けられるというサービスです。
税理士顧問パックとは |
● 代行手数料0円で専門家へ会社設立の手続きを依頼できる |
その後の税理士顧問契約が必要にはなりますが、会社設立後はいずれにしても税理面で専門家のサポートを受けることは必要となります。
そのため、せっかくなら最初からこういったサービスを利用したほうが、その後の事業運営もスムーズに進めることができるでしょう。
詳しくは以下のページをご覧下さい。
10.まとめ
この記事では、会社設立についての基礎事項をお伝えしてきました。
まず、個人事業主と会社設立との違いは以下の通りでした。
個人事業主と会社設立との違い |
● 個人事業主の場合は法人よりも信用度が低いため、取引先によっては契約してもらえず、事業拡大が思うように進まなくなってしまうという恐れがある |
また、会社設立のメリットとデメリットとしては、以下の項目を挙げて解説しました。
会社設立のメリット・デメリット |
<会社設立のメリット> <会社設立のデメリット> |
さらに、実際に自分が会社を設立すべきかどうかの判断に役立てていただけるよう、会社設立が向いている人といない人の特徴についても解説しました。
会社設立が向いている人・いない人 |
<会社設立が向いている人> <会社設立が向いていない人> |
そして「株式会社と合同会社の違い」と、それぞれの設立に向いている人の特徴を以下のようにお伝えしました。
株式会社と合同会社 それぞれに向いている人・いない人 |
<株式会社の設立が向いている人> <合同会社の設立が向いている人> |
さらに、具体的に会社の設立を進めたい人が知っておくべき内容として、会社設立の流れと費用について以下の通り解説を行いました。
会社設立の流れ |
<株式会社を設立する流れ> <合同会社を設立する流れ> |
会社設立でかかる費用 |
<株式会社の場合> <合同会社の場合> |
最後には、会社設立を簡単に進めるための方法として、以下の2つを紹介しました。
会社設立を簡単に行う方法 |
● 「法人設立ワンストップサービス」を利用する |
会社設立に関する基礎知識や、メリット・デメリットを詳しく知ったことで、自分の場合は会社設立に向いているかどうか判断できて、実際にどのような流れで進めればいいのかイメージもついたのではないでしょうか。
理想のビジネスを実現するために、自分に合った失敗のない会社設立を進めていきましょう。