管理会計とは?経営状態を把握・改善するために知るべき導入の方法

管理会計とは、自社の経営状態を内部で把握し改善するために作成するものです
「このようにすべき」という厳密なルールは無く、作成義務もありません。

一方、財務会計とは、株主や金融機関など外部に対して自社の経営状態を明らかにするものです
税の申告もこれに含まれるように、厳密なルールがあり、作成は義務になっています。

このように並べてみると、作成義務がある後者・財務会計だけで良いと思われるかもしれません。実際、管理会計を本格的に活用するとなると、相応の手間と負担がかかります。ですが、会社の経営計画を打ち立て、進めていくには、管理会計が欠かせません。

この記事では、管理会計についてお伝えします。導入のきっかけ、経営計画への活用などの後押しになれば幸いです。


1.管理会計とは?財務会計との違い

企業会計には大きく分けて、管理会計と財務会計という種類があります。その概要を大まかにまとめると、次のようになります。

管理会計 財務会計
考え方 未来への指針 過去のまとめ
対象 内部 外部
作成義務 なし あり
ルール 特になし あり

では、それぞれ細かく見てみましょう。

1-1 管理会計とは未来への指針として、内部で自社の経営状態を把握するもの

管理会計とは、自社の経営状態を内部で把握し、改善するために作成するものです
自社の何が良くて、何が悪いのか課題を客観的な数字で表し、どのように改善するのか、今後へのみちしるべとなるのが管理会計なのです。

管理会計の作成は義務ではありませんので、導入していない会社もあります。
とはいえ、管理会計を導入しないということは、経営を進める上で客観的な数字の裏付けが無いという事になってしまいます。ぜひとも、管理会計を活用することをおすすめします。

○管理会計は社内のみで用いるものなので、作成方法に決まったルールはありません
社内で利用しやすいようにカスタマイズすればよいのです。ただし、本格的に使うとなると手間も負担も大きくなります。

○管理会計に決まったルールが無いとはいえ、「予実管理」や「経営分析」、他にも、有名な大手企業が編み出した手法など、さまざまなやり方が普及しています。

1-2 財務会計とは過去をまとめて、外部に自社の経営状態を明らかにするもの

財務会計とは、外部に対して自社の経営状態を明らかにするものです
この“外部”には、次のようなものがあります。
・株主(株式会社の場合)
・金融機関(融資を受けている場合)
・国、地方自治体(税金の申告)

財務会計は、必ず作成しなければいけません
上場企業であれば、株主に明らかにする決算書を作る必要があります。そのような大企業ではない、個人事業主でも毎年の確定申告は義務です。つまり、すべての事業者にとって財務会計は、必ず作成しなければいけないのです。

○財務会計で作成されるものを「財務諸表」と呼びます。
・貸借対照表
・損益計算書
・キャッシュフロー計算書
この財務諸表については、詳細な解説記事がありますので、参考にしてください。

財務諸表とは?基本の読み方と経営に活かすための方法を徹底図解

財務諸表は、決められたルールに沿って作成します


2.本格的に管理会計を導入する前にすべきこと

最初に「管理会計の導入」と目にした時、何やら難解なシステムを入れたりすることを想像されたかもしれません。ですが1-1で触れたように、
・管理会計に決まったルールはない
・管理会計は内部で自社の経営状態を把握し、改善するために作成するもの
ですから、経営者さんが必要な数字を把握し、それを今後の経営に生かしていくことが、広い意味での「管理会計」の活用になるのです。

まずは、本格的に管理会計を導入する前にすべきことを確認します。特に、中小企業の経営者さんが自ら数字と向き合うことは、必要不可欠だからです。

2-1 経営者自ら数字と向き合う

数多くの中小企業と向き合ってきた弊社の経験として、数字に強い経営者さんの会社は伸びる傾向があります。

管理会計を導入する前提として、経営者さん自らが数字に向き合うことが大切です。数字が苦手・弱いにしても、細かい事は(3でご紹介する)専門家や担当者に任せるにしても、会社の浮沈がわかる要点となる数字は、経営者ご自身でシンプルに把握して、数字に向き合っていただくべきです。

2-2 財務諸表の数字で、要点を把握する

とはいえ“会社の浮沈がわかる要点となる数字”をどう把握すればよいのか?すぐにわかれば苦労はしません。管理会計はルールが無い、自由度が高いということは、何をどうすればよいのか分かりにくい事の裏返しでもあるわけです。

そこで活用すべきなのが、財務会計で作成した財務諸表です。

1章で管理会計と財務会計の違いを見てきた後に矛盾していると思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
財務会計で作成した財務諸表の数字でも、経営の参考になればそれが管理会計にもなります。
むしろ、絶対に作らなければいけない財務諸表の中身から、流用できるところは流用して効率化することも、中小企業が少ない負担で管理会計の第一歩を踏み出すコツなのです。

2-3 財務諸表の数字を分析する

もちろん、数字を把握しただけで満足してはいけません。
・自分の会社は効率よく利益を得られているのか?
・経営資源を有効活用できているのか?
などなど細かく調べて分析、改善策を検討し、実際に行動に移すことが、経営者さんにとって最も重要なのです。

財務諸表についての詳細な解説記事の中で、リンク先の部分では財務諸表の数字の分析方法を解説しています。ぜひ参考にしてください。

財務諸表とは?基本の読み方と経営に活かすための方法を徹底図解


3.管理会計を本格的に導入する方法

この章では、管理会計を本格的に導入する方法をご案内します。
もちろん、この3つ全ての方法を実行される必要はありません。会社ごとの状況はそれぞれですから、合った方法を検討してみてください。

3-1 経営にも通じた税理士に依頼する

管理会計は内部向け、だからといって全て内部で行う必要はありません。
特に、経営に通じた税理士にお任せいただければ、まさにこの記事でご説明した管理会計と財務会計にまとめて対応できるのです。
詳細に把握できることはもちろん、第三者目線でのアドバイス等も可能です。

とはいえ、そのような経営に通じた税理士を見分けて、選ぶのは簡単ではありません。
弊社からお伝えできる判断基準のひとつに、税理士顧問料があります。

安い→税金計算のみ
高い→経営の相談にも応ずる
という傾向があるのです。

このあたりについては、詳細な解説記事がありますので、参考にしてください。

税理士顧問料の相場は月額3万円!安い税理士と高い税理士の決定的な違い

3-2 他社で管理会計を扱った経験者や、資格取得者を採用する

自社内で管理会計を本格的に扱うのであれば、他社で管理会計を扱った経験者や、管理会計に関連した資格取得者を採用することも検討に値します。

そもそも中小企業が新たに人を雇うのは大変だと思います。人手不足で、良い人が見つからない悩みを抱えている経営者さんも少なくありません。そこであえて、長期的展望に立って新卒採用に踏み切るというのも有力な選択肢になります。

3-3 会計ソフトを利用する

今ではすっかり主流となったクラウド会計ソフトでは、財務会計の効率化と同時に、管理会計に応用することも可能とされています。
税理士とのデータ共有も容易になりますので、その点でも効率化が期待できます。

ただし、導入に当たっては操作全般を覚えて、慣れていただく必要があります。
管理会計に応用できるといっても、会計ソフトで詳細に数字を把握したところで、その数字を経営に生かせなければ意味が薄れてしまう点も注意が必要です。


4.管理会計で注意すべき、自分に都合のいい数字だけ信じるような事

管理会計は内部向けなので、その扱いには注意すべきことがあります。

前述のように、管理会計には決まったルールがありません。どのように扱うかは経営者さんの考え一つなので、自分に都合のいい数字だけ信じるような事は禁物です。
また、管理会計は内部向けなので、外部の目に触れない分だけチェックが甘くなりがちです。

その点、税理士に依頼して管理会計を活用すれば、甘くなることも避けられますし、第三者の目線でのアドバイスも可能です。


5.管理会計を最大限活用するために、経営計画を作成する(作成した経営計画を、より推進するために管理会計を導入する)

せっかく管理会計で数字をまとめても、単に数字をまとめただけで満足、あるいは社内の報告で終わってしまっては価値が半減してしまいます。
管理会計による数字を、活用する手段としておすすめするのが、経営計画です

5-1 管理会計と経営計画は車の両輪

経営計画の中でも、長期経営計画のように会社の将来像を打ち出すだけならまだしも、中期さらに短期になりますと、具体的な数字(売上高、経費計算など必要な数字)を積み上げて計画を立てることになります。
ここで計画を立て、実際計画通りになったのか否か判断するのに必要なのが、管理会計なのです。
裏を返せば、管理会計による数字を活用する手段として最適なのが経営計画ですし、管理会計で具体的にどの数字を扱えばよいのか迷った時、経営計画に沿えばよいのです。

まさにこの2つは車の両輪というわけです。

5-2 経営計画で管理会計を活用している具体例

経営計画作成のステップを見ると、理念や指針を打ち出すと同時に、具体的な数値目標も必要になります。
そこで具体的な根拠がある数字を出し、その目標の進み具合を管理するためにも、管理会計が必要になるのです。

この項では、経営計画書の作り方をご紹介する弊社の記事の中で、管理会計を活用している所をご覧いただきます。
リンク先の文中に「管理会計」という言葉は出てきませんが、数字を盛り込むことによって、経営計画が実践的に、経営に寄与するように作られていることが、ご理解いただけると思います。
また、いずれにも作成用のテンプレートをご用意していますので、活用していただければ幸いです。

『高収益な良い会社を作るための経営計画書の作り方「目標数字と実績数字のチェック方法」』より

※この項目では、経営者ご自身による数字のチェックを強く推奨しています

『中期経営計画の作り方を徹底解説「短期利益計画」』より

※この項目の後さらに「販売計画」「中期事業計画」と続きます。


さいごに

ここまで、管理会計について見てきました。

管理会計を生かす大前提として、経営者自ら数字と向き合うことが大切です。

そして管理会計には、厳密なルールがありません。よって、財務会計で出た数字を活用する柔軟な考え方も可能です。

しかしながら、せっかく管理会計で数字をまとめても、そこで止まってしまっては価値が半減してしまいます。管理会計の数字を活用する一番の近道は、経営計画なのです。

弊社では、経営計画書の作り方をご案内しています。テンプレートもご用意していますので、比較的簡単に作成することができます。

経営計画とは?会社の成長のために不可欠な理由と具体的な作り方

管理会計を導入し、活用するために経営計画を作って、さらに良い会社づくりを進めましょう。

 

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