資金繰りとは?その意味と必要性、正しい資金繰り法をくわしく解説

「会社経営で『資金繰り』という言葉をよく使うけれど、本当はどういう意味だろう?」
「資金繰りってどうすればいいもの?」

企業の経営者や財務担当者の方の中にも、そんな基本的な疑問を抱えている人は意外に多いのではないでしょうか。

「資金繰り」を説明すると、「企業が持っている『資金』に関して、その収入と支出を管理し、資金が不足しないように運用・調整すること」です。

この「資金」とは、「現金」と「すぐに現金化できる資産」を指しますので、簡単に言えば「現金の流れの管理」とも言えるでしょう。

資金繰りは、会社経営において非常に重要です。
もし資金繰りがうまくいかなければ、手元に現金が不足して取引先への支払いができなくなったり、従業員への給与が支給できなくなったりする恐れがあります。
最悪の場合は、倒産につながりかねません。

そのため経営者や財務担当者は、常に資金繰りを健全に保つように努めなければならないのです。

そして同時に意識しなければいけないのが、「資金繰り」の意味です。
なじみ深い言葉なので、なんとなくわかった気になりやすいですが、「キャッシュフロー」や「資金調達」といった言葉と混同することも少なくありません。

この記事では、資金繰りについて理解し、資金繰りを良くするために、必要なポイントをお伝えいたします。

あなたの会社の資金繰りが良好になる手助けになれば幸いです。


1.「資金繰り」とは、資金の流れを管理すること

「資金繰り」とは 、資金の流れを管理することです
さらに言えば、企業が持っている「資金」に関して、その収入と支出を管理すること。そして、資金が不足しないように運用・調整することです。

この「資金繰り」を理解するためには、そもそも「資金」とは何かを正確に理解しておく必要もあります。

「資金」とは、企業が所有している資産のうち、現金またはすぐに現金化できるもの。現金、預貯金、コマーシャルペーパー(無担保の約束手形)、公社債投資信託などが含まれます。

逆に、すぐに現金化できないもの、たとえば売掛金、貸付金、株式、棚卸資産、不動産などは「資金」以外の「資産」になります。

「資金」と「資産」を図式化すると、次のような位置づけです。


2.「資金繰り」に似たような言葉との違い

「資金繰り」という言葉自体は、割と広く知られていると思われます。

しかしながら、似たような言葉が多いので、それらと混同される場合も少なくありません。
意味を取り違えていたせいで、金融機関や取引先と話がすれ違ったりするのは困りものでしょう。

この章では、そんな似たような言葉との違いを確認していきます。

2-1 「資金繰り」と「キャッシュフロー」の違い

「資金繰り」と似た言葉に「キャッシュフロー」があります。

「資金繰り」とは前記のように、“資金の流れを管理すること”です。
「キャッシュフロー(cash flow)」を直訳すると現金の流れです。

こうして並べてみると、ほぼ同じように見えますが、実際には少し意味が異なるのです。

資金繰り=未来のお金の流れの管理
今後いくら入金があり、いくら支出しなければならないのかを把握して、資金が不足しないように調整することです。

キャッシュフロー=過去のお金の流れの記録
今までいくら入金があり、いくら支出したかを把握することです。

このように意味合いが異なるとはいえ、“未来”と“過去”というだけあって両者は無関係ではありません。
健全な資金繰りを行うためには、キャッシュフローを把握することが欠かせないのです。

なお、キャッシュフローについては、こちらの記事をご覧ください。

キャッシュフローとは?経営者なら知っておきたいキャッシュフローの基礎知識

2-2 「資金繰り」と「資金調達」の違い

「資金繰りが苦しい」「資金繰りが厳しい」という言葉を聞かれた事があるかもしれません。

そして、資金繰り=資金のやりくり、というイメージで同一視されやすい言葉に「資金調達」がありますが、こちらも意味が異なります。

資金調達=必要な資金が足りない場合に、不足分を用意する
資金不足の際に、融資や出資などを受けることで資金を補うことです。

資金繰り=必要な資金が不足しないように管理・調整する
資金不足に陥らないよう、資金の流れを調節することですが、もし不足しそうになれば、資金を補うことも含まれます。

少しわかりにくいかもしれませんが、「資金調達」は「資金繰り」の一環として行われるもの、といえるでしょう。
よって、資金調達についてはこの後4章でも改めて取り上げます。


3.資金繰りが悪化する6つの原因

基本的には「入金が減る・遅く」「出金が増える・早く」なると資金繰りが悪化するわけですが、この章では具体的に資金繰りが悪化する原因について見ていきます。

3-1 赤字経営

“入金が少なく出金が多い=赤字”ということで、資金繰りが悪化する原因として多いのは、赤字が続くことです。

売上が減少しても、人件費や家賃などの固定費は支払い続けなければならないため、資金が不足してしまうからです。

こうなりますと、無駄をなくし、販路を広げ、ときには事業内容の転換も検討するなど、経営を見直す必要があります。

3-2 急激な売上減少

順調に黒字が続いていても、何かのきっかけで売上が急激に減少してしまうことで、資金繰りが悪化する場合もあります。

「新しい製品を発売したが売れなかった」といった自社の失敗によるケースもあるでしょうが、「主要取引先の経営が悪化した」など、外的な要因によるケースも考えられます。

新型コロナウイルスによる旅行業や飲食業への打撃、急激な物価高の影響なども、外的要因による急激な売上減少の例になるでしょう。

3-3 急激な売上増加

ちょっと意外かもしれませんが、売上が急激に増えたせいで、資金繰りが悪化する場合もあります。

たとえば、通常は毎月千万単位の取引しかない企業が、億単位の案件を受注したとします。
となると、材料や商品の仕入にかかる費用も通常の何倍にも及ぶでしょう。

一方で、億単位の売上の入金は数ヶ月先、場合によっては1年以上先になるかもしれず、それまでの間に、仕入にかかる費用や人件費などが資金繰りを圧迫してしまうわけです。

最悪の場合、資金が不足して「黒字倒産」になりかねません。

黒字倒産」とは、帳簿上の利益が黒字であっても、資金が不足してしまったために倒産することで、日本の企業ではこのケースが意外に多いのです。
この黒字倒産については、こちらの記事をご覧ください。

黒字倒産とは?黒字なのに倒産する原因と今すぐ実践すべき予防策

3-4 無理な設備投資や事業拡大

赤字経営を改善させようとして、もしくは黒字経営でより利益をあげようとして、新たに設備投資を行ったり事業規模を拡大したりすることもあります。
売上に結びつく結果につながれば良いのですが、資金繰り悪化の要因になる可能性をはらんでいるのも確かです。

というのも、設備投資にも事業拡大にも資金が必要です。そこに投資することで、手元の資金は大きく減りますし、もし銀行などから融資を受けた場合には、毎月の返済が発生します
もし計画通りに増収できなかった場合は、資金繰りが苦しくなるでしょう。

「資金不足になったら、融資を受ければいい」という考えはリスクが大きいものです。
すぐに結果が出なくても資金繰りに困らないよう資金に余裕をもつなど、慎重に検討してください。

3-5 売掛金回収の遅れ

1章で見たように売掛金(未回収の売上)は、資金ではなく資産に含まれますが、資金繰りと無関係ではありません。本来、売上が増えれば資金も増えるはずですが、「未回収の売上」ということは現金ではないわけですから、“入金が遅くなる”売掛金回収が遅れると資金繰りが苦しくなってしまいます

よって売掛金は、入金期日までに必ず回収することを心がけてください。
入金期日は厳守するよう取引先に伝え、1日でも遅れた場合はすぐに督促の連絡をしましょう。

もし「少し遅れているけれど、じきに入金してくれるだろう」などと考えて放置していると、先方からは「多少の遅れは待ってくれる相手だ」とみなされて、支払いを他社の後回しにされてしまうかもしれません。
そうなると、自社の資金繰り計画もおかしくなってしまいますから、売掛金は期日までにかならず回収する必要があるのです。

すでに未回収の売掛金がたまっている場合は、早急に回収して資金繰りを正常に戻してください。

このような売掛金の回収については、こちらの記事をご覧ください。

売掛金の回収はどうする?効果的な回収方法、回収の流れなど徹底解説

3-6 資金繰りが管理できていない

資金繰りが悪化してしまう意外な理由として、資金繰り管理ができていないという事もあります。

どうせ小さい会社だし、自分の頭の中だけで管理できる…と思っても、
・自社に資金がいくらあるのか
・月々の入金と支払いはいくらあるのか
・入金と支払いの期間はどうなっているのか
を正確に把握するのは、結構大変です。実はそれほど悪い状況でもないのに支払いを忘れたりして、感覚頼りでしっかり管理していなかった事が仇になることもあるわけです。


4.資金繰りを良くする3つの方法

基本的には「入金を増やす・早く」「出金を減らす・遅く」、つまり3章で見た資金繰りが悪化する原因を、裏返して見れば良くする方法になります。

この章では、3章の裏返しだけでは説明しきれない、資金繰りを良くする方法を3つお伝えします。

4-1 資金繰り表を作成して、資金とその流れを把握する

まず行っていただきたいのが、資金繰りを管理する確実な方法である「資金繰り表」の作成です。

「資金繰り表」とは、自社の資金の流れを表にして可視化するものですが、「決算書」(財務諸表)には含まれません。
決まったフォーマットもなく、必ず作らなければいけない義務もありませんが、3-6で見たように、自社の資金の流れを整理するためには、資金繰り表を作ることが不可欠です。
これをもとに、自社の資金繰りの問題点を洗い出したり、今後の資金繰りを検討できるからです。

詳細は、こちら資金繰り表の記事をご覧ください。紹介している記事の方法は、なかなか手間がかかるものではありますが、しっかりと自社の資金の流れを把握することが大切なのです。

資金繰り表とは?資金繰り改善のために知るべき資金繰り表の作り方

4-2 資金調達をする

前記の2-2で“資金調達は資金繰りの一環として行われるもの”とお伝えしたように、資金調達も重要な手段です。

具体的には、
◎銀行など金融機関からの融資を受ける
◎他企業や投資家などから出資を受ける
◎公的な助成金や補助金を受ける
◎不要な資産を資金化する
◎在庫を処分する

などさまざまな方法があります。

詳細は、こちら資金調達の記事をご覧ください。中には中小企業に無関係そうなものが含まれているかもしれませんが、事業が止まるリスクへの備えとして、あるいは事業を進める上でも、数々の資金調達方法を心得ておくことは損ではありません。

資金調達はどうする?18の方法とメリット・デメリットを徹底解説

4-3 経費を削減する

入金を正常化すると同時に、出ていくお金も見直す=経費削減をする必要もあるでしょう。

もし、商品の仕入費用や材料費が大きな割合を占めている場合は、無駄な在庫をなくして必要分を仕入れるようにします。
家賃なども、抑えることができるかもしれません。もちろん消耗品などの細かい経費も、無駄があればできるだけ削りましょう。

ただ、あまりに削減しすぎて、従業員に余計な負担がかかったり、モチベーションが下がってしまうようなことは避けなければなりません。
社内の意見も聞きながら、適切な経費削減を行ってください。

経費削減については、こちらの記事もご覧ください。

経費削減の項目+アイデア13選!流れ4STEPと重要点を解説


さいごに

以上、資金繰りについて見てきました。

まずは、資金繰りの意味合いをしっかり理解して、似たような言葉と混同しないようにしましょう。

そして、資金繰りが悪化する原因、資金繰りを良くする方法は、経営の基本と言えることがご理解いただけたと思います。

とはいえ中小企業の場合、限られた中で資金繰りに気を配り続けるというのも大変でしょう。そこで、経営にも通じる税理士に依頼するという方法があります。

単に税の申告をこなすだけの税理士ではなく、資金繰りを含めた経営全般を見渡したサポートができる税理士と共に、良い会社づくりを進める事もぜひご検討ください。

 

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