売掛金の回収はどうする?効果的な回収方法、回収の流れなど徹底解説

「売掛金がなかなか回収できないとき、どうすればいい?」
「相手が音信不通になって、売掛金が回収不能になった場合、対策や帳簿の処理はどうすべき?」

そんな疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。
売掛金の回収が滞った場合は、大きくわけて以下の6つの方法で対応します。

・交渉
・内容証明
・相殺
・商品引き揚げ
・債権譲渡
・法的手段

また、取引相手が回収に協力的な場合と非協力的な場合とで、対応策も変わります。
うまくいけば交渉で解決できますが、最悪の場合、訴訟も覚悟しなければなりません。

そこでこの記事では、売掛金の回収について知っておくべきこと、さまざまな対策について解説していきます。
まず最初に、

◎売掛金回収の基礎知識
◎売掛金の消滅時効と事項を中断させる方法

について説明した上で、本題である、

◎売掛金回収の方法と流れ

をくわしく解説します。
さらに、

◎売掛金が回収できないケース
◎売掛金が回収できない場合の対処法
◎売掛金回収をスムーズにするための事前の注意点

についても説明します。
最後まで読めば、売掛金の回収について知っておきたいことがひと通りわかるはずです。

この記事で、あなたの会社が未回収の売掛金を無事に回収できるよう願っています。

1. 売掛金回収の基礎知識

この記事では売掛金の回収で困っている人向けに、その方法を説明していきます。
その本題に入る前に、そもそも売掛金の回収とはどんなものなのか、知っておくべき基本知識をいくつか挙げておきましょう。

1-1. 売掛金の回収はスピードが勝負

売掛金の回収でもっとも意識すべきこととは何でしょうか?
それは“スピード”です。

「支払いが滞ったな」と気づいたら、時間を置かずにすぐ動きましょう。
まず取引先に連絡して、支払いがどうなっているか確認します。

先方の支払い忘れやこちらの請求忘れ、何かのミスなどであれば、なるべく早くに支払ってもらって解決です。
しかし、先方が何らかの事情で支払いができないということであれば、早急に対応しなければなりません。

いずれ他社からも先方に請求連絡が行くかもしれませんから、それより早くに担当者と話をして、

・なぜ遅れているのか
・いつなら支払えるのか

を確認し、支払いの確約をとりましょう。

もし「待っていればそのうち支払われるかも」などとのんびり構えていると、その間に音信不通になったり、破産の準備を始められてしまうかもしれません。
そうなると、売掛金の回収は難しくなります。

売掛金を無事に回収したければ、「スピード勝負」「入金遅延には即対応」を心掛けてください。

 

1-2. 売掛金には「消滅時効」がある

もうひとつ、売掛金の回収について注意が必要なのは、売掛金には消滅時効があるということです。


「消滅時効」とは、「債権者=お金を貸した人」が「債務者=お金を借りた人」に対して、一定期間請求などせずにいると、債権者の権利が消滅してしまう制度です。

つまり、貸した側が借りた人に「お金を返して」と言わずにある程度の期間が過ぎると、貸した側は「請求権=お金を返してもらう権利」を失ってしまうのです。

売掛金の時効期間は、

◎2020年4月以降に発生した売掛金:売掛金の支払期限から数えて5年
◎2020年3月以前に発生した売掛金:売掛金の支払期限から数えて2年

と民法で定められています。

支払いの請求をせずに上記の期間放置してしまうと、売掛金の権利を放棄したとみなされて回収不可能になりますので、くれぐれも注意してください。

 

1-3. 時効を中断させる方法

売掛金が時効になってしまう=回収不能になってしまっては困りますよね。
そこで、法的にそれを回避する方法があります。

時効期間内に以下の3つの手段のいずれかをとれば、時効期間を中断することができるのです。

◎請求
◎差し押さえ
◎債務の承認

これらの時効中断の手続をとることで、債権者側は売掛金の請求権を保つことができます。
では、その方法をくわしく見ていきましょう。

1-3-1. 請求

まず、時効を中断させるために債権者側はすべきことは、債務者側に支払いの請求をすることです。
その方法はいろいろありますので、以下を見てください。

内容証明郵便による催告

債務者側に「支払いをしてほしい」旨を内容証明郵便で送付します。
内容証明郵便を送ると、郵便が相手に届いた日から6か月間、時効を中断することができます。

支払督促

債権者が裁判所に申立てをして、支払の督促命令を出してもらいます。
これに対して債務者側が異議を申立てなければ、債権者は強制執行の申立てをすることができるようになります。

調停

債権者側から裁判所に申立てをして、債務者を裁判所に呼び出し話し合いをします。
調停は訴訟ではなく、第三者である調停委員を間にはさんで問題解決を図る方法です。

訴訟(少額訴訟)

債権者から裁判所に訴訟を起こします。

一般的な訴訟は上記3つの手段と比べて費用と時間がかかるため、60万円以下の債権であれば、「少額訴訟」を利用するといいでしょう。
少額訴訟は原則として1回の審理で紛争解決を図るもので、控訴はできません。

一般的には、まず内容証明郵便を出して時効を中断し、相手の対応を促すケースが多いようです。

ただ、内容証明郵便が無視されるケースもありますので、反応がなければ支払督促や調停に進みましょう。

1-3-2. 差し押さえ

支払督促や訴訟によって、裁判所から債権者に「強制執行」の許可が出れば、債権者は債務者の財産を差し押さえすることができ、これにより時効も中断します

または、強制執行の許可を待たずに、前項の請求手続きと並行して「仮差押え」をすることもでき、その場合も時効は中断されます。

仮差押えはのちのち債権が回収できるよう、債務者の財産を保全する手続きで、裁判所の発令があれば債務者が財産を処分することができなくなります

「訴訟には勝って強制執行の許可をもらったけれど、債務者側から回収できる資産がない」ということをなるべく未然に防ぐためには、仮差押えは重要な方法だといえます。

1-3-3. 債務の承認

もうひとつ、時効を中断させる簡単な方法として債務の承認があります。
これは、「債務者が、債権者に債務を負っていることを認める」ことで、債務者側が、

・請求によって、債務の一部を債権者に支払う
・請求によって、債務を認める書面(支払い約束証など)を交わす
・請求によって、債務の返済猶予を求める

といった行為をすると、「債務の承認」とみなされます。
つまり、売掛金の回収が難しくなったら、

◎一部だけでも支払ってもらう
◎売掛金があること、それを支払うことを明記した書面にサインをもらう

といったことができれば、時効を中断することができるのです。

上記のように、時効の中断にはさまざまな方法がありますが、手順としては、まず最初に内容証明郵便を出して、6か月間時効を中断させるところから始めるといいでしょう。

 

 

2. 売掛金回収の方法と流れ

この記事を読んでいる方がもっとも知りたいのは、「どうやって売掛金を回収すればいいのか」という方法ですよね。

売掛金回収の方法は、大きく分けて以下の6つあります。

◎交渉
◎内容証明
◎相殺
◎商品引き揚げ
◎債権譲渡
◎法的手段

これらを相手の出方にあわせて、段階を追って進めていきます。

そこでこの章では、上記6つの手段を踏まえつつ、売掛金回収の一般的な流れに沿って何をすべきか解説していきます
大まかな流れはこちらのフローチャートをご覧ください。

 

2-1. 取引先に連絡・交渉する

売掛金の支払いが滞ったら、まず最初にすべきことは取引先の担当者への連絡ですよね。
日をおかずにすぐに連絡してください。
連絡がついたら、まずは

・支払いが行なわれたか

を確認します。
こちらが請求し忘れていたり、何らかの手違いがあったりする可能性もあるからです。
そこで、未払いだとわかったら、

・なぜ支払いが遅れているのか、その理由
・いつであれば支払えるか、支払い可能日とその根拠

を聞いてください。
支払い期限を延長すれば支払えるのであれば、期限を交渉します。

漠然と「来月なら支払えると思います」という返答ではなく、「〇月〇日に、D社から売掛金の支払いがあるから」というところまで聞き取って、それをこちらの支払いに回してもらうよう、書面などで確約してもらいましょう。
その際に、できれば少額だけでも支払ってもらい、「債務の承認」=時効の中断もしておくといいでしょう。

2-2. 出荷を停止する

先方と連絡を取って、手違いやミスではなく支払いが滞っていることが確認出来たら、次にその取引先への出荷を停止しましょう。
それにより、これ以上未払いの売掛金が増えることを未然に防ぐことができます。

このとき、先方の担当者には、「今回の売掛金の入金があるまで、出荷は止めさせていただきます」と忘れず伝えてください。

2-3. 相殺できる債権を探す

次に、未払い分の売掛金と相殺できる債権がないか確認します。
先方との間に売掛金だけでなく買掛金もあれば、それで「相殺」して回収済みとすることができるからです。

たとえば、こちらの売掛金が50万円、先方からの買掛金が80万円ある場合、相殺して売掛金はゼロになり、こちらからの買掛金が30万円に減るわけです。

この手続は、売掛金=債務を相殺することについて先方に内容証明郵便を送るだけで完了しますので、相殺できる買掛金さえあればもっとも簡単な方法といえるでしょう。
内容証明については、2-6-1. 内容証明を出すでくわしく説明しますので、そちらを参照してください。

ただし、買掛金より売掛金のほうが大きければ、相殺だけでは全額回収できません

たとえば、未回収の売掛金が50万円あるのに対して、買掛金が30万円だった場合は、売掛金のうち30万円だけを相殺して、残りの20万円分についてはまた別途で回収する方法を考える必要があるのです。

2-4. 契約書を確認する

債権を探すと同時に、未払いの取引に関する契約書も確認しましょう。
この内容が、今後の回収作業において重要になるからです。

確認するのは主に、

◎売掛金額について先方がサインや捺印した書面があるか
◎「期限の利益喪失条項」が記載されているか
◎販売した商品の所有権はいつ移転するか

の3点です。

2-4-1. 売掛金額を確認できる書面

まず、今回の取引では代金いくらで販売したか、売掛金額が明記されている書面に、債務者側の捺印やサインがあるか確認します。
それがあれば、先方がこの売掛金額を了承済みであることの証明になり、今後もし法的手段に移行した場合に有利に働きます。

2-4-2. 「期限の利益喪失条項」

次に、契約書に「期限の利益喪失条項」が盛り込まれているかを確認します。

「期限の利益喪失条項」とは、債務者側がひとつの売掛金の支払いを遅延した場合、その後に支払予定の売掛金についてもすぐに支払う義務が生じるという契約条項です。

たとえば、今月・来月・再来月にそれぞれ50万円ずつの売掛金を支払うはずが、今月の支払いが遅れたとします。
その場合、通常であれば現時点で支払わなければならないのは今月分の50万円だけですよね。

ですが、もし契約書に期限の利益喪失が盛り込まれていれば、現時点で来月・再来月分もあわせた150万円を支払わなければならなくなるということです。

契約書を確認してこの条項が盛り込まれていれば、債権者は支払い期限がきていない売掛金も含めたすべての未払い金を一度に請求できます。

2-4-3. 商品の所有権の移転時期

また、販売した商品の所有権がどのタイミングで売主から買主に移るのかも、契約書で確認しましょう。

一般的には、

・商品引き渡し時
・代金支払い時

の2つのパターンが考えられます。

「代金支払い時」となっていれば、まだ売掛金が支払われていない現時点では商品はこちらのものです。
もし先方が破産して支払いを免れようとした場合でも、商品をこちらのものとして引き揚げることができるため、損失を防げます。

が、「商品引き渡し時」であれば、代金は未払いでも商品自体は先方のものになってしまっています。
商品引き揚げ以外の回収方法を考える必要があるでしょう。

2-5. 取引先が協力的な場合

さて、ここまではどんなケースでもおおむね共通する流れです。

ここからは、

・取引先が売掛金回収に協力的な場合
・取引先が協力的でない場合

によって対応が分かれます。

まずは、取引先が協力的な場合の流れを見ていきましょう。

2-5-1. 未払金残高確認書を作成する

取引先が、なんとかして売掛金を支払おうという姿勢が確認出来たら、まずは先方に「未払い金残高確認書」を作成してもらいましょう
これは、

・現在未払いの売掛金があることと、その金額
・その売掛金をかならず支払うという確約

を記載するものです。
これがあれば、先方に支払いを要求するのもスムーズにできますし、もし今後、差押えや訴訟など裁判所が介入する事態になった場合には、こちらの要求の根拠となります。

2-5-2. 決算書を提出してもらう

次に、先方の決算書を提出してもらって内容を確認し、経営状況や資産内容を把握します。
これにより、未払金の支払い能力があるか、もし差押えなどが必要になった場合、どんな資産があるかがわかります。

2-5-3. 商品を引き揚げる

もし未払い分の商品が先方の手元にまだあれば、それを引き揚げるのもひとつの方法です。
その場合、

・買主側が引き揚げを了承すること
・未払い分の売買契約を解除すること

が必要になります。

2-5-4. 債権譲渡・債権譲渡担保を行う

また、債務者である企業が別の第三者企業に対して売掛金を持っている場合は、その債権を譲渡してもらってそちらから回収する=「債権譲渡」ということもできます。

たとえば、A社がB社に50万円分の商品を販売し、その売掛金が回収できないとします。
そこでB社が「実はC社に50万円分の商品を売った代金が来月になったら入るので、そのときになればA社への支払いができる」と言いました。

ですが、そのときになって確実にC社からの入金がA社への支払いにあてられるとは限りませんよね。
B社は資金繰りに詰まっているわけで、他社への支払いに回されてしまう恐れもあるでしょう。

そこで、A社が確実に売掛金を回収するためには、B社がC社に対してもっている50万円分の売掛金請求権を、A社に譲渡させるわけです。
来月、C社からB社への支払い日になったら、50万円は直接A社が受け取ることができるので、他社に回されるリスクを回避できます。

この手続きは、B社からC社に対して「債権をA社に譲渡する」旨を通知する必要があります

それにより、C社は「来月の支払いはA社にすればいいのだな」と知ることになり、期日にはA社に直接支払われるはずです。

また、債権譲渡と似た別の方法で「債権譲渡担保」というものもあります。
「債権譲渡」では、A社に対してB社が売掛金未払いの場合、B社が別の取引先C社に対してもっている売掛債権をA社に譲渡することで、A社は未払金を回収できました。

しかし、「債権譲渡担保」の場合、B社はC社の売掛債権をA社に譲渡するのではなく、担保として差し出すわけです。

この方法のメリットは、

・もしB社が破産しても、A社はC社から売掛金を回収できる
・B社の売掛債権が他社に差し押さえられた場合でも、A社が優先的に売掛金を回収できる

などです。

もし債権譲渡担保を先方が了承してくれるなら、

・債権譲渡担保設定契約書を作成
・C社に債権譲渡担保を設定したことを内容証明郵便で通知

という手続で行なうことができます。

2-5-5. 連帯保証をつけてもらう

債務者側の企業に支払い能力や資産がなくても、経営者個人には資産があるというケースもあります。

その場合、未払いの売掛金について、経営者の連帯保証をつけてもらってもいいでしょう。

そうすれば、もし約束の期日までにまた支払いがなかった場合、企業だけでなく経営者個人にも支払い義務が発生するので、個人資産から回収することも可能になります。

 

2-6. 取引先が協力的でない場合

さて、ここまでは取引先が協力的な場合の流れでした。
しかし、取引先が支払う意思を見せなかったり、話し合いに応じない場合もあるでしょう。

そんなときは、以下の流れで進めましょう。

2-6-1. 内容証明を出す

まず最初に内容証明郵便を出して、支払いを催告します。

内容証明郵便は、「いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたか」を日本郵便が証明するもので、法的拘束力などはありません。

しかし、内容証明を出された=支払い遅延が記録に残る、また債権者側が本気であるということでプレッシャーを感じる債務者も多く、この時点で何らかの対応をしてくれる可能性があります。

また、内容証明郵便は書き方が決まっていますが、誰でも出すことができ、低コストで済むというのも利点です。
ですが、先方によりプレッシャーを与えるには、弁護士に依頼して弁護士の名で出してもらうといいでしょう。

【内容証明郵便】

◎書き方:縦書きの場合 1行20字以内、1枚26行以内
     横書きの場合 1行20字以内、1枚26行以内/1行13字以内、1枚40行以内
            /1行26字以内、1枚20行以内

◎費用:内容証明の加算料金  1枚 440円/2枚 700円/3枚 960円/4枚 1,220円/5枚 1,480円
    これに郵便料金+一般書留の加算料金(435円~)を合計した金額

 

2-6-2. 資産を仮差押えする

内容証明を出してもいい反応がない場合は、しかたないので法的手段に移行します。
まず最初は先方の資産の仮差押えを行ないましょう。

「差押え」は、裁判所に支払督促や訴訟を申立て、「強制執行」の許可をもらわなければ行なえません
しかし、「仮差押え」はその許可が出るまでの間、債務者の資産を仮に差し押さえることができます

仮差押えされると、債務者は自分の資産を売却したり、他へ移して隠匿したりすることができなくなるので、債務者がのちのち回収しやすくなるのです。
具体的には、

・商品の売買代金債権
・他社への売掛債権
・預貯金
・不動産 

などを仮差押えできます。

2-6-3. 訴訟を行う

仮差押えができたら、いよいよ訴訟です。
裁判所に民事訴訟を申し立ててください。
その結果、こちらの訴えが認められれば、債務者側は判決に従って未払金を支払わなければならなくなります。

ただ、訴訟の過程で和解ができればそれに越したことはありません
先方が和解の意思を見せたら、平和的解決の道も探ってみましょう。

2-6-4. 強制執行を行う

結審後、判決通りに支払いがあればいいのですが、それでもまだ支払われない場合は、強制執行をするしかありません。
債務者が持っている

・他社や顧客への債権
・預貯金
・不動産

などを、差押えます。
実際の強制執行は、裁判所に申請をして行います。

◆参考:裁判所のホームページ「判決等はもらったけれど(強制執行の概要)」

 

 

3. 売掛金が回収できないケース

売掛金を回収する流れがわかりました。
しかし、これに沿って進めても、なお回収できないケースもあります。
それは、

・相手とまったく連絡が取れなくなった
・相手が自己破産または倒産した

という場合です。

3-1. 相手と連絡が取れない

売掛金の支払いが滞ったら、まず最初にすべきことは、先方への連絡でした。

ですが、その時点ですでに音信不通になっているケースがあります。
電話もメールも応答なく、郵便物も受け取り拒否、または引っ越していて行方知れずなどの場合です。

そうなると、債務の承認をさせることも、時効を中断することも難しくなります。
なんとか相手を探し出すまで、回収作業は止まってしまいます。

3-2. 相手が自己破産・倒産した

また、こちらが何らかの手を打つ前に、相手が自己破産や倒産をしてしまった場合も、回収は難しいでしょう。
たとえば企業が倒産すると、その企業の債権者は個別に売掛金を回収することが禁止されています
残された資産は、債権者全員で分配しなければならないからです。

ただ、相殺や商品の引き揚げができる可能性は残っていますので、調べてみてください。
くわしくは、次章で解説します。

 

 

4. 売掛金が回収できない場合の対処法

さて、どうしても売掛金が回収できない場合、こちらがとれる対処法にはどんなものがあるでしょうか。
それは大きく以下のように分けられます。

◎商品を回収する
◎第三者に介入してもらう
◎その他

では、具体的に説明していきましょう。

 

4-1. 商品を回収する

3章で挙げたように、債務者側が破産や倒産をした場合、強制執行はできなくなってしまいます。
そこで、回収できる商品があれば、それを回収して損害を最小限に抑えましょう

たとえば、

・商品引き揚げ
・動産売買先取特権の行使

などです。

4-1-1. 商品を引き揚げる

2-4-3. 商品の所有権の移転時期で触れたように、契約上で商品の所有権の移転タイミングが「代金支払い時」になっていて、相手側にまだ商品が残っている場合は、その商品は、まだ債権者のものなので、商品引き揚げをすることができます

破産管財人に了承をとってから、商品を引き揚げてください。

4-1-2. 動産売買先取特権を行使する

商品がすでに債務者側になく、別の会社に転売されていた場合は、「動産売買先取特権」が使えるかもしれません。

「動産売買先取特権」とは、たとえば売主Aが商品aを買主Bに販売し、BはaをCに転売したとします。
この場合、もしBがAに支払いをしなければ、AはBの同意なしに、Cがもっているaから債権回収できる、という権利です。

ただしこの場合、Cがもっている商品aが、

・売主Aが売った商品であること
・Bが代金を支払っていない商品であること

が立証できなければなりません

同じ商品であっても、BがAから買ったものだと証明できなかったり、すでに過去にBが代金支払い済みのものであったりすれば、動産売買先取特権はありません。

商品番号がわかる書類などでこれを証明できるようであれば、裁判所に申し立てをして転売先から商品を差し押さえましょう。

 

4-2. 第三者に介入してもらう

破産や倒産はしていないけれど、とにかく支払いに応じてもらえないという場合は、第三者に介入してもらうのも効果的です。
たとえば、債権回収に強い弁護士などです。

4-2-1. 弁護士に依頼する

弁護士の中には、債権回収に力を入れている人もいます
そういう人・法律事務所に依頼すれば、面倒な手続きなどをすべて代行してもらえるので、毎日毎日回収に頭を悩ませることがなくなるでしょう。

また、法律の専門家である弁護士が介入することで、債務者側も真剣に対応せざるを得なくなり、硬直していた交渉が進むことも期待できます。

ただ、弁護士に依頼した場合、費用が発生するのが難点です。
相談料、着手金のほかに、回収できたら成功報酬として20~30%を支払うケースもありますので、事前に費用の確認は必須です。
売掛債権が少額の場合には適さないといえるでしょう。

 

4-3. その他

一方で、どうにもならない場合は回収をあきらめて、かわりに損害を最小限にとどめるという考え方もあります。

たとえば、

・貸倒損失金として処理する
・取引企業倒産対応資金で融資を受ける

などの方法です。

4-3-1. 貸倒損失金として処理する

回収できない売掛金は、そのままだと「売上」として計上するしかなく、税金がかかってしまいます
どうしても回収できないのであれば、せめてその税金だけでも支払わずにすませたいですよね。

そこで、回収できない売掛金を「損金」扱いにすることで、課税額を減らしましょう

その場合、勘定科目は「貸倒損失金」になります。
貸倒損失金として認められるのは、以下の3つのいずれかに該当している場合です。

貸倒損失と認められる要件

損金算入額

法律上の貸し倒れ

以下のような事情で法的に債権が切り捨てられた場合

・会社更生法、金融機関等の更生手続の特例などに関する法律、会社法、民事再生法の規定により切り捨てられた金額

・法令の規定による整理手続によらない債権者集会の協議決定および行政機関や金融機関などのあっせんによる協議で、合理的な基準によって切り捨てられた金額

・債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対して、書面で明らかにした債務免除額

債権切捨金額

事実上の貸し倒れ

債務者の資産状況や支払い能力などからみて、債権の全額を回収できないことがあきらかな場合
※担保がある場合は、それを処理してからでないと損金として処理できない

債権全額

形式上の貸し倒れ

・継続的に取引していた者に対しての最後の弁済から1年以上経過している場合

・債権額より取立費用のほうが多く、支払いを督促しても弁済がない場合

債権額ー備忘価額(1円)
※備忘価額を残さずみ全額損金経理した場合は、全額損金不算入になる

参照:国税庁ホームページ「No.5320 貸倒損失として処理できる場合

回収できなくなった売掛金が上記のいずれかに該当する場合は、貸倒損失金として仕訳しましょう。

ただし、その場合は税務署の調査されても問題ないよう、貸倒損失であることを証明できる以下のような書類を用意しておいてください。

・請求書や納品書
・回収にようと努力したことを証明する書類:内容証明郵便、催告書の写しなど
・債務者側の支払い能力を示す書類:信用調査会社の報告書など

4-3-2. 取引企業倒産対応資金で融資を受ける

債務者である企業が倒産してしまって売掛金が回収できない場合、債権者である企業の方も経営にダメージを受ける恐れがあります。
そんなときは、日本政策金融公庫の「取引企業倒産対応資金」という融資制度を利用してみてはどうでしょう?

これは、取引先の倒産によって経営困難に陥った中小企業、小規模事業者、個人事業主に、3,000万円までの融資を行う制度です。
政府系金融機関である日本政策金融公庫の融資ですから、金利も高くなく、借入しやすくなっています。

融資制度の概要は以下の通りです。
さらにくわしくは、日本政策金融公庫のホームページ「取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)」を参照してください。

 

【取引企業倒産対応資金】

利用できる事業者

取引企業など関連企業の倒産により経営に困難を来している方で、次のいずれかに該当する方

1)倒産した企業に対して50万円以上の売掛金債権などを有する方

2)倒産した企業に対する取引依存度が20%以上である方

3)倒産した企業に対して貸付金や差入保証金などの債権を有する方

4)倒産した企業の債務を保証している方

5)倒産した企業の設置する商業施設に入居している方であって、倒産の影響を受けている方または影響を受けるおそれのある方

6)倒産した企業から受注した商品や役務などが、倒産の影響により取り消された方

資金の使いみち

売掛金債権の回収困難、売上減少などのため緊急に必要となる運転資金および関連企業の倒産の影響により、企業の運営上一時的に必要となる運転資金

融資限度額

別枠 3,000万円

返済期間

8年以内<うち据置期間3年以内>

利率(年)

[基準利率]

担保・保証人

応相談

 

 

5. 売掛金回収をスムーズにするための事前の注意点

ここまでは、実際に売掛金の回収が難しくなってからの対処法を解説してきました。
しかし、一方で企業としては売掛金はつねにスムーズに回収できるよう、事前に対策しておくことも必要でしょう。

そこでこの章では、売掛金回収のために事前にとれる対策や注意点を挙げておきましょう。

 

5-1. 相手の資金を把握する

まず大前提として、取引をする際には相手の資金状況を把握しておく必要があります。
登記簿を見たりインターネットで情報を集めたり、ときには専門の信用調査会社に依頼して調べてもらうのもいいでしょう。

それにより、この企業はどれくらいの資金力があるのかを知っておけば、無理な取引は未然に防げます。

5-2. 与信枠を設定する

前項で調べた資金状況をふまえて、取引先ごとに「与信枠=掛取引の限度額」を設定しましょう。
売掛金が与信額に達すると、それ以上の取引は、前の売掛金を支払いわなければできないようにするのです。
これで際限なく売掛金が増えていくことを防げます。

ただ、与信枠は勝手に社内で設定して先方に伝えないというわけにはいきません。
話し合いをして納得してもらった上で決定してください。

5-3. 契約書に期限の利益喪失条項を入れる

2-4-2. 『期限の利益喪失条項』でも説明しましたが、契約書にはかならず期限の利益喪失条項を入れるようにしましょう。
これがあれば、一度支払いが遅延すればそこまでの売掛金は全額一括請求できるようになるので、「毎回支払いが遅れる」というようなことはなくなります。

5-4. 契約書に所有権留保条項を入れる

2-4-3. 商品の所有権の移転時期で触れたように、売掛金が回収できないリスクに備えるためには、商品の所有権が移るタイミングを「代金支払い時」にしておくことが重要です。
そのため、契約書には「商品の所有権の移転は、代金が全額支払われたとき」という「所有権留保条項」を入れましょう

これがあれば、もし相手が倒産しても、商品が残っていれば引き揚げることができます。

5-5. 契約書に商品番号など商品を特定できる記載を入れる

また、4-1-2. 動産売買先取特権を行使するで説明した動産売買先取特権を行使できるよう、契約書には売買する商品のロットナンバーなど、商品が特定できる情報を盛り込むようにしましょう。

特に、同じ商品を継続的に売買している場合は、「この商品は、すでに代金が支払われたものか、未払いか」を毎回明確にしておく必要があります。
それがあれば、転売済みの商品も回収できる可能性が出てくるからです。

5-6. 取引先ごとに売掛の管理を徹底する

以上のことをすべて実施した上で、取引が始まったら、取引先ごとに売掛金の入金管理を徹底して行いましょう。
1日でも遅れたら、すぐに把握して先方に連絡することが重要です。

また、相手の資金状況、経営状況も常にチェックしておいてください。
「最近資金繰りが苦しそうだな」などと先回りして気づくことができれば、取引を少しずつ縮小する、支払いサイトを短くするなど、事前の予防策をとれるでしょう。

 

 

6. まとめ

いかがでしょうか?
売掛金の回収について、さまざまな方法や注意点が分かったかと思います。
ではもう一度、記事の内容を振り返ってみましょう。

◎売掛金の回収はスピードが勝負

◎売掛金には「消滅時効」がある

◎売掛金回収の方法は、
 ・交渉
 ・内容証明
 ・相殺
 ・商品引き揚げ
 ・債権譲渡
 ・法的手段

◎売掛金が回収できないケースは、
 ・相手と連絡が取れない
 ・相手が自己破産・倒産した

◎売掛金が回収できない場合の対処法は、
 ・商品を回収する
 ・第三者に介入してもらう
 ・売掛金を放棄する

 

以上を踏まえて、あなたの会社が未回収の売掛金を無事に回収できるよう願っています。

 

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