相続人になれる人は、あらかじめ法律で決められています。
具体的には、被相続人(亡くなった人)の配偶者、子、子がいなければ直系尊属(親や祖父母など)、直系尊属もなければ兄弟姉妹が相続人になります。
子や直系尊属、兄弟姉妹は、配偶者とともに相続人になりますので、具体的には下図のようになります。
しかし、現実には相続人になれるかどうか判断に迷うケースがあります。
特に離婚や再婚が行われていると、相続人になれそうでなれない人が出てくるため注意が必要です。
また、相続人の地位にあるとしても、その相続人自身に問題があると相続人になれない場合があります。
離婚や再婚で変わる相続関係
被相続人に離婚歴、再婚歴があるケースでは、相続人となる「配偶者」と「子」の判断に迷うケースがあります。
相続人になれるかどうかを判断するには、「配偶者」と「子」を分けて考えることがポイントです。
配偶者は亡くなった時点で判断
相続人となる配偶者は、相続開始のとき、つまり被相続人が亡くなったときの戸籍上の配偶者のみです。
つまり前夫や前妻など「元配偶者」は相続人になりません。
極端な話、亡くなる1日前に離婚した夫や妻であっても、法律上の相続人にはならないのです。
事実婚の相手は相続人ではない
相続人になれるのは戸籍上の配偶者です。
そのため婚姻届を提出していない事実婚の相手は、相続人にはなりません。
ただし事実婚というだけで何もかも認められないわけではなく、たとえば遺族年金については相手と生計維持関係があり、事実婚として認定されることによって受け取れる場合があるなど、制度によっては差があります。
なお、亡くなった人に相続人がいない場合は、家庭裁判所に申し立てることによって「特別縁故者」として遺産を受け取れる可能性があります。(民法第958条の3)
「子」はすべて「相続人」
子については、元配偶者との子であっても相続人になります。
なお、上の図の子はどちらも夫婦間に生まれた子ですが、これが仮に婚姻していない男女の間に生まれた子であったとしても、相続人になります。
よって事実婚の相手や愛人との間に生まれた子も、相続人です。
ただし、婚姻していない相手との間に生まれた子の場合、その子が父親の相続人となるには「認知」という手続きが必要になります。
非嫡出子が父親の相続人となるには「認知」が必要
事実婚の相手や愛人との間に生まれた子のように、婚姻していない男女の間に生まれた子のことを「非嫡出子(ひちゃっくしゅつし)」といいます。
非嫡出子が父親の相続人になるには、父親による「認知」が必要です。
父親が非嫡出子を認知すると、父親の戸籍に、いつ誰を子として認知したかという内容が記載されます。
認知の方法には、
- 父親から役所に認知届を提出して行う
- 遺言で行う
- 子から家庭裁判所に認知調停などを申し立てる
といったものがあります。
遺言によって認知を行うときは、遺言執行者(遺言の内容を実行してくれる人)が必要です。
ちなみに母親は、出産によって親子関係が認められますので、認知の問題は、一般的に男性の相続のときに考えることが多くなります。
非嫡出子の相続分は?
かつて非嫡出子の相続分は、嫡出子(婚姻している男女の子)の半分という決まりがありましたが、今ではそれがなくなり、誰との間に生まれた子であっても、相続分は均等になりました。
親の婚姻・婚姻外という事情で、子供の権利が阻害されるのは憲法違反だ、ということになったのです。
迷いやすい相続人のケースまとめ
ここまでの内容を踏まえて、個別のケースで相続人になれるか・なれないかをまとめてみます。
元配偶者
相続人になりません。
元配偶者との間に生まれた子
相続人になります。親権者かどうかは相続には関係ありません。
愛
婚姻していませんので相続人になりません。
愛人との間に生まれた隠し子
相続人になります。
ただし父親の相続人となるには父親からの認知が必要です。
再婚相手
被相続人が亡くなったときに配偶者であれば、相続人になります。
再婚相手の連れ子
再婚相手とその前夫・前妻との間に生まれたいわゆる連れ子は、相続人になりません。
連れ子に遺産を渡したい場合は、養子縁組をするか、遺言書を作成して財産を遺贈する方法があります。
相続人なのに相続権がなくなる「相続欠格」と「廃除」
相続人の地位にあるのに、相続人本人の問題で相続権が認められないケースがあります。
それが、「相続欠格」と「廃除」です。
相続欠格とは
相続欠格とは、相続人としてふさわしくない悪質な行為をしたことで、相続人になれなくなることです。
具体的には次の人が、相続欠格の対象になります。
廃除とは
相続における廃除とは、被相続人の意思で相続人にふさわしくない人を除外することです。
具体的には、被相続人に対して虐待をした人、重大な侮辱をした人、その他の著しい非行があった人のうち、兄弟姉妹以外の相続人が廃除の対象になります。
廃除を行う方法には、
- 被相続人から家庭裁判所に廃除の申し立てをする
- 遺言によって廃除を行う
といったものがあります。
遺言によって相続人の廃除を行うときは、遺言執行者が必要です。
ちなみに、なぜ被相続人の兄弟姉妹だけは廃除の対象にならないかというと、遺留分をもたないからです。
もともと被相続人は、遺言によって、遺産を渡す相手を自由に決められるため、ふさわしくない相手には遺産を渡さないという選択をすることができます。
つまり遺留分をもたない兄弟姉妹は、廃除をしなくとも遺言で被相続人の意思を実現することができるため、廃除の対象にならないのです。
まとめ
今回は、相続人になれる人・なれない人について解説しました。
相続人は最終的には被相続人の戸籍謄本などを読み解き、誰が相続人になれるかを確定させることが必要です。