相続人は戸籍謄本でわかる!相続人を確定させる理由やその方法を解説

遺産相続において、まず行わなければならないのが「相続人を確定させること」です。しかし、これは一体何のために行うのでしょうか。「相続人って妻や子のことでしょ?」「家族関係なんてわかりきっているから、私たちには必要ないよね?」と思われる方も多いのではないでしょうか。

今回は、何のために相続人の確定を行うのか、そしてどのようにして行うのかを解説します。

なぜ相続人を確定させるのか

遺産の相続人は、被相続人(亡くなった人)を中心に見たときの親族関係で決まります。
そのため、相続ではまず被相続人の正確な親族関係を把握することから始まります。

しかし多くの場合、相続人となるのは身近な親族です。
なぜそのようなときまで、親族関係をわざわざ確認するのでしょうか。

それは、身近な親族だけが相続人ではないケースがあるからです。
たとえば、被相続人と昔別れた配偶者との間に、子がいるとします。
もし別れた配偶者が、すでに別の人と再婚して人生をやり直していたとしても、子は相続人のままです。
たとえ何十年と会っていなくても関係ありません。

また、子どもが再婚相手の養子になっていたとしても、それが特別養子縁組という方法でなければ、実の親との親子関係はなくなりません。
この他にも、交際相手との間に生まれた子を認知していれば、その子も相続人になります。

このように相続人が誰になるかは、その人の家族関係の全容がわからなければはっきりしないのです。
もちろん状況によっては「相続人は明らかに私しかいない」という場合もあると思います。
しかし、そうした場合でも、他に相続権のある親族が「いない」ことをきちんと確認して初めて自身が相続人であることを断言できるようになります。

相続人を確定させなかったらどうなる?

もし相続人を確定させないまま、わかっている範囲内の相続人だけで遺産を分けた場合、後から「本当は相続人がもう1人いた」とか「本当は私ではなく別の人が相続人だった」ということが起こる可能性があります。
その場合、せっかくまとまった遺産分割をやり直す必要がでてくることがあります。

また、金融機関や不動産登記など外部の機関に対する相続手続きでは、相続人であることを確認できる一定の書類の提出を求められます。
したがって相続人をきちんと調べていない状態で、こうした手続きを進めることはできません。

ちなみに法改正によって、2019年7月から、遺産である預金については遺産分割を待たずに法定相続分の3分の1まで払い戻しを請求できるようになりました。
相続人の生活などに配慮した改正なのですが、この制度も、相続人が確定していない状態では利用できません。

相続人を確定させる方法

それではどのようにして相続人を確定させるのか、具体的な方法を解説します。

相続人の確定は戸籍謄本で行う

相続人を確定させるには、被相続人の「戸籍謄本」を集める必要があります。
「戸籍謄本」とは戸籍の写しのことです。

現在、ほとんどの市町村で戸籍はデータ化され、私たちが請求できるのは「戸籍謄本」ではなく「全部事項証明書」という書類名に変わりましたが、現在も「戸籍謄本」という呼び方がよく使われています。
相続では、被相続人の出生から死亡までのすべて戸籍謄本をチェックしなければなりません。

なぜ出生から死亡までの戸籍謄本が必要なの?

これには、新しい戸籍が作られるときのルールが関係しています。
人は生まれたとき、親の戸籍に入ります。

しかし、ずっとその戸籍に入っているわけではありません。
結婚すれば親の戸籍から抜けて、夫婦で新しい戸籍が作られます。

もし離婚すれば夫婦の戸籍から抜けて元の戸籍に戻ったり、新しい戸籍を作ったりすることもあります。
つまり、生まれてから亡くなるまで、いくつかの戸籍を経て現在の戸籍に至っている方が多いのです。

相続では、被相続人の過去の戸籍をすべて集めてチェックする必要があります
なぜすべて必要なのかというと、戸籍が作られるとき、前の戸籍から引き継がれない情報があるためです。
相続で注意が必要になるのは、子の情報になります。

次の例をご覧ください。

  • A太郎とB子が結婚し、B美が生まれた。
  • しかしA太郎夫妻は離婚し、B子とB美がA太郎の戸籍から除籍した。
  • その後、A太郎はC子と再婚した。
相続の例

この例の場合、A太郎の新しい戸籍に、B美の情報は引き継がれません。
つまり、最新の戸籍だけを見ても、それに載っていない子がいる場合があるということです。
それを見落とさないために、相続では、出生から死亡までのすべての戸籍を集めてチェックしなければならないのです。
上記の図の場合、相続人は「〇〇市」と「△△市」の両方に、戸籍を請求する必要があります。(除籍された人の情報は、当時の戸籍には残ります。)

全部の戸籍謄本を集めるには

出生から死亡までの戸籍謄本を集めるには、まずは死亡時の戸籍謄本、つまり被相続人の最後の戸籍謄本を見て「従前戸籍」の情報をたどります。
「従前戸籍」とは、1つ前に入っていた戸籍の情報です。
仮に先ほどの例のA太郎が亡くなったとすると、戸籍謄本は次のようになります。

従前戸籍

A太郎の従前戸籍は、A太郎の身分事項に記載されています。(図の赤色の〇で囲んだ箇所)
よってA太郎の相続人は「〇〇市」に、A太郎の1つ前の戸籍を請求します。
あとはこの手順を繰り返して戸籍を1つずつさかのぼり、A太郎の出生時の戸籍(つまりA太郎の親の戸籍)までたどりつけばOKです。
そして集めた1つ1つの戸籍の内容を見て、相続人となる人がいないかどうかを確認すれば、すべての戸籍をチェックし終えたとき、相続人を確定させることができます。

なお、スタート地点となる死亡時の戸籍は、死亡時の本籍地を管轄する役所で発行してもらえます。
死亡時の本籍地がわからないときは、本籍の記載がある住民票の除票を請求しましょう。

改製原戸籍とは

戸籍謄本を集めていくと、次のような記載のある戸籍謄本に出会うことがあります。

改製原戸籍

この表示があるときは、データ化される前の戸籍謄本も請求しなければなりません。
なぜなら、新しい戸籍の編製と同じように、戸籍改製にも引き継がれない情報があるためです。
データ化される前の戸籍謄本は「改製原戸籍(かいせいげんこせき・かいせいはらこせき)」といいます。
改製原戸籍も、戸籍のある役所で発行してもらえます。

除籍謄本とは

除籍謄本」とは、「除籍」の写しのことです。
「除籍」とは戸籍に入っていた人が死亡や転籍などによって、全員いなくなった状態の元・戸籍のことをいいます。
戸籍謄本をたどっていくと誰もいなくなった戸籍、つまり除籍を挟むことがありますが、戸籍謄本と同様に本籍地を管轄する役所に保管されているため、請求すれば発行してもらえます。

なお戸籍と同じように、データ化された除籍は「除籍全部事項証明書」という書類名に変わっています。

戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍の取得方法

戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍は、それぞれの本籍地を管轄する役所に請求することで発行してもらえます。
発行料金は、戸籍謄本は1通450円、除籍謄本と改製原戸籍は1通750円です。

役所への請求方法には、

  • 窓口で請求する方法
  • 郵送によって請求する方法

がありますが、どちらでも構いません。

被相続人によっては、複数の役所に請求するケースや、遠方の役所に請求するケースもあると思いますので、その場合は郵送を利用しましょう。

戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を請求できる人

戸籍謄本等を請求できるのは、請求する戸籍に記載されている人、配偶者、親や子など直系の親族などとされています。
請求の際には、身分証明書類や必要に応じて親族関係がわかる書類などが必要になる場合がありますので、詳しくは請求先の市町村のホームページなどで確認しましょう。

代理人に請求を依頼することもできる

戸籍謄本等は、専門家に依頼して代わりに集めてもらうこともできます。
そもそも戸籍謄本は集めて終わりではなく、集めた戸籍謄本から相続関係を正確に読み解くことが最も重要です。
相続人を確定させることは、相続を正しく進めるための最重要部分ですので、専門家に任せることをおすすめします。

まとめ

今回は、相続人を確定させる理由や戸籍謄本の見方などを中心に解説しました。

  • 今回は、相続人を確定させる理由や戸籍謄本の見方などを中心に解説しました。
  • 相続人を確定させることは、どのような相続でも必要
  • 相続人を確定させるには、被相続人の出征から脂肪までの戸籍謄本等を集める
  • 正しく相続人を確定させるため、専門家に依頼することがおすすめ