相続税の税率は何%?相続税の計算方法をわかりやすく解説

遺産を相続する際、気になるのが相続税の問題です。平成27年の税制改革以降、相続税は以前より多くの人に関係する問題となっています。そもそも相続税は遺産から基礎控除を引いた金額にかかる税金ですが、遺産の額によっては相続税を支払う必要がないケースもあるなど、覚えておきたいポイントがいくつかあります。 今回は、「我が家の場合、相続税は支払う必要があるの?」と気になっている方に、相続税の税率や計算方法、相続税改正後の変化などについてわかりやすく解説します。

相続税の税率「累進課税」ってなに?

相続税の税率に適用されているのが「累進課税制度」です。相続税以外に所得税、贈与税などにも用いられる累進課税制度は、課税対象の額が大きくなるほど税率が高くなります。つまり相続税の場合、遺産が多い方にはより多くの税金が課されることになります。

累進課税による相続税の最低税率は、10%から相続する金額に応じて上がっていき、最高税率は55%とされています。以下の表をご覧ください。

区分税率基礎控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円以上55%7,200万円
参照:国税庁「相続税の税率」

上の表は平成27年に行われた税制改革以後の税率をまとめていますが、この税制改革により相続税の対象者が以前の倍近くに増えることになりました。詳しくは「4.相続税法改正で税率はどう変わった?」でご紹介しています。

表内にある「基礎控除額」とは、

被相続人(亡くなった方)の遺産の総額から差し引かれる(控除できる)一定の金額のことです。

基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人※の数)」

で計算しますが、遺産総額が基礎控除額を超えている場合、その超えた部分が相続税の課税対象となります。
※法定相続人とは子供、親、祖父母、兄弟姉妹などを指します。

後ほど詳しくご説明しますが、今の時点では「遺産から基礎控除を差し引いた金額に相続税がかかる」と覚えていただければ結構です。

続いて、より詳しく相続税を算出するための計算方法についてご紹介しましょう。

相続税の計算方法を4ステップで解説

ステップ1. 遺産が全体でどれくらいあるか計算する

まず、相続税の課税対象となる遺産がどれくらいか把握することから始めます。

相続税の課税対象となるのは、

  • 現金
  • 預貯金
  • 有価証券
  • 貴金属
  • 土地
  • 家屋など

このほか、貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものです。

※生命保険金や死亡退職金(これらをみなし財産といいます)は、それぞれ非課税限度額を超えた分が加算されます。また借入金(借金など)や葬儀費用などは全体の相続財産から差し引いて計算します。

項目内容
相続税の
かかるもの
本来の相続財産宅地、田、畑、山林、借地権、永小作権、家屋、構築物、商品、原材料、車輌、売掛金、受取手形、貸付金、株式、出資金、公社債、現金、普通預金、定期預金、郵便貯金、家具、宝石、特許権、実用新案権、意匠権、電話加入権、立木、ゴルフ会員権など
みなし相続財産生命保険金、損害保険金、退職金、功労金など
相続税の
かからないもの
墓地、仏壇、仏具など
心身障害者共済制度の受給権
国や特定の公益法人に寄附した場合の寄附財産
公益事業者が取得した公益事業用財産

ステップ2. 相続税の対象になる金額を確認する

実際に相続税がかかる金額を「課税遺産総額」といい、「ステップ1.」で出した遺産の合計から基礎控除額を差し引いた金額です。
すでにお伝えした通り、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算できます。

遺産総額-基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」=課税遺産総額

相続税は遺産総額が計算した基礎控除額を超えた場合にかかる税金ですから、遺産総額>基礎控除であれば、相続税の申告を行う必要があります。
もし遺産総額<基礎控除であれば、相続税はかかりません。

ステップ3. 相続税の総額を計算する

遺産総額が基礎控除を超えた場合、「ステップ2.」で計算した課税遺産総額から相続税の総額を計算します。

基礎控除を超えた金額は、子供や配偶者、兄弟姉妹などの各相続人が、仮に法定相続分(※)で相続したものとみなした金額で割り振ります。

※法定相続分とは国が定めた遺産の分け方の目安で、例えば配偶者が1/2、子供が1/2(子供が複数人いる場合には1/2を均等に分ける)を相続するというものです。
わかりやすく例をあげて計算してみましょう。

課税遺産総額5,000万円を妻と子供2人で相続する場合


①それぞれの相続分を計算する
(妻)配偶者は課税遺産総額の1/2を相続する

5,000万円×1/2=2,500万円

(子供2人)子供は課税遺産総額の1/2を相続する
※このケースでは2人いるため、1/2をさらに2人で分ける。

(長男)5,000万円×1/4=1,250万円
(長女)5,000万円×1/4=1,250万円

②上記で出した金額を早見表で確認・計算する

(妻) 2,500万円×0.15(税率)-50万円(控除額)=325万円
(長男)1,250万円×0.15(税率)-50万円(控除額)=137万5,000円
(長女)1,250万円×0.15(税率)-50万円(控除額)=137万5,000円

③それぞれを合算する
相続税の総額は、

妻+子供2人の相続分を合計して600万円となります。

ステップ4. 各相続人の相続税額を出す

「ステップ3.」で算出した相続税の総額を元に、それぞれの相続税額を計算します。

実際の相続割合が妻2,000万円、長男1,700万円、長女1,300万円とした場合を計算してみましょう。割合が変わっても相続税の総額は同じですが、それぞれが負担する相続税の金額が変わってくるので注意してください。

(妻)
600万円(相続税の総額)×2,000万円/5,000万円(全体からみた妻の相続割合)=240万円

(長男)
600万円(相続税の総額)×1,700万円/5,000万円(全体からみた長男の相続割合)=204万円

(長女)
600万円(相続税の総額)×1,300万円/5,000万円(全体からみた長女の相続割合)=156万円

例をあげて相続税の計算方法を4ステップでご紹介しましたが、「わかりにくい」「面倒くさい」と思われた方も多いのではないでしょうか。
もっと簡単に、必要な相続税について知りたいという方のために、おおまかな計算ができる便利な機能についてご紹介します。

相続税額がすぐわかるシミュレーター

ビジョン税理士法人では、必要な相続税額について法定相続人と財産額を入力するだけですぐにわかる、簡単なシミュレーターをご用意しています。

相続税はどのくらい?今すぐわかる簡単シミュレーション

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シミュレーターでわかるのはあくまでも“おおよそ”かつ“現時点で把握している遺産額”による相続税額です。

実際には「存在さえ知らなかった法定相続人がいた」「知らない借金があった」など、スタートから問題が起こることも珍しくありません。

また、財産額を計算する際にも、3年以内贈与財産相続時精算課税制度対象財産(60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度)などを加算しなければならない場合もあります。

さらに、相続税の場合、不動産の小規模宅地等の特例などを利用すると相続税額をかなり抑えることができます。しかし、対象となる土地などの要件が細かく定められており、相続される方がご自身で対応する際は注意が必要です。

相続税法改正で税率はどう変わった?

税制改正は何度も行われてきましたが、平成27年に施行された改正の影響は非常に大きいものでした。
相続税の納税対象者が前年の平成26年に比べて約2倍と大幅に増え、以前のように「相続税は富裕層だけに関係するもの」とはいえなくなったためです。

この改正が行われた背景には、相続税を納税する人の割合が大きく低下していたことがあります。平成27年以前の相続税率は、バブル期に不動産が高騰していた時期に決められていたため、相続税は非常に高額となっていました。

しかしバブルが崩壊した後、不動産の時価が一気に暴落したにも関わらず、相続税の内容が変更されることはありませんでした。そのため相続税の対象者は4%まで低下したことから、相続税の見直しが行われ大幅な改正へとつながったのです。

平成27年の相続税法改正とは?

平成27年の相続税法改正では、主に次の5点が行われました。

  • 相続税の基礎控除額の引き下げ・・・6割の金額に引き下げられる
  • 未成年者控除・障がい者控除の引き上げ・・・未成年者:20歳までの1年につき10万円へ増額、障がい者:85歳までの1年につき10万円(特別障害者20万円)へ増額
  • 相続税率の変更・・・2億円を超えると45%、6億円を超えると55%に引き上げ
  • 小規模宅地等の評価の見直し・・・330㎡までの宅地面積に対し、税金の80%が減額対象へ
  • 贈与税率の引き上げ・・・8段階に変更され、最高税率が50%から55%へ

これらのなかで最も影響が大きいのは、「相続税の基礎控除額の引き下げ」です。現在、この基礎控除額が

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

で計算できることは、すでにご紹介した通りですが、平成27年以前は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」で計算されていました。

相続人が妻と子供2人の計3人である場合の基礎控除額で比較してみましょう。

(改正前)5,000万円+1,000万円×3人=8,000万円 →(改正後)3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円

つまり改正前は相続財産が8,000万円までなら相続税がかからなかったのに対し、改正後は4,800万円を超えると相続税の申告が必要になったのです。

相続税の最高税率が55%に!

相続税の税率には累進課税が適用されています。改正前は相続税の最高税率は50%でしたが、改正後は55%に引き上げられました。

改正前後の税率の変化

各法定相続人の取得金額改正前の税率改正後の税率
~1,000万円10%10%
1,000万円以上~3,000万円以下15%15%
3,000万円以上~5,000万円以下20%20%
5,000万円以上~1億円以下30%30%
1億円以上~2億円以下40%40%
2億円以上~3億円以下40%45%
3億円以上~6億円以下50%50%
6億円以上~50%55%
参照:国税局「相続税の税率構造」

最高税率が55%に引き上げられたことで、高額の遺産を相続する方は半分以上が相続税の対象となるため、その影響は非常に大きいといえるでしょう。

相続税のお悩みはビジョン税理士法人へ

これまでの流れをまとめてみましょう。

  • 相続税には累進課税が適用され、遺産が増えるほど遺産が増えるほど相続税率も上がる
  • 相続税の計算方法は以下の通り
    ①遺産の合計額から基礎控除を引く
    ②仮に法定相続分で相続したものとみなした金額を割り振る
    ③割り振られた金額に、相続税の税率をかけて全体の相続税を計算する
    ④実際に相続した割合に応じ、納税額を決める
  • 相続税は平成27年の改正以来、多くの人に身近なものになった

相続と税率についてご説明してきましたが、思ったより複雑で入り組んでいるという印象をもたれた方も多いのではないでしょうか。また累進課税が適用されているため、相続する遺産が増えるほど相続税も増えることは確実です。

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