相続税の計算方法|正しい税額で申告するために必要な知識を紹介

両親や配偶者が亡くなり、多くの遺産を相続することになった人は、「相続税がいくらかかるのかわからない」「どうやって計算するのだろう」と疑問に思っていませんか?

納めるべき相続税を知るには、遺産総額や各相続人の課税対象遺産、法定相続分などをさまざまな計算式で求めなければなりません。

そこでこの記事では、正しい税額で申告するために、相続税に関するさまざまな計算方法を解説していきます。

この記事でわかること

  • 相続税の正しい計算方法
  • 相続税に関係する専門用語の意味
  • 実際に納めるべき相続税の求め方

この記事を最後までお読みいただけると、どのようなシチュエーションで、どのくらいの相続税が課せられるのかを十分に理解していただけます。

相続税の正しい計算フロー

相続税は一つの計算式で簡単に求められるものではありません。

大きく分けて5つの項目の計算を経て、各相続人が実際に納める相続税がわかります。

続税の正しい計算フロー

①基礎控除額の計算する
②正味の遺産総額の計算する
③課税遺産総額の計算する
④相続税の総額を計算する
⑤実際に納める相続税を計算する

相続が起こるのは人生で大体1回〜2回と少ないため、わからない専門用語だらけで困惑する人も多いです。

本記事では、専門用語の解説をしながら正しい計算方法を解説しています。

どうしても手間をかけたくないという人は、相続税申告手続きのスペシャリストである税理士に依頼することも検討してください。

①相続税における基礎控除額の計算方法

皆さんが相続人の立場になった場合、相続財産の全てに相続税がかかるわけではありません。

まず、相続税は、基礎控除額よりも遺産総額が上回った場合に課せられる税金のため、基礎控除額を下回る遺産総額だった場合、申告は不要です。

相続税において、一定の非課税枠となる基礎控除額は、以下の計算で求められます。

基礎控除額の計算方法

「基礎控除額」=「3,000万円」+「600万円」×「法定相続人の数」

ここで出てくる「法定相続人」とは、民法で定められた相続順位によって、正式に遺産を相続できる権利を持った人のことです。

法定相続人の決まり方

法定相続人が決まる優先順位は、以下のように「第1順位」「第2順位」「第3順位」と区別されます。

配偶者は、どの順位においても常に法定相続人となります。

本来法定相続人にあたる人が亡くなっていた場合には、初めからいなかったものとして、「子→孫」、「兄弟姉妹→甥・姪」のように相続権が移転する仕組みです。

【例】法定相続人が3人の場合の基礎控除額の計算方法

例えば、夫が亡くなって、妻と子ども2人が法定相続人になったとします。

このケースでは、相続権を放棄しない限り合計3人が法定相続人となり、以下の計算式で基礎控除額が算出されます。

基礎控除額の計算方法

「4,800万円(基礎控除額)」= 3,000万円 + 600万円 × 3人(法定相続人)

法定相続人が一人増えるごとに基礎控除額は600万円増え、相対的に相続税が減る仕組みです。

②正味の遺産総額の計算方法

「正味の遺産総額」とは、被相続人が持っていた資産的価値のあるプラスの財産から、債務などのマイナスの財産を差し引いた金額を指します。

正味の遺産総額の計算方法

「遺産総額」=「プラスの財産」-「マイナスの財産」

プラスの財産の一例

●現金
●金銭
●預貯金の残高
●株式、国債、投資信託
●土地、農地、山林
●家屋、借地権
●貴金属、美術品、骨董品
●著作権、特許権
●被相続人が負担した保険金

マイナスの財産の一例

●借金
●未払金、未払税金
●ローン残債
●葬儀費用
●保証人、連帯保証人の地位
●損害賠償の責任

相続財産の評価がわからない場合には、専門家に鑑定を依頼するなどして遺産総額を算出する必要があります。

以下の相続税のあらましでは、課税対象となる遺産を簡易的に計算できます。

実際に作成する書類では、さらに詳しく財産区分が分けられているため、遺産総額を算出する際に参考にしてください。

相続税の申告要否検討表(PDF)

③課税遺産総額の計算方法

正味の遺産総額がわかったあとは、基礎控除額を差し引くことで「課税遺産総額」を算出可能です。

課税財産総額の求め方

「課税遺産総額」=「正味の遺産総額」-「基礎控除額」

国税庁の「課税遺産総額の計算(図)」を見ていただけると、ここまでの流れをより理解できます。

正味の遺産総額から基礎控除額を差し引いた額に対して相続税が課せられるため、ここでマイナスになった場合は、相続税の申告は不要となります。

④相続税の総額の計算方法

課税遺産総額は、民法で定められた「法定相続分」に従って各相続人にそれぞれ割り当てられ、各相続人の取得金額に応じて税率が決まります。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

出典元:国税庁|No.4155 相続税の税率

「相続税の総額」は、法定相続分に応ずる取得金額に、相続税率を乗算し、控除を差し引くことで求められます。

相続税の総額の決まり方

「各相続人の法定相続分に応ずる取得金額」= 「課税遺産総額」 × 「法定相続分」
「各相続人の正味の相続税」=「各相続人の法定相続分に応ずる取得金額」×「税率」- 「控除」
「相続税の総額」=「各相続人の正味の相続税の合計」

より理解できるように法定相続分の内容や、相続税の総額の決まり方の例を紹介していきます。

法定相続分とは

遺産の分割については、遺言書がある場合はその内容に従い、無い場合には民法が定めた相続割合の「法定相続分」で決定されます。

【例】相続税の総額の決まり方

法定相続人が妻1人・子ども2人で、課税遺産総額が1億5,000万円だった場合、以下のように「相続税の総額」が決まります。

法定相続分に応ずる取得金額を求める

「7,500万円(妻の取得金額) 」= 1億5,000万円(課税遺産総額) × 1/2(法定相続分)
「3,750万円(子ども1人分の取得金額)」= 1億5,000万円(課税遺産総額) × 1/4(子ども1人分の法定相続分)

相続税の総額を求める

「1,550万円(妻の正味の相続税)」= 7,500万円(妻の取得金額)× 30%(税率)- 700万円(控除)
「550万円(子ども1人分の正味の相続税)」= 3,750万円(子ども1人分の取得金額)× 20%(税率)- 200万円(控除)
「2,650万円(相続税の総額)」= 1,550万円(妻にかかる正味の相続税)+ 1,100万円(子ども2人分の正味の相続税)

ここまでの過程で「各相続人にかかる正味の相続税」がわかりますが、実際に納めるべき相続税ではないため注意してください。

⑤実際に納める相続税の計算方法

相続税の総額を各相続人の法定相続分で按分することで、実際に納める相続税がわかります。

実際に納める相続税の計算方法

「実際に納める相続税」= 「相続税の総額」×「各相続人の法定相続分」

例えば、妻と子ども2人が法定相続人で、相続税総額が2,700万円だった場合、以下の図のように実際に納める相続税を算出可能です。

上記のケースの場合、妻が納める税金は本来1,350万円ですが、配偶者控除が適用されています。

配偶者控除とは

相続税の配偶者控除とは、配偶者が相続した課税対象の遺産が1億6千万円以下だった場合に、相続税が免除される制度です。

配偶者控除の適用条件

●戸籍上、正式な配偶者である
●相続税の申告期限(相続発生〜10ヶ月間)まで、遺産分割が完了している
●相続税の申告書を税務署に提出する

配偶者控除は正しい内容の申告書を提出しなければ適用とならないため、十分に注意してください。また、内縁の妻は配偶者とは認められません。

課税対象の遺産が1億円を超える場合でも、配偶者の法定相続分を超えなければ相続税が免除されるため、かなり適用範囲が広い控除となっています。

相続税を正しく計算しなければならない理由

相続税は、財産の評価額が高くなるほど納める税金も高くなる「超過累進課税」が適用され、税務署は厳しく管理しています。

相続税の申告漏れが税務署の調査によって判明した場合、言い逃れすることは難しく、追徴税や無申告課税が課せられます。

相続が起きた場合、10ヶ月間にわたり申告の猶予が与えられるため、相続税を正しく計算し、申告書を作成して提出しなければなりません。

相続税申告に向けた準備は、遺産総額の計算や書類作成など多岐にわたるため、「忙しくて手続きが進まない」「何から手を付けていいかわからない」という人も多いです。

無理に一人で手続きを進めてしまうと、相続税を正しく求められないリスクもあるため、税理士などに手続きを依頼するなどして、申告期限までに申告書を提出しましょう。

まとめ

もし自分が相続人の立場になった時、「法定相続人は誰になるのか」「どのような計算で各相続人が納める相続税が決まるのか」を理解しなければなりません。

正しい相続税を知るには、以下のような項目を正確に計算して求める必要があります。

相続税の正しい計算フロー

①基礎控除額の計算
②正味の遺産総額の計算
③課税遺産総額の計算
④相続税の総額の計算
⑤実際に納める相続税の計算

人によっては、さまざまな書類に目を通し、複雑な計算をしなければならない工程もあるため、申告書の作成に体力も精神も削られることは珍しくありません。

「自分が計算した相続税に誤りがあったらどうしよう」と不安な方は、相続税手続きをワンストップで代行してくれる税理士に依頼するのがオススメです。

煩雑な手続きをまとめて代行してもらえるため、時間と心にゆとりが生まれ、安心して相続を済ませることができるでしょう。

税理士を頼り、肩の荷が一気に下りて楽になる人も沢山いますので、まずは無料相談を受けてみてはいかがでしょうか?