相続税とは、亡くなった親や配偶者から、金銭や不動産などの財産を相続した時にかかる税金のことです。
実際に納めるべき相続税額は、遺産総額から基礎控除額を差し引くなどして算出でき、最終的な課税遺産総額によって相続税がかからないケースもあります。
相続人の立場になった時、どのくらいの相続税を納める必要があるのか気になる人も多いでしょう。
そこでこの記事では、相続税の仕組みや申告が必要な条件、相続税に応じた税率などを詳しくお伝えします。
この記事でわかること
- 相続税に関して知っておきたい基礎知識
- 自分が相続税の課税対象になるかどうか
- 相続税に関する注意点など
この記事を最後までお読みいただけると、相続税の正しい算出方法や、困った場合の解決策を把握することができます。
相続税の仕組み
相続とは、被相続人(亡くなった人)の財産を、配偶者や子どもなどが受け継ぐことを指します。
相続税は、相続対象となる財産の価額を合計したものから、債務や基礎控除額を差し引いた価額に応じて決まる仕組みです。
そのため、財産総額と基礎控除額によって、相続税がかからないケースもあります。
相続税の対象となる財産について
相続税は、被相続人の金銭や不動産をはじめ、さまざまな「経済的価値のあるもの」を受け継いだ時に課税されます。
相続税がかかる財産の一例
- 現金
- 預貯金
- 有価証券
- 宝石
- 土地
- 家屋
- 貸付金
- 特許権
- 著作権など
他にも、被相続人の負担による生命保険の死亡保険金や、死亡退職金なども対象となります。詳しくは、「国税庁|No.4105 相続税がかかる財産」をご覧ください。
相続税の申告が必要になる条件
相続税の申告が必要かどうかは、本人と被相続人の関係や、遺産総額を基礎控除額が上回るか下回るかで決まります。
では、具体的にどのような人や、どのような状況で相続税の課税対象となるのか解説していきます。
相続権は法定相続人にわたされる
相続権を持つ「法定相続人」は、民法に基づき以下のように第1順位〜第3順位で区別されます
第1順位 | ・配偶者 ・子どもや孫などの直系卑属 |
---|---|
第2順位 | ・配偶者 ・親、祖父母などの直系尊属 |
第3順位 | ・配偶者 ・兄弟姉妹 |
上記のように、被相続人の配偶者は常に相続人となりますが、婚姻関係にない内縁の妻は対象外です。
被相続人の子どもや孫は、配偶者の次に相続の順位が高くなり、子どもがいない場合には、兄弟姉妹に相続権があります。また、子どもが亡くなっている場合、孫が相続人となる「代襲相続」によって相続が行われます。
養子の相続権については、他に実子がいる場合は1人まで、実がいない場合は2人までが対象です。
基礎控除額を超えた財産が課税対象となる
相続した遺産は、必ずしも課税対象となるわけではありません。
課税対象となるのは、「遺産総額」を「基礎控除額」が上回った場合となります。
遺産総額の求め方
「遺産総額」=「資産的価値のある遺産総額」-「マイナスの遺産と葬式費用」
相続税の基礎控除額の求め方
「基礎控除額」=「3,000万円」+「600万円」×「法定相続人数」
上記の計算で、基礎控除額が遺産総額を上回った場合には、相続税申告をする必要はありません。
基礎控除額を上回った分に関しては、正しく相続税を計算し、申告書を提出しましょう。
自分に相続税申告の義務があるかどうかは、国税庁による「申告要否の簡易判定シート(平成27年分以降用)」で判断できます。初めての申告で不安を拭いきれない人は、税理士などの専門家に頼ることをオススメします。
相続税の課税割合は約8%
厚生労働省では、毎年死亡者数に対する相続税課税件数の割合を公表しています。
平成23年〜26年にかけて4%台前半を推移していた相続税の課税割合は、基礎控除額の増加に伴い、平成27年から8%台に倍増。令和2年においては、その年に亡くなった人の内、8.8%が相続税の課税対象となりました。
相続税の課税割合には地域差があり、地価の高い大都市圏ほど高い傾向にあります。
例えば、2019年においては大阪府が8%台、東京都が16%台という大きな差もみられました。その理由としては、地価が比較的高い地域でも、親が土地付きの住宅を保有していることなどが考えられます。
遺産の配分割合「法定相続分」について
誰が法定相続人になるか、法定相続人が何人いるかで、相続税の配分が異なります。
法律で定められた遺産の配分を「法定相続分」と呼び、相続順位に基づいて以下のように決定されます。
法定相続人 | 法定相続分 |
---|---|
配偶者のみ | ・全ての遺産 |
配偶者と子ども | ・配偶者に遺産の1/2を配分 ・子どもに遺産の1/2を均等に配分 |
子どものみ | ・全ての遺産を均等に配分 |
配偶者と親 | ・配偶者に遺産の2/3を配分 ・親に遺産の1/3を配分 |
親のみ | ・全ての遺産を均等に配分 |
配偶者と兄弟姉妹 | ・配偶者に遺産の3/4を配分 ・兄弟姉妹に遺産の1/4を均等に配分 |
兄弟姉妹のみ | ・全ての遺産を均等に配分 |
上記以外にも、故人と父母が同じ兄弟姉妹と、父母の一方のみが同じ兄弟姉妹の場合、後者は前者の相続分の1/2が配分されるなどのケースもあります。
法定相続人によって法定相続分が異なるということは、相続税の税率も変わってくるということです。
法定相続分に応じた相続税の税率
相続税は、超過累進税率が適用されるため、財産価額が基礎控除額を上回るほど税率も高くなります。
国税庁では、法定相続分の取得金額に応じて、以下のように相続税の税率と控除額を定めています。
法定相続分の取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
実際に納める相続税の計算式
法定相続分に応じた税率はすぐに把握できますが、実際に納める相続税の計算式はやや複雑です。
まずは、遺産総額を求めることから始まり、その後、法定相続人のそれぞれの「正味の相続税額」などを求めます。最終的に、各法定相続人の「仮の相続税額の総額」を「遺産を取得する割合で按分」することで、実際に納める相続税額を求められます。
①遺産総額を求める
「遺産総額」=「資産的価値のある遺産総額」-「マイナスの遺産と葬式費用」
②相続税の基礎控除額の求める
「基礎控除額」=「3,000万円」+「600万円」×「法定相続人数」
③課税財産総額を求める
「課税遺産総額」=「正味の遺産総額」-「基礎控除額」
④相続税総額を求める
「各相続人の法定相続分に応ずる取得金額」= 「課税遺産総額」 × 「法定相続分」
「各相続人の正味の相続税」=「各相続人の法定相続分に応ずる取得金額」×「税率」- 「控除」
「相続税の総額」=「各相続人の正味の相続税の合計」
⑤実際に納める相続税を求める
「実際に納める相続税」= 「相続税の総額」×「各相続人の法定相続分」
例えば、課税遺産総額が1億円で、配偶者が8,000万円、子ども2人が1,000万円づつ相続した場合、以下の図のように相続税額が算出されます。
課税対象の遺産と債務の種類が多岐にわたる場合や、法定相続人が複数名いる場合、相続税の計算はより複雑になります。
正確に相続税を求め、正しく申告するために、税理士などの専門家に依頼することも視野に入れましょう。
相続税に関する注意点やトラブルを避ける方法
もし、自分が相続人の立場になった時、「相続に関して身内トラブルに発生しないか」「相続税を正しく申告できるかどうか」心配になる人は多いでしょう。
ここからは、相続や相続税に関する注意点や、トラブルを避ける方法を紹介していきます。
被相続人の遺言の有無による注意点
相続人が2人以上いる場合、遺言書の有無によって遺産の分割方法が異なります。
遺言書に相続人と分割の割合が書かれていた場合、原則、その内容に従います。逆に遺言がない場合は、法定相続人全員の遺産分割協議によって遺産分割が行われる流れです。
遺産分割協議が進まない場合、家庭裁判所の調停・審判によって最終決定されます。
また、被相続人が生前のうちに相続人から贈与を受けていた場合、または財産の維持や増加に特別な寄与を相続人がしていた場合は、公平を図る目的で、相続割合の調整が必要になるケースもあります。
相続が起きた時は、まず遺言書があるかどうか、そして遺産について書かれているかどうかに注目し、法定相続人ごとの相続税を導きましょう。
二次相続(子のみ)の相続税の有無に注意
両親のどちらかが亡くなった時に行われる相続を「一次相続」と呼び、さらにもう片方の親が亡くなった場合に「二次相続」が行われます。
基礎控除額は、法定相続人の数に応じて決まるため、二次相続では基礎控除額が減額され、相対的に相続税が増額します。
また、一次相続では、相続対象となる財産の総額が1億6千万円以下の場合、配偶者が全額相続することで、相続税の支払いを免除される「配偶者控除」を適用可能です。しかし、二次相続においては配偶者控除の適用外となるため、一次相続よりも相続税が増える可能性があると覚えておきましょう。
まとめ
相続税とは、被相続人(亡くなった人)のさまざまな資産的価値のある財産を、法定相続人が受け継いだ際に発生する税金のことです。
実際に納めるべき相続税を求める際、まずは遺産総額を把握し、そこから債務や葬儀費用、基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を求めます。最終的に、課税遺産総額を法定相続分に基づいて按分し、相続税率を乗算することで申告すべき相続税がわかります。
納めるべき相続税は、被相続人が残した遺産の種類や法定相続人の数や属性によって、かなり複雑になるでしょう。
相続税を正しく申告できるかどうか心配な方は、税金の専門家である税理士を頼ることをオススメします。