忘れてはいけない亡くなった人の確定申告。準確定申告とは?

亡くなった人に代わって行う確定申告のことを「準確定申告」と言います。
被相続人に所得があった場合、場合によってはこの準確定申告が必要です。
どういう場合に必要なのか確認しておきましょう。

準確定申告が必要なケース

被相続人が亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの間に、以下のようなことがあった場合は準確定申告が必要です。

  • 個人事業主として事業所得があった
  • 2,000万円を超える給与収入があった
  • 複数の会社から給与を受け取っていた
  • 本来の給与や退職金以外に20万円を超える所得があった
  • 不動産の賃貸料収入があった
  • 株や不動産の売却収入があった
  • 年の途中で退職して年末調整を受けていない
  • 医療費控除により還付を受けることができる
  • 生命保険の満期金や一時金を受け取っていた

準確定申告が不要なケース

上記に当てはまらない次のようなケースでは、準確定申告の必要はありません。

  • 被相続人が会社員やアルバイト等で、給与所得のみだった場合
  • 確定申告不要制度の条件に該当する場合(下記参照)
  • 相続人が相続放棄した場合

被相続人が年金受給者でも準確定申告は必要?

これは、公的年金による収入額と年齢によって決まります。
下表は、年齢別の公的年金控除額を示したものです。

年齢(公的年金等の収入金額)65歳未満(130万円未満)65歳以上(330万円未満)
公的年金等控除額70万円120万円
基礎控除額38万円
合計108万円158万円

これを見ると、65歳未満だと108万円、65歳以上だと158万円を超える年金を受け取っていた場合は、準確定申告が必要だということが分かります。

確定申告不要制度

正式名称を「公的年金等に係る確定申告不要制度」と言い、年金受給者の確定申告に対する負担軽減を目的に創設された制度です。
準確定申告にも適用され、被相続人が次の2つの条件の両方に当てはまる場合、確定申告の必要はありません。

  1. 公的年金等(老齢年金、老齢基礎年金、企業年金、恩給等)の合計が400万円以下で、且つこれらが全て源泉徴収の対象になっていること
  2. 公的年金等以外の所得(給与所得、一時所得、不動産所得、株式等の譲渡益、公的年金以外の雑所得)の合計額が20万円以下であること

準確定申告の場合、被相続人の株や不動産取引も調べ、20万円を超える所得を得ていないか、調べる必要があります。

準確定申告で押さえておきたいポイント

準確定申告は、他にも次のような点に注意が必要です。

申告期限

準確定申告の法定申告期限は、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月です。
相続税の10ヶ月よりかなり短く、時期も通常の確定申告とは異なるので、普段確定申告している方も、勘違いしないように注意しましょう。

申告期限に遅れると、加算税・延滞税が課される

期限までに申告・納付しなかった場合は、加算税が以下の割合で課されます。

本来納付を行うべき税額の50万円まで15%
50万円を超える部分について20%

例えば、100万円を納付すべきだったのに、遅れた場合は

  • 50万円×15%=7万5,000円(50万円までの部分)
  • 50万円×20%=10万円(50万円を超える部分)

合計で17万5,000円が追加で課税されます。

ただし、以下の条件に当てはまる場合、加算税は課されません。

  • 期限日から1ヶ月以内に自ら納税している
  • 期限内に申告する意思があったと認められる

延滞税は期限内に完納しなかった場合や、期限後に修正申告があり、追加で納付する必要が出た場合に課されます。

納付期限の翌日から2ヶ月以内年7.3%、または特例基準+1%のうち、どちらか低い方
上記以降年14.6%、または特例基準+7.3%のうち、どちらか低い方

特例基準は毎年見直され、平成31年現在(令和元年)は1.6%です。
そのため、実質的には以下のようになります。

納付期限の翌日から2ヶ月以内年2.6%
上記以降年8.9%

申告期限内に行わずにいると、加算税と延滞税が課されることとなります。
相続税の申告に比べ準確定申告は忘れがちのため、申告期限に遅れないよう、十分注意しましょう。

申告する人

申告は、相続人および包括受遺者が行います。

相続人が複数いる場合は、全員の連名による申告が原則です。
ただ、実際には相続人全員の連名が難しいケースも少なくありません。
そういった場合は、相続人ごとに申告することになりますが、他の相続人に内容を通知する必要があります。

なお、相続人でも相続放棄をした人は申告義務はありません。

包括受遺者とは、包括遺贈を受けた人のことです。
法定相続人以外が被相続人から財産をもらうことを遺贈と言いますが、これには「特定遺贈」と「包括遺贈」の2つがあります。
特定遺贈とは、特定の財産を指定して遺贈するものです。それに対して包括遺贈とは「財産の30%」というように、割合を指定する形式です。
包括受遺者は特定受遺者と異なり、法定相続人と同じ権利義務が発生します。
そのため、包括受遺者も準確定申告の申告義務があるのです。

提出する書類と提出先

被相続人の住所地を管轄する税務署に持参、または郵送して提出します。
その場合は、控えの返送に必要な返信用封筒(切手を貼ったもの)を同封して送ります。

なお、通常の確定申告と異なり、準確定申告は電子申告(e-Tax)に対応していません。

確定申告書

準確定申告専用の書類はなく、確定申告と同じものを使います。
申告書にはAとBの2種類がありますが、被相続人が会社員やアルバイト等の給与所得者の場合や、年金受給者の場合は「申告書A」を使います。
「申告書B」は、被相続人が個人事業主の場合に主に使われます。

申告書は、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

通常の確定申告と異なるのは、

  • 被相続人欄に被相続人と併せて相続人代表者氏名を記入する
  • 申告書の表題にある「確定申告書」の文字の前に「準」を加える

の2点です。

確定申告書付表

相続人が複数いる場合は、確定申告書に加え「確定申告書付表」を提出する必要があります。
ここに相続人全員の氏名と相続分の割合を記入します。それを基に税負担や還付金の割合が計算されます。

死亡した者の平成  年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(兼相続人の代表者指定届出書)

なお、連署で準確定申告を行う場合(個別に準確定申告を行って、他の相続人に後で通知する方法でない場合)は、相続人全員の本人確認書類の提示(または写しの添付)と、マイナンバーの記入が必要です。

各種控除に必要な書類

被相続人が支払った保険料が控除の対象になります。
相続が発生したら、速やかに保険会社へ控除証明書を申請しておきましょう。

また、医療費控除を受けるには、医療機関にかかった際の領収書が必要になります。
普段から保管しておくといいでしょう。

対象となる所得

被相続人が亡くなった年の1月1日から、亡くなった日までに得た所得が対象となります。
確定申告は例年、2月中旬から3月中旬が申告期間ですが、仮にこの期間に被相続人が前年の確定申告をしていなかった場合は、それも併せて行う必要があります。

つまり、確定申告期間中に前年分の申告を済ませて亡くなった場合は、今年分(1月1日から、亡くなった日まで)の申告だけで済みますが、例えば3月1日に前年の確定申告をしないまま亡くなった場合は、前年分と今年分の両方の申告が必要だということです。
なお、医療費控除を受ける場合も、1月1日から亡くなった日までに支払った額が対象となります。

相続時には準確定申告も忘れずに

相続時に相続税のことを忘れる人は、あまりいません。しかし、準確定申告はつい忘れてしまいがちです。仮に今、相続となったら準確定申告が必要になるのか。普段から考えておくようにしましょう。
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