最大3,000万円まで贈与税が非課税に!住宅取得等資金の非課税制度とは

住宅取得等資金の非課税制度」は、贈与税の特例制度の一つです。
これを利用すると住宅の新築・増改築のための贈与を最大3,000万円(基礎控除分と合わせると合計3,110万円)まで非課税にすることができます。
この制度は、平成27年(2015年)1月1日から令和3年(2021年)12月31日までの間に行われる贈与が制度の対象となります。

「子や孫の住宅購入を支援したい。」
「親や祖父母からの支援を受けて住宅取得を考えている。」

そういう人は、ぜひ活用したいですね。

対象となるのは、20歳以上の直系卑属

特例を利用できる人は、以下の条件を満たしている必要があります。

直系尊属から直系卑属への贈与であること

祖父母や両親から子、孫への贈与のみが対象です。
また、贈与を受けた時に日本国内に住所を有している必要があります(一部例外あり)。
(注) 配偶者の父母(又は祖父母)は直系尊属には該当しませんが、養子縁組をしている場合は直系尊属に該当します。

受贈者が20歳以上であること

贈与を受けた年の1月1日に、贈与を受ける人が20歳になっている必要があります。

受贈者の所得が2,000万円以下であること

贈与を受けた年に、贈与を受ける人の合計年間所得が2,000万円以下である必要があります。

平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けていないこと

現在の非課税制度は、平成28年1月1日から令和3年12月31日までを対象としています。
そのため、それ以前の「住宅取得等資金の非課税」を受けた人は対象外となります。

翌年3月15日までに贈与税を申告していること

贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに申告する必要があります。
この特例を利用するには、贈与税が発生していなくても申告する必要があるので注意しましょう。

また、申告期限に1日でも送れると、申告自体を認めてもらえません。
間違える人が多い点です。併せて注意して下さい。

なお申告には、以下の書類が必要です。

  • 贈与税の申告書(第一表および第一表の二)
  • 贈与を受けた人の戸籍謄本(贈与者が直系尊属であることが分かるもの)
  • 源泉徴収票等(受贈者の合計所得金額が分かるもの)
  • 登記事項証明書
  • 新築等の契約書の写し

さらに、マイナンバー制度の導入に伴い、申告に際しては個人番号カードの提示もしくは写しの添付が必要です。

対象となるのは240㎡以下のマイホーム

この特例を受ける住宅は、以下の要件を満たしている必要があります。

マイホームの購入・増改築であること

贈与を受ける側が、自分達の居住用として使う住宅である必要があります。
新築だけではなく、増改築も対象となります。

床面積が240㎡以下であること

日本国内にある家屋で、登記簿上の床面積が50㎡以上、240㎡以下の物件が対象です。
かつ、床面積の2分の1以上が受贈者の居住の用に供されるものであることでなければなりません。
なお、増改築の場合は、以下の条件を満たす必要があります。

  • 工事費用が100万円以上であること
  • 工事費用の2分の1以上が、居住用部分の工事に要したものであること
  • 確認済証の写し等の書類により、工事内容が証明されること 

中古物件の場合、所定の築年数以下であること

マンション等耐火建築物の場合は築25年以内、木造等耐火建築物は築20年以内であることが条件です。
また、この年数を超えた場合でも、取得日までに耐震改修工事の申請をし、居住日までに工事が完了している等の条件を満たせば適用されます。

贈与の翌年3月15日までに引渡しを受けていること

この制度の申告期限である3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて引渡しを受けていなければなりません。
さらに同日までにその家屋に居住するか、また遅くとも同年の12月31日までに実際に住み始めることも要件です。
もし12月31日までに居住していない場合、特例の適用は認められず、修正申告が必要となります。

親族等から取得したものでないこと

配偶者、親族等の特別な関係にある人から取得した家屋は除外されます。
また、こうした人と請負契約などにより新築または増改築したものも対象外です。

3つの条件で変わる非課税限度額

気になる非課税限度額ですが

  • 消費税の税率
  • 省エネ住宅等かどうか
  • 新築・増改築の契約締結日

の3つの条件によって変わってきます。

新築・増改築の費用に含まれる消費税が8%の場合

契約締結日右以外の住宅省エネ等住宅
平成28年1月1日~令和2年3月31日700万円1,200万円
令和2年4月1日~令和3年3月31日500万円1,000万円
令和3年4月1日~令和3年12月31日300万円800万円

新築・増改築の費用に含まれる消費税が10%の場合

契約締結日右以外の住宅省エネ等住宅
平成31年4月1日~令和2年3月31日2,500万円3,000万円
令和2年4月1日~令和3年3月31日1,000万円1,500万円
令和3年4月1日~令和3年12月31日700万円1,200万円
※いずれも基礎控除(110万円)と併用できます

「省エネ等住宅」とは

以下の省エネ等基準の、いずれかを満たした住宅のことを言います。

  • 断熱など性能等級4、もしくは一次エネルギー消費量等級4以上
  • 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上、もしくは免震建築物
  • 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上

申請にあたっては、贈与税の申告書に以下のいずれかの書類を添付する必要があります。

  • 住宅性能証明書
  • 建設住宅性能評価書の写し

また、新築住宅や建築後使用されたことのない住宅の場合、以下の書類を併せて添付することで、上記書類の提出に代替することができます。

  • 「長期優良住宅建築など計画の認定通知書の写し」と「住宅用家屋証明書の写し」(または認定長期優良住宅建築証明書)
  • 「低酸素建築物新築等計画の認定通知書の写し」と「住宅用家屋証明書の写し」(または認定低炭素住宅建築証明書)

夫婦で贈与を受ける場合の注意点

夫と妻、双方の親から贈与を受けることもできます。
この場合、非課税限度額は倍になります。
ただし、新築(増改築)する家屋の名義を夫婦共有にしておく必要があります。

また、その際の持ち分割合は、夫婦それぞれの実際の負担額に応じたものにしなくてはなりません。
例えば、妻が専業主婦で負担能力が無いのに、名義上だけ「共有」にしても、妻の負担分は夫からの贈与とみなされ、贈与税がかかってしまいます。
これでは節税になりません。
夫婦双方の親から贈与を受ける場合は注意しましょう。

小規模宅地等の特例が受けられなくなるデメリットも

小規模宅地等の特例とは、330平方メートル以下の住宅を相続する場合、その評価額が80%減額になるというものです。
かなりの節税効果が期待できる制度ですが、利用するには、相続人が以下のいずれかに該当する必要があります。

  1. 被相続人の配偶者
  2. 被相続人の同居親族
  3. 被相続人と別居している親族で、相続開始前3年以内に自分の持ち家に住んだことがない人(ただし、上記の1と2に該当する人がいない場合に限る)

住宅取得等資金の非課税制度を利用した場合、被相続人(直系卑属)は自分の持ち家を持つことになります。
つまり、将来「小規模宅地等の特例」が利用できません。

住宅取得等資金の非課税制度を利用して比較的安価に住宅を取得できても、将来的に相続税が高くなる可能性があるわけです。

どちらを選ぶべきか。それはライフプランや資金によって当然異なってきます。

ビジョン税理士法人にご相談いただければ、適切な選び方、考え方をご案内させて頂きます。
ぜひ、住宅取得等資金の非課税制度を利用する前に、一度ご連絡ください。

まとめ

住宅取得等資金の非課税制度は、大変便利な制度です。
特に経済的余裕の少ない若い世代にとって、親や祖父母からの支援が受けられるのは、大きなメリットと言えます。
しかし、今回ご紹介した様に、制度の適用を受けるには細かく条件が決められています。

また、メリットだけではなくデメリットもあります。
利用にあたっては、よく理解した上で選択するようにしましょう。