相続税申告には相続人や受遺者のマイナンバーが必要です

相続税の申告書を提出する際には、平成28年から、相続人や受遺者など(以下、「相続人等」)遺産を取得した人のマイナンバーが必要になりました。
マイナンバーが必要になるのは相続人等で、被相続人(亡くなった人)のマイナンバーは必要ありません。
今回は、相続税の申告におけるマイナンバーについて、マイナンバーを申告書のどこに書くか、税務署に提出する書類は何か、電子申告時のマイナンバーの扱いなどについて解説します。

平成28年1月1日以降の相続からマイナンバーが必要に

相続税の申告書にマイナンバーが必要になったのは、平成28年1月1日以降の相続からです。

当初は被相続人のマイナンバーも必要とされていましたが、被相続人のマイナンバーを記載することは抵抗感がある等の意見があったため、平成28年10月から相続人等のみマイナンバーを記載することになりました。

マイナンバーは申告書のどこに書く?

相続税は他の税金と違い、複数の相続人等の連名で申告することができます。

連名で申告書を作成するときは相続税の申告書の「第1表」と「第1表(続)」に相続人等の情報を記載します。

各表の上部に「財産を取得した人」として氏名やマイナンバー等を記載する欄がありますので、その欄に記載します。

相続税申告書

「第1表」の一番左は被相続人ですのでマイナンバー欄に斜線が入っています。

マイナンバーを確認するための必要書類

税務署は申告書に記載されたマイナンバーが正しいか、なりすましでないかどうかをチェックしなければなりません。
そのため申告書には、マイナンバーが確認できる書類と本人確認ができる書類の写しを添付します。
マイナンバーが確認できる書類は「番号確認書類」、本人確認ができる書類は「身元確認書類」と呼ばれています。

なおマイナンバーカードがあれば、両面のコピーをとって添付することにより番号確認書類と身元確認書類になります。(「表」が番号確認書類、「裏」が身元確認書類の役割を果たします)

番号確認書類の例

  • マイナンバーカードの「裏」の写し
  • 通知カードの写し
  • 住民票の写し(マイナンバーの記載があるもの)

など

身元確認書類の例

  • マイナンバーカードの「表」の写し
  • 運転免許証の写し
  • 保険証の写し
  • パスポートの写し
  • 在留カードの写し
  • 身体障害者手帳の写し

など

窓口で提示してもOK

相続税の申告書を税務署に持参して窓口で提出する場合、窓口に行く人の本人確認については、窓口で番号確認書類と身元確認書類を提示することでも良いとされています。

窓口に来ていない人の本人確認はできないため、来ていない人の確認書類の写しは申告書に添付しておかなければなりません。

相続税の申告でマイナンバーを扱うときの注意点

国税庁のFAQによると、他の相続人等に自身のマイナンバーを記載した書類を渡しても、それは番号法上の「特定個人情報の提供」にはあたらないとされています。

またマイナンバーが記載された申告書を受け取った相続人等が、マイナンバーを記載した相続人等の本人確認を行う必要もありません。
しかし、他人のマイナンバーが記載された書類を保管することはできないため、関係書類を保管するときはマイナンバーが記載されたものが混ざっていないかよく確認しましょう。
特に申告書の原本をコピーして控えを作成している場合は、マイナンバーが印刷されていないかチェックしてください。

(参考)国税庁HP:相続税・贈与税に関するFAQ

電子申告で提出する場合

令和元年10月から相続税の申告がe-Taxでできるようになりました。

初めて電子申告を行う方は電子申告の開始手続きが必要ですが、マイナンバーカードとICカードリーダーがあればこれを簡略化できます。
なければ税務署に開始届を提出し、16桁の「利用者識別番号」を取得することで利用できます。
利用者識別番号をすでに持っていれば、それを相続税の申告に使うことができます。

電子申告には申告データの作成が必要

e-Taxとは、インターネットを使って申告データなどを必要な機関に送信するためのシステムです。

e-Taxを使って電子申告をするには、別の方法で相続税の申告データを作成しなければなりません。
相続税の申告データを作成する方法としては

  • e-Taxソフトをインストールして作成する方法
  • 民間の税務会計ソフトによって作成する方法

があります。

e-Taxソフトで作成する場合は、e-Taxソフトにさらに相続税の申告ソフトを追加インストールする必要があります。(無料)
民間の税務会計ソフトで作成する場合は、その会計ソフトで作成したデータをe-Taxソフト又はe-Taxソフト(WEB版)に組み込んで送信することが可能です。

電子申告にもマイナンバーは必要

マイナンバーは電子申告でも利用します。

e-Taxソフトの場合は、操作画面の「申告・申告等基本情報」の「財産取得者」の欄に、自身の氏名等の情報やマイナンバーを入力します。
マイナンバーカードを持っている方はICカードリーダーにマイナンバーカードをセットして読み取ると、自動的に氏名等が転記されるしくみです。

なお同じ画面下に「他の財産取得者」という欄がありますが、これは他の相続人等のことです。
「他の財産取得者」の利用者識別番号の入力はできません。

マイナンバーの本人確認書類は不要

電子申告では、マイナンバーの本人確認書類を送信する必要はありません。

その代わり、自分の電子署名を付与した申告データを作成して各人で送信する必要があります。
書類で申告する場合は代表者1人で申告書を提出できましたが、電子申告は1人1人が送信しなければなりません。
なお1人が申告データを作成してそれを他の相続人等に送信し、それに各人が電子署名を付与してe-Taxで提出することもできます。

税理士の代理も可能

他の相続人等のマイナンバーが記載された書類を扱わなければならないことに抵抗がある方は多いと思います。
そのときは、税理士に税務申告の代理を依頼することを検討してください。

税理士が代理をすれば申告書は税理士が作成しますし、一定の要件を満たせば相続人等の電子証明書も不要になります。
他の相続人等のマイナンバーの扱いで悩みたくない方、スムーズに申告したい方、申告書の作成を初めて行う方などはぜひご検討ください。