修繕費とは?その定義や具体例、消耗品費・資本的支出との違いを解説

「修繕費とは何だろう? どんな項目が含まれるだろうか」
「修繕費と消耗品費、資本的支出の違いがよくわからない」
企業の経理担当者の方などで、そんな疑問や悩みを抱いている人も多いのではないでしょうか。

会計における「修繕費」は、「事業のために必要な有形固定資産が故障した際の修繕費用や保守点検費用、回収費用」を指す勘定科目です。

たとえば、
・事業所や店舗、工場など建物の修理費用
・設備機器、備品の修理費用
・給排水設備の修理費用
・営業車両の修理費用
・設備機器やエレベーターの保守点検費用
・建物の維持管理費用
・建物の壁の塗り替え、床の張り替え、ガラスの張り替え費用
・OA機器の修理、保守費用
・車検整備費用
などが含まれます。

ただ、ケースによっては「消耗品費」や「資本的支出」と混同しやすく、明確な仕訳の基準を知っておかなければなりません。

そこでこの記事では、修繕費とはどんなものか、何が含まれて何が含まれないのか、具体例をまじえて解説していきます。


まず最初に、
◎「修繕費」の定義
◎修繕費の勘定科目
◎修繕費と間違えやすいもの
◎修繕費に含まれるもの・含まれないもの(一覧表)

を説明して、修繕費とは何かを理解してもらいます。

その上で、
◎修繕費と消耗品費の違い、仕訳ポイント
◎修繕費と資本的支出の違い、仕訳ポイント
◎修繕費の会計処理

についてもくわしく解説します。

最後まで読めば、何が修繕費に含まれるのか、明確に仕訳できるようになるでしょう。
この記事で、あなたが修繕費を適切に会計処理できるようになることを願っています。

 

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1. 「修繕費」とは?

一般的に「修繕費」というと、壊れたものを修理するための費用全般を指しますよね。
ですが、会計処理上で「修繕費」という場合には、厳密な定義があります。
まずはその定義や、どんな項目が含まれるのかを、わかりやすく説明しましょう。

1-1. 「修繕費」の定義

企業などの会計において「修繕費」という言葉は、「事業のために必要な有形固定資産が故障した際の修繕費用や保守点検費用、回収費用」を指すものとして使われます。

具体的には、

・事業所や店舗、工場など建物の修理費用
・設備機器、備品の修理費用
・給排水設備の修理費用
・営業車両の修理費用
・設備機器やエレベーターの保守点検費用
・建物の維持管理費用
・建物の壁の塗り替え、床の張り替え、ガラスの張り替え費用
・OA機器の修理、保守費用
・車検整備費用

などが含まれます。

ここでポイントとなるのは、「修繕費」として分類されるのは、固定資産の「維持管理」と「原状回復」のための費用に限られることです。

もしこれらの固定資産が、手を加えたことによって改良・改善され、資産価値が高まったり、使用できる年数が延びたりした場合は、「修繕費」ではなく「資本的支出」という扱いになるので要注意です。
「資本的支出」については、「4. 修繕費と「資本的支出」の違い」でくわしく説明しますので、そちらを参照してください。

 

1-2. 修繕費の勘定科目

上記の修繕費を帳簿に仕訳する際の勘定科目は「修繕費」です。
損益計算書においては、法人なら「販売費及び一般管理費(販管費)」に、個人事業主なら「経費」に計上します。

1-3. 修繕費と間違えやすいもの

仕訳の際に、修繕費と混同しやすいものとしては、「消耗品費」と「資本的支出」が考えられます。

「消耗品費」消耗品を購入した際の勘定科目なので、一見すると修繕費とは明らかに異なるように思われます。
しかし、たとえば「工場の機械が壊れたので修理したが、部品が摩耗していたので新品を購入して交換した」という場合には、どちらに仕訳すればいいのか迷うでしょう。
この区別については、「3. 修繕費と「消耗品費」の違い」でくわしく説明しますので、そちらを参照してください。

もうひとつの「資本的支出」については、「1-1. 修繕費の定義」でも触れました。
同じ建物や機械を修理した場合でも、現状が維持されるなら修繕費、現状より改良されるなら資本的支出になります。
これについても、「4. 修繕費と「資本的支出」の違い」でさらに詳説しますので、ぜひ熟読してください。

 


2. 修繕費に含まれるもの・含まれないもの

では、実際に修繕費には何が含まれて、何は含まれないのでしょうか?

以下の表に具体例を挙げましたので、見てみてください。

修繕費に含まれるものの例

修繕費に含まれないものの例

<建物・設備の修繕>
・事業所や店舗、工場など建物の修理費用
・設備機器、備品の修理費用
・給排水設備の修理費用
・建物の壁の塗り替え、床の張り替え、ガラスの張り替え費用
・設備機器やエレベーターの保守点検費用
・建物の維持管理費用
・建物の移設費用、解体費用

<器具・備品>
・OA機器の修理、保守費用
・バックアップデータなどデータの復旧費用
・イス、デスクなど什器の修理、パーツ交換費用

<機械・装置>
・製造機器や装置の修理費用
・製造機器や装置のパーツ交換費用
 (ただし現状回復の場合。性能向上のためであれば資本的支出)
・製造機器や装置の移設費用

<車両など>
・営業車両の修理費用
・車検整備費用
・オイル交換、タイヤ交換費用

<その他>
・自然災害で破損した固定資産を原状回復させる費用など

<消耗品費>
・新規で購入した備品、設備、消耗品費用

<資本的支出>
・建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
・用途変更のための模様替えなど、改造又は改装に直接要した金額
・機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えの金額のうち通常の取替えの金額を超える部分の金額

 

ただ、以上はほんの一例で、実際にはここに挙がっていない修理や改善について、「修繕費かどうか」の判断に迷うことも多いかと思います。
そこで次章からは、修繕費と消耗品費、修繕費と資本的支出の仕訳ポイントについて、わかりやすく解説していきましょう。

 


3. 修繕費と「消耗品費」の違い

まず、修繕費と消耗品費の違いからみていきましょう。
このふたつは、基準さえ知っておけば簡単に区別できますので、以下をよく読んでください。

3-1. 「消耗品費」とは

「消耗品費」の定義を調べてみると、国税庁「帳簿の記帳のしかた ー事業所得者用ー」に、

①帳簿、文房具、用紙、包装紙、ガソリンなどの消耗品購入費
②使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費

という記載があります。

言い換えると、事業を行うために必要なものの中で、使うと短期間でなくなってしまうもの、または消耗して使えなくなってしまうものを仕訳する勘定科目「消耗品費」だと言えるでしょう。
この定義であれば、修繕費との区別は難しくないですよね。

ですが、前述したように、「機器を修理したところ、部品が消耗していたので交換した」という場合などには、修繕費か消耗費か迷うでしょう。
そんなケースでの区別のしかたを、次項で説明します。

 

3-2. 修繕費と消耗品費の仕訳ポイント

修繕費と消耗品費との違いは、以下の通りです。

修繕費

以前に購入して使用していたものを修理、メンテナンスした場合の費用
固定資産(1年を超えて使用する目的で、購入価格が10万円以上だったもの)を修理、メンテナンスした場合の費用
・部品や備品の交換の場合、外部の業者に依頼して作業してもらった場合の費用

消耗品費

今回新しく消耗品を購入した場合の費用
1年未満しか使えない、または購入価格が10万円未満の消耗品や備品を購入した場合の費用
・部品や備品の交換の場合、自分で部品や備品を購入して自分で作業した場合の費用

つまり、仕訳のポイントは、

◎修理か、新規購入か
◎1年以上使用・10万円以上か、1年未満使用・10万円未満か
◎修理やメンテナンスを外部の業者に依頼するか、自分でするか

ということです。

といっても、実はこの2者の区別はそれほど厳密ではありません。
迷った場合は、申告する企業側の判断でどちらかに仕訳しても問題ないでしょう。
ただし、一度どちらにするか決めたら、ずっと同じ勘定科目で計上するようにしてください。


4. 修繕費と「資本的支出」の違い

さて、修繕費と混同しがちなもうひとつの区分が「資本的支出」です。
このふたつの仕訳のしかたについても、具体的に解説しておきましょう。

 

4-1. 「資本的支出」とは

そもそも「資本的支出」とは何でしょうか?

簡単にいえば、「固定資産の修理や改良費用のうち、その固定資産の使用可能期間を延長させたり、価値を高めたりするためにかかった金額」をあらわす「税務会計上の概念」です。
法人税基本通達の第8節「資本的支出と修繕費」には以下のように記されています。

【法人税基本通達】

第8節 資本的支出と修繕費
7-8-1 資本的支出の例示

法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、例えば次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。

① 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額

② 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額

③ 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額

※建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。

基本的には、固定資産の修理費用は「修繕費」でしたよね。
ですが、修繕費のポイントは「維持管理」と「原状回復」です。
それ以上の「改良」や「価値向上」は含まれないので、その部分のみは「資本的支出」とみなされるというわけなのです。

つまり、

■価値の増加、または耐用年数の延長にかかった費用=資本的支出:固定資産の取得原価に加算

■それ以外の費用=修繕費:修繕費として計上

となります。
具体例としては、

◎建物を修理して元の状態に戻した場合は修繕費、建物に避難階段を取り付けるなど今までなかった設備や機能を付け加えた場合は、その追加費用分は資本的支出

◎建物の壁の塗り替え、床の張り替え、ガラスの入れ替えなどは修繕費、建物の用途を変更するために模様替えや改装をした場合の費用は資本的支出

◎機械の部品などが壊れたのを元の状態に戻すように交換した場合は修繕費、より高品質または高性能のものに交換した場合は、原状回復にかかる費用から超過した分は資本的支出

などが挙げられます。

4-2. 修繕費と資本的支出の仕訳ポイント

修繕費と資本的支出の違いをざっくりいえば、

◎修繕費:原状回復、維持管理にかかる費用
◎資本的支出:修理・改良の結果、資産価値の向上や耐用年数の延長があった場合、その費用

となります。
が、これらを厳密に仕訳するには、さらに以下のようなポイントがあるのです。

① 20万円未満の修理・改良は「修繕費」
  →この場合、もし結果としてその固定資産の価値がアップしたり耐用年数が延びたりしても、「資本的支出」ではなく「修繕費」として経費計上できる

② おおむね3年以内の周期で定期的に行う修理・改良は「修繕費」

③ 修理・改良の費用が60万円未満、またはその資産の前期末の取得価額の10%以下なら「修繕費」

もし判断に迷ったら、以下のチャートにしたがって判断してください。

 


5. 修繕費の会計処理

修繕費と資本的支出の違いと仕訳のしかたについては理解してもらえたかと思います。
ちなみにこのふたつは、会計処理のしかたも異なります。

では、それぞれどのようにすればいいのでしょうか?
それは以下の通りです。

【修繕費の会計処理の例】

借方

金額

貸方

金額

修繕費(費用)

30万円

現預金(資産)

30万円

 

【資本的支出の会計処理】
<以下の場合>
・建物の改修工事を行った:費用 30万円
・耐用年数30年/経過年数20年=残存耐用年数10年だったが、工事の結果、耐用年数が5年延びた
 →残存耐用年数が15年になった
・現金で支払った

この場合、延びた5年分は資本的支出に分類する

■資本的支出額:30万円✖5年/15年=10万円

■修繕費:30万円-1万円=20万円

借方

金額

貸方

金額

建物

10万円

現金

30万円

修繕費

20万円

事業者側としては、修繕費にしろ資本的支出にしろ、支払ったその期の経費として計上したい、つまりできればすべて修繕費にしたいと考えるかと思います。
ですが、上記の仕訳方法にしたがって、資本的支出分については正しく減価償却するようにしてください。

 


6. まとめ

いかがでしょうか?
修繕費とは何か、仕訳のポイントまでよく理解できたかと思います。

では最後に、記事の内容を振り返ってみましょう。

◎「修繕費」は「事業のために必要な有形固定資産が故障した際の修繕費用や保守点検費用、回収費用」

◎修繕費と消耗品費の仕訳ポイントは、
 ・修理なら修繕費、新規購入なら消耗品費
 ・1年以上使用・10万円以上なら修繕費、1年未満使用・10万円未満なら消耗品費
 ・修理やメンテナンスを外部の業者に依頼するなら修繕費、自分でするなら消耗品費

◎修繕費と資本的支出の仕訳ポイントは、
 ・原状回復、維持管理にかかる費用は修繕費
 ・修理・改良の結果、資産価値の向上や耐用年数の延長があった場合は資本的支出

以上を踏まえて、あなたが適切な会計処理をできるよう願っています。

 

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