通勤手当は15万円まで非課税!そのくわしい仕組みと具体例を解説

「通勤手当には課税されるの?」 
「非課税枠があると聞いたけれど、どういうこと?」

企業の経理担当者の方や従業員の方で、そんな疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、通勤手当は月に15万円までであれば、所得税が非課税と定められています。
15万円を超えた場合は、超えた分の金額にのみ所得税がかかります

ただこれにはさらに細かい規定があり、電車やバスなどの公共交通機関などで通勤する場合には15万円いっぱいまで非課税ですが、自動車、バイク、自転車通勤の場合には、距離によって限度額が異なります

また、
・行きと帰りで通勤手段や通勤距離が異なる場合
・複数の勤務先に通っている場合
といった特殊なケースでは、通勤手当をどう計算するかによって、非課税の上限額も変わってきますので要注意です。

そこでこの記事では、通勤手当の非課税枠についての法的な決まりから、個別のケースでの非課税限度額まで、わかりやすく説明していきます。

まず最初に、

◎通勤手当の非課税枠とは何か、非課税限度額はいくらか
◎通勤手当と交通費の区別
◎通勤手段別・通勤手当の非課税限度額

について、一覧表もまじえて解説します。
さらに、

◎通勤手当の経理上の扱い
◎ケース別。通勤手当の非課税限度額の計算方法

にも触れていきます。

最後まで読めば、通勤手当についての非課税・課税の決まりについて知りたいことがわかるでしょう。
この記事を踏まえて、あなたが正しく税金の計算をできるよう願っています。


1. 通勤手当の非課税枠とは

通勤手当は、企業が従業員の通勤のための交通費を手当てとして支給するものです。
これについて、どのように課税されるのでしょうか?
まずは通勤手当に関する税金の定めから説明していきましょう。

1-1. 通勤手当には非課税枠がある

企業の従業員に対して支給される給与や手当には、基本的に所得税や住民税がかかります。
たとえば、

・残業手当、休日手当
・資格手当
・住宅手当
・家族手当
・役職手当
・退職金
などは課税対象です。

が、手当の種類によっては、非課税とされているものもあるのです。
具体的には、

◎一定額以下の通勤手当
◎転勤や出張の手当のうち通常必要と認められるもの
◎一定額以下の宿直手当、日直手当

などです。
つまり、通勤手当は一定額までは、所得税が非課税なのです。

1-2. 通勤手当の非課税限度枠は15万円

では、通勤手当はいくらまで非課税になるのでしょうか?
その限度額は、ひとり当たり・1か月あたり15万円です。
15万円を超える場合は、超過分は給与扱いになり所得税がかかります
これは正社員に限らず、アルバイトやパートでも同様です。

ちなみにこの通勤手当の非課税限度額は、以前は10万円でした。
が、平成28年に税制改正がなされ、現在の15万円まで引き上げられました。

1-3. 通勤手当と交通費の違い

ところで、「通勤手当」と混同されやすいものに「交通費」があります。
これを区別しておかないと、通勤手当の正確な金額が把握できません。
両者の違いは、以下の通りです。

通勤手当

企業が従業員の通勤にかかる費用を支給する手当。
バスや電車などの公共交通機関の運賃、マイカー通勤のガソリン代など。
基本的には給与と一緒に支給され、経理上は「福利厚生費」となる。

交通費

業務中の移動にかかる費用
「通勤手当」と「旅費交通費」が含まれる。
「旅費交通費」に関しては、基本的には従業員が立て替えて後から精算する。

 


2. 通勤手当の非課税限度額

 

前述したように、通勤手当の非課税限度額は15万円です。
ただし、交通手段によっては15万円より低い額が限度額となる場合があります。
その規定は以下の表のとおりです。

区分

課税されない金額

交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当

1か月当たりの合理的な運賃等の額

(最高限度 150,000円

自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当

通勤距離が片道55キロメートル以上である場合

31,600円

通勤距離が片道45キロメートル以上55キロメートル未満である場合

28,000円

通勤距離が片道35キロメートル以上45キロメートル未満である場合

24,400円

通勤距離が片道25キロメートル以上35キロメートル未満である場合

18,700円

通勤距離が片道15キロメートル以上25キロメートル未満である場合

12,900円

通勤距離が片道10キロメートル以上15キロメートル未満である場合

7,100円

通勤距離が片道2キロメートル以上10キロメートル未満である場合

4,200円

通勤距離が片道2キロメートル未満である場合

(全額課税)

交通機関を利用している人に支給する通勤用定期乗車券

1か月当たりの合理的な運賃等の額

(最高限度 150,000円

交通機関又は有料道路を利用するほか、交通用具も使用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券

1か月当たりの合理的な運賃等の額との金額との合計額

(最高限度 150,000円

では、それぞれについて説明しましょう。

2-1. 自動車、バイク、自転車通勤の場合

まず、マイカー通勤やバイク、自転車通勤の場合ですが、距離に応じて非課税限度額が以下のように決められています。

区分

課税されない金額

通勤距離が片道55キロメートル以上である場合

31,600円

通勤距離が片道45キロメートル以上55キロメートル未満である場合

28,000円

通勤距離が片道35キロメートル以上45キロメートル未満である場合

24,400円

通勤距離が片道25キロメートル以上35キロメートル未満である場合

18,700円

通勤距離が片道15キロメートル以上25キロメートル未満である場合

12,900円

通勤距離が片道10キロメートル以上15キロメートル未満である場合

7,100円

通勤距離が片道2キロメートル以上10キロメートル未満である場合

4,200円

通勤距離が片道2キロメートル未満である場合

(全額課税)

もし、高速道路など有料道路を使って通勤する場合は、上記の上限額に有料道路の料金を加えて、その合計額のうち15万円/月までが非課税になります。

また、通勤のために最寄り駅近くや会社近くなどに駐車場を借りるケースもあると思いますが、その際の駐車場代は、もし会社から支給されても非課税にはならず、課税されるので注意してください。

2-2. 公共交通機関(電車・バス)通勤の場合

次に、電車やバスなどの公共交通機関を使って通勤している場合は、15万円/月までが非課税です。
バスと電車の両方を使っているなら、その合計額で計算します。

ただし、通勤手当は「1か月当たりの合理的な運賃額」と定められていますので、時間、距離、運賃のいずれかについてもっとも適切なルートに関してのみ非課税になります。
無駄に遠回りなルートや運賃が高いルートを使ったとしても、通勤手当としては「合理的な」ルートの運賃が適用されます。

2-3. 新幹線通勤の場合

もし新幹線を使う場合は、運賃だけでなく特急料金も含めて15万円/月まで非課税対象です。
が、グリーン車の料金はすべて課税対象になります。

2-4. タクシー利用の場合

まれなこととは思いますが、タクシーで通勤するケースもあるでしょう。
その場合は、「タクシーを利用することがもっとも合理的、経済的」と判断されれば、15万円/月まで非課税になります。
たとえば、勤務時間が深夜などで公共交通機関がなく、従業員自身が車などの通勤手段を持たない場合などが想定されるでしょう。

2-5. マイカー+公共交通機関通勤の場合

さらに、「自宅から最寄り駅まではマイカーで行き、駅から会社までは電車を利用する」というケースもありますよね。
この場合、「2-1」と「2-2」の合計額が通勤にかかる費用となりますので、その合計額のうち15万円/月までが非課税です。


3. 通勤手当の経理上の扱い

 

次に、通勤手当は経理上はどのように扱えばいいのかを説明します。
消費税と社会保険料について、以下のようにしてください。

3-1. 通勤手当と消費税

消費税を納める会社の場合、通勤手当はどう処理すればいいのでしょうか。

結論からいえば、原則的には課税対象となるので、経理上は「課税仕入」として処理する必要があります。

前述したように通勤手当については、所得税は非課税枠がありますよね。
それに対して、消費税としては課税扱いになりますので注意してください。

ちなみにこれについては、「消費税法基本通達」で以下のように定められています。

【消費税法基本通達】

11-2-2 <通勤手当>

事業者が使用人等で通勤者である者に支給する通勤手当(定期券等の支給など現物による支給を含む。)のうち、当該通勤者がその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとした場合に、その通勤に通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れに係る支払対価に該当するものとして取り扱う。

 

3-2. 通勤手当と社会保険料その他

また、社会保険料などの計算では、通勤手当を含めるものでしょうか?

これについては以下のように、何の計算をするのかのケースによって、含める場合と含めない場合があります。

通勤手当全額を含めるもの

社会保険・雇用保険・労災保険・年金・平均賃金

通勤手当の課税分(15万円を

超えた分)のみ含めるもの

年末調整・源泉徴収・確定申告

通勤手当は含めないもの

割増賃金

社会保険や平均賃金などは、「標準月額報酬」をもとに算出するものです。
通勤手当も「報酬」に分類されるため、含めて計算する必要があるのです。

一方で、通勤手当のうち15万円/月を超える分については、所得税が課税される=給与とみなされるわけです。
そのため、年末調整や源泉徴収、確定申告の計算では、年収に含めて計算することになります。

ただ、残業代などの割増賃金の計算をする際には、通勤手当は一切含みません
というのも、

・通勤手当は労働と直接的な関係は薄い
・従業員個々の事情によって金額が大きく異なるため、これを含めて割増賃金を計算すると差が出てしまう

ためです。

ケースによって扱いが異なるので面倒ですが、間違えないよう注意してください。


4. ケース別・通勤手当の非課税限度額の計算方法

「2. 通勤手当の非課税限度額」では、通勤手段別の非課税限度額について説明しました。
が、中にはそれらの通勤手段だけで説明しきれない、特殊な通勤事情を抱えている人もいることでしょう。
この章では、そのような判断の難しいケースについて、非課税限度枠をどう考えればいいのかを説明しましょう。

4-1. 行きと帰りで通勤手段が異なる場合

まず、行きと帰りで通勤手段が異なるケースについて考えてみましょう。
たとえば、「朝は道路が混むので電車通勤だが、帰りは料金が安いバスを利用する」といった場合です。

この場合、「行きと帰りの交通手段が異なること」が「合理的」であると認められ、会社から通勤手当が出るのであれば、1か月の合計額15万円までは非課税です。
もし15万円を超える場合は、その部分に対してのみ課税されます。

4-2. 行きと帰りで通勤距離が異なる場合

次に、車や自転車通勤で、行きと帰りで通勤距離が変わるケースです。
「行きと帰りの時間でそれぞれすいているルートを選ぶと、距離が異なる」といった例が考えられます。

これについては、往復で異なるルートを選ぶことを会社が認めて、通勤手当もそれに従って支給してくれることがまず前提になります。
その上で、一般的な考え方としては、往路と復路の距離の平均に対して、「2-1. 自動車、バイク、自転車通勤の場合」の規定に沿った非課税限度額が適用されます。

たとえば、

・行きが14km:非課税上限 7,100円
・帰りが17km:非課税上限 12,900円

の場合、往復の平均距離は「(14㎞+17㎞)÷ 2=15.5㎞」となります。
15.5kmの場合の非課税枠は12,900円ですので、これがこの人の場合の非課税限度額となるわけです。

4-3. 複数の勤務先に通勤している場合

また、複数の勤務先に通勤している場合もあるでしょう。
「週に3日は本社勤務で、残りの2日は営業所に行っている」とか、「ダブルワークでA社に週3日出社して、B社に週2日出社する」などのケースです。

この場合は、各勤務先ごとに「合理的な」運賃を選び、それを通勤日数をかけた上で、すべてを合計した額を1か月あたりの通勤手当とします。
そしてその合計額のうち15万円までが非課税、それを超えれば課税されます。

たとえば、公共交通機関を使った通勤で、

・A社:往復1,800円✖12日/月=21,600円
・B社:往復1,600円✖8日/月=12,800円

となる場合、1か月の合計額は34,400円なので、すべて非課税というわけです。


5. まとめ

いかがでしょうか?
通勤手当の非課税限度額について、よく理解していただけたかと思います。

ではもう一度、記事の要点をまとめてみましょう。

◎通勤手当は15万円/月まで所得税非課税
◎ただし、自動車・バイク・自転車通勤の場合は距離に応じて非課税限度額が異なる
◎通勤手当は、消費税は課税扱い
◎社会保険料の計算では、通勤手当を含める

以上をふまえて、あなたが通勤手当に関する税金を正しく把握できるよう願っています。

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