交際費について、
そもそも、この経費は交際費になるのか、はっきりと判断できない…
毎期かなり高額になり、税務調査が心配だ…
とお悩みではありませんか?
交際費は、その範囲が広く、他の経費と混同してしまうことが多い判断が難しい経費です。
それに伴い、その性格上、税務調査でも必ずと言っていいほど調査官がチェックすることになります。
しかし、事前にしっかり交際費について理解し、対策を取ることで税務調査で問題にならないばかりか、
今までよりも税金が抑えられるかもしれません。
この記事では、税金のルールで定義される交際費とは何かを説明したうえで
交際費の範囲を明らかにし、税務調査で問題とならないための3つのポイントをお伝えします。
読み終えて頂くと、今まで曖昧だった交際費がクリアになり、
今までよりも安心して会社経営を行うことにつながるでしょう。
1.交際費とは
一般的に、接待や贈り物のことを総称して「交際費」と表現されますが、
税金のルールでは、これを「交際費等」と表現します。
税金のルールで定められている「交際費等」の定義は分かりやすく言うと、
事業関係者に対して、仕事が円滑になることを目的とした接待や贈り物等に係る経費を意味します。
詳細な定義は、国税庁のサイトに記載があります。下記のとおりです。
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。 |
1-1交際費等の3つの要件
税金のルールで定められている「交際費等」に該当するためには、下記の3つの要件を満たす必要があります。
⑴得意先や仕入先等の事業関係者に対するものであること
⑵仕事が円滑になることを目的としたものであること
⑶接待や贈り物の係る支出であること
⑴から⑶について、それぞれ解説していきます。
⑴得意先や仕入先等の事業関係者に対するものであること
交際費等の相手方である事業関係者とは、現在又は将来において、会社の事業に関係のある者を言います。
具体的には下記の者をいいます。
①得意先や仕入先等といった直接の取引先
②間接的に取引関係のある者
③新しく取引をする者や近い将来に事業に関係する者
④自社の役員、従業員、株主等およびその家族や親族
ここで特徴的なことは、自社の役員、従業員、株主等及びその家族や親族も交際費等の相手方に含まれていることです。「社内飲食費」が代表的なケースとなります。
「社内飲食費」とは、自社の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出する飲食費のことを言います。例えば、社長と従業員数人で食事をした際の費用を会社が負担した場合などが該当します。
一般的なイメージでは、福利厚生費に該当しそうですが、この費用は交際費等に該当してしまいます。
(交際費等と福利厚生費の区別は、第3章にて説明します。)
⑵仕事が円滑になることを目的としたものであること
交際費等とは、事業関係者との親睦を深めて、仕事が円滑となるような目的のために支出されるものです。
この目的に該当するかどうかは、一般的な常識のもとに総合的に判断されるものになります。
具体的には、下記のような目的となるでしょう。
●既存の得意先や仕入先
⇒いつもお世話になっている取引先にこれからも継続して取引をお願いすること
●まだ取引していない相手
⇒新しい事業を行うために新たな相手に取引をお願いすること
●自社の従業員
⇒ 日頃の業務を慰労して、従業員のモチベーションをあげる
⑶接待や贈り物の係る支出であること
接待や贈り物に係る支出には、実は4つの形態があります。
接待、供応、慰安、贈答といったものです。
これらのいずれかに該当すれば、交際費等に該当することになります。
それぞれどういったものか見てみましょう。
- 接待とは
「接待」とは相手をもてなすことをいいます。
食事やゴルフが一般的でしょう。 - 供応とは
「供応」とは食事やお酒でもてなすことです。
接待に含まれる行為となります。 - 慰安とは
「慰安」とは一般的には、従業員の労をねぎらうことになります。
従業員の労をねぎらう費用は、福利厚生費となる場合もありますが、
一定の場合には交際費となってしまいます。(交際費等と福利厚生費の区別は、第3章にて説明します。) - 贈答とは
「贈答」とは物を贈ったり、お返しすることです。
お中元・お歳暮など、相手にプレゼントを贈ることになります。
上記の要件⑴、⑵、⑶の全てに該当すれば、交際費等に該当することになります。
1-2.交際費等に該当するもの、該当しないものの具体例
1-1で説明した交際費の3つの要件に照らして、
交際費等に該当するもの、該当しないものの具体例は下記のものとなります。
似たような内容でも、交際費に該当するもの、該当しないものと分かれてくるため、
慎重に判断しなければいけません。
具体例 |
経費の種類 |
該当しない理由 |
取引先との食事会 |
交際費等 |
- |
取引先との会議の際の弁当代 |
会議費 |
目的が会議のため |
得意先とのゴルフ大会 |
交際費等 |
- |
慰安のため従業員全員参加のゴルフ大会 |
福利厚生費 |
従業員の慰安を目的としているため(但し、常識の範囲内の金額に限る) |
得意先との旅行 |
交際費等 |
- |
慰安のため従業員全員参加の社員旅行 |
福利厚生費 |
従業員の慰安を目的としているため(但し、常識の範囲内の金額に限る) |
取引先への香典、祝い金 |
交際費等 |
- |
従業員への香典、祝い金 |
福利厚生費 |
従業員の慰安を目的としているため(但し、常識の範囲内の金額に限る) |
取引先へのお歳暮、お中元、商品券の贈答 |
交際費等 |
- |
政治家の後援会会費 |
寄付金 |
会社の事業と関係のない相手のため |
取引先へのカレンダー、手帳、うちわの贈答 |
広告宣伝費 |
自社の宣伝を目的としているため |
取引先への自社製品のサンプル品の提供 |
広告宣伝費 |
自社の宣伝を目的としているため |
2.交際費等の経費計上の限度額とは
交際費等は、法人税の計算において、下記の「交際費の損金不算入制度」という制限があります。
ここで、制限とは、支出した金額の全額が経費として計上できないということです。
交際費の損金不算入制度 交際費等のうち、下記の①と②で計算される限度額のうち、いずれか大きい金額を超える部分は経費になりません。(税金計算の用語で、経費から除かれることを損金不算入といいます。) ①飲食接待費の50%の金額 |
①飲食接待費の50%の金額と②1年間800万円という2つの限度額により、交際費等の全額が経費として計上することができなくなり、法人税が多額になってしまう可能性があります。
ここでは、資本金1億円以下の中小企業の場合について説明します。
(資本金が1億円を超える場合や個人事業者には該当しません)
①飲食接待費の50%の金額と②1年間800万円について、それぞれ説明します。
2-1.飲食接待費の50%の金額
1つ目の限度額は、飲食接待費の50%の金額です。
つまり、飲食接待費の50%の金額が経費に計上できる限度額となり、限度額を超える部分が経費として認められなくなります。
ここで、「飲食接待費」とは、交際費等のうち、飲食費に該当し、帳簿書類に飲食費であることについて所定の事項が記載されているもののことを言います。ただし、自社の役員、従業員、その家族だけに対する飲食費(社内飲食費といいます)となるものは除きます。
①飲食接待費に該当するもの
下記のものは、飲食接待費に該当します。(従って当然、交際費等にも該当します)
- 自己の従業員等が得意先等を接待して飲食するための「飲食代」
- 飲食等のために支払うテーブルチャージ料やサービス料等
- 飲食等のために支払う会場費
- 得意先等の業務の遂行や行事の開催に際して、弁当の差入れを行うための「弁当代」(得意先等において差入れ後相応の時間内に飲食されるようなもの)
- 飲食店等での飲食後、その飲食店等で提供されている飲食物の持ち帰りに要する「お土産代」
②飲食接待費に該当しないもの
下記のものは、交際費には該当しますが、飲食接待費には該当しません。
- ゴルフや観劇、旅行等の催事に際しての飲食等に要する費用
飲食費ですが、全体としてはゴルフ等のイベントに付随する費用として考えるため該当しません。 - 接待等を行う飲食店等へ得意先等を送迎するために支出する送迎費
飲食費に付随する費用と考えられそうですが、送迎費は、単独で考えて、飲食接待費には該当しません。 - 飲食物の詰め合わせを贈答するために要する費用
お中元、お歳暮と同じ贈答品と考えるため、該当しません。 - 従業員のみが参加した飲食会に要する費用
自社の従業員のみに対する飲食費は、飲食接待費の定義より、飲食接待費から除かれています。
2-2.1年間800万円
2つ目の限度額は、1年間800万円の金額となります。
つまり、交際費等のうち年間800万円が法人税の計算上、経費として認められる限度額となります。そのため、800万円を超える部分は法人税の計算上、経費として認められません。
ここで注意しなければいけないことは、1年間12か月で800万円の限度額ということです。
事業年度が、12か月に満たない場合には、800万円にその事業年度の月数をかけて、これを12で割った金額が限度額となります。
(例)
・事業年度が6か月の場合
下記の計算により400万円が限度額となります。
800万円×6か月÷12月=400万円
2-3.計算例
交際費等の限度額の計算方法について具体例でみてみましょう。
【設定 1】
事業年度 12か月
1年間の交際費等 500万円
内、飲食接待費 300万円
⇒
限度額は、
①飲食接待費の50%相当額 300万円×50%=150万円
②年間800万円
①と②のうち、限度額は大きい方を選択して800万円。
したがって、交際費等は500万円全額が経費として認められる。
【設定 2】
事業年度 12か月
1年間の交際費等 900万円
内、飲食接待費 700万円
⇒
限度額は、
①飲食接待費の50%相当額 700万円×50%=350万円
②年間800万円
①と②のうち、限度額は大きい方を選択して800万円。
したがって、交際費等900万円のうち、限度額800万円は経費として認められるが、限度額800万円を超える部分の100万円は、法人税を計算する際には経費として認められない。
【設定 3】
事業年度 12か月
1年間の交際費等 2000万円
内、飲食接待費 1800万円
⇒
限度額は、
①飲食接待費の50%相当額 1800万円×50%=900万円
②年間800万円
①と②のうち、限度額は大きい方を選択して900万円
したがって、交際費等2000万円のうち、限度額900万円は経費として認められるが、限度額900万円を超える部分1100万円が法人税を計算する際に経費として認められない。
【設定 4】
事業年度 6か月
1年間の交際費等 900万円
内、飲食接待費 700万円
⇒
限度額は、
①飲食接待費の50%相当額 900万円×50%=450万円
②年間800万円 800万円×6か月÷12か月=400万円
①と②のうち、限度額は大きい方を選択して450万円。
したがって、交際費等900万円のうち、限度額450万円は経費として認められるが、限度額450万円を超える部分の450万円は、法人税を計算する際には経費として認められない。
設定1では全額経費として認められますが、設定2、設定3、設定4では、交際費等が多額のため、実際お金を支出しているにもかかわらず、上限を超えた部分を経費として認められないので、その分法人税を多く納税しなければいけなくなります。
このように、限度額を上回る交際費等を使ってしまうと、お金が出て行ってしまうにも関わらず法人税を減らすことができないことになります。
3.交際費等と間違いやすい7つの経費
この章では、一見、交際費等に該当しそうですが、交際費等には該当しない経費についてみていきましょう。
第2章でみたように、交際費等が限度額を超えてしまうと、経費として認められなくなる部分が出てきてしまいます。法人税を効果的に減らすためには、交際費等の範囲をしっかりと把握し、交際費等として計上しなくてもよいものは、別の経費として計上することが重要となります。
交際費等と間違いやすい経費 |
|
飲食費で1人当たり5000円以下のもの |
会議費 |
会議の際に提供される飲食 |
会議費 |
社内イベントにかかる飲食 |
福利厚生費 |
広告宣伝となる物品の贈与等 |
広告宣伝費 |
相手が事業関係者でない贈与等 |
寄付金 |
得意先に対する金銭やモノでの売上還元 |
売上割戻 |
一定の契約に基づく紹介手数料 |
支払手数料 |
3-1.飲食費で1人当たり5000円以下のもの
飲食費で1人当たり5000円以下のものは交際費等には該当しません。
取引先等との飲食費は、本来ならば交際費に該当することになりますが、法人税のルールでは、参加した者1人当たりの金額が、5000円以下の場合には、会議費として処理して良いことになります。
ただし、そのためには、下記の2つの点に注意が必要です。
⑴自社の役員、従業員、及びその家族だけが参加する飲食費には、このルールは認められません。
⑵このルールは、次の事項を記載した書類を保存している場合に限り適用されます。
① 飲食等のあった年月日
② 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
③ 飲食等に参加した者の数
④ その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称及び所在地(店舗がない等の理由で名称又は所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名又は名称、住所等)
⑤ その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
領収書や請求書とともに、必要事項を忘れないように控えておくことが必要となります。
なお、この5000円の金額の判定は、自社の消費税等の経理処理(税抜経理方式又は税込経理方式)により算定した金額によります。
3-2.会議の際に提供される飲食
自社や取引先との商談や打ち合わせ等の会議の際に提供される飲食は、交際費等には該当しません。
会議費として経費計上することができます。
会議費とは、社内での会議や取引先との商談などの際に支出される費用のことを言います。
会議費となるためには、下記の2つの要件を満たす必要があります。
①会議に伴い提供されるもの
②昼食代等の常識的な金額となるもの
ここで、②昼食代等の常識的な金額とは一体いくらなのかが問題となります。しかし、その常識的な金額について、法人税のルールの中では具体的な金額は示されていません。したがって、3-1とは違い、1人当たり5000円を超えていても会議費として認められる余地はあります。その状況ごとの個別判断となりますが、会議費として認められる金額の範囲は目安としては一般的な昼食代程度と考えておいた方が無難でしょう。常識的な金額を超えた飲食費は、交際費等か給与として扱われます。
3-3.社内イベントにかかる飲食
自社の役員や従業員だけが参加する社内イベントにかかる飲食については、交際費等には該当しません。
これらは福利厚生費として扱われます。具体的には、社内行事としての忘年会、新年会、歓送迎会の費用となります。
福利厚生費とは、役員や従業員全員を対象に慰安のために支出される費用です。
福利厚生費として認められるためには、下記の2つの要件を満たす必要があります。
①全員参加できる状況であること
②常識的な金額であること
①、②について、詳細にみていきます。
①全員参加できる状況であること
福利厚生費として認められるためには、全員参加できる状況であることが必要となります。実際に参加できない人がいても問題はありませんが、イベントには全員を誘うことが必要となります。
下記の3つのケースは福利厚生費とは認められないので注意しましょう。
・特定の役員、従業員のみを対象としたイベント
・社内イベントの後に有志が集まって開かれた2次会
・イベントに誘ったものの参加しなかった人に、代わりの金銭を支給した
いずれの場合も福利厚生費ではなく、交際費等又は給与として取り扱われてしまうでしょう。
②常識的な金額であること
福利厚生費として認められるためには、常識的な金額であることが必要となります。しかし、その常識的な金額については、法人税のルールでは具体的には示されていません。実際には個別判断となります。極端な例ですが、1人10万円以上の飲食費となると、常識の範囲を超えているので福利厚生費とはならない可能性が高いでしょう。
3-4.広告宣伝となる物品の贈与等
広告宣伝の一環として、一定の物品を贈与した場合には交際費等には該当しません。
広告宣伝費とは、不特定多数の者に自社や自社の商品、サービスの広告宣伝を目的とする経費のことを言います。
広告宣伝費と交際費を区別する基準は3つあります。
⑴支出の相手が一般消費者であること
⑵贈与したモノが、
①見本品や試用品の贈与であること
又は
②カレンダー、手帳、手ぬぐい等の少額物品の贈与であること
(1)と(2)について具体的にみていきましょう。
⑴支出の相手が一般消費者であること
交際費と広告宣伝費を区別するのは、その支出の相手になります。
得意先に対してモノを送ったり、旅行に招待する場合などは交際費に該当しますが、一般消費者に対してモノを送ったり、旅行に招待する場合には交際費該当せず、広告宣伝費に該当します。国税庁は事例として、下記のようなものが挙げています。
〇広告宣伝費に該当するもの
下記の事例はいずれも支出の相手が一般消費者になっています。
・製造業者や卸売業者が、抽選により、一般消費者に対し金品を交付するための費用又は一般消費者を旅行、観劇などに招待するための費用
・製造業者や卸売業者が、金品引換券付販売に伴って一般消費者に金品を交付するための費用
・製造業者や販売業者が、一定の商品を購入する一般消費者を旅行、観劇などに招待することをあらかじめ広告宣伝し、その商品を購入した一般消費者を招待するための費用
・小売業者が商品を購入した一般消費者に対し景品を交付するための費用
・一般の工場見学者などに製品の試飲、試食をさせるための費用
・得意先などに対して見本品や試用品を提供するために通常要する費用
・製造業者や卸売業者が、一般消費者に対して自己の製品や取扱商品に関してのモニターやアンケートを依頼した場合に、その謝礼として金品を交付するための費用
〇交際費に該当するもの
支出の相手が一般消費者でなく、得意先等の事業関係者となっています。
・医薬品の製造業者や販売業者が医師や病院を対象とする場合
・化粧品の製造業者や販売業者が美容業者や理容業者を対象とする場合
・建築材料の製造業者や販売業者が、大工、左官などの建築業者を対象とする場合
・飼料、肥料などの農業用資材の製造業者や販売業者が農家を対象とする場合
・機械又は工具の製造業者や販売業者が鉄工業者を対象とする場
⑵贈与したモノが、①見本品や試用品の贈与であること、又は②カレンダー、手帳、手ぬぐい等の少額物品の贈与であること
①見本品や試用品の贈与であること
渡したモノが自社商品のサンプル品などであれば、交際費等には該当しません。
注意点としては、その渡すモノは、サンプル品としてみることができる範囲にしなければいけません。例えば、サンプル品と称して大量の商品を得意先に無償で提供しても、それは交際費等になってしまいます。
②カレンダー、手帳、手ぬぐい等の少額物品の贈与
渡したモノが、自社で作成したカレンダー、手帳、手ぬぐい等の少額物品の場合には、交際費等に該当しません。
通常これらのモノには、自社名を印字するので、自社の宣伝につながるためです。ただし、こちらも「少額」である必要があります。国税庁は具体的な金額を示していませんが、カレンダー、手帳、手ぬぐいとして常識的な範囲内となります。
3-5.相手が事業関係者でない贈与等
金銭や物品等を送った相手が事業関係者でない場合には交際費等には該当しません。
これらは寄付金に該当します。寄附金とは、金銭、物品その他経済的利益の贈与又は無償の供与をいいます。
モノの贈与が、例えば、国や地方公共団体、学校、政治団体、NPO法人、お寺や神社等の事業に関係のない相手に対する場合には寄付金に該当します。
事業に関係にない相手 ⇒ 寄付金
事業に関係のある相手 ⇒ 交際費等
事業に関係のない相手とは、もっといえば、支出の相手に見返りを求めないということを意味します。したがって、3-4でみた一般消費者に対するモノの提供は、商品を買って下さいという宣伝の目的があるため寄付金には該当しません。
また、例外的に、事業関係者に対する贈与等であっても、災害普及支援といった目的の場合には、見返りを求めていないものとして交際費等には該当せず、寄付金として処理することができます。
なお、寄付金についても、法人税のルール上、経費に計上できる金額に制限が設けられています。
3-6.得意先に対する金銭やモノでの売上還元
得意先に対して、金銭やモノを贈っても売上割戻に該当する場合には交際費等には該当しません。
売上割戻とは、一定以上の商品やサービスを購入してくれた得意先に対する金銭やモノでの売上還元です。
売上割戻も交際費とよく間違われる項目となります。
売上割戻となるためには、下記の要件を両方満たす必要があります。
⑴一定の基準に従っていること
⑵金銭、事業用資産、少額物品を得意先に支給すること
それぞれの要件の詳細をみてましょう。
⑴一定の基準に従っていること
売上割戻は、下記のような一定の基準に従って支給する必要があります。
①売上高若しくは売掛金の回収高に比例していること
②売上高の一定額ごとであること
③得意先の営業地域の特殊事情、協力度合い等を勘案していること
例えば、何も根拠がなく、気分のままに売上還元としても、売上割戻には該当せず、交際費等に該当します。
⑵金銭、事業用資産、少額物品を得意先に支給すること
支給するモノにも注意が必要となります。
具体的にみてみましょう。
①金銭
金銭を支給する場合には、売上割戻となります。
②事業用資産
事業用資産とは、得意先にとって商品や固定資産に該当するモノとなります。事業用資産であれば売上割戻となります。
③少額物品
購入単価が概ね3000円以下の少額であれば売上割戻となります。しかし3000円を超える物品の場合には交際費等となってしまいます。
・上記以外のモノ
上記以外のモノを支給した場合には交際費等に該当します。例えば得意先を旅行や観劇に招待したり、商品券を支給した場合です。
3-7.一定の契約に基づく紹介手数料
新しい得意先や仕入先、従業員を紹介してもらった際に支払う手数料について、下記の場合には交際費等には該当しません。
⑴紹介業者に支払う紹介手数料
⑵紹介業者でない者に一定の契約に基づいて支払う紹介手数料
⑴と⑵について見てましょう。
⑴紹介業者に支払う紹介手数料
人材紹介会社や不動産仲介会社等の情報提供を仕事としている紹介会社に支払う手数料は、交際費等に該当しません。
⑵紹介業者でない者に一定の契約に基づいて支払う紹介手数料
紹介会社でない者に、下記の一定の契約に基づいて支払う手数料は交際費等に該当しません。
ここで、一定の契約とは、次のどれかの条件を満たす必要があります。
①あらかじめ締結された契約に基づくものであること
②契約が明確で、かつ、契約に基づいて実際に役務の提供を受けていること
③契約の対価が契約内容と照らして相当であること
①、②、③についてそれぞれ見ていきましょう。
①あらかじめ締結された契約に基づくものであること。
紹介してもらったお礼の金額について、事前に契約書を交わしておくことが必要です。それが難しい場合には契約書に代わる支払条件が分かるチラシやメール等があれば問題ないでしょう。
②契約が明確で、かつ、契約に基づいて実際に役務の提供を受けていること
契約内容が明確に、○○してくれたらいくら支払いますといった内容が具体的に示されていることと、その契約の内容の通りに実際に支払いが行われていることが必要となります。
したがって、契約の内容があいまいだったり、契約と違う金額の支払いとなっていると交際費等とされてしまいます。
③契約の対価が契約内容と照らして妥当であること
支払った金額が、提供と受けたサービスに比べて妥当かということになります。サービスによって、いくら支払うのが妥当かは、そのサービスごとに判断するしかありません。しかし、同じ内容のサービスなのに相手によって明らかに支払う金額が違う場合や、契約とは違う金額を支払っている場合には交際費等とみなされるリスクが高くなります。
従って、例えば、たまたま仕事と関係のない友人からお客を紹介された際に、お礼として金銭を渡した場合などは、事前に契約がないため①を満たさないので交際費等に該当することになります。
4.税務調査で問題となる4つのパターン
税務調査の際に交際費関係で調査官に指摘されるケースは下記の4つとなります。
①仕事と関係のないプライベートの支出だった場合
②他科目交際費だった場合
③意図的に領収書等を改ざんして交際費等以外の経費として処理していた場合
④相手の名前を明かせない場合
①~④についてそれぞれ見てみましょう。
①仕事と関係のないプライベートの支出だった場合
交際費等は、そもそも仕事に関係のあるものでなければいけません。したがって、仕事とは全く関係のないプライベートの支出があった場合には、それは交際費とは認められません。
家族だけで行った食事代などが分かりやすい例でしょう。
プライべートの支出は役員報酬や給与として扱われることになります。従業員給与の場合には経費として認められます。しかし、役員の場合には、法人税のルールにより毎月の役員報酬は定額としなければいけませんから、会社の経費とは認められません。
また、役員や従業員個人が、その支出の恩恵を受けたとして、個人に税金が課されてしまうというデメリットもあります。
・その支出が役員によるもの⇒会社経費として認められないため法人税と消費税が追加でかかる
役員報酬として扱われるため役員個人に税金がかかる
・その支出が従業員によるもの⇒会社経費として認められるため法人税は追加でかからない
消費税は追加でかかる
従業員給与として扱われるため従業員個人に税金がかかる
②他科目交際費だった場合
「他科目交際費」とは、第3章でみた会議費、福利厚生費、広告宣伝費、売上割戻等の経費として処理していたものの、法人税を計算する際には交際費等として扱わなければいけないものを言います。
この結果、その事業年度の交際費の合計額が、交際費の損金不算入制度による経費として計上できる上限を超えてしまった場合には、法人税を多く支払わなければいけなくなります。
③意図的に領収書等を改ざんして交際費以外の経費として処理していた場合
②に似ていますが、こちらは領収書等を改ざんし、意図的に交際費以外の経費として処理している場合です。
例えば、会議費として処理するために、参加人数を水増しし、1人当たりの飲食費を5000円以下としたり、領収書の内容を別のものに書き換えるといったこととなります。
悪質な手口となるので、調査で指摘されると重加算税を課される可能性があります。
④相手の名前を明かせない場合
交際費として支出したものであるものの、何らかの事情により相手の名前をに明かすことができない金銭を支出した場合です。正確には、使途秘匿金といいます。使途秘匿金に該当する要件は、
・相当の理由がなく
・その相手方の氏名又は名称及び住所又は所在地並びにその事由を
・帳簿書類に記載していない
使途秘匿金とされた場合には、非常に重い税金が課されます。
まず、通常の法人税の計算上経費として認められません。
また、使途秘匿金とされた金額の40%相当額の法人税が追加で課されます。
さらに法人県民税市民税も増えます。
悪質と判断された場合にはさらに重加算税も課されます。
したがって、使途秘匿金の金額とほぼ同じ金額の税金を支払う必要が出てきます。
5.税務調査で問題とならないために押さえておく3つのポイント
交際費は、色々な論点と絡むため税務調査でも必ずチェックが入る項目となります。しかし、事前にしっかりと対策を取っておけばそれほど怖がる必要はありません。具体的には下記の3つの対策をとっておきましょう。
①領収書等をしっかり保管しておくこと
税務調査では、3~5年間分の申告をチェックします。数年前の交際費等について記憶だけを頼りに思い出すことは難しいですし、何も証拠が残っていなければ調査官に認めさせることもできません。しっかり内容が思い出せるように、相手や内容を控えておき、領収書などの証拠書類を保管しておくことが大切となります。
②交際費等の範囲を確認すること
今まで見てきたように交際費等と間違いやすい費用がたくさんあります。交際費等には、損金不算入制度があり、経費として計上できる限度額があります。そのため交際費等の範囲を押さえておくことによって交際費以外の経費として処理できるものは、きちんと交際費以外の経費で計上しましょう。
③相手先を明かせない場合は役員報酬で処理する。
交際費等で一番厄介なのは、相手を明かすことができない使途秘匿金となります。4-1④でみたように、使途秘匿金に該当すると、非常に重い税金が課されてしまいます。
そこで、どうしても相手を明かすことができない場合には、あらかじめ社長のポケットマネーから支払うようにし、会社の帳簿に載らないようにすればよいのです。
社長のポケットマネーから支出するためには、その分をあらかじめ毎月の役員報酬に上乗せする必要があります。役員報酬が増えると、それに伴い社会保険料や個人の所得税や住民税が増えてしまいますが、少なくとも税務調査では論点とはなりませんし、使途秘匿金とするよりは会社の法人税は下がる可能性もあります。
(ただし、あまりに大きい金額を役員報酬に上乗せすると、職務内容に見合っていない金額として、経費計上できなくなる場合があるので注意が必要です。)
最後に
交際費等は、その性格上、税務調査でも必ずと言っていいほどチェックが入る経費となります。そのため、税務調査の際に問題となり、追加で納税となると、多額の負担が出てしまう可能性があります。
一方で、交際費等は取引先との関係を良好とするために、欠かすことができない非常に重要なものとなります。
中小企業では、社長の判断で交際費等を使うことが多いと思いますので、交際費の取扱いについて理解を深めて頂ければと思います。
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