ご家族が亡くなると、さまざまな相続手続きを進める必要がありますが、そのなかの1つに「相続税申告・納付」も挙げられます。
国税庁公表の「令和5年分の相続税の申告状況」によると、令和5年に亡くなられた方は157.6万人、その内相続税の課税対象となった被相続人数は15.6万人とされ、約9.9%の方が相続税の課税対象となっています。
では、もしも相続税の申告が漏れてしまった場合にはどのようなペナルティがあるでしょうか。そこで本記事では相続税の申告漏れで発生するペナルティの種類や、支払えない場合に起きるトラブルを解説します。
参考:国税庁 令和5年分 相続税の申告事績の概要
相続税の申告漏れ|ペナルティは発生する?
本来相続税を支払うべき相続人の方々が、もしも申告漏れしてしまった場合には、ペナルティは発生するのでしょうか。結論から言うと、期限内申告・納付が漏れてしまったら複数の追徴課税が発生します。本章では申告漏れの概要や、発生するペナルティの種類を解説します。
期限までに申告・納付が行われない場合発生する
相続税の申告期限は、被相続人(亡くなった方)が亡くなったことを知った日(通常は死亡日)の翌日から10ヶ月以内です。遺産分割協議が終わっていない場合でも、期限の延長は原則認められていません。この期限までに申告や納付が正しく行われないと、以下のようなペナルティが発生します。
延滞税
延滞税とは、相続税の納付が遅れたことに対して発生するペナルティです。納期限の翌日から納付が完了する日までの日数に応じて課されます。課税対象は納付が遅れた本税額です。
納期限から2ヶ月以内と、それを超える期間で税率が異なります。期間が長くなるほど、税率も高くなります。目安として、直近の令和6年・7年の延滞税率は以下です。
・納付期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで…年2.4%
・納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降…年8.7%
その他の期間の延滞税については、以下国税庁のサイトをご確認ください。
参考:国税庁 No.9205 延滞税について
無申告加算税
無申告加算税とは、正当な理由がないにもかかわらず、相続税の申告期限を守らなかった場合に課税されるものです。期限後に自主的に申告した場合と、税務調査によって申告した場合とで税率が異なります。
①申告期限後に、自主的に申告した場合は相続税額の5%を無申告加算税として追加
ただし、申告期限後1か月以内なら無申告加算税は課税されません
②税務調査の事前通知を受けた後、税務調査が実施される前に申告した場合は相続税額の10%、納付額が50万円を超える部分には15%が課税されます
③税務調査後に申告した場合は相続税額の15%、50万を超える部分は20%が課税されます。
過少申告加算税
過少申告加算税は、当初の申告が過少であり、適切な金額で申告し直す場合に課税されるものです。
ただし、申告期限から1ヶ月以内に自主的に申告し、かつ、過去5年間に無申告加算税や重加算税を課されたことがない等の要件を満たす場合は、無申告加算税は課税されません。
過少申告加算税も税率が段階的に異なります。
①税務調査の事前通知後に、調査前に修正申告を終えた時は不足税額の5%、かつ不足額のうち当初申告納税額または50万円のいずれか多い額を超える部分について10%が課税
②税務調査後に修正申告を受ける場合は、不足税額の10%、かつ不足額のうち当初申告納税額または50万円のいずれか多い額を超える部分について15%が課税
重加算税
重加算税とは、過少申告加算税が課される場合で、故意に申告を隠蔽または仮装していたなど、悪質な行為が見られた場合に課される重いペナルティです。過少申告加算税に代えて課税されます。
①期限までに申告・納税していたが故意に財産を隠すなどの行為で相続税を過少申告していた場合は相続税額の原則35%
②意図的に財産を隠すなどの行為で期限までに申告・納税をしなかった場合相続税額の原則40%
相続税のペナルティを支払えないとどうなる?
相続税を申告漏れしてしまうと、納める必要がある相続税に加えて、重いペナルティが課税されてしまいます。では、もしも相続税とそのペナルティを支払えなかった場合にはどのようなトラブルが考えられるでしょうか。
税務署に相談し物納などを検討する
相続税の納税が困難な場合、申告が遅れてしまったり税務調査が行われてしまったりする前に、早めに税務署に相談することが重要です。無断で滞納するのではなく、相談を通じて解決策を探ります。
- •延納
一定の要件を満たすことで、税金を分割して納めることが認められる場合があります。 - 物納
不動産などの相続財産をもって税金を納める物納制度もありますが、要件が厳しいため注意が必要です。
(参考:国税庁 No.4214 相続税の物納) - 換価
相続財産の一部を売却して納税資金に充てることが検討されます。
納税資金を借り入れる
ペナルティを含めた納税資金を確保するため、資金調達の方法を検討する必要があります。金融機関からの借り入れや、加入している生命保険の契約者貸付などを利用することも視野に入れましょう。
財産の差押えの可能性もある
相続税の納税が行われない場合、税務署は最終的に滞納処分を実施します。相続人の財産を差し押さえる権限を持っているため「差押え」を行うのです。
差押えの対象には、相続財産だけでなく相続人個人の預貯金口座や給与、不動産なども含まれます。こうした事態を避けるためにも、早めに納税することが重要です。
相続税の申告漏れが起きる主な原因とは
相続税の申告漏れは、意図的ではなく計算ミスや知識不足から発生することがあるため、ご家族のご逝去後はこうしたトラブルが起きないように十分に注意する必要があります。
そこで、本章では相続税の申告漏れが起きる主な原因を紹介します。
評価額が誤っていた
相続税の申告では、財産の種類に応じて複雑な評価方法を用いる必要があります。不動産や非上場株式などの評価は預貯金などよりも難しく、誤ってしまうと本来の評価額よりも低く申告してしまう可能性があります。
財産の把握漏れが起きていた
被相続人が所有していたすべての財産を把握しきれていなかったために申告漏れとなるケースも少なくありません。
かつて被相続人が暮らしていた地域の銀行口座や、家族に知らせていなかった証券口座、インターネットバンキングや暗号資産などを見落としやすいため注意が必要です。
名義預金があった
被相続人の資金で開設・管理されていたにもかかわらず、配偶者や子、孫などの名義になっている名義預金を、相続財産から除外して申告してしまうケースもあります。税務署は実質的な所有者を故人と見なし、申告漏れと指摘します。名義預金の存在にも注意しましょう。
生前贈与があった
相続開始前3年以内(法改正により段階的に7年以内に延長中)に行われた暦年課税による生前贈与を、相続財産に含めることを失念してしまうケースも見受けられます。
生前に贈与があったご家庭では、相続税申告に影響する可能性があるため慎重に過去の贈与契約書などを確認することが大切です。
その他
生命保険金や退職金などの非課税枠の計算ミス、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの適用要件の誤認、申告書作成に必要な書類の誤りや不足なども申告漏れの原因となるおそれがあります。
相続開始後は税理士に相談がおすすめ
大切なご家族のご逝去後は、相続税の申告期限前に税理士に相談することで、申告漏れのリスクを大幅に減らすことができます。
相続税に精通した税理士は、複雑な不動産の評価や、各種特例(小規模宅地等、配偶者の税額軽減など)の適用可否を正確に判断できます。これにより、最も税負担が少なくなる適切な申告額を導き出し、過少申告を防ぎます。
さらに、故人の過去の取引履歴や家族構成、生活状況などを詳細に聞き取り、名義預金や隠れた財産の有無を徹底的に洗い出します。これにより、税務署からの指摘につながる申告漏れを未然に防ぐことが可能です。
まとめ
相続税の申告漏れには、延滞税や無申告加算税、そして悪質な場合は重加算税といった厳しいペナルティが課されます。本来納めるべき税額にプラスされてしまうため、相続人にとって非常に重い負担です。こうしたトラブルが発生しないように十分に注意する必要があります。
横浜市のビジョン税理士法人は相続税のご相談に広く対応しています。納税のご不安や、安全な相続税対策についても力を入れており、生前からのご相談も可能です。まずはお気軽にご相談ください。