図解でわかりやすい!【私道の評価額の計算方法】7割減となる評価方法や特定路線価を使う評価方法を解説

私道とは

私道とは、国や都道府県、市町村などが管理する公道ではない道路のことをいいます。
公道から個人宅への通路として造られた道路や、複数の住民が利用する住宅地の生活道路などがあります。

私道が造られる理由には、生活の利便性だけでなく、建築基準法という法律が関係しています。
建築基準法には、原則、住宅などを建てる土地は道路と接していなければならないという決まりがあります。(建築基準法第43条)

そのため、たとえば広い土地を分譲して住宅を販売する時には、土地の中央などに私設の道路を設置して、すべての土地を接道させるといった措置がとられています。
私道の所有者は、住宅の所有者であることがほとんどですが、分譲住宅では住民の共有名義になっているケースや、区分して所有しているケースも見られます。

私道の評価は利用状況で変わる

私道は、それが道路として使われている状況があれば、宅地と同じように評価する必要はありません。

財産評価基本通達によれば、「私道の用に供されている宅地」は、その評価額を、宅地として評価した額の30%、つまり7割減額して評価するものとしています。
さらに、その私道を不特定多数の人が通行している場合は、評価をしなくてよいことになっています。(財産評価基本通達24)

しかし、注意しなければならないのは、私道であっても100%宅地として評価しなければならないケースもあることです。

国税庁の質疑応答事例によると、特定の宅地への通路として専用利用している路地状敷地(敷地の一部が路地のようになっているもの)については、私道ではなく宅地として評価(つまり100%で評価)するという内容の回答があります。

ここまでの話から、私道の利用状況と評価額の関係を整理すると、次のようになります。

私道の利用状況評価額
不特定多数の人が利用評価しない(=0円)
特定の人が利用宅地の30%評価
路地状敷地など特定の宅地への専用通路として利用宅地として評価(=100%評価)

一般例ですが、公道から公道への通り抜けができる私道(通り抜け道路)は
あくまで一般例ですので、現実には私道として利用している状況等を総合的に判断することが必要です。

私道の用に供されている宅地の計算例

路線価方式の場合の計算例

路線価のある区域内にある、私道の用に供されている宅地を評価する場合は、次のとおりです。

計算式(路線価方式)

路線価×奥行価格補正率など×地積×30%

次の例で、実際の評価額を見ていきましょう。

計算式(路線価方式)

水色の部分が私道です。
路線価で計算する場合は、私道が接している道路の路線価を使って評価します。

計算式

路線価10万円 × 行価格補正率0.98 × 奥行長大補正率0.92 × 180㎡ × 1/4 × 30% = 121万7,160円

「特定路線価」による計算方法

上記の方法では「路線価」を使っていますが、それ以外にも「特定路線価」を使う方法があります。
「特定路線価」とは、路線価のない道路に、税務署から設定してもらう価格のことです。(財産評価基本通達14-3)
相続税や贈与税を申告する納税者から税務署に申出を行うことで、評価したい私道の路線価を取得することができます。
特定路線価のある私道の評価は、次のとおりです。

計算式(路線価方式)

特定路線価 × 奥行価格補正率など × 地積 × 30%

計算式(路線価方式)

計算式

特定路線価8万円 × 奥行価格補正率0.98 × 奥行長大補正率0.92 × 180㎡ × 1/4 × 30% = 97万3,728円

倍率方式の場合の計算例

路線価のない区域では、倍率方式を使って宅地を評価します。
倍率方式の計算式は次のようになります。

計算式(倍率方式)

固定資産税評価額 × 倍率 × 30

国税庁「路線価図・評価倍率表」http://www.rosenka.nta.go.jp/

「固定資産税評価額」とは、固定資産税を徴収するために市町村が決める土地や建物の評価額のことです。
市町村から送られてくる課税明細書などで確認することができます。
倍率方式であっても、要件を満たせば30%評価ができますが、もしその固定資産税評価額が、私道であることを考慮して付されている場合は、私道でないものとして付された固定資産税評価額で計算します。

私道の評価を行うときの注意点

特定路線価の要件

特定路線価の取得は、税務申告先の税務署長に「特定路線価設定申出書」を提出して行います。
ただし、

  • 目的が相続税や贈与税の申告のためであること
  • 評価の対象が、路線価のない道路のみに接している土地等であること

といった条件があります。

また、路線価がそもそも設定されていない地域の私道であれば、倍率方式で計算することになるため、特定路線価を取得することはできません。

特定路線価よりも路線価の方が有利だった場合

せっかく付してもらった特定路線価よりも、路線価で計算した方が有利になる場合は、路線価で計算した評価額で申告して構いません。
納税者側で、有利な方を選択することができます。

まとめ

  • 私道の評価は、その利用状況等で減額される
  • 路線価のある地域では、私道が接する路線価と特定路線価を選べる
  • 減額できるかどうかは、慎重な判断を要する

私道の評価を減額するときの判断は、私道の利用状況や宅地との位置関係、その形状などから総合的に行われます。
30%の評価でよいのか、それとも宅地として100%の評価にしなければならないかは、非常に大きな差です。
裁判に発展するケースもあります。

私道の評価をされる方は、税理士にご相談ください。