相続税の未成年者控除とは?『18歳で成年』はどう影響する?

相続税では、遺族の生活を保障するという観点などから、いくつかの優遇策が設けられています。
相続人が未成年者である場合に相続税額から一定金額を差し引くことのできる「未成年者控除」もその一つです。

以下では、未成年者控除の概要や計算方法について確認してみましょう。

満20歳になるまでの年数で決まる!

未成年者控除の額は、対象となる未成年者が満20歳になるまでの年数に10万円を乗じて計算します。
年数を計算する際には、1年未満の期間を切り上げて計算します。

たとえば、未成年者の年齢が15歳7か月の場合は、月単位で計算すると20年-15年7か月=4年5か月となりますが、5か月は切り上げるため年数は5年となります。
したがって、未成年者控除の額は10万円×5年=50万円と計算されます。

なお、未成年者控除は税額控除であるため、遺産総額から差し引くのではなく、最終的に算定された相続税額から直接差し引きます。
つまり、未成年者控除の分だけ支払う税額が減額されます。

未成年者控除>相続税額となった場合は?

未成年者控除の額が未成年者本人の相続税額より大きくなった場合、控除額の全額を差し引けないことが考えられます。
このような場合、差し引けなかった金額をその未成年者の「扶養義務者」の相続税額から差し引くことができます。

扶養義務者というのは、配偶者、直系血族、兄弟姉妹などを指します。
たとえば、成年者である兄と未成年者である弟の計2名が法定相続人となっている場合、弟の未成年者控除のうち差し引けなかった残額がある場合、兄の相続税額から控除することができるのです。

ただし、未成年者が今回の相続以前にも未成年者控除を受けている場合は、税額控除額が制限されることがあります。

未成年者控除の対象となる人は?

未成年者控除の対象となるのは次の(1)(2)(3)のすべてを満たす人となります。

相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(※1)

ただし、日本国内に住所がない人でも次のいずれかを満たす人

  • イ:日本国籍を有しており、かつ、その人が相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある人
  • ロ:日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人(※2)
  • ハ:日本国籍を有していない人(※3)

※1:一時居住者で、かつ、被相続人が一時居住被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。
※2:被相続人が、一時居住被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。
※3:被相続人が、一時居住被相続人、非居住被相続人または非居住外国人である場合を除きます。

相続や遺贈で財産を取得したときに20歳未満である人

相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること

(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人であること)

成年年齢を18歳に引下げる民法改正との関係は?

2018年6月13日、成年年齢を18歳に引き下げる民法改正法が参院本会議で可決・成立しました。
この改正法の施行日は2022年4月1日となっています。

これに伴い、未成年者控除の対象も満20歳から満18歳になるのかどうかについては未定です。
仮に未成年者控除の対象は満20歳で据え置かれる場合には「未成年者」という表現について見直しが必要になると考えられます。

なお、現行法上、民法753条(婚姻による成年擬制)の規定により、婚姻したことで成年に達したとみなされる者でも未成年者控除の適用はあります。
また、お母さんのお腹の中にいる胎児についても、無事に生まれてきたことを条件に未成年者控除が認められます。この場合、控除額は満額の200万円となります。

近年、未成年者控除の金額や対象となる人の要件などで改正が続いていますので、最新の情報については税理士などの専門家に相談することをお勧めします。