事例別に解説!相続相談はどの専門家にするべきか?

「無料相談会」などと銘打って相続の相談会を開催しているのを見かけたことがあるかもしれません。
こうした相談会を実施している主体は士業などの専門家、金融機関、コンサルタントなど様々です。
そのため、相談内容にもっとも適した相談相手を選ぶのが重要になってきます。

今回は適切な相談相手を選ぶためのポイントをお伝えしたいと思います。

目的に合わない専門家に頼んでしまうと時間とコストの無駄にも

専門家によって得意分野がそれぞれ異なることはもちろん、法律によりできない業務もありますので、注意が必要です。
たとえば、相続税など税金に関する個別アドバイスは有料であっても無料であっても税理士以外の者が行うと税理士法違反になってしまいます。
同様に、遺産分割調停などにおける代理は弁護士以外の者にはできません。

そのため、目的に合わない専門家に相談してしまうと時間やコストが無駄になる可能性もあるのです。
以下の表は各士業が行うことのできる業務を一覧にしたものですので、相談する際の参考にしていただければと思います。

税理士弁護士司法書士行政書士
相続税対策(生前)×××
遺言書作成(生前)×
相続人・相続財産調査
金融機関での手続き
相続放棄×制限あり×
準確定申告×××
遺産分割協議書作成×
遺産分割調停×簡裁140万円以下×
相続登記××
相続税申告×××

相続税を節税したいなら税理士

生前贈与を活用したり、遺産分割の方法を変えたりすることで相続税の金額を抑えることも可能です。
こうした相続税の節税対策は税理士に依頼するのが適切です。

相続税および贈与税には、様々な特例や優遇措置が設けられています。
しかし、相続財産の状態や被相続人および相続人の状況によって適用できる特例などは異なるため、総合的な視点でアドバイスができる税理士が必要となります。
税額だけでなく、納税資金の確保まで考慮した対策が大切です。

相続が発生した場合、4か月以内に被相続人(亡くなられた方)の準確定申告をする必要があります。
準確定申告とは、1月1日から被相続人が亡くなった日までの間における所得について所得税の申告を行うものです。
準確定申告を忘れているケースや、そもそも準確定申告の存在を知らなかったというケースも聞かれますので気を付けておきたいところです。

また、相続税申告は10か月以内に行う必要があります

相続財産や相続人の調査を行い、適切な遺産分割協議を取りまとめることを考えると時間的な余裕はあまりありません。
なるべく早い段階で税理士に相談するのがおすすめです。

トラブル絡みの相続相談は弁護士

相続における紛争防止や実際にトラブルになってしまった場合の対応は弁護士に依頼することが適切です。
遺産分割協議での交渉や遺留分を侵害された場合の遺留分減殺請求などでは弁護士が強い味方になります。

  • 誰が法定相続人になるのか
  • 法定相続分や遺留分はいくらになるのか
  • 法律全般にかかわる相談
  • 相続人の債権者との権利義務関係についての相談

これらの問題に関しては、弁護士が最適といえます。

また、遺言書の作成、保管、執行などについても弁護士に依頼することが考えられます。
なお、家庭裁判所における調停の手続、相続放棄や限定承認などの申述などの代理は弁護士にしかできません。
他の士業などが行うと非弁行為とされ、刑罰の対象となりますので注意が必要です。

特に相続放棄や限定承認などの手続は相続発生から3か月以内に行う必要があるため、やはり早い段階で弁護士に相談するのがおすすめです。

相続登記なら司法書士

不動産などの相続登記に関する相談や登記申請の代理は司法書士に依頼するのが適切です。
また、遺言書の作成、保管、執行も法律専門家としての司法書士に依頼することが考えられます。

法務大臣から認定を受けた司法書士(認定司法書士)は、簡易裁判所における債権額140万円以下の訴訟や和解案件を扱うことができます。
しかし、相続に関連する遺産分割や相続放棄などの手続は簡易裁判所ではなく家庭裁判所の管轄であるため、認定司法書士には代理権限がありません。
ただし、司法書士に関連する書類作成などを依頼することは可能です。

報酬や料金の相場はどのくらい?

現在では各士業団体が定める報酬や料金の規定表などがないため、基本的には自由に設定されています。
おおよその相場を示すと以下のようになりますが、個別の事情により価格は異なりますので、あくまで目安と考えるのが良いでしょう。

下記業務のうち、相続税の申告業務は、多くの調査項目や検討事項が含まれ、申告書作成とともに申告の代理も伴うため、比較的高額な報酬となります。
最初に着手金を受領して、遺産総額に対する一定率で算定された報酬を相続税申告後に受け取るという形態も一般的です。

なお、遺産分割協議書の作成や不動産の相続登記に関しては、相続財産が多数存在する場合にはそれに応じて報酬や料金が増えることが想定されます。
これは他の業務についても同様に考えることができます。

また、下記の表にはありませんが、遺産分割協議が調わない場合に家庭裁判所での調停や審判の手続に進んだり、訴訟に発展したりした際には弁護士費用が発生することも考えられます。

報酬や料金の相場
相続の全過程でかかる費用が丸わかり!どんな専門家に、どのくらいかかるの?【参考:日経新聞】

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弁護士、司法書士、土地家屋調査士などのネットワークを持つ税理士に頼むメリット

以上のように、相続には様々な専門業務が付随しますので1人の専門家がすべての業務を行うことは困難です。
かといって、相続人がそれぞれの専門家を探し出して、個別に業務の依頼をするのも大変な作業です。
そのため、士業のネットワークを持っており、ワンストップで相談を受け付けてもらえる窓口となる専門家を見つけるのが良いでしょう。

相続税や贈与税など税金に関する相談が含まれる場合は、税理士の関与が不可欠といえます。
そのため、弁護士、司法書士、土地家屋調査士などのネットワークを持つ税理士が、最適といえるのです。

当事務所は、各士業とも厚い信頼のもと、繋がっています。ぜひ安心してお任せください。

一方、士業ではないのに「相続コンサルタント」や「相続プランナー」などを称する者は、そもそも相続税に関するアドバイスを行ったり、報酬を得て法律に関する業務を行ったりすることはできません。

結局は士業に仕事を流してマージンだけを取る場合もあります。
特にこれらの者に相談する積極的な理由がないのであれば、最初から士業に相談するのが得策です。