上場・非上場株式と相続・贈与時の評価方法を解説!

相続税や贈与税で株式の評価額を算出する際は、上場株式と非上場株式で評価方法が異なります。
また相続・贈与の内容よって評価方法が変わるケースもありますので、上場・非上場株式と各評価方法について解説します。

相続税と贈与税の課税時期

相続や贈与が発生した場合、各課税時期の株式評価額を計算します。
相続税は人が亡くなった際に課される税金なので、課税時期は被相続人(亡くなった人)の死亡日です。
贈与税は財産を無償で渡した際に課される税金であり、課税時期は贈与財産の取得日です。

上場株式と非上場会社の評価方法の違い

上場株式と非上場株式の評価額の算出方法は、全く異なります。
上場株式の評価額は簡単に算出できる一方で、非上場株式の評価額を計算する場合は専門知識が必要です。

上場株式は課税時期の最終価格

上場株式は、東京証券取引所などの金融商品取引所で売買されている株式をいいます。
上場株式の評価額は、公表されている数字をそのまま用いるため、納税者が株価を計算することはありません。
相続税や贈与税で使用する上場株式の評価額は、原則として課税時期の最終価格を用います。
ただし次に掲げる月中平均の金額が課税時期の最終価格より低い場合、その中で最も低い価額を評価額とします。

  • 課税時期の月の月中平均
  • 課税時期の前月の月中平均
  • 課税時期の前々月の月中平均

なお負担付き贈与や個人間売買により取得した上場株式の価額は、課税時期の最終価格を評価額とし、月中平均を評価額に用いることはできません。
課税時期の株価は、インターネットでも検索できますし、上場株式を預けている証券会社に問い合わせして確認することも可能です。

非上場会社は、課税時期の株価を計算

非上場株式は取引相場のない株式をいい、「未公開株式」と呼称することもあります。
非上場株式は市場で取引されていない株式なので、上場株式のように株価は公表されていないため、評価会社の資産などから評価額を計算しなければなりません。
非上場株式を評価する場合、最初に株式を取得した人ごとに、同族株主の判定を行います。

株式を取得した人が同族株主であれば原則的評価方法、同族株主以外の株主に該当する場合は特例的評価方法を用いて評価額を算出します。

原則的評価方法は、評価会社の事業規模によって評価方法は異なり、大会社なら類似業種比準方式、小会社なら純資産価額方式を使用します。
(中会社の評価方法は、類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式です。)

類似業種比準方式とは、評価会社と同業種の上場会社の「配当」・「利益」・「資産」・「株価」の4要素を比準させ、評価額を算出する方法です。
純資産価額方式は、評価会社の正の財産と負の財産から評価額を算出します。
特例的評価方法とは、配当還元方式のことをいい、評価会社の配当金額から評価額を計算する方式です。

法人に株式を贈与はみなし譲渡所得の対象

個人から個人へ株式を贈与した場合、もらった人が株式評価額を算出し、贈与税の手続きを行います。
しかし法人に対して株式を贈与する場合はみなし譲渡に該当し、株式を渡した個人が譲渡所得の対象となります。

みなし譲渡は、法人に譲渡所得の対象となる財産(不動産や株式等)を贈与した場合や時価の半額未満で譲渡した際、時価で資産を売却したとみなす規定です。
(限定承認による相続もみなし譲渡の対象です。)

譲渡所得は資産の値上がり益に対して課される税金で、所有者が資産を手放した時点で値上がり益を精算します。
個人から個人への贈与や相続の際は、新たに財産を取得する人が地位を引き継ぐため、その時点で譲渡所得は課されません。
しかし法人へ贈与した場合は、譲渡所得を課すタイミングが失われるため、法人へ贈与したタイミングで譲渡所得を課すことになっています。
なおみなし譲渡に該当しても、譲渡価額よりも譲渡資産を購入した金額が大きければ、譲渡所得税は発生しません。
ただみなし譲渡に対する赤字はゼロとして扱うため、損益通算はできませんのでご注意ください。

上場株式をみなし譲渡の金額は課税時期の最終価格

譲渡所得は、通常売却した金額を譲渡価額としますが、みなし譲渡は実際に資産を売却しているわけではありませんので、時価を譲渡価額とします。
時価は市場で取引されている金額を指し、上場株式のみなし譲渡の時価は、課税時期の最終価格です。
なお相続税や贈与税で使用する際の評価額とは異なり、当月・前月・前々月の月中平均を用いることはできません。

非上場株式のみなし譲渡価額を算出する際の注意点

非上場株式のみなし譲渡価額を計算する場合、相続税・贈与税の際で使用する評価方法とは3つ異なる点があります。

  • 議決権の判定時期
  • 中心的な同族株主の扱い
  • 純資産価額方式による法人税等相当額の扱い

同族会社の判定は贈与直前の議決権で判断

相続税や贈与税の計算においては、該当株式を取得した後の議決権数で判定しますが、みなし譲渡の際は、贈与直前時点の議決権数で判定します。

中心的な同族株主に該当する際の評価方法

株式を贈与した個人が「中心的な同族株主」に該当する際は、評価会社の規模にかかわらず、小会社に該当するものとして計算を行います。
小会社は、原則として純資産価額方式を用います。
ただし納税者の選択により、類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式を用いて評価することも可能です。

小会社の評価方法併用の計算式

類似業種比準価額×0.5+1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)×(1-0.5)

評価差額に対する法人税等は控除しない

純資産価額方式で非上場株式を評価する際は、通常、評価差額に対する法人税額等に相当する金額を差し引きます。

純資産価額方式の計算式

しかしみなし譲渡の価額を計算する際は、法人税額等に相当する金額を控除しません。
またみなし譲渡では、評価会社が保有する土地・株式等を課税時期の時価に洗い替えします。

まとめ

上場株式を負担付き贈与する際は、月中平均の株価を用いることはできません。
非上場株式については、相続税と贈与税で計算方法に大きな違いはないです。
法人へ贈与する場合はみなし譲渡に該当し、株式を渡した個人が譲渡所得の計算をすることになります。
非上場株式のみなし譲渡は、相続税・贈与税の計算方法と異なる点があり、評価誤りが起こりやすいポイントです。

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