株式に関する権利の相続税評価額の計算方法

相続財産に株式がある場合、「上場株式」や「取引相場のない株式(非上場株式)」など、株式の取引形態によって評価額の算出方法は異なります。
また株式に関する権利についても相続財産ですので、評価額を計算しなければなりません。

本記事では株式に関する権利のうち、「配当期待権」・「株式無償交付期待権」・「株式の割当てを受ける権利」・「株主となる権利」の評価方法について解説します。

配当期待権の相続税評価額

配当期待権は、配当金交付の基準日の翌日から、配当金の支払効力が発生する日までの期間に配当金を受け取ることができる権利です。

配当期待権の評価方法

配当期待権の評価額は、課税時期後に受け取ると見込まれる予想配当の金額から、源泉徴収される所得税等の額に相当する金額を控除した金額です。

源泉徴収される所得税等相当額には、特別徴収される都道府県民税に相当する額も含まれます。

配当期待権の計算式

配当期待権=予想配当金額-源泉徴収される所得税等相当額

源泉徴収される所得税等相当額

配当の種類税率
上場株式の配当20.315%
・所得税15%
・復興特別所得税0.315%
・住民税5%
非上場株式の配当20.42%
・所得税20%
・復興特別所得税0.42%
※復興特別所得税は所得税に2.1%の税率を乗じた割合です。

配当期待権が生じている場合における株価の修正

課税時期に配当期待権が発生している場合、配当期待権自体が評価対象となります。

配当期待権の基となる非上場会社の株式を評価する際に、原則的評価方法(類似業種比準方式・純資産価額方式)を用いる場合は、二重課税にならないように株価の修正が必要です。

なお例外的評価方法(配当還元方式)により株価を算出する際は、株価の修正は行いません。

配当期待権の発生している株式の計算式

配当期待権の価額と株価修正の計算例

事例1

  • 1株あたりの株価 2,000円
  • 1株あたりの予想配当金額 50円
  • 配当金額に対する源泉徴収税額 20.42%
① 配当期待権の価額

50円×(1-20.42%)=39円79銭

② 配当期待権が発生している場合の株価の修正

2,000円-50円=1,950円

株式の割当てを受ける権利の相続税評価額

株式の割当てを受ける権利とは、会社が増資などにより株式を発行する場合において、株式の割当基準日の翌日から、株式の割当ての日までの期間に株式の割当てを受ける権利をいいます。

主な株式の割当てを受ける権利の種類

  • 株主割当増資
  • 第三者割当増資
  • 公募増資

株式の割当てを受ける権利の評価方法

株式の割当てを受ける権利の評価額は、割当てを受ける権利の発生している株式について、評価通達の定めにより算出した価額から、割当てを受けた株式1株につき払い込むべき金額を控除した金額です。

評価通達の定めにより評価した価額は、配当期待権または株式の割当てを受ける権利等による修正を行った後の価額をいいます。

株式の割当てを受ける権利の評価額の計算式

株式の割当てを受ける権利が生じていることによる株価の修正

原則的評価方法を用いて非上場株式の評価額を算出する時、株式の割当てを受ける権利が生じている場合は、配当期待権が発生している際と同様に株価の修正が必要です。

株式の割当てを受ける権利が生じている株式の評価額の計算式

株式の割当てを受ける権利と株価修正の計算例

事例2

  • 原則的評価方式による1株あたりの評価額 960円
  • 株式の割当条件 1株に対して0.5株
  • 割当ての株式1株に対する払込金額 480円
①株式の割当てを受ける権利があることによる株価の修正

(960円+480円×0.5株)÷(1株+0.5株)=800円

②株式の割当てを受ける権利の価額

800円-480円=320円

株式無償交付期待権の相続税評価額

株式無償交付期待権は、株式の無償交付の基準日の翌日から、株式無償交付の効力が発生するまでの期間における株式無償交付を受ける権利をいいます。

株式無償交付期待権の評価方法

株式無償交付期待権の評価額は、株式無償交付期待権の発生している株式の評価額に相当する金額を評価額とします。

そのため原則的評価方法による評価額と、株式無償交付期待権の評価額は同じになります。

株式無償交付期待権が生じていることによる株価の修正

原則的評価方式により評価会社の株式を算出する際は、配当期待権が発生している際と同様、株式無償交付期待権が生じていることによる株価の修正が必要です。
修正を行うのは、原則的評価方法により株価を算出した場合であり、例外的評価方法により株価を評価した際は修正を要しません。

株式無償交付期待権が生じている株式の評価額

 

株式無償交付期待権の計算例

事例3

  • 原則的評価方式による1株あたりの評価額 750円
  • 株式の無償交付割合 1株につき0.5株
① 株式無償交付期待権があることによる株価の修正

(750円+0円×0.5株)÷(1株+0.5株)=500円
※無償交付なので、払込金額は0円です。

②株式無償交付期待権の評価額

500円
⇒株式の評価額に相当する金額を、株式無償交付期待権の評価額とします。

株主となる権利の相続税評価額

株主になる権利とは、株式の申し込みに対して割り当てがあった日の翌日から、会社の設立登記の前日までの間にいおける株式の引き受けに関する権利をいいます。

株主となる権利の評価方法

会社設立の場合の株主となる権利の価額は、課税時期以前にその株式1株につき払い込んだ金額によって評価します。

株式の割当てがあった場合の評価方法

会社設立後、株式の割当てがあった場合における株主となる権利の価額は、その株主となる権利の発生している株式について、評価通達の定めにより算出した評価額です。

ただし課税時期の翌日以後に、その株主となる権利につき払い込むべき金額がある場合には、その株式の割当ての基となった株式の価額から、割当てを受けた株式1株につき払い込む金額を控除した金額を評価額とします。

非上場株式を有している場合は評価誤りに注意

相続税は、亡くなった人の所有していた財産すべてが対象となるため、本記事で解説した株式に関する権利など、特殊な財産も評価額を算出しなければなりません。
非上場株式の相続税評価額の計算においては、株式に関する権利を加味しなければならないケースもあるため、評価額の算出が一段と難しくなります。
相続税は税務調査を受けやすい税金なので、相続財産に非上場株式や株式に関する権利がある場合には、税理士へ依頼することをオススメします。

相続に関するご相談がありましたら、ビジョン税理士法人にお気軽にお問い合わせください。