遺産分割協議書 文例集を使って自分で作る方法

相続人の間で遺産分割協議が行われた場合、その内容を遺産分割協議書という形で文書に残すことになります。
こうした遺産分割協議書を作成する際には、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。

今回は遺産分割協議書の概要や作成方法について解説したいと思います。

ご注意

記事は、2019年4月における法令等に基づき解説されています。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認して下さい。

遺産分割協議書とは?

遺産の分割は、遺言が作成されている場合にはそれに従うことになります。
しかし、遺言が作成されていない場合には相続人間で遺産分割協議を行う必要があります。

遺産分割協議書は、相続財産の分割に関して協議した結果を文書化したものであり、後日において「そんな分割は同意していない」や「あの財産が欲しかった」などの紛争を避けるために有用なものです。

また、不動産登記や各種名義変更における必要書類ともなりますので、実務上は作成が必須のものとなります。

遺産分割協議には共同相続人の全員が参加しなければなりません。
相続人が未成年の場合には代理人が協議に参加することになります。
そのため、遺産分割協議書には共同相続人全員の署名と押印がなされます。

もし、遺産分割協議に参加していない相続人がいると遺産分割協議書の効力にも影響しますので漏れがないように注意を要します。

遺産分割協議書の作成に必要なものは?

すべての相続人を特定するためにも、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍を調査することが重要となります。
具体的には、戸籍(謄本)、改製原戸籍(謄本)、除籍(謄本)がこれにあたります。
相続人についても氏名や住所を正確に記載するために戸籍謄本や住民票などが必要となります。

戸籍謄本

戸籍の全部の写しです。
氏名、出生の年月日、戸籍に入った原因及び年月日、実父母の氏名及び実父母との続柄、養子の場合には養親の氏名及び養親との続柄、婚姻暦などが記載されています。

改製原戸籍

現在の戸籍より古い戸籍です。
日本には、戸籍法があり、法律の改正等により戸籍の記載内容が変わってしまいます。
現在の戸籍には記載されていない事項等が記載されています。

除籍

本人が亡くなったことなどで、戸籍に在籍している人が誰もいなくなった状態を証する書類です。
死亡のほか、結婚、離婚、転籍などにより、戸籍に誰もいなくなった場合の戸籍です。

相続財産については遺産分割を行う前提として財産目録に漏れなくリストアップすることが重要です。
また、不動産や預金などを特定するためには登記事項証明書や預金番号などの情報が必要となります。

遺産分割の対象になるものとは?

民法896条によると、相続人は相続開始のときから被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するとされています。
ただし、被相続人の一身に専属したものは含まれません。

一身に専属するものとは、たとえば、親権、扶養義務、雇用関係など、その性質上被相続人に固有の権利や義務を指します。
そのため、不動産や預貯金など基本的にはほぼすべての財産が遺産分割の対象になると考えればよいでしょう。

財産によっては相続の範囲に含まれるものの、遺産分割の対象となるかどうかについては争いのあるものもあります。
ただし、そうした財産も遺産分割協議書に含めて明示しておく方が網羅性の点からは望ましいといえます。

預貯金や不動産の名義変更などに遺産分割協議書の提出が求められたりしますので、協議後の相続手続きをスムーズに行うために、もれなく記載した方が良いです。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書には法定の様式がある訳ではありません。
また、手書きである必要もないため、PCなどを使って作成することができます。

以下では一般的な作成のポイントを紹介します。

  • 表題は「遺産分割協議書」とします。
  • 被相続人と相続人を明記した上で協議の概要を記載します。

被相続人○○○○(平成X年X月X日死亡)の相続財産について、相続人である妻○○○○、長男○○○○、長女○○○○の3名は協議を行い、次のとおり分割することに同意した。

相続財産ごとに相続する人と財産の内容を記載します。

第1条(土地、建物)

下記の土地および建物は相続人○○○○が取得する。

土地
  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積
  • 建物
  • 所在
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

第2条(預金)

下記の預金は相続人○○○○が取得する。
○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○

第3条(その他)

ここに記載されていない相続財産および後日判明した遺産については相続人○○○○が取得する。

遺産分割協議書の部数などを記載します。

以上の通り、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本書を3通作成し、全相続人が署名押印の上、各自1通ずつ所持する。

作成年月日、押印など

作成年月日を付し、相続人全員が住所を記載の上署名押印(実印)します。
また、後日、軽微な修正などを行う際、改めて文書の作成や相続人全員の合意が必要とならないように各人の捨印をしておきます。

遺産分割協議書が複数枚になった場合

遺産分割協議書が複数のページにわたる場合には各ページのつなぎ目に各人の契印を押しておきます。

以上のように、遺産分割協議書は自分で作成することも可能です。

ただし、内容に誤りがあるとトラブルの原因にもなりかねません。
遺産分割協議において、借入金などがある場合で相続放棄をご検討する際にも相続開始日から3カ月以内に対応しなければならないなど相続手続には期限が定められているものが多いためスケジュール管理が重要です。

不安がある場合には、専門家のサポートを受けながら遺産分割協議を進めることをおすすめします。
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