相続は人生の中で何度も経験するものではありません。
そのため、専門家に相続に関する業務を依頼するにも「どの程度の費用がかかるだろう」と不安に思うことがあるでしょう。
また、「どのような専門家に依頼するのが適切なのか、よくわからない」という方がいらっしゃるかもしれません。
そこで以下では専門家に依頼した場合の手数料の相場や専門家の選び方についてお話したいと思います。
税理士の手数料の相場は?
たとえば、税理士と顧問契約を結んで所得税や法人税などの税務申告を依頼するような場合には、月額の顧問料や記帳代行料がいくら、年度の決算料がいくらという形で報酬を決めることが多いといえます。
これに対して、相続税の申告は基本的に単発のお仕事です。
また、案件によって相続財産の総額やそこに含まれる資産の種類などが大きく異なります。
そのため、税理士報酬の額も相続財産の金額や不動産の評価作業にかかる手間などを勘案して個別に決定されます。
このように、相続にかかる業務は個別性が高く、税理士事務所によっても報酬体系が異なりますので、手数料の相場を一概に示すことは本来難しいものです。
それでも、あえて参考として目安を示すと、相続財産の0.5%から1.0%という数値を挙げることができます。たとえば、相続財産が1億円の場合には報酬の額が50万円から100万円になるというイメージです。
どの税理士に依頼した方が良いの?
ある程度の相場があるとは言え、税理士事務所によって報酬に差があるのも事実です。
ただし、単純に価格だけを比較して税理士事務所を選べばよいというものでもありません。
実は、通常の所得税や法人税などの税務申告とは違って、相続税案件については経験が乏しいという税理士は意外と多いのです。
中には相続税の案件を積極的には受けていないという税理士事務所もあります。
つまり、報酬が高いか安いかだけでなく、相続税に関する業務を積極的に行っている事務所かどうか、また、経験豊富な人員を有している事務所かどうかを基準にすることをおすすめします。
司法書士や弁護士など費用は?
相続では、税理士に相続税申告などを依頼するだけでなく、他の専門家に業務を依頼することもあります。
たとえば、相続財産に土地や建物が含まれている場合、相続登記などの業務を司法書士に依頼することが考えられます。
また、遺産分割などでモメそうな場合には弁護士に依頼することもあるでしょう。
このような専門家の費用はどの程度かかるのかを以下にまとめました。
司法書士
相続で司法書士に依頼する事項といえば、不動産に関する登記が中心となります。
不動産にかかる登記は登記原因や不動産の評価額によって、必要となる登録免許税が変わります。
こうした登録免許税や経費などに加えて、司法書士自体に支払う報酬が必要となりますが、一般に5万円程度以上かかると考えておくと良いでしょう。
弁護士
遺産分割などにおいて相続人間でモメたり、トラブルになった場合には弁護士の活用が考えられます。
また、相続の過程で裁判所の調停や審判が必要となったときに代理人を雇いたいという場合には弁護士に依頼することになります。
業務の種類によっても異なりますが、弁護士への報酬は経済的利益の10%前後が一つの目安となります。
もちろん、経済的利益の大小や業務の複雑性などによっても着手金や報酬率に差異が出るため、まずは無料相談などを利用して費用についても確認することをおすすめします。
行政書士
将来の相続に備えて「遺言」を準備する場合や相続人間での遺産分割協議の結果を「遺産分割協議書」に取りまとめる場合、相続を専門にしている行政書士に文書作成を依頼することが考えられます。
これも依頼内容や行政書士事務所によって違いがあるものの、一般に5万円程度以上の費用がかかると考えておくと良いでしょう。
金融機関
相続に備えて財産を信託することもあります。
信託には、親類などに資産管理を委託する「民事信託」のほか、信託銀行に報酬を支払って資産管理を委託する場合が考えられます。
信託銀行が提供するサービス内容にも様々なものがありますが、たとえば、信託報酬については財産評価額の1%以上が目安となります。
ただし、財産評価額に対する報酬率だけで費用が定まるだけでなく、100万円程度の最低報酬が設定されているのが一般的です。
また、金融機関への報酬に加えて、別途、弁護士費用などが必要となる場合もあります。
専門家によって独占業務が異なる
「遺言」や「遺産分割協議書」の作成は、法律上必ずしも行政書士でないと実施できないような独占業務ではありません。
そのため、他の専門家に依頼することも考えられます。
これに対して、たとえば、相続税申告は税理士の独占業務となっているため、他の専門家に依頼することはできません。
そのため、税理士事務所を相続に関する最初の相談窓口と考え、必要に応じて他の専門家を紹介してもらうなどの方法も検討してみてはいかがでしょうか。
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