相続財産の中では、評価方法が複雑な土地や自社株式の解説に多くのページが割かれがちですが、それ以外の建物、上場株式、家財道具などにもそれぞれ注意すべきポイントがあります。
今回はそうした資産の評価方法をまとめてお伝えしたいと思います。
建物
建物の評価の基本
建物は基本的に固定資産税評価額がそのまま相続財産の評価額になります。
固定資産税評価額は市区町村役場(東京23区の場合は都税事務所)の固定資産課税台帳で確認することができます。
また、毎年、固定資産税の納付書が送付されていますので、定期的に相続税評価額を把握しておくとよいでしょう。
附属設備その他の資産
電気やガスなどの附属設備は建物の評価に含めて考えますが、庭木や庭石、門扉や塀は独立して評価されます。
庭木や庭石については再調達価額の70%、門扉や塀は再調達価額から経年による減価を差し引いた額の70%となります。
なお、建築中の建物は建築費用の70%で評価を行います。
貸家の評価
賃貸している建物については、自用家屋としての評価(つまり固定資産税評価額)から借家権割合を控除したものになります。
借家権割合は基本的に30%と決まっていますので、貸家の評価は下記のような計算式で計算されます。
貸家の評価額=自用家屋の評価額(固定資産税評価額)×(1-借家権割合)
仮に自用家屋として使用している部分と貸家として使用している部分が混在している建物であれば、使用されている床面積などを基準に「賃貸割合」を算出して貸家部分の評価額を求めます。
貸家部分の評価額=自用家屋の評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
上場株式
上場株式には取引相場があるため、相続時の終値で評価するのが原則です。
ただし、たまたま相続発生時の終値が高騰しているケースなども考えられるため、次の4つの価格のうち一番低い価格を選択できるようになっています。
- 課税時期(相続発生時)が属する月の前々月の終値の平均値
- 課税時期(相続発生時)が属する月の前月の終値の平均値
- 課税時期(相続発生時)が属する月の終値の平均値
- 課税時期(相続発生時)の終値
家庭用財産、美術品、ゴルフ会員権など
一般動産の評価方法は?
自動車、家具、電化製品などの一般動産については「売買実例価額」をもとに評価するのが原則です。
売買実例価額とは、市場で実際に売買されている価額を指します。
たとえば、自動車であれば中古車市場である程度客観的な相場が観察できます。
車種と年式、自動車の状態などから、中古車の実際取引価額を参考に相続税評価額を算定します。
それ以外の動産で1個または1組の価格が5万円以下の資産については「家財道具一式」としてまとめて評価することが可能です。
美術品や骨董品、宝石や貴金属
美術品や骨董品では、売買実例価額が容易にわからないものがあります。
その場合には「精通者意見価格」を参考にします。
精通者意見価格というのは専門家による鑑定評価のことを指します。
宝石や貴金属については基本的に一般動産と同様に売買実例価額によりますが、特に高価なものについては鑑定評価が必要となるものもあるでしょう。
ただし、金やプラチナの地金には取引相場が存在しますので相続発生時の取引相場を参照することになります。
会員権その他の権利
特許権、実用新案権、商標権、著作権などの権利はそれぞれ定められた算定方法で評価額を求めます。
ゴルフ会員権については取引価格の70%で評価します。
ただし、取引価格のないゴルフ会員権では株式部分と預託金部分に分けて評価を行います。
この場合、株式部分は株式の評価方法に従い、預託金はその金額がそのまま評価額となります。