私道に小規模宅地等の特例は適用できるか?評価方法のポイントを解説!

相続税は亡くなった人の相続財産すべてが対象であり、私道も相続税の対象財産です。
私道の相続税評価額は、一般的な土地よりも低いです。ただ私道の評価補正計算を行わず自用地評価のまま申告してしまうと、過大に相続税を支払うことになります。
また小規模宅地等の特例は私道にも適用可能ですが、適用する際の注意点もあるため、今回は私道の評価方法と小規模宅地等の特例を適用する際のポイントを解説します。

私道の相続税評価額の計算方法

土地が路線価地域にある場合、路線価の金額に土地の面積を乗じて相続税評価額を算出します。
私道の評価額の計算方法も途中までは一般の土地と同じです。
ただ私道ならではの減額補正処理が必要になりますので、ご注意ください。

私道は自用地の評価額に30%補正を乗じる

相続税評価額は、実際の土地の用途によって補正計算を行います。
たとえば貸付地として利用している土地は、借地権割合を除いた金額が相続税評価額です。
私道の場合、土地を道路として利用しているため、自宅用の敷地や貸付地などの用途に変更することは難しいです。
そのため袋小路の私道を、居住している人々の通行用として利用している場合、私道補正として自用地評価額に30%補正を乗じた金額が相続税評価額となります。

私道評価の計算例

10万円(路線価)×10㎡(私道面積)=100万円
100万円×30%=30万円⇒私道の相続税評価額

通り抜けできる私道は評価しない

基本的に所有している土地は、所有者の意思によって土地を自由に使用・処分できます。
しかし通り抜けできる道路は、不特定多数の人が利用しているため、所有者が土地を自由に使用・処分できません。
そのため不特定多数の人が利用するような公共性の高い私道は、相続税評価額ゼロとします。
なお先ほどご説明した袋小路の道路など、特定の人の通行用として利用している私道は、土地の用途制限はありますが、他の所有者に土地を売却することは可能です。
したがって同じ私道であっても、自用地評価の30%相当は相続税の課税対象となります。

私道の相続税評価額を計算する際の注意点

私道の相続税評価額は自用地よりも低くなりますが、私道でも私道評価されないケースもありますのでご注意ください。

自宅と一体利用している私道は自用地評価

私道を複数人で所有し、各所有者の自宅用通路として使用している場合は、私道補正の計算を行います。
しかし隣接する土地の専用通路として利用している路地状の私道は、私道評価を行わず、隣接する土地と一体評価をします。
そのため私道として利用している場合でも、自用地評価として相続税が課税されることもあるため、注意が必要です。

倍率地域の私道評価

路線価地域の土地は路線価に面積を乗じますが、倍率地域の土地は固定資産税評価額に国税庁が各地域に指定した倍率を乗じます。
固定資産税評価額が私道であることを考慮した金額の場合、最初に土地が私道ではない時に付される固定資産税評価額に倍率を乗じます。
そして算出された金額に対し、30%の私道補正を乗じたのが私道の相続税評価額です。
なお固定資産税評価額が付されている私道でも、その私道が不特定多数の人の通行用として使われている場合は、相続税評価額はゼロです。
逆に私道の地目が公衆用道路など、固定資産税評価額が非課税の土地であっても、特定の人の通行用として利用されている土地は、私道の相続税評価額を算出しなければなりません。

特定路線価を設定した私道の評価

路線価地域の土地で、接している道路に路線価が設定されていない場合、税務署に特定路線価の申請を行い、個別に路線価を設定します。
特定路線価が設定された場合、特定路線価に接している土地はその路線価を用いて相続税評価額を算出しますが、特定路線価の申請は私道にも設定できるケースもあります。
しかし私道に特定路線価が設定された場合でも、私道の相続税評価額の計算で使用する路線価は、私道に設定された特定路線価ではなく、私道に接している路線価です。

私道に対しても小規模宅地等の特例は適用可能

小規模宅地等の特例には4種類の制度があり、いずれかの制度の要件を満たせば特例を適用できます。
私道も自用地や貸付地と同様、小規模宅地等の特例の適用要件を満たせば特例を受けられます。
たとえば自宅の敷地の維持・効用を果たす私道は、特定居住用宅地等の対象であり、私道を共有で所有している場合でも、小規模宅地等の特例は適用可能です。

小規模宅地等の特例の種類と特徴

種類特定事業用
宅地等
特定事業用
宅地等
特定同族会社
事業用宅地等
貸付事業用
宅地等
減額割合80%80%80%50%
限度面積 330㎡400㎡400㎡200㎡

私道に小規模宅地等の特例を適用する際の注意点

小規模宅地等の特例は、適用する制度によって減額割合や限度面積は異なりますが、土地単価の高い土地から特例を適用するのが基本です。
私道の相続税評価額は、自用地の30%しかありませんので、時価相場が同程度の土地を複数保有していた場合、自用地評価している土地に対し特例を適用するとより高い節税効果が期待できます。
なお路線価の金額は高くても、貸付地補正など減額補正をしている土地は、1㎡当たりの単価が下がります。
そのため小規模宅地等の特例を複数の土地に適用する際は、1㎡当たりの減額割合が高い土地から順番に特例を適用してください。

土地の相続税評価額の計算は相続税専門の税理士に相談すること

私道を含め、土地の相続税評価額の計算は難しく、相続税を専門としていない税理士だと最適な土地評価を算出できない可能性もあります。
また小規模宅地等の特例は、適用できるか否かで評価額は数百万円、数千万円も減額になるため、特例の適否判定は重要となります。

相続についての疑問・ご不明点がありましたら、お気軽にご相談ください。