特定評価会社に該当するケースと評価方法を解説

非上場株式の評価額は、株式を取得する人が同族株主等に該当するか否かで、評価方法が変わります。
また評価対象となる会社の経営状態が正常とは異なる場合、個別的に評価方法が指定されていますので注意が必要です。
今回は特定評価会社の種類と、個々の評価方法についてご説明します。

特定評価会社とは

特定評価会社とは、不動産や株式など特定の資産を多く所有している場合や、開業前や開業直後、休業中といった一般的な経営活動を行っていない会社です。
通常、大会社に分類される会社の株式は、類似業種比準方式により評価額を計算します。
しかし特定評価会社に該当した場合、類似業種比準方式を用いての評価はできません。
また特定評価会社は6種類に分類され、同族株主等以外の株主が株式を取得した際、配当還元方式による評価ができないケースもあります。

特定評価会社の種類と取得者別の評価方法
特定評価会社の種類同族株主等が株式を取得同族株主等以外の株主が株式を取得
比準要素数1の会社原則:純資産価額方式例外:併用方式 配当還元方式
株式等保有特定会社原則:純資産価額方式例外:S1+S2方式 配当還元方式
土地保有特定会社純資産価額方式配当還元方式
開業後3年未満の会社純資産価額方式配当還元方式
開業前・休業中の会社純資産価額方式純資産価額方式
清算中の会社原則:見込分配金 例外:純資産価額方式 原則:見込分配金例外:純資産価額方式

比準要素数1の会社の評価方法

『比準要素数1の会社』は、「配当金額」・「利益金額」・「純資産価額」の3要素のうちいずれか2つが0、かつ、直前々期末を基準にして計算した3要素のうち、いずれか2つ以上が0の評価会社をいいます。
比準要素数1の会社に該当した場合、原則として純資産価額方式により計算します。
(議決権割合が50%以下のグループに属している場合は、算出された金額の80%が評価額です。)
ただし納税者の選択により、類似業種比準方式と純資産価額方式を併用して計算することも可能です。

併用方式の計算式

類似業種比準方式×25%+純資産価額方式×75%=比準要素数1の会社の評価額

なお同族株主等以外の株主が株式を取得した際は、配当還元方式により評価額を算出します。

株式等保有特定会社の評価方法

『株式等保有特定会社』は、課税時期において評価会社の資産のうち、株式等の価額が全体の50%以上である会社をいいます。
株式等保有特定会社に該当した場合の評価方法は、原則純資産価額方式ですが、「S1+S2方式」により評価額を算出することも可能です。
「S1+S2方式」は、総資産を株式等(S2)と、それ以外の資産(S1)に区分して計算する方法です。
「S1」の価額は原則的評価方法で評価するため、会社の規模によって類似業種比準方式と純資産価額方式のどちらの方式を使用するかは変わります。
「S2」については、純資産価額方式により計算し、「S1」と「S2」の合計が株式等保有特定会社の評価額です。
なお同族株主等以外の株主が株式を取得した際は、配当還元方式により評価額を算出します。

土地保有特定会社の評価方法

『土地保有特定会社』は、課課税時期において評価会社の資産のうち、土地等の価額が一定割合以上ある会社をいいます。
保有割合は、直前期末の総資産価額(帳簿価額)および評価会社の業種によって異なります。

土地保有特定会社の対象となる土地保有率の割合
土地保有割合卸売業小売・サービス業小売・サービス業
70%20億円10億円以上10億円以上
90%7,000万円以上 20億円未満 4,000万円以上 10億円未満 5,000万円以上 10億円未満
対象外7,000万円未満4,000万円未満5,000万円未満

土地保有特定会社に該当した場合の評価方法は、純資産価額方式です。
土地保有特定会社は、株式保有特定会社とは異なり、他に選択できる評価方法はありません。
また同族株主等以外の株主が取得した際は、配当還元方式により評価額を算出します。

開業後3年未満の会社の評価方法

『開業後3年未満の会社』は、課税時期において開業から3年を経過していない会社です。
「開業」は、会社を設立したことではなく、評価会社が事業活動を開始し、収益が得られる状態をいいます。
会社を設立しても開業前の状態であれば、『開業後3年未満の会社』ではなく、『開業前・休業中の会社』に該当します。
開業後3年未満の会社の株式の評価方法は、純資産価額方式です。
また「配当金額」・「利益金額」・「純資産価額」の3要素すべてがゼロの会社も、同様に純資産価額方式を用いて評価額を算出します。
なお同族株主等以外の株主が株式を取得した際の評価方法は、配当還元方式です。

開業前・休業中の会社

『開業前・休業中の会社』は、課税時期において開業前していない会社や、休業中の会社をいいます。
会社を設立しても、事業を始めていない会社は『開業後3年未満の会社』ではなく、『開業前・休業中の会社』に該当します。
開業前・休業中の会社の評価方法は、純資産価額方式です。
なお株式を同族株主等以外の株主が取得した場合、評価方法は配当還元方式ではなく、純資産価額方式で計算しなければなりませんので注意してください。

清算中の会社の評価方法

『清算中の会社』とは、課税時期において清算手続き中の会社をいいます。
清算中の会社の評価方法は、会社を清算したことで得られる分配金の見込額を算出し、その金額を評価額とします。

清算中の会社の評価方法

n年後に受けれる見込分配金×n年後に応ずる基準年利率の複利現価率=見込分配金

会社が長期間清算中で、分配がされない場合には、純資産価額方式により評価額を算出します。
また株式を同族株主等以外の株主が取得した場合でも、見込分配金または純資産価額方式により評価額を計算しなければなりません。

特定会社の評価方法のまとめ

特定会社の評価方法は、非上場株式の例外的な評価方法であり、会社の規模や資産によっては、補正処理の計算が必要になります。
相続税の計算は、非上場株式の評価額以外にも専門的な知識を要するため、税理士に依頼する際は相続税に精通している事務所を選んでください。

相続に関するご質問があれば、お気軽にお問い合わせください。