配当還元方式の判定および非上場株式の評価額の計算方法を解説!

被相続人が非上場会社の株式を保有していた場合、相続開始時点の株価を計算しなければなりません。
非上場株式の計算方法には原則と例外があり、配当還元方式は例外的な評価方法です。
本記事では配当還元方式を適用するケースと、計算方法について解説します。

配当還元方式とは

非上場株式は基本的に、原則的評価方法で評価額を算出します。
原則的評価方法は『類似業種比準方式』と『純資産価額方式』の2種類あり、会社の規模などによって適用する方式が変わります。
配当還元方式は、評価会社の配当金額から評価額を計算する例外的な評価方法です。
原則的評価方法と配当還元方式による評価額を比較した場合、一般的には配当還元方式により算出した金額の方が評価額は低く、使用する評価方式は株式を取得した人ごとで判断します。
したがって同じ会社の株式を取得した場合でも、評価額が異なるケースもありますのでご注意ください。

配当還元方式を使用して評価額を算出するケース

非上場株式の評価額の計算で配当還元方式を使用するのは、株式取得者が同族株主以外の株主に該当する場合です。
同族株主は、原則的評価方法(類似業種比準方式または純資産価額方式)により評価額を算出します。

株主区分の判定方法

配当還元方式を適用するかは、株式を取得する人ごとで判断します。
取得者の議決権割合だけでなく、取得者の属するグループの議決権の割合も評価方法の判定要素です。
また議決権を保有している場合でも、評価会社に同族株主がいる・いないで、評価方法が変わるケースもあります。

同族株主の有無株主の区分判定評価方法
同族株主の
いる会社
同族株主取得後の議決権割合が5%以上原則的評価方法
・類似行比準方式
・純資産価額方式
取得後の議決権割合が5%未満中心的な同族株主がいない
中心的な同族株主がいる中心的な同族株主
役員等
その他特例的評価方法
・配当還元方式
同族株主以外の株主
同族株主の
いない会社
議決権割合の合計が15%以上のグループに属する株主 取得後の議決権割合が5%以上 原則的評価方法
・類似行比準方式
・純資産価額方式
取得後の議決権割合が5%未満 中心的な株主がいない
中心的な株主がいる役員等
その他 特例的評価方法
・配当還元方式
議決権割合の合計が15%未満のグループに属する株主

同族株主がいる会社の場合

同族株主は、評価会社の議決権を30%以上保有しているグループに属する株主です。
同族株主グループに属さない株主は同族株主以外の株主となり、配当還元方式を使用して株価を計算します。
(議決権を50%超保有する同族株主グループがいる場合は、50%超のグループに属する株主のみが同族株主となります。)
同族株主グループは、株主と株主の同族関係者で構成され、同族関係者に該当する人(法人)の範囲は以下の通りです。

同族関係者の範囲

  • 株主
  • 株主の親族
    (配偶者6親等内の血族、3親等内の姻族)
  • 株主と事実上の婚姻関係にある人
  • 株主の使用人などの特殊関係者
  • 同族関係者が議決権の50%超を保有する会社

同族株主がいない会社の場合

同族株主がいない会社で配当還元方式を適用する人は、議決権割合の合計が15%未満の株主グループに属する株主です。
会社の事業規模が大きい会社の場合、創業者以外のグループが多く株式を保有していることもあり、配当還元方式により評価額を計算するケースも少なくありません。
また議決権割合の合計が15%以上の株主グループに属する株主でも、自身の議決権割合が5%未満であり、かつ役員等に就いていない場合においては、配当還元方式を適用できます。

(中心的な株主がいる場合に限ります。)

配当還元方式による計算方法

配当還元方式は、1株あたりに対する1年間の配当金額を10%の利率に還元し、元本である株式の評価額を算出します。
計算する際は、評価会社の年配当金額と資本金等の額が必要となりますので、事前に確認してください。

配当還元方式による1株あたりの評価額

1株あたりの年配当金額を算出する方法

1株あたりの年配当金額は、課税時期の直前期末以前2年間の平均配当金額を、直前期末における発行株式数で除した金額です。
1株あたりの資本金等の額が50円以外の場合は、資本金等の額を50円で除した算出した株数を用います。
また年配当金額に該当する配当は一般的な配当金額に限られ、特別配当や記念配当(例:創業〇周年記念)など、継続性がないものは除かれます。

1株あたりの資本金等の額を算出する方法

1株あたりの資本金等の額は、直前期末時点の資本金や出資金、資本準備金などの合計額を50円で除した金額です。
法人税申告書で確認する場合は、別表五(一)「36」に記載されいる、『差引合計額』が資本金等の額となります。
また資本金等の額は配当金額と異なり、2年間の平均ではなく、直前期末の金額を使用しますのでご注意ください。

配当還元方式で計算する際の3つの注意事項

会社が配当金ゼロの場合の評価方法

1株あたりの年配当金額がゼロまたは2円50銭未満だった場合、年配当金額は2円50銭として計算を行います。
配当金額の下限が定められているのは、非上場会社の性質が要因とされています。
非上場会社は上場会社と違い、余剰金が発生しても配当金の支払いは行わず留保するケースが多いです。
そのため評価額を算出する上では、評価会社が無配当であっても、1株あたり2円50銭の配当金額がある形で計算しなければなりません。

資本金等の額がマイナスの場合における計算方法

自己株式を外部から取得した際、資本金等の額がマイナスになるケースもありますが、評価額がマイナスになることはないです。
資本金等の額は、1株あたりの年配当金額の計算でも用います。
配当還元方式では、年配当金額と資本金等の額を乗ずるため、双方がマイナスであれば結果としてプラスの評価額が算出されます。
そのため配当還元方式の計算式に、金額をそのまま当てはめて問題ありません。

資本金等の額がマイナスの場合における計算例

  • 資本金等の額 △1億円
  • 年配当金額 1,000万円
  • 発行株式数 100万株
1株あたりの資本金等の額

△1億円÷100万株=△100円

1株50円とした場合の発行株式数の計算

1億円÷50円=△200万株

1株あたりの年配当金額の計算

1,000万円÷△200万株=△5円

1株あたりの評価額

△5円÷10%×△100円÷50円=100円

配当還元方式の評価額が純資産価額方式よりも高い場合

非上場株式を評価する場合、配当還元方式が最も低い評価額を算出する計算方法です。
ただ希に、原則的評価方法で計算した評価額よりも高い金額が計算されるケースもあります。
そのような場合においては、配当還元方式を用いず、原則的評価方法で計算した金額を評価額とします。

配当還元方式による計算のまとめ

非上場株式の評価額を計算する場合、最初に株主区分の判定を行ってください。
配当還元方式で計算する際は、評価会社の年配当金額や資本金等の額を事前に把握しなければなりません。
また配当還元方式と原則的評価方法の評価額を比較するためには、評価会社の資産状況の確認も必要です。
相続人の方々だけで、非上場株式の評価額を正しく計算するのは難しいため、税理士に依頼するのも選択肢です。

ビジョン税理士法人は、相続に関するご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。