遺産分割協議の進め方

遺産分割協議を含めた相続手続き全体のスケジュールは、下図のようになります。

相続手続きのスケジュール

遺産分割協議を行うためには、まず法定相続人の調査、遺産分割の対象となる財産の特定とその評価を済ませなければなりません。(準確定申告が必要かどうかは被相続人によります)

さらに遺言書は遺産分割の方法に影響を及ぼすため、早めにその存在や内容を確認しておくことが必要です。

この記事では、遺産分割協議の進め方や、遺産分割協議に未成年者がいるとき、遺産分割協議がまとまらないときの対応方法などを解説します。

遺産分割協議の準備

法定相続人を確定させる

法定相続人の調査は、被相続人や相続人の戸籍謄本から行います。

法定相続人が確定すれば、自動的に各人の法定相続分が判明します。

法定相続人法定相続分
配偶者のみ配偶者・・・すべて
配偶者と子配偶者…2分の1
子…2分の1
配偶者と直系尊属配偶者…3分の2
直系尊属…3分の1
配偶者と兄弟姉妹配偶者…4分の3
兄弟姉妹…4分の1

たとえば法定相続人が被相続人の妻と子であれば、法定相続分はそれぞれ2分の1ずつとなります。
もし法定相続人が妻・子3人であれば、妻が2分の1、子は6分の1ずつとなります。
遺産分割は全員が納得していればどのように遺産を分けても自由ですが、通常はこの法定相続分を基準に行われます。

遺産分割の対象となる財産の特定

遺産分割協議をするには、遺産分割の対象となる財産をあらかじめ特定し、その評価を済ませておく必要があります。
遺産の内容や評価額を法定相続人が共有できるようにするため、財産目録を作成すると遺産分割協議をスムーズに進めることができます。
(遺言執行者がいるときは、遺言執行者が作成します。)

遺言書を確認する

遺言書の確認も、遺産分割協議の前に行っておくことが望ましいです。

遺産分割の後に遺言書が発見されると、遺産分割をやり直すことになる可能性もあります。
遺言書は、被相続人自身が保管しているケースや、弁護士や知人等に預けているケースがあります。
公証人連合会による遺言検索システム(公正証書遺言、秘密証書遺言に対応)や、法務局の遺言書保管事実証明書の交付請求(令和2年7月10日以降、預かり制度を利用した自筆証書遺言に対応)を利用して探すことも検討が必要です。

なお、公正証書でない遺言書は、家庭裁判所による検認を受ける必要があります。

封印のある遺言書の場合は家庭裁判所で相続人等の立ち会いのもと開封しますので、勝手に開封しないよう気をつけましょう。

検認には1ヶ月ほどかかることもありますのでスケジュール管理にも注意が必要です。

遺産分割協議の進め方

遺産分割の準備が整ったら、遺産分割協議を行います。

法定相続人への連絡

調査で確定した法定相続人全員に連絡を取り、遺産分割協議の日程等を決めます。

遺産分割協議には、包括受遺者(遺言によって相続人と同じ権利義務を与えられた人)にも参加してもらいます。

遺産分割協議を行う

相続人等全員で遺産分割協議を行います。

必ずしも一箇所に集まって行う必要はありませんが、最終的には全員が遺産分割の内容を承諾することが必要です。

なお、このとき相続税のシミュレーションを行うことも忘れずに行います。
金銭以外の財産ばかり取得した人は、自分の財産から相続税を捻出しなければなりません。
相続税には連帯納付義務があるため、納税できない人が出ないよう、全員で注意する必要があります。

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議を終えたら、その内容が成立したことを示すため、遺産分割協議書を作成します。各機関における相続手続きにも必要となる書類です。
作成には全員の署名押印(実印)を必要とします。

作成をスムーズに進められるよう、作成する日は印鑑証明書と実印を用意することを念押ししましょう。

いろいろな遺産分割協議への対応方法

未成年者が相続人にいる場合

未成年者が法律行為を行うには、法定代理人の同意を必要とします。(民法第5条)
そのため、未成年者が単独で遺産分割をすることはできません。

未成年者の法定代理人は、通常は親権者です。
しかし、遺産分割では、法定代理人も相続人である場合があります。
この場合、親権者と未成年者の利益が相反するため、その未成年者には特別代理人といって、相続人でない別の代理人を選任する必要があります。

特別代理人の選任は、まず候補者を選び、それを家庭裁判所に申し立てて行います。
候補者は法律の専門家などである必要はなく、相続人でない親戚などでも構いません。
ただし、その人物が適格かどうかは裁判所が判断します。

連絡先のわからない法定相続人がいる場合

法定相続人の調査の過程で初めて存在が明らかになった相続人についても、連絡を取らなければなりません。

連絡先がわからないときや所在不明のときは、早めに専門家に相談しましょう。

遺産分割協議がまとまらないとき

遺産分割協議がまとまらない理由はさまざまですが、特に長引く原因になりやすいのは、特別受益や寄与分、遺留分などの主張によって相続分に争いが生じるケースです。

遺産分割協議がまとまらないときの対応方法は、次の3つに分かれます。

  • 根気強く相続人同士で話し合いを続ける
  • 弁護士に代理人となってもらう
  • 家庭裁判所に調停や審判を申し立てる

期限にゆとりがある場合は、相続人同士で話し合いを続けてもよいでしょう。

しかし、感情的になって話し合いが進まないときは、一旦中断し、弁護士を代理人として遺産分割協議に参加してもらうのも一つの方法です。
調停や審判を利用せずに解決したい場合にもよいでしょう。

相続税の申告期限までに遺産分割ができないとき

相続税の申告期限までに遺産分割がまとまらず、未分割の財産があるときは、その遺産を法定相続分で取得したと仮定して相続税の申告を行います。
ただし、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」など一部の特例は未分割の財産には適用できず、申告期限後3年以内に分割すれば適用することができます。

遺産分割をした後に適用するためには、未分割で申告するときに「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、分割を終えた後に更正の請求等を行います。