売上原価とは? 基本の考え方から具体的な活用方法まで徹底解説

「売上原価って何?」

経営をしていて頻繁に聞く言葉に「売上原価」というものがあります。
売上原価とは、売れた商品の仕入れや製造に直接かかった金額のことを指します。

この記事では、売上原価の基礎知識など以下の内容を詳しく解説していきます。

この記事を読めば分かること

  •     売上原価とは
  •     業種による売上原価の違い
  •     売上原価の活用方法

この記事を読んでいただくことで、売上原価がどういったものかを詳しく理解することができます。
ぜひ業績把握や経営判断の参考にしていただければ幸いです。

 


1.売上原価とは

この章では、「売上原価」の基本情報を解説していきます。

1-1 売上に対して直接・変動的にかかる経費

冒頭でも解説した通り、売上原価とは売れた商品の仕入れや製造に直接・変動的にかかったコストのことを指します。

「直接」とは商品を生み出すために直接かかったことが明確であること、「変動的に」というのは売上の増減にともなって増減するということです。

そのため、売上の増減がその費用の増減に直接影響するかどうか、また商品を生み出すために新たにかかった費用なのかが売上原価とそうでない費用を分けるポイントとなります。

したがって、それぞれの会社の実態に応じて決める必要があり、売上原価に具体的な基準は定められていません。

1-1-1 八百屋の場合

例えば、小売業である八百屋さんでは商品は野菜や果物であるため、その仕入金額が売上原価です。

1-1-2 レストランの場合

では、この八百屋さんが仕入れた野菜で作った料理でレストランを始めた場合、売上原価はどうなるでしょうか。

レストランの商品はお客様に提供する料理や飲み物ですね。
この場合、料理に使う野菜や調味料、飲み物は売上原価です。
ただし、調理にかかった人件費や光熱費は直接調理に関わった分のみ売上原価となります。

人件費は調理専門で他の仕事はしない人であれば全額が売上原価になります。
しかし、他の仕事もしつつ調理も行っている人の場合、調理の仕事に対して払った金額のみが売上原価に含まれます。
調理以外の仕事は間接的には商品と関わっているかもしれませんが、商品を作るのに直接関わっておらず、売上をあげるために新たにかかったコストでもないため、分ける必要があるのです。

光熱費も同様に、調理に使った分だけが売上原価になります。

1-1-3 お料理教室の場合

さらに、調理の腕を活かしてお料理教室を始めたら売上原価はどうなるでしょうか。
お料理教室の商品はお客様へ料理を教えるサービスですね。
この場合、教室で使う材料は売上原価に含めて良いと考えられますが、講師にかかった費用はその実態によって売上原価になるかどうかが決まります。

教室に毎回社外の講師を招く場合は外注費として売上原価にすることができると考えられますが、従業員が講師をする場合には、その人件費は基本的に売上原価にはなりません。
従業員の人件費は商品を生み出すために新たにかかった費用ではなく、教室運営のために固定的に支出している費用と考えられるためです。

1-2.業種による売上原価の違い

1-1 売上に対して直接・変動的にかかる経費」で3種類の事業によって売上原価の範囲が変わったように、業種によって売上原価の範囲は変わってきます。

ですが、どの業種でも売上原価が「売れた商品の仕入れや製造に直接かかったコスト」なのは変わりません。
その業種の商品は何か、その費用は商品を生み出すために新たにかかった費用なのかが重要です。

1-2-1 建設業

建設業では建物等の工事代金が売上になりますので、工事に直接要した費用が売上原価となります。

材料費、労務費、外注費、工事に要した動力・用水・光熱費、運搬費、建設機械の減価償却費 等

工事に直接携わらない営業・事務経理の人件費や地代家賃などは売上の有無に関わらず払う必要がある固定的な費用のため、売上原価には算入しません。

1-2-2 製造業

製造業では作った製品を販売し、売れた時点で売上になります。
ですので、製造業にはおおまかに ①製品の製造 ②製品の販売 という2つの行程があるということです。
この2つのうち、売上原価となるのは ①製品の製造 に直接関わる費用のみとなります。

材料費、労務費、外注費、工場に掛かる光熱費等経費、重油等燃料費、製造機械の減価償却費 等

製品の製造に直接関わらない従業員の人件費や作った商品を販売するための広告費などは、売上の有無に関わらず払う必要がある固定的な費用のため、売上原価には算入しません。

1-2-3 不動産販売業

不動産販売業では、不動産の販売をしたときに売上となりますので、
不動産の仕入れに要した費用が売上原価となります。

不動産仕入高、登記費用、外注費 等

1-2-4 技術サービス業

サービス業は多様な業種がありますが、主に「サービスという目に見えない商品を売る」ということは共通しています。
基本的に売上原価に算入できるものは建設業、製造業と比べて少なくなります。

材料費、外注費

サービス業といえば従業員による何らかのサービスが商品の会社が多いため、
人件費は売上原価に入ると考える方も多いと思います。
ですが、人件費は売上の有無に関わらず払う必要があるため、
売上の増減に伴って「新たにかかるコスト」ではありません。
したがって、売上原価には算入しません。

 


2.売上原価の計算方法

それではここで、売上原価の計算方法を見てみましょう。
売上原価の基本の計算式は以下の通りです。
※業種によって計算式に入る科目名は変わることがあります。

売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高

仕入に要した費用が売上原価となるのは、その商品が売れた時です。
ですが、前期売れ残った在庫を今期売ることもあれば、今期仕入れたものが売れ残ることもありますよね。

前期に仕入れた商品を今期売った場合は今期の売上原価になりますし、反対に今期末の時点で売れ残った商品は売上原価に算入することはできません。

そのため、売れた時に売上原価にするためには、もともとあった期首の在庫と期末の在庫を計算に入れる必要があります。
期首の在庫を期首商品棚卸高、期末の在庫を期末商品棚卸高といいます。

小売業では基本的に仕入れ金額が売上原価となりますが、1-1で例に挙げたように業種によっては外注費や人件費が売上原価になることがあります。
その場合は期首・期末商品棚卸高は仕入商品の在庫だけでなく、人件費や外注費の棚卸高が入ります。

人件費や外注費など無形の費用を棚卸しするのは馴染みがないかもしれませんが、「支払った(仕入れた)もののうち、今期売上になった分とまだ売上になっていない分に分ける」という考え方は有形の商品と同じです。

例えば外注費の場合、1枚の請求書に何件かの仕事がまとめて記載され、支払い金額はその合算となる場合が多いですよね。

この中に今期の売上に対応するものと来期以降の売上に対応するものがある場合、今期の売上に対応する分は今期の売上原価となります。
しかし来期以降の売上に対応するものは売上原価にはなりませんので
期末商品棚卸高として、来期以降の売上原価となります。

反対に、前期に期末商品棚卸高とした外注費は期首の在庫と考えられるので、期首商品棚卸高に入ります。

実際に計算してみましょう。

例えば、期中に青果店が100円のりんごを100個仕入れたとします。
今期仕入れたりんごの他に前期100円で仕入れたりんごが10個あり、
期末に売れ残ったりんごが20個あったとすると、
売上原価は以下のように計算できます。

1,000円 + 10,000円 - 2,000円 = 9,000円

 


3..売上原価の活用方法

売上原価の基本と計算方法が分かったら、早速経営に活かしていきましょう。
まずは実務へ活かすのに便利な売上原価率の算出方法から解説します。

売上原価率とは、売上に対する売上原価の割合のことです。
売上原価率を出すことで、実務への活用がしやすくなります。
計算方法はこちらです。

売上原価率 = 売上原価 ÷ 売上高 × 100

それでは、活用方法を2つご紹介します。

3-1 1件の売上でどれだけ利益を生めるかを試算する

売上原価が分かれば、1件の売上につきどれだけの利益を得られるかが分かります。
いくらの利益が必要かによって、何件の売上を立てる必要があるのかを算出することができます。
売上件数が現実的でない場合は商品価格の設定に問題があるのかもしれません。

商品価格の設定については、詳しくはこちらの記事をご参照ください。

【実践】利益率の出し方とは?利益率から商品価格を設定する (suzuki-tax.net)

3-2 売上原価率の推移から今後の事業の見通しを立てる

毎月の売上原価率が分かれば、毎月の売上原価率の比較から
会社がどのような状況なのかが分かります。

もし販売管理費を十分節約しているにも関わらず利益を十分出せていないならば、それは売上原価が高いせいかもしれません。

例えば仕入額が高騰して売上原価が上がってしまっているならば、商品価格の見直しが必要です。
また、外注費がかさんでいる場合は社員の生産性に課題がある可能性があります。

さらに事業年度ごとの売上原価率を把握することで、長期的な視点で会社の状況を把握することができます。

 


まとめ

以上、この記事では売上原価に関して以下の内容を詳しく解説してきました。

この記事を読んで分かったこと

  •     売上原価とは
  •     業種による売上原価の違い
  •     売上原価の活用方法

売上原価は会社の売上から利益まで関係する非常に重要なものです。
売上原価の考え方と活用方法をしっかりと理解し、経営に役立てていきましょう。

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