なぜウチの会社が税務調査に選ばれたの? 選定基準を大公開!

経営者の皆様には「税務調査」という言葉を聞いたことが無いという方はいらっしゃらないでしょう。

既にご経験された方もたくさんいらっしゃると思います。もしかしたら、ひどい目に遭った方もいるかもしれません。

一般的には、10年に1度は、税務調査に入られるということになっていますが、実際には、会社ごとにずいぶん差が出ています。

数年に一度税務調査に入られている方もいれば、過去10年一度も税務調査に入られていない方もいると思います。

税務調査は、経営者にとってかなりの負担となります。

準備期間を合わせると、1ヶ月以上はかかると思いますし、やましいことは何もないと分かっていても精神的にも憂鬱な気分となってしまいますよね。

 

この記事では、中小企業の経営者の皆様に、

税務調査に入られないようにするためのポイントを解説させて頂きたいと思います。

 

税務署の調査先選定基準は?

 

税務署はどうやって税務調査に入る会社を選んでいるのでしょうか?

会社の決算月と税務調査の実施時期の関係について説明します。

実は、これらには密接な関係があるのです。

以下、一つずつ検証していきましょう。

 

①会社の決算月と税務調査の実施時期の関係

税務調査の実施時期はランダムに決まるのではなく、会社の決算月によって決まっています。

 

POINT

2~5月決算法人⇒税務調査は、7~12月(上期)に実施

6~1月決算法人⇒税務調査は、1~6月(下期)に実施

 

基本的には、このルールに従いますが、

税務署内での事前のチェックで、この会社は何だか怪しいと感じたりすると、例外的に別の時期に税務調査が実施される場合もあります。

その場合には、税務署側もそれなりの根拠を持って税務調査に臨むため厳しい税務調査になると思います。

 

 

 

②会社の決算月による会社の数

 

次は、決算月ごとの会社の数を見てみましょう。国税庁の統計データを見ると、

2~5月決算法人と6~1月決算法人で会社の数を分けると下記の通りとなります。

 

POINT

2~5月決算法人は、約110万社ある。

6~1月決算法人は、約150万社ある。

 

このように決算月による会社の数は、かなり偏りがありますよね。

 

※ここでは、単純に決算月によって会社の数にばらつきがあるということが分かって頂ければ大丈夫です。

 

 

③調査官にもノルマがあります

実は、税務調査を行う調査官には、普通の会社と同じように、1年間の調査件数にノルマがあります。

 

POINT

7~12月(下期)の調査 ⇒20件のノルマ

1~6月(上期)の調査  ⇒10件のノルマ

 

年間30件ほどノルマが課されていますが、こちらも税務調査の実施時期によってバラツキがあることが分かりますよね。

バラツキの原因は、

1~6月の調査件数のノルマが少なくなっているのは、

・確定申告の時期に重なる、

・件数の多い3月決算法人の申告が5月にあり、税理士側の繁忙期である

などの事情を税務署が汲んでいるためです。

 

 

④結論

さて、税務調査にはかなり時期的に偏りがあることが分かって頂けたと思います。長くなりましたが、これまでの話をまとめると下記の結論が導き出せるのです。

 

POINT

6~1月決算法人のほうが、

2~5月決算法人よりも

税務調査に選定される確率が低くなっている。

 

感覚としては、

2倍くらい差があると思います。

 

会社の場合には、決算期を変更することができますので

税務調査に選ばれる確率を減らすために、会社の決算期を6月~1月に変更することは

税務調査対策として有効となります。

 

⑤調査官の人事評価とも関係がある?

実は、もう一つ税務調査に影響を与える大きな要素があります。

調査官の心理的な要因です。

税務調査の実施時期と税務署の内部の人事評価も関係があるのです。

 

調査の期間(事務年度)の数え方は、普通の暦年とは違い、

7月から始まって6月までととなっています。

一方で、調査官(税務署職員)の人事評価についての年度の数え方は

4月から始まって3月までとなっています。

 

さらに、税務署の職員の異動は7月に行われ、ほとんどの場合で上司が毎年入れ替わります。

 

そのため、調査官にとっては、4月から6月に実施した調査は、

上司(統括官)が入れ替わるため評価されにくいことになるのです。

 

モチベーションを考えると上期の調査には力が入りにくく、

下期の調査でやる気を出してくるということになるでしょう。

税務署の調査官も、普通の会社員の人事評価と一緒ですよね。

 

税務調査の質的にも決算期によって偏りが生じることが分かって頂けたと思います。

 

POINT

2~5月決算法人⇒税務調査は、7~12月(上期)⇒調査官のやる気がある。

6~1月決算法人⇒税務調査は、7~12月(上期1~6月(下期)⇒調査官のやる気がない。

 

税務調査の質を考えたら、少しでも厳しくない6~1月決算法人のほうが良いですよね。

 

これまでの話をすべてまとめると、

 

POINT

2~5月決算法人⇒税務調査は、7~12月(上期)⇒選ばれるリスクも高くて、厳しい調査になる。

6~1月決算法人⇒税務調査は、1~6月(下期)⇒選ばれるリスクは低くて、優しい調査になる。

 

 

税務調査先の選定について

次は、税務署がどのように税務調査先の会社を選んでいるかを見ていきましょう。

残念ながら、税務署は具体的な選び方は明らかにしていません。

しかし、国税庁の機関システムである国税総合管理(KSK)システムが

活用されているということが分かっています。

調査官も昔とは違い、税務調査以外の業務に忙殺されていて、税務調査にだけ集中することができる状況ではなくなっています。

そこで、これを補うためにITシステムを活用することとなっているのです。

 

 

税務調査先の選定はおおむね下記の手順によります。

 

  1. KSKシステムによる選定する。
  2. 調査官がKSKシステムが選定した調査候補先からさらに選定し、実際の税務調査先を選定する。

 

ここでのポイントは、いきなり調査官が税務調査先の会社を選ぶのではなく、KSKシステムが最初に選ぶということです。

感覚としては、KSKシステムが絞り込んだ調査先10件に対して調査官がさらに2~3件に絞り込む感じとなります。

 

KSKシステムとは?

KSKシステムは、全国の国税局、税務署の情報を一括管理して、税務著の仕事を効率化するためのシステムです。

国税庁の方針として、まずはKSKシステムを使って、税務調査先の会社の候補を選んでいます。

 

そのため、調査官が、最初から調査先の会社の選定にかかわるということはありません。

調査官は、KSKが選定した候補のうちから、調査先を絞り込むのです。

したがって、税務調査先に選定されるリスクを減らすためには、KSKシステムの選定基準を知ることが必要です。

 

POINT

税務調査先の会社に選ばれないようにするためには、まずはKSKシステムの選定基準を知る。

 

具体的には次節で見ていきましょう。

 

KSKシステムの具体的な選定基準とは?

KSKシステムは、入力された情報を分析して税務調査先を選定しています。

具体的な選定方法は全ては明らかになってはいませんが、下記のような対策はとれると思います。

 

 

①過去に重加算税のあった会社

過去に重加算税があったかどうかだけで、調査の選定リストにあがってしまいます。

重加算税は、悪質な税金逃れをした場合にペナルティとして課されることになります。

悪質な税金逃れをした経験がある会社は、通常のサイクルではなく、3年から4年に1

回税務調査に入ることとなります。要注意な会社として通常よりも短いサイクルで調査

に来てしまいますので、重加算税となるような処理は絶対に止めましょう。

 

②長い間税務調査に入られていない会社

長い間、税務調査に入っていない会社も調査の選定リストにあがってしまいます。

とりあえず税務調査に入って様子を見てみておこうということです。

(一般的には、平均すると、10年に一回は税務調査を経験することになります。)

この場合には、他の場合とは異なり、特に何か調査すべき理由があるためというわけではありません。

しかし、油断は禁物です。今回の税務調査をうまくこなせれば、今後の

税務調査の頻度を減らすことができます。

反対に、何か指摘事項が見つかり、要注意先

と判断されてしまうと、数年後にまた税務調査が来ることになってしまいます。

 

③過去の決算書との比較

決算書に記載される各項目の数字を過去のものと比較して、大きな変動があると、

KSKシステムが注意アラームを発します。

一つのアラームだけで、調査先に選定されるということはないのですが、

たくさんの項目でアラームが鳴ってしまうと、調査先に選定されるリスクが上がります。

 

業績の変動で、会社の決算書の数字は毎年変動するのが普通ですが、それがあまりにも

多いと、何かイレギュラーなことが起こっているのではないかということで要注意先として選ばれてしまいます。

 

④決算書にイレギュラーな項目が計上されている。

決算書にイレギュラーな項目が計上されていると選定されやすくなってしまいます。

具体的には、退職金や貸倒損失など、通常あまり計上されないような経費や利益

の項目ですが、通常金額が大きくなったり、税務上誤りが多かったりするためKSKシステムもイレギュラーな項目として要注意として考えています。

 

⑥同業者との比較で利益率が低い。

同業者と比較して、利益率が明らかにおかしいと、選定されやすくなります。

税務署では、納税者をデータベースで管理していますので、同業者での利益率も比較することができます。

利益率が低いと、何かおかしな処理をして無理やり利益を減らしているのではないかと考えるからです。

 

⑦毎年の利益が100万円前後

毎年の利益(所得)が100万円前後の会社は、選定されやすくなります。

経営者であれば、税金は少ないに越したことはないと考えますが、一方で借入れの関係である程度の利益を出す必要もあります。

すると、不思議なことに大体の経営者は、無理やり、利益を100万円前後に落ち着かせてしまうようなのです。

KSKシステムもこのことを承知していて、毎年の利益が100万円前後の会社は選定されやすくなっているのです。

 

⑧赤字から黒字に転換した直後の会社

利益(所得)が赤字から黒字に転換した直後が税務調査に選定されやすくなります。

業績が良くなり、利益が生じて、いざ税金の額をみてみるとその負担の大きさにびっくりして、

無理やり利益を減らして、税金逃れを行う法人が多いということです。

ギリギリ赤字になっている法人もまた、同じ理由により税務調査先に選定されやすくなります。

 

⑨外注比率が高い会社

外注が異常に多い会社は、要注意です。

外注費は、経費の水増し方法としてよく

ある手段として使われています。また、税務上の論点として、外注と給与の区分があります。

外注を多く使っていると、それは外注ではなく給与ではないかと判断される場合があります。

そうなると、消費税と源泉所得税で納税漏れが発生することとなりますので、

税務署側からすると、狙いやすい論点となりますので選定されやすくなり要注意となります。

 

⑩消費税の還付がある

消費税の還付がある場合にはそれだけで要注意です。

かなり税務調査先に選定されるリスクが高いでしょう。

税務署側では、消費税還付がある納税者をデータベース化しています。

大きな投資をした場合に還付となるのが通常ですが、税務署側もやたらと還付はしたくないからです。

不正な還付となる事例も多いためKSKシステムも目を光らせています。

 

 

⑪売上高が1000万円、5000万円未満

売上高が1000万円、5000万円未満の場合には要注意です。

これらは消費税の課税と関係があります。消費税は、税抜の売上高が1000万円以上となると納税義務が発生しますので、

1000万円未満の場合には不正に売上を減らしている

のではないかと調べる必要があるためです。

同様に売上高が税抜5000万以上となると、

簡易課税が適用できませんので、5000万円未満ですと、簡易課税適用のため不正な方法で売上高を抑えているのではないかと

確認のため選定されやすくなってしまいます。

いずれにしても税務署側が、容易に納税者の不備を指摘しやすい項目となっているためです。

 

 

⑫税務調査が来やすい業種

業種によっても税務調査に選定されやすくなっています。

国税庁が毎年発表している不正が多い業種と、税務署ごとの方針によって選定されています。

いわゆる、飲み屋、バー、キャバクラなどの夜のお店など一定の業種は過去に不正が多かった職種ということで選定されやすくなっております。

また、税務調査のノルマの関係で、不動産所得のある個人事業者が税務調査先に選定されやすくなった年になった事例があります。

 

 

⑬税理士の有無と税理士の変更

税理士を変更すると、税務調査がやってくるという話がよくありますが、少なくとも

KSKシステムの選定上では、税理士の有無と税理士の変更は考慮されることはありません。

その後の調査官の選定で影響が出る可能性があります。

 

 

次は、調査官がどのように税務調査先の会社を選んでいるのかを見ていきましょう。

 

調査官はどうやって税務調査先の会社を選んでいるのか

・調査官は、上述のKSKシステムの選定を踏まえたうえで税務調査先の会社を選定します。

感覚としては、KSKシステムが選定した候補10件に対して、実際に税務調査となるのは、2,3件くらいかと思います。

調査官がどの会社を税務調査先に選定するかは、マニュアル化はされていません。

 

どの調査官であっても資料を事前にチェックしてから税務調査先の会社を選びます。

私たちが義務として提出している申告書と任意のお尋ねなどの他で集めた資料を比較して何かつじつまが合わないこと、

気になることがあると、その確認のために調査先に選定されてしまうのです。

 

以降では、調査官が会社のどのような部分を見ているのか見ていきましょう。

 

①会社の場合

・売掛金、買掛金が特定の会社だけ

知り合いの会社と通謀して、不正な取引により税金逃れをしている可能性があるためです。

 

・決算書の数字の整合性が取れていない。

例えば、利益を圧縮する方法として、売上と売上原価を操作する方法があります。

しかし、不正な操作では、どうしても決算書の数字や比率につじつまが合わないこと

出てきますので調査官に気づかれてしまいます。

 

・借入金の増減が激しい。

役員報酬の額が低いのに役員借入金が大幅に増えているなど、役員借入金の増減が激しい場合にはその資金の出どころが問題となります。

経営者個人に他に収入源があり、その資金を会社に投じている場合もありますが、売上を経営者個人口座に入金していて、売上を会社の決算書に計上していない可能性を疑われてしまうためです。

 

 

②個人事業者の場合

・海外送金の資料がある

海外での所得があるのではないかと確認する必要があるためです。

近年、海外所得を申告していない方が多いため、要確認ということになります。

 

・重点業種として、医師、歯科医師

一般的に高所得の方が多いためです。

 

・損益通算をしている

現在、サラリーマンの方であっても副業をしている方が増えています。

本業と副業が損益通算ができる場合がありますが、インターネットの誤った情報により

本来であれば損益通算できないものを損益通算している場合があります。

よくある事例ということで調査に選定されやすくなっています。

 

③税理士の有無

KSKシステムの選定上では税理士の有無や変更は考慮されませんが、

調査官の選定上では完全に調査官の好みとなります。

税務調査に入られないようにするためには?

では、どうすれば、少しでも税務調査先に選定されるリスクを減らすことができるか対策方法をお伝えしたいと思います。

 

①決算期の変更

6~1月決算法人のほうが、2~5月決算法人よりも税務調査に選定される確率が低い

です。また、調査官のモチベーションの観点からも6月~1月の方が有利です。決算期

変更の手続きは簡単ですので、決算期は6月~1月に変更しましょう。

 

②会計処理を変えない

会計処理は変更しないようにしましょう。

KSKシステムでは、決算書の各項目の数字が過去の数字と比較して大きく変動していると税務調査先に選定されやすくなっています。

会計処理を変更したために、過去と大きく数字が変わってしまうことがありますので注意しましょう。

 

余談ですが、税理士を変更すると税務調査先に選定されるという説がありますが、これは間違いです。

少なくともKSKシステムでの選定には影響はありません。

実際は、税理士の変更により、会計処理が変わってしまい、過去と数字が全く変わってしまったことが原因だと思われます。

 

したがって、会計処理を変更する際には、以前の処理が誤っていたなどよっぽとの理由がない場合には行わないようにすることが大切です。

 

また、決算処理で、過去の数字と見比べてみましょう。

その際に過去と数字が全く違うものがある場合には、ほかの勘定科目に振り替えることができないか検討してみましょう。

 

 

③特記事項に記載する

税務調査で論点になりそうな事項がある場合には、あらかじめ特記事項にその事を記載しましょう。

調査官は、わからないことがあるから調査に来るのです。

あらかじめ、特記事項にそのことをちゃんと説明しておけば、わざわざ税務調査に来ることもなくなります。

 

 

④添付資料は多めに

売買契約書、不動産鑑定書など計算の根拠となった資料は積極的に提出しましょう。

上記の特記事項の記載と同じように、税務調査の際に論点となりそうなものは、あらかじめ提出して、調査官の疑問を解消しておきましょう。

ほかには、退職金額の支給計算、債権放棄の内容証明など資料を添付すると良いでしょう。

 

注意点として、自信のない処理は、添付するのはやめておきましょう。

あくまで間違いがないことが確かであることが大切です。

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